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名古屋大学医学部附属病院医療情報部本 太 田 圭 洋 山 内 一 信

I  はじめに

1998年 11月から全国の8国立病院, 2社会保 険病院の計10病院で急性期医療の定額払い方式 の試行が行われており,これら 10病院では厚生 省の作成した診断群分類(現在183診断群)を利 用して,実際の医療内容や入院日数にかかわらず 事前に決められた定額の診療報酬が支払われてい

O

試行で利用されている診断群分類は,約150人 の医師からなる診断群分類案作成調室研究会が3 万症例ほどのデータを収集・分析し作成したもの であるが,米国の DRGが作成された際には1,400 万症例が統計的に解析されていることと比較する と,分析されたデータ数は十分とは言いがたい。

そのため,現在の試行を通して収集されたデータ をもとに,今後の定額払い方式を検討していくこ とになっている。

また平成11年1月13clに出された医療保険福 祉審議会制度企画部会・診療報酬体系見直し作業 委員会の報告書では,急性期医療の診断群別定額 払い方式に関して,大学病院や機能の異なる民間 病院等の参加など試行病院数を拡大し, I症例数 をできるだけ多く収集して対象疾患の拡大と診断 群分類の見直しを進めることが不口I欠と考えられ る」と,今後のデータ収集を通しての診断群分類 を改良していく必要性に吉及している。

診断群分類の向上には,様々な病院からのデ

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タの収集・分析が必要である。今回我々は,大学 前z院での糖尿病入院患者のデ タをもとに,厚生 省の診断群別分類の妥当性および診療内容に影響 を与えると思われる他の要因を用いた分類法の妥 当性に関する評価を行ったので報告する。

11.厚生省の診断群分類(糖尿病)

厚生省が現在用いている診断群分類では,糖尿 病患者は3診断群に分けられることになっている (図1)。主疾病名が糖尿病となった患者は,まず 最初に,入院中にインシュリン注射が行われたか どうかで大きく分けられ,その後インシュリン注 射が行われた症例は,厚生省が別に定めた合併症 (表1)を有するかどうかで再度区別される。ただ い糖尿病患者でも検査入院,治験患者, 15歳未

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平均入院日数 19  20日 包括点数 43.424

26.31 238U 58.876点 60.963点 図1 厚生省診断群分類(糖尿病)

日本病院全雑誌 19994 95(559) 

1 1005に用いられる合併症

称 'ICD9  l

‑四肢の単神経炎

上肢白単神経炎又は多 354 ・手根管症候群

l発神経炎 ・尺骨神経障害

│・カウザルギー

‑大腿神経障害

‑足根管症候群 性 357  ・群ギラン・パレ 症候

‑糖尿病性多発ニュウ 口,{シー

.神経筋障害 358  ‑重症筋無力痕 .ネフローゼ症候群 581 

‑慢性糸球体腎炎 582 

‑腎炎}くは腎痕(急性 583  又は慢性と明示され ないもの)

満の患者等厚生省が別に定めた患者は,この診断 群分類からは除外することになっている。

この分類により,糖尿病の症例は1004から 1006の3診断群に分類され,各々の診断群の症例 には図 1に示された点数が定額の診療報酬として 支払われることになる。ただし,この点数には,

手数料・高額な処置料(1,000点以上)等のドク ターフィ と考えられる費目は含まれておらず,

これらの費日は別に以前と同様に出来高払いで支

fムわれることとなっている。

E 方 法

はじめに,診療録管理室の退院患者デ タベ スから平成 10年4月から 11月までの入院患者の うち主候f丙名が糖尿病(ICD9コ ド250)の患 者を抽出し,抽出された97症例の入院診療録に ついて診療情報管理士の行ったコーディングの再 点検を行った。調斉対象を4月以降の入院患者に 限定したのは.

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月に実施された診療報酬改定の 影響を排除するためである。

コ ディングの再点検を行った結果,退院患者 データベースに主疾病・糖尿病として入力されて いた97症例のうち 12症例のコーディングが不適 当と考えられた。内訳としては心臓カテ←テノレ検 査 (CAG)目的の入院,心不全,肺炎,シャント

作成目的の入院等が,糖尿病を主疾病名として入 力されており,これら 12症例は分析から除外し た。また,他科・他院へ転科転棟した症例が

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例,検査入院が2例,診療報酬データが入手不能 であった症例が1例 存 在 し こ れ ら の9症例も今 回の分析からは除外した。その結果残りの 76症 例を分析にあてた。

診療録の点検を通してコーディングが妥当と思 われた症例について,厚生省の診断群への分類に 必要なデ タとともに,インシュサン治療導入の 有無,年齢,入院時, HbAIC等の診療内容に影響 を与えると思われるデータを抽出した。

同時に,医事科コンビューターより厚生省の定 額払いで包括部分とされている費目の合計(包括 払い部分点数)を抽出した。

以上のデータをもとに,厚生省の診断群分類別 に入院日数・診療報酬包括払い部分点数の幾何平 均および変動係数を算出

L

,厚生省デ タとの比 較を行った。変動係数とはサンプノレの標準偏差ーを 平均値で除した値でデータの類似性をはかる尺度 として利用され,一般に 1以下のばらつきは許容 されるといわれている。また診断群問に差が存在 するかどうかに関しては一元配置分散分析により 評価した。

