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ベネフィットとリスクに関する結論

2.5 臨床に関する概括評価

2.5.6 ベネフィットとリスクに関する結論

第Ⅲ相試験(001試験)から得られた有効性及び安全性の結果から、CMV 抗体陽性の成人同種 HSCT患者のCMV感染又は感染症の予防におけるレテルモビルの高い有用性が支持された。

CMV感染は、臓器障害を伴うCMV感染症、GVHD、細菌及び真菌感染症などのリスク因子と なり、HSCT 患者での全身状態の悪化や高い死亡率と関連していることが知られている。また、

HSCT後のCMV感染と生存率の低下との関連性を示す国内外の報告もあり[資料5.4: 25] [資料5.4:

28]、CMV感染症のみならず、CMV感染自体を予防することは、HSCT後の患者の予後改善、特 に生存に対するベネフィットとなり得る。しかしながら、既存の抗 CMV 薬は骨髄毒性や腎毒性 等の毒性を有し、予防投与には適さないことから[資料5.4: 1]、HSCT後のCMV感染対策としては、

現在国内外ともに先制治療が標準的に行われている。先制治療は CMV 感染症の発症抑制には効 果を示すものの、CMV感染自体は抑えられない。また、特にCMV感染のリスクが高い移植後14 週間は患者の状態管理に細心の注意を要するため、副作用のある過剰な先制治療は避けることが 望ましいが、ウイルス量に基づく先制治療の開始基準は定められていないため、実際には不必要 な治療が行われている可能性がある。これらのことから、CMVに対して有効で、予防薬として安 全に使用できる薬剤が望まれている。レテルモビルは有効性のみならず安全性プロファイルも良 好であり、予防投与を行うことで、既存の抗CMV薬による副作用の回避のみならず、CMV再活 性化を抑えることにより HSCT 後の死亡リスクも抑制し、HSCT 後の患者に対する大きなベネフ ィットとなり得ると考えられる。

レテルモビルのベネフィット

レテルモビルの予防投与によるベネフィットを以下に示す。

• 第Ⅲ相試験(001試験)の結果から、臨床的に意味のあるCMV感染の予防において、レテ ルモビルはプラセボより優れていることが確認された。移植後24週までに臨床的に意味の あるCMV感染がみられた患者の割合は、レテルモビル群では37.5%であったのに対し、プ ラセボ群では60.6%であった(群間差:-23.5%、片側P値:P<0.0001)。レテルモビルの予 防投与により、臨床的に意味のあるCMV感染の相対リスクは、プラセボと比較して約40%

減少した[治療必要数(NNT)は5人]。

• 001試験における移植後48週時点の全死亡率(原因を問わない死亡)は、レテルモビル群

(20.9%)でプラセボ群(25.5%)より低かった(層別ログランク検定、両側P値:P=0. 1224、 多重性の調整なし)。レテルモビルの予防投与により、死亡の相対リスクはプラセボと比較 して約18%減少した(NNTは22人)。非再発死亡率(移植を実施した原疾患以外の理由によ る死亡)及びCMV感染後の死亡率(臨床的に意味のあるCMV感染を発症した後の原因を 問わない死亡)もレテルモビル群で低く、同様の傾向が認められた。

• レテルモビルの予防投与を受けた患者ではCMV感染症を発症した患者の割合は低く、先 制治療によりCMV感染症を予防した時の効果と類似していた。CMV血症を発症し、先制 治療を開始した患者の割合は、レテルモビル群では著しく低かった。

• 001試験は日本を含む世界20ヵ国67施設で患者が無作為割付され、広範な部分集団において

2.5 臨床に関する概括評価 - 104 -

レテルモビルの有効性及び安全性が確認された。患者の背景因子、CMV感染のリスク因子、

免疫抑制剤の併用あるいはHSCT移植前処置レジメン等の部分集団においても、レテルモ ビルの予防効果は一貫していた。

日本人集団においては、移植後24週以内の有効性の主要評価項目が全体集団と差異のあ る結果であったが、治験薬投与期間中である移植後14週以内では臨床的に意味のあるCMV 感染の予防において全体集団と一貫した有効性が認められ、移植後24週以内のCMV血症 の発現割合などの客観的な指標の結果では全体集団と同様の傾向を示したことなどから、

日本人集団でも全集団と同様の有効性が期待できる。

• 移植後24週までのGVHDの発症及び再入院の割合は、プラセボ群よりレテルモビル群で低 かった。

• レテルモビルは錠剤又は注射剤の2種類の製剤が使用可能であり、投与期間を通じて患者は いずれの投与法も選択できる。

• 曝露-応答解析の結果から、予定臨床用量における曝露量は、安全かつ有効であることが 支持された。001試験では、予定臨床用量投与後に見られた曝露量の範囲では一貫した有効 性が示された。また、日本人患者の曝露量の分布は、非日本人患者の分布と重なっていた。

