既に述べたように、本章では
EU
経済圏における最適立地を検討し、さらに最適階層構造SCM
ネットワークを提案する。EU
圏最適立地を前項で検討したが、本項では物流設備、モー ド別取扱貨物量などを配慮することにより、その最適SCM
ハブネットワークの検討を行う。(1) EU
経済圏モード別物量の実態EU
圏最適立地の港湾取扱量を国別で見ると、1
位ドイツ、2
位スペイン、3
位フランス、4
位イギリス、5
位イタリア、6
位ルーマニアとなっている(
表5-12)
。一方、世界の貿易港 別に取扱量を見るとTEU
ベース(
表2-2)
では、11
位ロッテルダム(
オランダ)
、15
位ハン ブルグ(
ドイツ)
、16
位アントワープ(
ベルギー)
、30
位バレンシア(
スペイン)
である。ま た、貨物量ベース(
表2-1)
では6
位ロッテルダム(
オランダ)
、18
位アントワープ(
ベルギ ー)
、25
位ハンブルグ(
ドイツ)
であり、オランダ、ベルギー、ドイツ、そしてスペインが代ロンドン、イギリス Note
星マーク:最適立地回数
:最適立地1ヶ所
:最適立地2ヶ所
:最適立地3ヶ所
:最適立地4ヶ所
:最適立地5ヶ所
ブカレスト、
ルーマニア ベルリン、ドイツ
ルクセンブルク、
ルクセンブルク
マドリード、スペイン ローマ、イタリア パリ、フランス
プラハ、チェコ
最適立地:ルクセンブ ルク、ルクセンブルク
1ヶ所目の最適立地
プラハ:チェコ1ヶ所目の最適立地
パリ:フランス
2
ヶ所目の最適立地ベルリン:ドイツ
3ヶ所目の最適立地
ローマ:イタリア1ヶ所目の最適立地
ベルリン:ドイツ
2ヶ所目の最適立地
ローマ:イタリア5ヶ所目の適立地
ロンドン:イギリス3ヶ所目の最適立地
マドリード:スペイン1
ヶ所目の最適立地 ベルリン:ドイツ2
ヶ所目の最適立地 ローマ:イタリア3
ヶ所目の最適立地ブカレスト:ルーマニア
2ヶ所目の適立地
パリ:フランス
4ヶ所目の最適立地
マドリード:スペイン4ヶ所目の適立地
ロンドン:イギリス 最適立地
1
ヶ所:最適立地
2
ヶ所:最適立地
3 ヶ所:
最適立地
4
ヶ所:最適立地
5
ヶ所:105
表的な港湾の所在地であることが分かる。ちなみに、アントワープ港は北海からスケルト川
を
65 km
上流に位置している港湾で、ハンブルグ港が北海からエルベ川を100 km
上った地点にあるのと似ている。
上記の分析した結果により、北海側ではロッテルダム、ハンブルグ、アントワープが代表 港であり、地中海側ではバレンシアが代表港で、さらにフオシュウルメール、マルセイユ
(51
位)
、ジェノバ(84
位)
、ベニス、コンスタンツァ(Constantza; 75
位)
などである[13]
。尚、コンスタンツァはルーマニア南東部の都市で黒海西岸に位置し、同国最大の港湾を擁して いる。古代ローマ皇帝コンスタンティヌス
(Constantinus)
の治下、ジェノバ人が移住してコ ンスタンティアナと呼称し、以降、オスマン帝国時代まで港湾都市として栄えた。従って、
EU
経済圏における港湾ベースで考えると、世界上位30
港湾(2013)
に入るEU
圏の港湾は4
港湾であり、北海が3
港湾、地中海が1
港湾となっている。EU
圏におけるハ ブをグローバルな視点から考えると、ハブの第一条件としては港湾施設が考えられること から港湾規模の検証は重要な要素となる。(2) EU
圏最適立地の考察EU
をグローバルSCM
ネットワークの一環として考える場合、輸送量の80%
を占める他 大陸からの海上輸送を配慮しなければならない。既に述べたように、北海と地中海が重要な表
5-12 EU
経済圏(UK
を含む)
モード別物量世界順位表
出典:
1. AAPA,
“2013 World Port Ranking
”, http://www.aapa-ports.org
2. ACI, “ACI Releases 2013 World Airport Traffic Report”, http://www.aci.aero
3. European Commission Eurostat, “Your Key to European Statistics, Transport Main Table by mode (2011-2013)”, http://ec.europa.eu
4. Organisation for Economic Co-operation and Development (OECD; iLibrary) “2011 Road freight transport”, ITF Transport Outlook 2015, available at: http://www.oecd-ilibrary.org
5. United Nations, “2014 World Population Prospects: The 2015 Revision”
(1) - : Missing value. (3)
鉄道とトラック順位は全国の統計(2)
港湾及び航空順位はその国の一番小さい順位。から付けられた順位。
ΣPK
取 扱 量 取 扱 量 取 扱 量 ト ン キ ロ
(千 ト ン) (ト ン) (100万t・Km) (100万t・Km)
1ヶ所
ルクセンブルク/ルクセンブルク560,000 423,982,229,670.41 - - - - 218.0 49 8,838.0 43
2
ヶ所 チェコ/
プラハ10,510,000 184,894,572,779.21 - - - - 13,965.0 22 54,830.0 21
フランス/パリ
63,920,000 100,196,039,386.92 74,856.0 51 2,069,200.0 9 32,010.0 14 177,993.0 14
3
ヶ所 フランス/
