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第一節 ネーゲリーの
唱歌教授法の分析と一考察
第三章において、ネーゲリーの行なったペスタロッチー主義の唱歌 教授法の概要が一応明らかになった。続いてこの章ではまず、その 教授法がペスタロッチー一.の言う〈永遠の法則〉にどのような形で従っ ているのかを、極一部の例を取り上げることによって分析、考察し
てみたい。
1>リズムの原理論における三種類の音符の教授に関して、
教師はまず三種類の速さの打を示し、子供達はそれに合せて母音a を歌う。それを数回繰り返した後で彼は、今何種類の音を歌ったか を問う。それによって各々の音の長さの違いを子供達に確認させた 上で、それちの音の長さをゆっくり、中間、速いと名付けた。次に 三種類の音符を黒板に一種類ずつ書いて、各々の音の長さに適合す る記号とその名称があることを伝えた。〔即ち、ゆっくりの音符、
中間の速さの音符、速いおんぶ〕最後にこれら三つの音符を順番に 或いは順不同に書いて、子供達がそれちをスラスラと区別して正し く言い当てることが出来るまで練習させた。漠然と歌った三種類の 音をその長さにおいてはっきりと区別し、それぞれに特有な記号と
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名称があることを理解することによって、子供達は〈直観〉かち く明晰な概念〉に到ることが出来た。このことは教授の基礎は〈直 観〉からというく永遠の法剛〉に従っている。
2>メロディーの原理論におけるテトラコードの教授に関して、
教師は子供達と一緒に四つの音〔蒼,a,h,c〕をLaで歌った 後で、今幾つの音を歌ったか、それは上行音列だったか下行音列だっ たかを問う。〔この時点では既に学習済み〕再び一緒に数回それを 歌った後で、彼はその音列がテトラコードという命名を持つことを 伝えた。次にそれを黒板に書いて、高さの異なる音を適切に表示す るための方法があることを教えた。〔即ち、黒板や紙の上に二本の 横に長い線を引き、各々の音をこの線の真ん中又は上下に低い音か ち順に配置する方法を〕そして最後にこのテトラコードを種々の二 丁で〔四つの音のどの高さかちでも〕歌わせた。彼が常に最初の音 だけを前歌いすることによって。この過程においてもく直観〉から
く明晰な概念〉への道程が明ちかである。
これら何れの教授に関しても常にその最後において、今理解した ことを繰り返し練習することによって〈明晰な概念〉はより深めら れ、完全に子供達の自由な精神的所有物となりうるのであるが、こ のことは、一つのことを完成した後で次のことを学ぶべきであると
いうべスタロッチーの〈永遠の法則〉に合致する。
3>教授は最も単純な要素かち出発し、児童の発達に応じて
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心理学的な順序で行なわれる、というく永遠の法則〉に関して、ネ ーゲリーはすべての内容をこの法則に従わせたと言える。それはま ず、彼がこのメトードを「一般的な音指導」と「特別な音指導」に 大別し、前編でもってリズム、メロディー、ダイナミックに関する 初歩的な原理を取り扱った上でこれら三つを結合させて教授し、最 後にそれらを記述させるという極めて科学的な順序をとったことで ある。彼自身も記述コースの冒頭にこう述べている。「このコース は主要な段階であるだけでなく特別な方法で形作られる。まず第一一一 にリズム、メロディー、ダイナミックのコースを通して各方面に鼓 舞され、次に音の要素の方法的結合によって様々に広げられた音楽 的感覚は、ここで今や評価すべき芸術感覚にまで高められ浄化され るべきである。即ち、その芸術的な主題をそれ自身、精神的、概念 的、感覚的な事柄として最も正確にありありと描き出すための能力 〈i)
は、ここでその完成を得るべきである」と。
4>いまひとつ五線譜に到る教授の過程を取り上げてみる。
教師はまず、テトラコードの四つの音を二本の線に記した例によっ て音の高さを線上と壁間に表示することを理解させ、子供達が四つ の音を完全に自身のものにした後で、今度は四本の線にもう一つの テトラコードを結合させて七つの音を表示し理解させた。七音の範 囲内での順次進行、第四音〔c〕を中心点とした三度、四度の跳躍 進行から中心点を決定しない五度、六度、七度の跳躍進行に進み、
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その後で六本線上に三つのテトラコ・・一ドを結合した。ここであちゆ る音を線と二間に、テトラコードの結合によって表すことが出来、
