第二章 温熱応答型遺伝子発現システムの組織工学への応用
2.3.3.5 シート状組織での遺伝子発現誘導
次に、磁力を用いて作製した三次元組織において、磁場照射による遺伝子発 現誘導が可能かを調べた。作製した組織での磁場照射およびウォーターバスか ら2日後の細胞シートを観察・評価した。Fig. 23Aは細胞シートの外観写真であ り、ディッシュのガラス部分にMCLによって茶色を示す細胞シートが形成され ていることがわかった。また、Hematoxylin/Eosin染色後の顕微鏡観察の結果、作 製した細胞シートは厚さ30 µm程度の4層の細胞シートであった(Fig. 23B)。
B
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Fig. 23 Magnetically triggered EGFP gene expression of multilayer HepG2-HSP cell sheets. (A) A macroscopic image of a cell sheet. HepG2-HSP cells were labeled with MCLs (magnetite addition, 100 pg/cell) and cell sheets were constructed by magnetic force. Cell sheets had black-brown color because of magnetite nanoparticles. (B) A representative bright-field micrograph of hematoxylin/eosin-stained cross-section of a cell sheet.
細胞シートの磁場照射時の培地温度は平面培養での結果と同じく変化しなか
った(Fig. 24A)。Fig. 24Bはそれぞれ非加温、ウォーターバスでの加温、磁場照
射による加温 2 日後の細胞シートの生細胞率である。ウォーターバスでの加温 が生細胞率を減少させたのに対し、磁場照射による加温では、生細胞率に影響は 見られなかった。これらの結果より、三次元組織状態においても、磁場照射によ
る加温はHepG2-HSP細胞へダメージを与えないことが明らかになった。
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Fig. 24 (A) Time course of temperature in the culture medium during AMF irradiation. HepG2-HSP cell sheets were incubated at 37 °C (non-heated) or heated in water bath at 43°C for 60 min (WB43°C) or irradiated with AMF for 60 min (AMF). (B) Cell viability based on counting total number of cell nuclei in cell sheets at 48 h after AMF irradiation. The data are expressed as mean ± SD of triplicates. *P < 0.05 vs. non-heated group.
Fig. 25は共焦点顕微鏡による三次元蛍光写真であり、EGFP蛍光を観察した。
非加温条件の細胞シートがほとんど EGFP 蛍光を示さなかったのに対し、ウォ ーターバスでの加温、磁場照射による加温ではEGFP蛍光が観察できた。これら の結果より、HepG2-HSP 細胞に対する磁場照射による加温は、細胞シート状態 においても、ダメージを与えることなく、目的遺伝子の発現誘導が可能であるこ とがわかった。
Fig. 25 Representative fluorescence microscopy images of cell sheets.
B A
B
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本節のまとめ
本節では、加温によってEGFP発現が誘導されるHepG2-HSP細胞株の温熱応 答性プロファイルと生細胞率を調べた。その結果、磁場照射による加温はウォー ターバスによる加温に比べて細胞傷害性が低く、細胞内で局所的に発熱するた め、目的遺伝子の発現誘導が可能だとわかった。また磁場照射による遺伝子発現 誘導は三次元組織状態においても可能であり、平面培養と同様その細胞傷害性 はウォーターバスに比べて低いことを示した。
本章のまとめ
本章では持続型One-Pack、持続型Two-Plasmids、一過性型One-Pack、一過性
型Two-Plasmids の4種類の温熱応答型遺伝子発現システムの遺伝子発現挙動を
解析した。続いて、解析結果より、最も強く長期的に遺伝子発現する持続型 One-Pack システムを用いて磁場誘導型遺伝子発現システムの評価を行った。その結
果、100 pg/cellの MCL添加条件、1時間の磁場照射条件において、培地中の温
度上昇無しに、細胞内のMCLの発熱によって遺伝子発現誘導が起こることが明 らかになった。さらにこの際、細胞傷害性を評価するために生細胞率を測定した ところ、磁場照射していない条件と同等の生細胞率を示し、細胞傷害性が無いこ とも明らかになった。最後に、体外から磁場照射することで移植組織の遺伝子発 現誘導が可能であれば再生医療分野への応用も可能だと考え、移植組織条件と して、三次元組織状態(細胞シート状態)においても、平面培養と同様に細胞へ のダメージ無く遺伝子発現誘導が可能かを調べた。その結果、細胞シート状態に おいても、生細胞率に影響はなく、かつ HSP70B’プロモーターは駆動されるこ とが明らかになった。これらの結果から、開発した遺伝子発現システムは再生医 療分野・組織工学分野への応用が可能であることが示唆された。
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