パリ63,920,000 100,196,039,386.92 74,856.0 51 2,069,200.0 9 32,010.0 14 177,993.0 14
ドイツ
/
ベルリン81,100,000 58,450,495,711.43 139,050.0 25 2,094,453.0 8 112,613.0 10 323,848.0 6
イタリア
/
ローマ59,960,000 45,986,548,948.44 56,586.0 72 - - 19,037.0 20 142,843.0 17
4
ヶ所 ドイツ/
ベルリン81,100,000 58,450,495,711.43 139,050.0 25 2,094,453.0 8 112,613.0 10 323,848.0 6
イタリア
/
ローマ59,960,000 45,986,548,948.44 56,586.0 72 - - 19,037.0 20 142,843.0 17
スペイン
/
マドリード46,460,000 5,230,526,764.93 85,622.0 48 367,044.0 - 9,338.0 30 206,840.0 11
イギリス/ロンドン64,510,000 34,045,361,227.30 62,615.0 62 1,515,056.0 17 22,401.0 15 154,370.0 16
5
ヶ所 ドイツ/
ベルリン81,100,000 51,644,065,716.65 139,050.0 25 2,094,453.0 8 112,613.0 10 323,848.0 6
イタリア/ローマ
59,960,000 3,495,779,189.69 56,586.0 72 - - 19,037.0 20 142,843.0 17
ルーマニア/
ブカレスト19,930,000 17,727,297,643.38 55,138.0 75 - - 12,941.0 24 26,347.0 29
スペイン/
マドリード46,460,000 5,230,526,764.93 85,622.0 48 367,044.0 - 9,338.0 30 206,840.0 11
イギリス
/
ロンドン64,510,000 34,045,361,227.30 62,615.0 62 1,515,056.0 17 22,401 15 154,370.0 16
立 地 数 立 地 国/都 市 人 口(人)
(人 口 ・ 距 離) 順 位 順 位 順 位 順 位
港 湾 (2013) 航 空 (2013) 鉄 道 (2013) ト ラ ッ ク(2011)
106
表
5-13 EU
経済圏(UK
を含む)
最適立地モード別順位及びハブ類型決定表
図
5-13 EU
経済圏(UK
を含む)
最適SCM
ハブネットワークシステム検討結果の鳥瞰図位置を占めることになる。本章ではモード別の取扱量
(
特に港湾モード)
をベースにしてEU
圏最適立地1
ヶ所から5
ヶ所までを評価し、ハブ類型であるグローバルハブ(
上層)
、エ リアハブ(
中層)
ナショナルハブ(
下層)
というSCM
階層構造を決定し提案するのを行った
(
表5-13) [13] [14] [16] [19] [30]
。表5-13
により、基本的にはフランス、ドイツ、イタリアをグローバルハブの最有力候補とし、エリアハブとしてはイギリス、スペイン、ルーマニアを選 定した。これによって、グローバルハブとエリアハブ、さらにそれぞれのハブネットワーク の傘下国を図
5-13
のようにしてEU
ハブネットワークシステムの体系を提案する。 *:
スペインの人口はカナリア諸島、セウタ、メリリャを含む。人 口 港 湾
(2013)
航 空(2013)
鉄 道(2013)
ト ラ ッ ク 順位1
ヶ所 ルクセンブルク/
ルクセンブルク- - 49 43 170
ナショナルハブ2
ヶ所 チェコ/
プラハ- - 22 21 85
ナショナルハブ フランス/
パリ51 9 14 14 22
グローバルハブ3
ヶ所 フランス/
パリ51 9 14 14 22
グローバルハブ ドイツ/
ベルリン25 8 10 6 16
グローバルハブ イタリア/
ローマ72 - 20 17 23
グローバルハブ4
ヶ所 ドイツ/
ベルリン25 8 10 6 16
グローバルハブ イタリア/
ローマ72 - 20 17 23
グローバルハブ スペイン/
マドリード48 - 30 11 29*
エリアハブ イギリス/
ロンドン62 17 15 16 21
エリアハブ5
ヶ所 ドイツ/
ベルリン25 8 10 6 16
グローバルハブイタリア
/
ローマ72 - 20 17 23
グローバルハブ ルーマニア/
ブカレスト75 - 24 29 58
エリアハブ スペイン/
マドリード48 - 30 11 29*
エリアハブ イギリス/
ロンドン62 17 15 16 21
エリアハブモ ー ド 別 順 位 評 価 立 地 国/首 都
立 地 数
最適立地:
パリ、フランス
最適立地:
ベルリン、ドイツ 最適立地:
ローマ、イタリア
最適立地:
マドリード、スペイン
最適立地:
ブカレスト、ルーマニア 適立地
ロンドン、イギリス
1 2 3 4 5
1 2 3 4 5
1 2 3 4 5
1 2 3 4 5
1 2 3 4 5
・オーストリ・チェコ
・スロバキア・エストニア
・ラトビア・リトアニア
・ポーランド・スウェーデン
・デンマーク・フィンランド
・ハンガリア・ドイツ
・ポルトガル
・スペイン
・アイルランド
・イギリス
・クロアチア
・マルタ
・スロベニア
・ギリシャ
・キプロス
・イタリア
・ベルギー
・オランダ
・ルクセンブルク
・フランス
黒海経由:
・ブルガリア
・ルーマニア グローバルハブ
エリアハブ
EU経済圏ハブネットワーク
1 2 3 4 5
(
注)
1.