それは際限なく拡大することも可能である。そこで一般的には五本 の線が用いられ、それ以上の音は五線の上下に継ぎ足し線を置くこ とによって表され、それを五線譜表を命名した。この様に、最も単 純な音の高さを示すことかち出発してすべての音を表す段階へと順 を追って教授されている。この過程はペスタロッチー一の言う教授は 最も単純な要素かち云々、というく永遠の法則〉に従っている。
5>教授はあくまで児童の自己活動に訴えられるべきである、と いう法則については、唱歌の授業に関する限り全く異論の余地がな い。何故なら、授業において子供達自身が歌わないということは在
りえないことだから。
6>ネーゲリーは彼のメトードにおいて各コース毎に「清め」、
「修正」、「拡大」と題する付録を置いた。そこでは特に個人指導 に関することが取り扱われている。メロディーコ 一一.スにおける「拡 大」の一例を挙げる。一般に学校のクラス授業の組立てに際しては、
生徒の能力の中位の段階を仮定し、それ以外の特別な段階を仮定し ないので、ある子供はクラスにおいて特別な音の範囲〔極めて高い
又は低い〕を使う融を得ない.それ叉焼は唱歌輔の十を
〔やむを得なければ唱歌時間外に〕この子供達の才能の発見と訓練 に与えることが望ましい。一方逆の場合については、
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メロディーコースの前準備としての音声テストから一例を挙げる。
教師が前歌いかピアノの前弾きによってある子供に蒼を与え、彼が その音を返すことが出来ない時〔何度繰り返しても、または幾分音 を下げて要求しても〕彼は言う。 「君は私に音を取って返すこと が出来ない。そこで私は今、君に音を取って返しましょう。全く自 ( z ) 由に私に一つの音を歌いなさい。それが君に返って来るように」
教師は子供が歌った通りに音を返し、それを何度も子供と一緒に繰 り返す。それから彼は子供と一緒にメロディックに上昇する二番目 の音〔完全一度上昇〕を生み出し、同じくついに三番目の音をも生 み出すことを可能にする。これら二つの例は、教授は児童の個性を 尊重する限りにおいてのみ真実となりうる、というく永遠の法則〉
に従っている。
7>知識には能力が、認識には技能が結び付かなくてはならない、
という法則は唱歌の教授においては全くその通りである。
8>ネーゲリーは「教師の為の一般的基準」の項において、〈愛〉
を基調にした精神を処々に著している。その一つは「綿密な順序と 確実な規律は芸術それ自体の正確な学習と実践を本質的に容易にす るために、唱歌の授業には必須のことであるが、そのことが勿論、
子供達の気持ちを暗くしたり快活さを失わせるものであってはなち
(き)
ない」であり、他の一つは「子供達が真直に進まない時、その課題 を即座に言葉でもって説明してしまうか、あるいは完全に全部を
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教師が前歌いしてしまう、といった最悪な不快な訓練が行なわれる ことがある。その場合彼はこういつた方法を取らないでまず、子供 達が進まない課題の各々を繰り返し試みるよう努力すべきである。
それでも到達しない時、その課題を分析し部分的に取り上げて訓練 (4)
する。そして最後の手段として彼は前歌いすべきである」というこ とである。こういつた彼の子供達への注意の払い方は、教師は凡て の彼の行動において〈愛〉を基調とすべきである、というく永遠の 法則〉に従っていると思われる。
第三章において述べた通り、記述に際してネーゲリーはまず子供 達に各々石盤を持たせた。このこともペスタロッチーの方法の他教 科における場合と同様である。又子供達の学習に際してペスタロッ チーは、他より秀でた子供を常に選び出し残りの子供達の指導に当 たらせた。但し選び出された子供は常に他の子供達よりも一歩先へ 進んでいるように教えちれていたのだが。
9>ネーゲリーも多声歌唱の実施に当たって子供達の中から合唱 指導者を選び出した。出来れば数人、出来なくても最低一人の合唱 指導者と一緒に、彼は授業外に前もって新しい曲を習得する。そし て常にそれを授業の中に取り入れる。この合唱指導者の為の下準備 は教師に余分な時間を消費させるのだが、敢えて彼は選ばれた巧み な子供達に対して常に一歩だけ進んだ前教育を行なった。彼は彼等 を黒板の前のピアノの高音域側に、一歩前に出た形で位置づけた。
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