3.2 通学児童を対象とした犯罪・不審行為に対する物理的環境要因の影響分析
3.3.4 パラメータの推定とモデルの適用結果および考察
60
61
図-3.3.9のような交通量ごとの犯行企図者の行動開始時に視認距離L内に歩行者・自転車お よび自動二輪車・自動車が侵入しない確率が求められる.図-3.3.9は,同じ交通量でも速度 によって動的監視性が異なり,歩行者・自転車の方が自動二輪車・自動車より監視性が高 いことを表している.
推定の結果,α = 0.99 ,β1 = 1.65,β2 = 0.44,β3 = 0.98,γ1 = -1.62,γ2 = 0.59,γ3 = 0.31,tmin
= 11(min),tmax = 14(min)のとき観測値と理論値の誤差が最少となった.モデルの適用結果を
図-3.3.10に示す.さらに,求められた観測値と理論値の適合度について統計的検定を行っ たところ,コルモゴロフ-スミルノフ検定(K-S検定)において有意水準20%で「理論値の 分布は観測値の分布に適合する」という結果が得られた.これより,モデルは実際の事象 を概ね表現していると言える.学校からの距離が501m~800mの地点では観測値と理論値に
図-3.3.8 計算のフロー図 START
END
通過児童数,5分間交通量,
沿道施設の存在割合の観測値の読込み
パラメータ・L,Vw,Vvの設定
P1iの算出 P2iの算出 P3iの算出
Piの算出
誤差=Σi=1{Pi (理論値) - Pi (観測値)} の算出
誤差=minimum?
パラメータ最適値,
Pi分布の出力 YES NO
62
比較的大きな誤差が生じているが,今回考慮した交通量や静的監視性に関するものとは別 の影響要因が存在することが考えられる.
パラメータ推定より,tmin = 11,tmax = 14(分)となったことから,犯行企図者にとって,
児童の通過時間間隔が11分から14分の間の場合,ターゲットが孤立しているとみなし行動 を起こそうとするという結果となった.静的監視性に関する沿道施設については,要因間 でパラメータβk とγk の値が異なることより,要因によって監視性への影響度は異なること,
γ1の値が負となった店舗は犯行を抑止する要因であり,逆にγ2,γ3の値が正となった駐車場・
空き地,塀・壁・街路樹は犯行を誘発する要因であることが言える.図-3.3.11にパラメー タ推定の結果を考慮した沿道施設の監視性に対する影響度を示す.これより,店舗はエリ ア内に多く存在するほど監視性を高め,逆に駐車場・空き地と,塀・壁・街路樹は多く存 在するほど監視性を低下させると言える.また,対象校区の観測値から得られた静的監視 性に関する要因の存在割合の平均値と,推定したパラメータを用いて算出した各要因の影 響指標γk φijk βkとそれらの合計である静的監視性に関する指標P3ijを図-3.3.12,図-3.3.13 に示す.これより,各要因の存在割合については,学校から離れるにつれて小さくなる傾 向にあることと,駐車場・空き地と塀・壁・街路樹に比べて店舗の存在割合が低いことが わかる.このため,各要因の存在割合にパラメータを考慮した図-3.3.13の指標についても その傾向を反映しているが,静的監視性に関する指標Pi3は駐車場・空き地の影響が他に比 べて明らかに大きく,P3iの値をほぼ決定づけているのに対して,店舗,塀・壁・街路樹の 影響はかなり小さいと言える.影響の小さい要因については今後モデルに組み込むかどう かの検討が必要である.
図-3.3.9 交通量および交通手段による動的監視性の指標
63
図-3.3.10 モデルの適用結果
図-3.3.11 物理的要因の静的監視性への影響度
64
図-3.3.12 対象校区内の静的監視性に関する物理的環境要因の存在割合
図-3.3.13 対象校区内の静的監視性に関する指標
65