2.5 臨床に関する概括評価
2.5.3 臨床薬理に関する概括評価
2.5.3.2 ヒトにおける薬物動態
第Ⅰ相試験の健康被験者280例[資料5.3.3.5.2: PPKPH1]及び第Ⅲ相試験(001試験)の患者350例
2.5 臨床に関する概括評価 - 37 -
を含む399例[資料5.3.3.5.3: PPKPH3]を対象とした2つのPPK解析により、経口及び静脈内投与後の レテルモビルの薬物動態を評価した[2.7.2.2.6.2 項]。第Ⅰ、Ⅱ及びⅢ相試験の用量範囲及び投与時 期を[2.5.1.6 項]に記載した。
日本人健康成人被験者については、レテルモビル240~720 mgの単回経口投与、480 mgの1日1 回反復経口投与及び240~960 mg の単回静脈内投与した際の薬物動態を評価した。また、非日本 人健康被験者については、レテルモビル5~480 mgの単回経口投与、1日用量40~1440 mg(720 mg 1日2回投与)の反復経口投与、30~960 mgの単回静脈内投与及び120~480 mgの反復静脈内投与 した際の薬物動態を評価した。日本人を含めた健康成人被験者のデータを用いた PPK 解析から、
レテルモビルの絶対的バイオアベイラビリティは94%と推定された。レテルモビルの曝露量は経 口及び静脈内投与後のいずれも、用量の増加に対し用量比を上回って増加した。ノンコンパート メントモデル解析の結果から、日本人健康被験者にレテルモビル240 mg又は480 mgを単回及び反 復経口投与した際、最高濃度到達時間(Tmax)(中央値)は2.25~3.00時間であった。Tmaxに到達後、
レテルモビルの血漿中濃度は二相性の消失を示した。レテルモビル480 mgを1日1回反復経口投与 後の定常状態の AUC 及び最高濃度(Cmax)の幾何平均は、それぞれ137,000 ng·hr/mL 及び 20,800 ng/mLであった。非日本人健康被験者にレテルモビル240 mg又は480 mgを単回及び反復経 口投与した際、レテルモビルは速やかに吸収され、1.50~2.05時間で Tmax(中央値)に到達した。
Tmaxに到達後、レテルモビルの血漿中濃度は二相性の消失を示した。レテルモビル480 mg1日1回 反復経口投与後の定常状態の AUC 及びCmaxの幾何平均は、それぞれ71,500 ng·hr/mL 及び13,000
ng/mL であった。経口投与後のレテルモビルの血漿中濃度-時間プロファイルは、日本人健康被
験者及び非日本人健康被験者のいずれも、静脈内投与後と同程度であり、経口又は静脈内投与後 のレテルモビルの体内動態に差がないことが示唆された。レテルモビルの蓄積はわずかであり、
AUC及びCmaxの累積係数は最大でそれぞれ1.22及び1.03であった。PPK解析の結果から、レテル
モビル480 mg反復静脈内投与後の定常状態の終末相半減期(t1/2)は約12時間であった。レテルモ
ビルのクリアランス(CL)は時間依存性を示し、9~10日で定常状態に到達した[2.7.2.1.1 項]。 患者における薬物動態は、レテルモビル480 mg を1日1回経口又は静脈内投与した第Ⅲ相試験
(001試験)に基づいて評価した。第Ⅰ相薬物相互作用試験の結果より[2.7.2.2.3.4 項]、シクロス ポリン併用時には経口又は静脈内投与いずれも、レテルモビルの用量を240 mgに減量した。レテ ルモビルの吸収速度及び吸収量は、健康被験者と比較して患者で低く、患者にレテルモビルを1 日1回経口投与した際、定常状態における曝露量(ベイズ推定値)は、健康被験者と比較して約50%
減少した。また、健康被験者で認められたレテルモビルとシクロスポリンとの薬物間相互作用は、
患者でも認められ、患者にレテルモビル480 mgを単独経口投与した際の曝露量(AUCの中央値:
約34,400 ng·hr/mL、投与量で補正したAUCの中央値:72 ng·hr/mL)と比較して、シクロスポリン と併用時にレテルモビル240 mgを経口投与した際の曝露量(AUCの中央値:約60,800 ng·hr/mL、 投与量で補正したAUCの中央値:253 ng·hr/mL)は増加した[表 2.5-2]。この曝露量の増加と関連 性を示した安全性評価項目はなかった。なお、このシクロスポリンとの相互作用は、静脈内投与 した場合では、経口投与で観察された影響より小さかった。レテルモビル480 mg単独静脈内投与 の曝露量(AUCの中央値:約100,000 ng·hr/mL、投与量で補正したAUCの中央値:208 ng·hr/mL)
2.5 臨床に関する概括評価 - 38 -
と比較して、シクロスポリンとレテルモビル240 mg 静脈内投与を併用した曝露量(AUC の中央 値:約70,300 ng·hr/mL、投与量で補正したAUCの中央値:293 ng·hr/mL)は、経口投与時に認め られたシクロスポリンの相互作用に基づく曝露量の増加よりは緩やかであった。
