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トルコ語とチャナッカレ方言の体系的な比較

第 7 章 チャナッカレ方言のテンス・アスペクト・モダリティ

7.4 トルコ語とチャナッカレ方言の体系的な比較

以上、共通語とチャナッカレ方言のテンス・アスペクト・モダリティ形式について記 述した。共通語と方言の TAM体系は共通する部分も多いが、それぞれ-IKと-mAk vā形 式に関して体系的に大きな相違点が見られる。まず、それぞれの表現と、テンス・アス ペクト・モダリティとして表す内容を以下の表で示す。

7-3 -IK-mAk vāが表すTAM内容

方言の接辞 テンス アスペクト モダリティ -IK 過去 結果・状態、

パーフェクト、

完成相

認識的モダリティ(推定)、確実性

証拠的モダリティ(エヴィデンシャリティ)

-mAk vā なし なし いわゆる推量を表す

認識的モダリティ(推測・推定・想定)

ミラティヴィティ

共通語は過去の意味を表す形式に関して-DI と-mIş の 2 項対立であるが、チャナッカ レ方言では-IKが関わるので 3項対立の体系が見られる。-IKは単独では過去時制マーカ ーと言いがたいが、出来事の完了を表す意味で過去を表し、その完了による結果状態は 結果相としての特徴を表示し、結果から現在の状況への影響を表すパーフェクトに展開 するというアスペクトの特徴を持つ。アスペクト・モダリティのマーカーとして用いら れる点では-mIş に似ていても、全く同じものではない。-mIş は伝聞や予想外の気持ちを 表し、また、物語を語る(Story telling)ときや、新情報(newly perceived information)で あることを示す場合に使われるが、これらは-IK によっては表されない。発話時以前に 完了した出来事の現在の結果状態を示すというアスペクト的な特徴が、パーフェクトに 展開している点では、 -IK は-mIş が持つパーフェクトの特徴と非常に似ているが、-IK はより結果に焦点を絞り、現在の状態は結果によるものであることを示す。さらにそこ から-IK の文法化が進み、過去に起こった出来事を目撃したかどうか、直接経験したか どうかの単純過去への展開が見られる。または明らかな知識を持つかという明確な痕跡 に基づいて話し手の確実な推定や判定を表示する。一方、-mIş は痕跡による推量・推定 を表すとき、確実性を表さない。この3項対立の過去形式を以下の表でまとめる。

7-4 方言の過去を表す表現

方言の接辞 テンス アスペクト モダリティ

-DI 単純過去 完成相

目撃

直接エヴィデンシャリティ

-mIş 過去 パーフェクト

非目撃、新情報、

伝聞、物語(Story telling エヴィデンシャリティ

ミラティヴィティ(予想外)

-IK 過去(完了の意味似寄 り単純過去への展開可 能)

結果相・状態 パーフェクト 完成相

目撃・非目撃両方可能 認識的モダリティ(推定)

確実性

エヴィデンシャリティ

さらに以下の表はチャナッカレ方言と共通語の命題的モダリティの表現内容とその表 現手段をまとめたものである。

7-5 共通語の命題的モダリティの表現内容と表現手段

命題的 モダリティ

認識的モダリティ 証拠的モダリティ

表現手段 形態的・分析的 形態的手段のみ

表現内容

推測 推定 想定 報告的 感覚的

-(y)AcAk, -Ar, -DIr , mIş olabilir, -(I)yor olabilir

-mIş/(y)mIş, -(y)AcAk, -mAlI,-DIr, -mIş olmalı , -(I)yor olmalı, -mIş olsa gerek, -(I)yor ol-sa gerek

-(y)AcAk -Ar, -DIr, -mIş olacak, -(I)yor olacak

-mIş/

(y)mIş

-DI,-(y)DI, -mIş /(y)mIş

7-6 チャナッカレ方言の命題的モダリティの表現内容と表現手段

命題的 モダリティ

認識的モダリティ 証拠的モダリティ

表現手段 形態的・分析的 形態的のみ

表現内容

推測 推定 想定 報告的 感覚的

-mAk vā -mAk -IK、-mIş

-(y)AcAk ōmak vā -mAk vā

-mIş/-(y)mIş

-DI,-(y)DI, -mIş /(y)mIş, -IK

上記の表を見ると、共通語では認識的モダリティを表現するのに、専用の要素が -(y)AcAk / -mAlI / -DIr / -mIş olmalı / -(I)yor olmalı / -mIş olsa gerek / -(I)yor ol-sa gerek などの ように数多くあり、それぞれの場面に適した接辞や分析的要素が用いられる。一方、チ ャナッカレ方言では-mAk vā、-IK、-mIş のように三つの形式で共通語の多数の接辞が果 たしている役割を果たし、様々な場面で現れる認識が主にその三つの形式によって表現 されている。一方、モダリティ表現はこの三つの形式だけに制限されず、共通語の表現 も自由に使われる。