• 既存の抗CMV薬とレテルモビルとの交差耐性は認められなかった。レテルモビルは新規 の作用機序を有することから、耐性が発現した場合でも既存の抗CMV薬に対する感受性 は維持され、治療の選択肢は残される。

• 同種HSCT患者におけるレテルモビルの忍容性は概して良好で、プラセボ群の安全性プロ ファイルと概して類似しており、骨髄毒性、腎毒性又は肝毒性を示唆する事象は認められ なかった。

• 有害事象のプロファイル及び発現割合は、HSCT患者で予想されたとおりであった。レテ ルモビルの安全性プロファイルは、内因性要因(年齢、性別、人種)及び外因性要因(地 域、免疫抑制レジメン)によらず、いずれの部分集団でも同様であった。

日本人集団でも、全集団と同様の安全性プロファイルが示され、日本人のみに特記すべ き安全性の懸念はなかった。

レテルモビルのリスク

• 非臨床試験では、ラットで精巣毒性が認められたが、サルやマウスでは認められなかった ことから、ラットの精巣所見は種特異的なものであると考えられた。精巣毒性を示すマー カー(血清インヒビンB、LH、FSH及びテストステロン値)の変動は、第Ⅲ相試験(001 試験)のレテルモビル群とプラセボ群で同程度であり、男性のHSCT患者に対するレテル モビルの投与が支持された。

• HSCT患者では、免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス等)、予防投与のための抗感 染症薬[アシクロビル、ボリコナゾール、ポサコナゾール(日本では未承認)等]等の他 の薬剤をレテルモビルと併用する可能性がある。このため、in vitro試験、薬物相互作用試 験、母集団薬物動態解析及び生理学的薬物動態モデルに基づくシミュレーションにより、

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関連する代謝経路の相互作用やHSCT患者集団に最も関連する薬剤について、薬物相互作 用を評価した。薬物相互作用の要約及び第Ⅲ相試験(001試験)の曝露-応答解析は[2.5.3.5 項]に詳述した。また、得られた結果に基づき、添付文書(案)の禁忌及び使用上の注意に おいて注意喚起することとした。

• これまでに得られている臨床試験成績は限られていることから、添付文書(案)に以下の 点を記載し、注意喚起することとした。

• 重度(Child-Pugh分類C)の肝機能障害のあるHSCT患者では、レテルモビルの安全性

を評価していない。レテルモビルの血中濃度が増加するおそれがあるため、治療上の有 益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することとした。

• クレアチニンクリアランスが10 mL/min.未満又は透析中のHSCT患者では、レテルモビ ルの安全性を評価していない。レテルモビルの薬物動態及び代謝プロファイルから、末 期腎障害又は透析が、レテルモビルの消失に著しい影響を及ぼすとは考えられない。し かし、中等度(Child-Pugh分類B)の肝機能障害と中等度又は重度(クレアチニンクリ

アランス<50 mL/min)の腎機能障害を合併する患者ではレテルモビルの安全性を評価し

ておらず、レテルモビルの血中濃度が増加するおそれがあるため、治療上の有益性が危 険性を上回ると判断される場合にのみ投与することとした。

• レテルモビル注射剤の添加物として含有されているHPCD(シクロデキストリンの一種)

は、中等度又は重度の腎機能障害患者で蓄積するおそれがある。第Ⅲ相試験で検討した レテルモビル注射剤の曝露状況から、レテルモビルの対象集団では静脈内投与や投与期 間に対する特別な制限を設ける必要はない。全体として、HSCT患者におけるレテルモ ビルの注射剤の忍容性は良好であり、腎毒性を示唆するエビデンスは認められなかった。

001試験でのレテルモビルの静脈内投与の使用経験は限られており、レテルモビル注射剤 の投与を受ける中等度又は重度の腎機能障害者では、血清クレアチニン値を十分に観察 することとした。

ベネフィット/リスク比の全体的な評価

以上より、レテルモビルのベネフィット/リスク比は極めて良好である。移植後24週までの臨 床的に意味のある CMV 感染の予防において、レテルモビルは高い効果を示し、プラセボと比較 した相対リスクは約40%減少した(NNTは5人)。患者の背景因子、CMV感染のリスク因子、併用 免疫抑制レジメン及びHSCT移植前処置前レジメンなどの様々な部分集団において、一貫した有 効性が実証された。移植後最長14週間のレテルモビルの予防投与により、死亡の相対リスクは移 植後24週までに大きく減少し、移植後48週まで持続した(相対リスクが約18%減少)。レテルモビ ルの忍容性は概して良好であり、安全性プロファイルはプラセボと類似していた。

なお、認められた(重要な)リスクについては、リスクを最小化できるように添付文書案で注 意喚起することとした。

レテルモビルは、HSCT患者におけるCMV感染及び感染症を安全に予防でき、既存の薬剤では 解決できなかったアンメットメディカルニーズを満たす薬剤である。第Ⅲ相試験(001試験)にお

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