レテルモビル480 mg静脈内投与後の曝露量は患者と健康被験者で類似していた。患者にレテル
モビル480 mgを経口投与した際の絶対的バイオアベイラビリティは35%と推定された。シクロス
ポリンとレテルモビル240 mgの併用経口投与時は、バイオアベイラビリティが高くなり、85%で あった。レテルモビルの定常状態のCL及び分布容積の母集団平均は、それぞれ4.84 L/hr及び45.5 L と推定された。患者の経口投与時の曝露量が健康被験者と比較して減少した理由として、患者に おいて抗がん剤の一般的な副作用として報告されている胃腸粘膜障害に起因すると考えられる [2.7.2.3.1.1.2 項]。
表 2.5-2 患者におけるAUCの概要 投与方法 AUCの中央値†
(ng·hr/mL) 90%予測区間
480 mg 経口投与、シクロスポリン非併用 34,400 (16,900-73,700)
480 mg 静脈内投与、シクロスポリン非併用 100,000 (65,300-148,000)
240 mg 経口投与、シクロスポリン併用 60,800 (28,700-122,000)
240 mg 静脈内投与、シクロスポリン併用 70,300 (46,200-106,000)
全体のAUCの中央値(90%予測区間)は49,200 (26,900 – 87,400) ng·hr/mLであった。
† 値は有効数字3桁に四捨五入した
第Ⅰ相試験の結果に基づいて、日本人健康被験者(027試験及び032試験)の平均曝露量を、用 量及び投与経路が同一の非日本人健康被験者(005、011、014、018、021、022及び026試験)の平 均曝露量と比較したところ、日本人は非日本人より約1.5~2.5倍高かった。また、第Ⅰ相試験12 試験のデータを併合したより大きな集団でのPPK解析にて人種(白人又はアジア人)の影響を検 討した結果、アジア人(日本人30例及び日本人以外のアジア人3例の合計33例)のAUCのベイズ 推定値は白人(247例)より33.2%高かった。アジア人で曝露量が増加した主な理由として、アジ ア人[中央値(範囲):56.6 (45.1 – 84.5) kg]と非アジア人[中央値(範囲):67.1 (45.6 – 99.4) kg] の体重の相違が考えられ、体重の影響を調整して比較したところ、曝露量の相違はより小さくな った。
患者における日本人と非日本人の比較は、第Ⅲ相試験(350例、うち日本人は23例)のデータを 用いたPPK解析に基づいて実施した。各患者の薬物動態パラメータのベイズ推定に基づき、日本 人患者と非日本人患者の曝露量を比較した。その結果日本人患者の曝露量の分布は、非日本人患 者の分布と重なっていた[図 2.7.2-4] [表 2.7.2-6]。
OATP1B1及びUGT1A1の遺伝子変異は、アジア人と白人の薬物動態の違いに寄与することが報
2.5 臨床に関する概括評価 - 39 -
告されている[資料5.4: 8] [資料5.4: 9] [資料5.4: 10]。レテルモビルは、OATP1B1及びUGT1A1の両 方の基質であるため、レテルモビルの薬物動態におけるこれらの潜在的な影響について、上記の PPK 解析、PBPK モデルに基づく解析及び線形混合効果モデルを用いた薬理遺伝学的解析により 検討した。これらの解析結果から、OATP1B1及びUGT1A1の遺伝子多型は、レテルモビルの曝露 量に臨床的に意味のある影響を及ぼさないと考えられた。
これらの結果より、レテルモビルの曝露量は日本人と非日本人で明らかな違いがなかったこと から、薬物動態に顕著な差はなく、非日本人で得られた薬物動態データを日本人に外挿すること は可能であると考えた[2.7.2.3.1.1.3 項]。
In vitroにおけるレテルモビルのヒト血漿中蛋白結合率は高く(98.7%)、0.2~50 mg/Lの濃度範 囲で濃度依存性は認められなかった。主たる結合蛋白質は、血清中アルブミンであった。血球-
血漿比は0.56であった。
放射能標識したレテルモビルを経口投与した際、血漿中に存在するレテルモビルはほとんどが 未変化体(96.6%)であった[2.7.2.2.1.5 項]。血漿中に主要代謝物は検出されなかった。レテルモ ビルの全体的な代謝物プロファイルから、グルクロン酸抱合が主な代謝経路と考えられる [2.7.2.1.1.1.3 項]。酸化的代謝はin vivoでは主要な排泄経路ではなかった。放射能の大部分(93.3%) が糞中に排泄された。そのうちほとんどが未変化体(70.5%)であり、一部(6%)アシルグルク ロン酸抱合代謝物が含まれた。レテルモビルの尿中排泄量はわずかであった(用量の2%未満)
[2.7.2.1.1.1.4 項]。