赤枠:グローバルハブ2.
赤い点枠:エリアハブ3.
黒枠:そのハブのネットワーク傘下4.
:最適立地回数5. 1~5
:最適立地数に選択される最適立地107
EU
全体と細分化した南部と北部の最適立地の特徴は、細分化によって基本海上ルートが 二分されたことである。これにより、南部は地中海、北部は北海が基軸となる。南部は、ル ーマニアを除いて地中海沿岸諸国より構成されている。例えば、イタリアは地中海とアドリ ア海、バルカン半島諸国はアドリア海とエーゲ海に挟まれており、隣同士である。従って、最適立地についても
EU
全体とEU
南部とはフランス、イタリア、スペインがオーバーラッ プしているし、その所属国のバランスを維持している。これに反して、EU
全体とEU
北部 ではバランスが崩れ、北部ではドイツ、イギリス、スウェーデン、ポーランド、オーストリ アが選択され、港湾をはじめ各種輸送モード、人口、経済、地理的条件等からバランスが保 たれていない。短絡的になるが、スウェーデンとオーストリアにはインフラサイドからのハ ブ機能は困難であり、イギリスは立地と第二次輸送の視点からコンチネンタルハブとして 選択するのは難しい。ポーランドには港湾はあるが、ドイツの隣接国であり、ナショナルハ ブとしての機能が精一杯である。従って、結論的には
EU
経済圏については全体としての最適立地を優先的に検討し、さら に南部及び北部の最適立地整合性についてそれぞれ検証し、EU
全体と併せてハブ類型を決 定することにした。尚、今回の研究はEU
圏を南部と北部に区分する際の基本が歴史的並び に地形的な視点を基準とした。当初、地中海沿岸諸国であるスペイン、フランス、イタリア、ギリシャ、キプロス、マルタ、それにイベリア半島の反対側であるがポルトガルを入れて
EU
南部7
ヶ国にてシミュレーションを行った。そして、立地モデルは数値を主体とするが地理 的のみならず歴史的並びに文化風習的側面をも配慮する必要があり、当初の南部7
ヶ国に バルカン諸国(4
ヶ国)
を加えて南部11
ヶ国、北部17
ヶ国にてシミュレーションを再度行 った。さらに、EU
経済圏におけるSCM
ハブネットワークの構築という観点からは、北海、地中海を中心とした評価を考えるべきである。
EU
圏南部における最適ハブネットワークの検討と考察上記に説明したように、歴史的や地形的、文化的な視点を配慮することによって、
EU
経 済圏を南部圏と北部圏に区分することにした。特に、ハンガリー、チェコ、スロバキア、並 びに歴史的に為政者の繰り返しが行われたバルカン諸国の歴史的や文化的な視点を配慮す るべきである。ハンガリーは第一次世界大戦前まではオーストリー・ハンガリー帝国の支配 下にあり、1919
年のヴェルサイユ条約までは影響力を直接受けていた為、北部に帰属させ た。加えて、チェコとスロバキアも同帝国とドイツの支配下にあった為、北部に帰属させた。一方、バルカン半島諸国は
12
ヶ国であり、具体的にはアルバニア、ギリシャ、クロアチア、スロベニア、コソボ、セルビア、マケドニア、トルコ
(
一部)
、ブルガリア、ルーマニア、ボ スニア・ヘルツェゴビナ、及びモンテネグロである。このうちEU
加盟国は、クロアチア、スロベニア、ブルガリア、ルーマニアの