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フェルミ気体

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第 9 章 場合の数と平均・ゆらぎ 74

14.5 フェルミ気体

状態密度を次の式によって導入する。

D(ε) =dN(ε)

(14.45)

ここでN(ε)εより低いエネルギーの準位の数であって

N(ε) = V2

(2m ℏ2

)3/2

ε3/2 (14.46)

である。従って、

D(ε) =3N(ε) 2ε = V

2 (2m

2 )3/2

ε1/2 (14.47)

である。この状態密度を用いると系の全電子数は

N =

0

dεD(ε)f(ε, τ, µ) (14.48)

電子の全運動エネルギーは

U =

0

dεεD(ε)f(ε, τ, µ) (14.49)

絶対零度で基底状態にある場合は、積分の上限がεFになって

N =

εF

0

dεD(ε) (14.50)

電子の全運動エネルギーは

U0=

εF

0

dεεD(ε) (14.51)

である。

この電子系を温度0からτまで熱したときの全運動エネルギーの増加は

∆U =

0

dεεD(ε)f(ε)

εF

0

dεεD(ε) (14.52)

Nが温度が変わっても変わらないことを使って

N =

0

dεf(ε)D(ε) =

εF

0

dεD(ε) (14.53)

なので (∫ εF

0

+

εF

)

dε εFf(ε)D(ε) =

εF

0

dε εFD(ε) (14.54)

と変形して∆Uを書き直してやると D(ε) =

εF

−εF)f(ε)D(ε) +

εF

0

F−ε) [1−f(ε)]D(ε) (14.55) 右辺第一項は温度上昇によってεFの電子をε > εFの準位へ移すエネルギー、第二項はε < εFの電子をεFの準 位へ移すエネルギーで、共に正である。

電子気体の熱容量は、

Cel =dU =

0

−εF)df

dτD(ε) (14.56)

である。ここからは近似でτ≪τFの低温での振る舞いを調べる。まず、低温ではdf /dτε∼εF近傍だけで大 きい関数なので、積分中のD(ε)D(εF)で代表する。次に、化学ポテンシャルの温度依存性を無視し、µεF

で置き換える。

df

=ε−εF

τ2

exp(εεF

τ

) [exp(εε

F

τ

)+ 1]2 (14.57)

である。x= (ε−εF)/τ とおいて

Cel=τ D(εF)

εF

dx x2 ex

(ex+ 1)2 (14.58)

低温なので積分の加減を−∞と近似すると定積分は計算できてπ2/3となる。結局 Cel= 1

3π2D(εF)τ= 1 2π2N τ

τF (14.59)

普通の単位系を用いると

Cel= 1

2π2N kB T

TF (14.60)

この結果は、電子気体の熱容量が低温で温度に比例することを示している。この結果はまた、金属における熱容 量の電子系からの寄与を与え、温度の3乗に比例する格子振動からの寄与と和を取ることで、金属の低温での熱 容量を与える。

15 半導体統計

15.1 後半のふりかえり

今回で、この講義は終了である。そこでまず、後半で学んだことを振り返ってみよう。

非常に沢山の粒子の運動は、与えられた体積や粒子数、全エネルギーの元で実現しうる確率の最も高い運動状 態で代表される。運動状態の実現しうる確率は、多重度gに比例するので、多重度の対数loggをエントロピーσ と定義すればエントロピーの最も高い運動状態が実現する、ということになる。二つの系を熱的に接触させると、

両者の間でエネルギーのやりとりが起き、二つの系を合わせた全体としてエントロピーが最も高い運動状態が実 現して、熱的平衡状態に変化する。この時、二つの系の温度τが一致する。さらに、二つの系の間で粒子のやり とりを許すと、拡散的接触となり、二つの系を合わせた全体としてエントロピーが最も高い運動状態が実現して、

拡散的平衡状態に変化する。この時、二つの系の化学ポテンシャルµが一致する。

温度τが与えられたときの運動状態sの出現確率は、ボルツマン因子exp(−εs/τ)で与えられる。ボルツマン因 子を可能な運動状態全てについて足し合わせたもの∑

sexp(−εs)が、分配関数Zである。自由エネルギーFF =−τlogZから求めることが出来る。すると、U =−τ2[∂(F/τ)/∂τ]から系の全エネルギーUが、σ= (U−F)/τ より系のエントロピーσが、µ=∂F/∂Nより化学ポテンシャルµが求まる。

温度τと化学ポテンシャルµが与えられたときの運動状態sの出現確率は、ギブス因子exp[(N µ−εs)/τ]で与えら れる。ギブス因子を可能な運動状態全てと可能な全ての粒子数について足し合わせたもの∑

N

s(N)exp[(µ−εs)/τ] がギブス和Ξである。ギブス和が求まれば、⟨N⟩=τ(∂log Ξ/∂µ)から粒子数の平均値⟨N⟩が求まる。

フェルミ粒子とボーズ粒子について、それぞれ温度τと化学ポテンシャルµが与えられたときのエネルギーε の運動状態にある粒子数の平均値を求めると、フェルミ粒子についてはf = 1/{exp[(ε−µ)/τ] + 1}というフェル ミ-ディラック分布に、ボーズ粒子についてはf = 1/{exp[(ε−µ)/τ]1}というボーズ-アインシュタイン分布に なる。分母の正負の符号が異なるだけであるがその違いは甚大で、フェルミ-ディラック分布では必ず0< f <1 で、τ= 0ではε=µを境にそれより高いエネルギーではf = 0、低いエネルギーではf = 1であるが、ボーズ-ア インシュタイン分布ではε→µf → ∞であり、τ = 0ではε=µのみでf =、それより高いエネルギーで はf = 0である。温度τが十分に高ければ、全ての準位についてf 1となり、フェルミ粒子でもボーズ粒子で も同じマックスウェル-ボルツマン分布f = exp[(µ−ε)/τ]となる。

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