さらに,診療報酬に影響を与えると思われる他 の要因(インシュリン治療導入の有無,年齢,

HbAIC値)を用いた分類に関して,入院日数・診 療報酬包指払い部分点数それぞれの変動係数,平 均値聞の差の検定により分類の妥当性の評価を

f了っfこ。 W 結 果

A 厚生雀の診断群を用いての分類

表2に当院の症例を厚ヰミ省の診断群に分類した 場合の,入院臼数および診療報酬包括払い部分点 数の幾何平均および変動係数を示す。厚生省の分 類では長期(特定入院期間を超えた)入院患者に は,定額払いに加え追加の支払いが認められてい るため,本分析では特定入院期聞を超えた4症例 は除外した。

1004 (糖尿病・インシュリン注射あり・合併症 なL),1005 (糖尿病・インシュリン注射あり・合 併症有り), 1006 (糖尿病・インシュリン注射無 96(560)  H本病院会雑誌 19994

2 厚生省診断群分類の妥当性評価 名占屋大学データ 厚生省デタ 1004 ()I包括(点部)分Iサンプル 入院〔日日〉数I定額(点払数い〕額 輯何平均 26.11  51.792  30  26.31  58.876  霊動係数 0.44  0.45 

l5入院(日回)数I包括(点部)分I数サンプル 入院(日回)数I定額偵払滋い〕額 幾何平均 35.07  71558  10  26.38  60.963  変動保数 0.35  0.37 

1006 ()I包括(点部)分I数サンプル 入院(日日)数I定額L者払数い)額 韓何平均 22.87  46,968  32  19.21  43.424  変動係数 0.35  0.33 

3 インシュりン導入の有無による分類の妥当性評価

I

インシュリン導入 l()数 ()部分 サンプル数

幾何平均 27.13  53.95C  11  変動係数 0.78  0.64 

lそれ以外 入院(日円)数 包括(点部)分 サンプル数 幾何平均 26.99  54.114  65  変動係数 0.43  0.42 

し〕とも変動係数は0.5未満であり,分類された データのばらつきは許容されるレベルにあるとの 結 果 に な っ た 。 ま た 分 散 分 析 で は3群 聞 に5%水 準の有意差が認められ,セッフェ法による下位検 定 で も1005と1006の 聞 に5%水 準 の 有 意 差 が み られた。従ってインシュリン注射の有無による分 類は妥当なものであると思われた。

しかし,当院の入院日数および診療報酬包括払 い 部 分 の 点 数 を 厚 生 省 の デ タと比較すると,

1004では入院日数はほぼ同じであったが,診療報 酬点数では若干当院の点数の方が低かった。それ に対しlω5.1006とも, 厚 生 省 の デ ー タ と 比 べ 当院では入院日数が長く,診療報酬点数も高いと いう結果となった。仮に,現在厚生省が行ってい る定額払いの試行を当院に導入した場合.1004の 症 例 で は1入 院 あ た り 約7.000点 収 入 が 増 加 す る のに対し, 1005で は 約10.000点, 1006で は 約 3,500点収入が減少する結巣となった。

B 他 の 分 類 法 に 対 す る 妥 当 性 の 評 価 1)  インシュリン治療導入の有無による分類

糖尿病患者の入院でインシュリン治療を導入す

る場合,血糖のコントロールとインシュリン自己 注射に関する教育のため,通常の教育入院よりも 入院期間が長くなる可能性がある。したがって,

インシュリン治療導入の有無で分類l, 変 動 係 数 および平均値聞の差の検定を行った。結果を表3

に示す。

両群とも変動係数は1以下であり,群内のばら つ き は 許 容 範 囲 に あ っ た 。 し か し な が ら , イ ン シ ュ リ ン 治 療 導 入 入 院 の 平 均 入 院 日 数 は27.1

3

日, それ以外の入院が26.99Bと入院日数には有 意差は認められず,診療報酬包括払い部分の点数 にも両群の聞には有意差は認められなかった。し たがってインシュリン治療導入の有無により診断 群を分類することは不適当と考えられた。

2)  年齢による分類

一般に高齢になるほど入院期間が延びる傾向に ある。したがって60歳 以 上 と 未 満 の2群 に 分 類 した場合の妥当性を変動係数および平均値閣の差 の検定により評価した。

ま た ア メ リ カ の メ デ ィ ケ ア で 用 い ら れ て い る

HCFA (米国医療対政庁)の診断群分類では,糖 尿病入院は年齢により 36歳 以 上 と 未 満 の2群 に 分類されている。そのためHCFA‑DRGにならい 36歳 で 分 類Lた 場 合 に 関Lて も 同 様 に そ の 妥 当 4 年齢 (36歳)による分類の妥当性評価

36歳以上 入院(日日)数 包括L出部j分 サンプル数 幾何平均 24.70  50.294 

サンプレ7数~

変動係数 0.39  0.39  36歳未満 入院(日日)数 包括()占部j

i

幾何平均 25.68  48.168  4 

│変動係数 0.30 

0.25 

5 年齢 (60i歳)による分類の妥当性評価

60歳以上 入院〔日日)数 包括(府部J分 サンプル数 )幾何平均 27.64  56.970  36 

変動係数 0.55  0.52 

60歳未満 入院(日日)数 包括(月部J分 サンプル数 直 両 五 均 27.01  52.539  40 

変動係数 0.38 

日本病院会雑誌 19明 年4 97 (56!) 

