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セメントの価格特性等に関する考察

ドキュメント内 untitled (ページ 60-64)

1.はじめに

当財団では、自主調査活動として全国の主要 地区における各種資材価格および各種料金等の 実態を定期的に調査し、その結果を「月刊積算資 料」等の定期刊行物に発表しているが、その中の 主要資材の一つとしてセメントがあげられる。

セメント産業は、明治初期の官営事業又は士 族授産事業として開始されたが、合併・吸収等の 業界再編を経て発展してきたといえる。とりわ け大型合併など業界再編が活発化したのは 1994 年から 1998 年にかけてであった。まず、1994 年 10 月には小野田セメントが秩父セメントと合併 して「秩父小野田」が、同じく住友セメントと大 阪セメントが合併して「住友大阪セメント」がそ れぞれ誕生。さらに 1998 年 10 月には、秩父小野 田と日本セメントが合併して「太平洋セメント」

という巨大企業が誕生した。因みに日本セメン トと小野田セメントは業界の 1 位・2 位として 100 年以上にわたり業界をリードしてきた会社で あり、当時の両社合併はセンセーショナルな出 来事として伝えられた。また、兼業メーカーの三 菱マテリアルと宇部興産も 1998 年 7 月に販売・

物流の共同事業会社「宇部三菱セメント」を設立、

同年 10 月に営業が開始され、「太平洋セメント」

「住友大阪セメント」「宇部三菱セメント」の 3 社 寡占体制(約 8 割のシェア)としてのセメント業 界の地図が出来上がり、今日に至っている。

他方、3 社寡占体制定着(1998 年 10 月)以降の 価格動向をみると、暫くは下落傾向に歯止めがか からず、上昇に転じたのは 2002 年度途中からで あった。その後、石炭価格上昇などコストアップ に見舞われたものの、合理化効果や需要の下げ止

まりもあって、各社の業績は一時改善に向かっ た。しかし、2007 年度に入り需要減と石炭高で採 算が再び悪化、さらに 2008 年度は石炭価格が急 騰して業界を直撃した。こうした環境下でメー カー各社は価格転嫁に注力したが、最大ユーザー である生コン業界の値上げ受け入れ余力が乏し い状況の中で、成果は目標までには達せず、価格

(プライス)の転嫁以外の対策、すなわちコスト対 策も極めて重要な局面となっている。2009 年度に 入り石炭等の原材料の高騰は鎮静化されたもの の、今後も予断を許さない状況にあるといえる。

本研究は、大型合併など業界再編後 10 年余 りを経過した後、主要原料の石炭ショックなど コストアップに見舞われて苦慮していることの ほか、環境対策への確実な取組みをしているセ メント業界に着目し、セメント及び業界特性、

セメント価格とコストの動向等を既存資料を基 に整理すると共に、セメントメーカーへのアン ケート結果を基に、セメント価格の決定要因、

コスト(製造・物流)動向と削減策、廃棄物・

副産物利用とコストとの関連などに関する考察 を行うことを目的に実施した。

2.セメント及び業界の特性

セメント及び業界の特性については、(社)セ メント協会資料、(財)経済調査会資料のほか、

政府統計や業界紙資料などを用いて、以下の通 りとりまとめた。

1) セメントの製造

① セメントとは

セメントとは、コンクリートを作るため

セメントの価格特性等に関する考察

〜価格決定要因・コスト動向等について〜

  調査研究部 部長 

阿部 芳久

  第一調査部 共通資材調査室 

森下 剛史

の材料の一つであり、灰色の粉末である。

その殆どはコンクリートとして使用される が、大別すると、「ポルトランドセメント」

「混合セメント」「特殊セメント」に分けら れる(種類の詳細は後述)。石灰石を主原料 とし、粘土、けい石、酸化鉄原料(銅からみ、

硫化鉄銅からみ、他)、石こうを副原料と するが、その殆どが国内で入手可能といえ る。また、近年では石炭灰、建設発生土を 積極的に使用することによって天然粘土を ゼロにしている工場も多くみられる。

燃料に関しては、第 2 次石油危機後は石 炭が主体となっている(それ以前の一時期、

C 重油主体の時期があった)。製造過程に おいては原料及び半製品の粉砕工程の多さ もあり、電力の使用量が多いことも特色と してあげられる。

② 製造方式

セメントの製造方式は以下に示す「乾式 法」と「湿式法」に大別されるが、「湿式法」

は燃料の消費量が多いため、衰退したこと により、現在は全て「乾式法」により製造 されている。

・  乾式法・・・・乾燥した原料をキルン(窯)

に投入して焼成

・  湿式法・・・・原料に水を加えて投入 また、乾式法の中でも、石灰石を粉砕し てそのままキルンへ投入する「原石焼成法」

が採用されている(国内で現在稼動中の 57 基のうち、SP キルンが 9 基、NSP キルンが 48 基)。

・  SP キルン(サスペンションプレヒーター 付キルン)

4 段のサイクロンからなる原料予熱装置

(SP)を付属したキルン。キルンの排ガス がサイクロンの下段から上段に流される一 方、原料粉末を上段から投入、各段で熱交 換、補集が繰返され予熱で一部が焼かれて キルンに入る。熱効率が良く、キルン容積 当たりの生産性が高い点で優れているほ か、工程が安定し、品質も良好。

・  NSP キルン(新サスペンションプレヒー ター付キルン)

SP とキルンとの間に補助燃焼炉(又は焼 炉)を設けたもの。焼成能力は SP キルンの 約 2 倍。我が国で開発され、昭和 47 年頃か ら実用化された最新方式で、現在は主流。

③  製造工程(原料調合工程・焼成工程・仕 上げ工程)

