5. 負荷平準化モデルシステムの設定と経済性試算
5.3 太陽光発電・鉛電池複合住宅用モデルシステム
5.3.1 システムの構成と想定負荷,負荷平準化運転パターン
太陽光発電システムは、一般的には昼間、太陽がある時だけ発電するため、電力のピーク カットに貢献しているシステムであるが、今後負荷平準化に向けた電気事業者や、電気使 用者の努力により、電力負荷の平準化、ピーク負荷のカット、昼間〜夜間電力移行の活用 等各システムが想定される。
ここでは太陽光発電システムと蓄電池等を併用したシステムについて考える。
太陽光発電システムは、商用電源と連系した系統連系が主流である。
(パワーコンディショナ等含む)
大きく分けて ①蓄電池無し、②蓄電池有りに分けられる。
現状、太陽電池に蓄電池を設置した場合の経済性や、住宅用太陽光発電システムとして逆 潮流有り系統連係方式により電力会社が蓄電池の役割をしており、①のシステムが殆どで ある。
現状の太陽光発電システムのシステム構成を 図5.3.1-1及び図5.3.1-2に示す。
図5.3.1-1 現状における一般的な太陽光発電システムの構成(蓄電池無し)
太陽光発電からの電力 商用
受変電設備
インバータ
直流 交流
連系制御盤 保護装置 系統連系
(余剰電力を逆潮流)
交流 交流
負 荷
太陽電池アレイ
直流
直流 太陽電池
接続箱
逆流防止回路
図5.3.1-2 現状における太陽光発電システムの構成(蓄電池有り)
システム概要
太陽電池により発電された電力(直流)は太陽電池接続箱により集められ、連系制御盤 に送られる。送られた電力は連系制御盤内のインバータによって交流に変換され、商用
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-電力系統に連系される。
商用系統に何らかの異常が起こった場合には、系統連系保護装置により商用電力系統か ら切り離され、安全を確保する。
この場合の蓄電装置は災害時等に商用系統より切り離しを行い、自立運転により太陽電池 からの電気を充電し、災害時の緊急負荷(照明、通信、テレビ、ポンプ等)の電源に使用 される。蓄電装置からの電力会社への逆潮流(売電)は出来ない。
(1) 住宅用太陽光発電の発電パターンと想定負荷
住宅用太陽光発電1日の発電量と、負荷の運転パターン(図5.3.3-1参照)
仮定条件:
・太陽電池容量 3kW、1世帯平均使用電力量を約290kWh/月とする。(東京電 力管内における1世帯当たり平均使用電力)
最近は各家庭の消費電力増加により、全般的に一戸建て標準世帯の使用電力 量は伸びているが、NEFの住宅用太陽光発電導入基盤整備事業の例から、導 入の最も多い 3kW タイプの太陽光発電システムで、年間平均でほぼ供給出 来る電気使用量とした。
・ 主な使用機器:(内)は電気使用量の比率
(資源エネルギー庁 平成8年度推定実績)
・ ルームエアコン (22.4%)
・ 冷蔵庫 (17.9%)
・ 照明機器 (15.8%)
・ テレビ (9.5%)
・ その他 (34.4%)
:洗濯機、電子レンジ、掃除機、衣類乾燥機、電気こたつ、
電気炊飯器、電気カーペットなど
・ 詳細を図5.3.1-3に示す。
資源エネルギー庁 平成9年度電力需給の概要
場所:東京電力管内
(平成8年度推定実績)
主要機器 消費電力
(kWh/月)
比率
(%)
エアコン 65 22.4 冷蔵庫 52 17.9 照明器具 46 15.8
テレビ 28 9.5
電子レンジ・洗濯機 54 18.6
こたつ 12 4
電気カーペット 11 3.7 電気炊飯器 9 3.1
掃除機 8 2.6
衣類乾燥機 7 2.4 合計 292 100
(消費電力は四捨五入により多少誤差有り)
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-消費電力
(kWh/月)
65
52 46
28 54
12 11
9 8 7
0 10 20 30 40 50 60 70
エアコ ン
冷蔵庫 照明
器具 テレビ
電子レン
ジ・洗濯機 こたつ 電気カー
ペット
電気炊飯器 掃除機 衣類乾
燥機
図5.3.1-3 一般家庭1ヶ月の平均的な消費電力量:290kWh/月 (2) 負荷平準運転パターン
負荷平準運転パターンはいくつか考えられるが、蓄電システム 5.1.1参照。
太陽光発電は昼間、日照のある時だけ発電が可能となり、しかも天候の変動により発電 電力が変動する。
電力の安定供給のためには、必要な時期(負荷のピーク時)に発電ができるシステムが 必要となる。このような欠点を補い解消するため、蓄電池を用いたピークシフト、電力 負荷平準化のシステムが研究されており、更にこの蓄電池を深夜電力貯蔵に利用する。
図5.3.1-4に電力貯蔵機能付きシステム構成を示す。(注1)
(資料:太陽光発電懇話会より)
深夜電力
太陽電池 パワーコンディショナー
昼間
蓄電池
負荷
図5.3.1-4 電力貯蔵機能付きシステム
―/〜
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-本システムは電力貯蔵機能つきシステム構成の一例で、双方向変換型のインバータを採 用して夜間に安価な深夜電力を貯蔵し、昼間は太陽電池の発電電力と夜間に蓄電池に蓄 えられた電力を商用電力と併せて構内負荷に供給する。
残念ながら、現時点では蓄電池に蓄えられた電力の系統への逆潮流は認められていない。
しかしながら、通常は構内負荷の増大時に構内へ電力を供給するのが目的であり、現状 でも活用が可能である。
主に大電力を消費する工場等の場合、
太陽光発電総発電量 + 深夜電源貯蔵電力量 < 工場電力消費量 の条件付きでも 認められれば需要家での導入は促進されると予想される
将来的には、規制緩和等により、電力貯蔵機能付きシステムが認められことを期待した い。
住宅用の場合、家庭で消費する使用電力量は季節による変動は有るが、年間を通せば使 用電力量はほぼ太陽光発電で賄う事が出来る。
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