表B 入院時HbAIC値による分類の妥当性評価 HbAIC: 10以上 入院(日円)数包括(同部分サンプル数 幾何平均 2863 I 55969 I  26  変動係数 0.42 I  0,37 

HbAIC: 10未 満 入院〔日日)数包括(点部J分サンプル数l

!幾何平均 2658  53734  45 

i

変動係数

i  ̲ ̲  

O,56  0,52  性の評価を行った。結果を表4,5に示す。

60歳で分けた場合,変動係数は両群とも入院日 数,診療報酬点数とも1以下でありサンプノレのば らつきは許容範閲にあったが,両群の平均価値の 聞には有意差は認められなかった。

またHCFAの分類に従い 36歳 で 分 類 し た 場 合, 36歳未満の症例が4例しかなくサンプル数が 不足しているため評価が難しいが, 60歳での分類 と同様,入院日数・診療報酬包括払い部分の点数 とも平均値聞には有意差は見られなかった。

以上の結果から,年齢を用いて診断群を分類す ることは不適当と考えられた。

3)  HbAICの値による分類

HbAICは糖化ヘモグロビンの一種であり,そ の数値は患者の過去1カ月間の血糖の状況を見る 指標として日常的に利用されている。日常生活の 血糖コントロ ルの悪い患者ほど,入院中の血糖 コントロールおよび教育に時間がかかり入院日数 が長くなる可能性がある。入院時のHbA1Cの値 が10以上と未満で分類1.."変動係数および平均 値問の差の検定を行った。結果を表6に示す。

変動係数は両群とも入院日数J 診療報酬点数と も1以下でありサンプノレのばらつきは許零範囲に あった。またHbA1Cが

1 0

以上の群の方が,

1 0

未 満の群よりも平均入院日数が若干長く,診療報酬 が高かったが,両群の聞に統計的な有意差は認め

られなかった。

V 考 察

最近日本でも診断群分類に関する研究が行われ るようになってきた。川測は全国

1 7

病院から患 者データおよびコストデータを収集し, HCFA  DRG, AP‑DRGに分類することで,米国のDRG

を 日 本 に 導 入 す る こ と の 妥 当 性 の 評 価 を 行 っ た 九 ま た 高 木 ら は4病院を対象にHCFA‑DRG の分類を用いての原価調査を行い診断群により日 本で利用可能なものと,修正の余地のあるものが 存在することを示した九

しかし厚生省が定額払いの試行で導入した診断 群分類は,海外で利用されている診断群分類を修 正するという形をとらず日本独自で作り上げたた め,この分類をもとにしたデータの分析はほとん ど行われておらず,分類法そのものの妥当性は今 後評価されていくことになろう。

例えば,糖尿病患者の厚生省分類では,まずイ ンシュリン注射の有無により分けた後,インシュ リ ン 注 射 の あ る 症 例 を さ ら に 合 併 症 の 有 無 で 1004と

1 0 0 5

に分けることになっている。 しか

L

厚生省が公表しているデータでは,

1 0 0 4

1 0 0 5

の間で平均入院日数,包括払い点数ともほとんと 差がなく,合併症の有無により 2群にわける必要 性がはっきりしない。これは診断群分類が作成さ れた後のデータ分析の過程で,分類そのものの妥 当性が適切に評価がなされなかったからと恩われ る。

本分析において筆者は診療録を再点検し厚生省 が認める合併症が存在するか否かを判断Lたわけ であるが, この半JI断にはかなりの労力を要した。

もし手聞をかけて症例を診断群に分けたとして も,診断群間に統計的に差が存在しないならばそ の労力は無駄となる。

当院の糖尿病入院患者のデ タを用いた分析で は,厚生省の診断群分類の糖尿病部分は,変動係 数および分散分析からは分類そのものの妥当性は 認められるが,今後もサンプノレ数を増やしてのさ

らなる分析が必要であろう。

平成11年1月13日に出された医療保険福祉審 議会制度企両部会・診療報酬体系見直し作業委員 会の報告書,急性期医療の診断群別定額払い方式 に関して, I対象疾患の拡大と診断群分類の見直 しを進めることが不可欠」としている。これには 大規模なデータの分析が不可欠であり,そのため には閑立病院のみならず民間医療法人や大学病院 等さまざまな医療機関からのデータを収集する必 要がある。しかし現状では治療コ ドまで含めた ICDコーディングを行っている病院は非常に少

98 (562)  日本病院会雑誌 19994

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