A 原料調合工程

代表格であるポルトランドセメントの例 で言えば、原料(石灰石・粘土・けい石・

酸化鉄原料・せっこう)を調合した上、原 料ミルと呼ばれる「原料粉砕機(乾燥・粉砕・

粗粉と微粉との分級、以上 3 つの機能を持 つたて型ミルが主流)」で粉砕する。

なお、(社)セメント協会によると、セメ ント 1t を製造するために必要な原料は、石 灰石約 1,200kg、粘土約 200kg、その他原料 100 〜 200kg となっている(図 1参照)。

B 焼成工程

ロータリーキルンは鋼鉄製の大円筒で あり、緩い速度で回転する。原料は上端か ら送入され、下端から微粉炭などの燃料を バーナーで吹き込んで燃焼。原料はキルン の回転と共に次第に移動し、1,450 度以上

図 1 セメント 1t の製造に必要な原料

出典)(社)セメント協会資料

の高温で焼成される。この過程で原料は 徐々に化学変化し、水硬性を持った化合物 の集まりであるクリンカとなる。

なお、焼成用熱エネルギー源として使われ た石炭や廃棄物等の廃分もクリンカに取り 込むため、二次廃棄物は生じない。クリンカ を冷却して熱くなった空気は、キルンや仮焼 炉の燃焼用空気に利用。プレヒータの排ガス も原料の乾燥や排熱発電に利用されている。

C 仕上げ工程

出来上がったクリンカを粉砕して最終商 品の粉末状のセメントにする工程である。

仕上げミルで 3 〜 4%のせっこうをクリン カに加えて、微粉砕してセメントとなる。

また、この過程で高炉スラグ、シリカ、フ ライアッシュなどを加え、各種混合セメン トなども生産される。

上記の原料工程から仕上げ工程までのせ メント製造工程をポルトランドセメントの 例で示すと、図 2の通りである。

2) セメントの種類・規格・用途

セメントの種類を分類すると、JIS に規定さ れたセメントと特殊セメントに大別された上、

前者はポルトランドセメント、混合セメント、

それ以外のセメントに分類される(表 1参照)。 表 1の中から JIS 規格について特色を概説す ると、下記の通りである。

①  普通ポルトランドセメント(JIS R 5210)

土木・建築構造物の建設用として、最も 汎用性の高いセメント。袋物の入手も容 易なため、小規模工事や左官用モルタルと しても使用。国内で流通するセメントの約 70%を占める。

②  早強ポルトランドセメント(JIS R 5210)

初期強度の発現性に優れるエーライト C₃S の含有率を高め、セメント粒子を細か く砕いて、短期間で強度を発揮する(上記

①が 3 日で発揮する強さを 1 日で発揮)。

③   超 早 強 ポ ル ト ラ ン ド セ メ ン ト(JIS  R  5210)

上記②よりも、更に短期間で強度を発揮 する(上記①が 7 日で発揮する強さを 1 日 で発揮)。緊急補修に使用。

④  低熱ポルトランド(JIS R 5210)

下記⑤より水和熱が低く、ビーライト C₂S の 含 有 率 を 40 % 以 上 と 規 定。コ ン ク リートの低熱性・高強度性・高流動性に対 応。緊急工事、寒冷地工事、コンクリート 製品に使用。

図 2 ポルトランドセメントの製造工程

出典)(社)セメント協会資料、(財)経済調査会資料

⑤  中 庸 熱 ポ ル ト ラ ン ド セ メ ン ト(JIS  R  5210)

マ ス コ ン ク リ ー ト の 工 事 用( ダ ム・ 大 規模橋脚等)に、水和熱を低くするために エーライト C₃S、アルミネート相 C₃A の含 有量を少なくしたセメント。

⑥  耐硫酸塩ポルトランドセメント(JIS  R  5210)

アルミネート相 C₃A は、硫酸塩への抵抗 性が弱いため、その含有量を極力少なくし たセメント。護岸工事、温泉地付近工事、

化学工場工事に使用。

⑦  高炉セメント(JIS R 5211)

製鉄所から出る高炉スラグを急冷し、そ れを混合材としている。混合量で A 種(5%

を超え 30%以下)、B 種(30%を超え 60%

以下)、C 種(60%を超え 70%以下)に分か れる。長期強度増進が大きく、耐海水性や 化学抵抗性に優れ、大型土木工事(ダム・

港湾等)に使用。

国内で流通するセメントの約 25%を占 め、①に次いで多い。

⑧  シリカセメント(JIS R 5212)

天然のシリカ質混合材を混合したセメ ント。耐薬品性に優れているが、強度発揮 に時間を要する。コンクリート製品等に 使用。

⑨  フライアッシュセメント(JIS R 5213)

主に火力発電所で石炭の燃焼時に発生す るフライアッシュ(微粉状の石炭灰)の中で 良質なものを混合。混合量で A 種(5%を超 え 10%以下)、B 種(10%を超え 20%以下)、 C 種(20%を超え 30%以下)に分かれる。二 酸化けい素 SiO₂ がセメントの水和物によっ て生じた水酸化カルシウム Ca(OH)₂ と反 応(ポゾラン反応)して水和物を生成。大型 土木工事(ダム・港湾等)、水密性を要求さ れる構造物に使用。

⑩  エコセメント(JIS R 5214)

廃棄物問題解決を目指して開発。都市ご み焼却灰や下水汚泥を主原料とし、2001 年 に千葉県市原市に世界初の工場が完成し生 産開始。鉄筋を使わないコンクリート分野 に使用。

表 1 セメントの種類

出典)JIS、(社)セメント協会資料、(財)経済調査会資料

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ドキュメント内 untitled (ページ 60-64)

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