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6. 繰返し荷重に対する設計手法

6.2 シェイクダウン評価の判定基準

6. 繰返し荷重に対する設計手法の検討

図6-2に示すように表面から内側に板厚(t)の10%位置で3Smとなる。一方、線形分布の 場合、10%位置では0.8×3Smとなる。また、表面の応力が応力分布の非直線成分を考 慮することで3Smを超えてもその範囲が小さければシェイクダウンするので、板厚内の 応力分布から10%t 位置で判定することで応力分布の非直線成分の影響を極力排除で きるものと考えられる。そこで、このような繰返し降伏域範囲(以下、”CYA (cyclic yield area)”と略称)と呼び、CYAに対する判定基準を策定し、応力分類が不要となる評価方

法とする[6-4]

Miller線図は直線温度分布及び放物線温度分布を想定した場合に、内圧による応力が 最も大きくなる周方向に着目し、単軸応力状態に対してラチェットを生じない条件を 設定した線図である。Miller線図(直線温度分布及び放物線温度分布に対する制限線

図)[6-5]と3Sm基準との関係を熱応力(σS)と内圧による応力(σP)で整理すると図6-3のよう

になる。図6-3に示すように、σP/SyとσS/Syの和が1以下であれば完全に弾性の状態にあ る。σS/Syの値が2以下でかつMillerの制限線図の下側にある場合はシェイクダウンする 状態にある。σS/Syの値が2を超え、かつMillerの制限線図の下側にある場合は塑性サイ クルを生じるがラチェットは生じない領域である。一次応力制限からσPはSm ((2/3)Sy) 以下となるので、その限界線も合わせて図に示している。Millerの制限線図では直線温 度分布の方が厳しく、以降の検討では保守的となる直線温度分布の線図を対象とする。

Miller線図は円周方向応力のみに基づいているが、実際の多軸応力状態での円筒のラ チェット限界を確認するため、Yamamotoら[6-6]は、内圧と温度勾配の繰返しを受ける 円筒モデルに対して、Sy=1.5Smの弾完全塑性体を用いた繰返し弾塑性解析(10サイク ル)を行った。解析モデルおよび内圧・温度の負荷の与え方を図6-4に示す。温度分布 には保守的な方の直線温度分布を用いた。解析は以下に示す4種類のグループに対し て行った。これらのグループの解析条件とMiller線図との関係を図6-5に示す。

[グループA]

一次応力である内圧による膜応力(σP)を Sy(3Sm制限に対応するように 1.5Smと する)で割ったσP/Sy=0.5 で一定とし、二次応力の熱応力(σS)は Miller 線図上の σS/Sy=2(3Sm基準上限)を基準として、それに対する熱応力の比率が0.9から1.5 までをパラメータとしてシェイクダウン解析を行う。

[グループB]

σS/Sy =3で一定とし、Miller線図上のσP/Sy =1/3を基準とし、それに対する内圧 の比率が0.9から1.5までをパラメータとしてシェイクダウン解析を行う。

[グループC]

σP/Sy=2/3(Pm =Smの上限)で一定とし、Miller 線図上のσS/Sy=4/3 を基準とし て、それに対する熱応力の比率が 0.9から1.4までをパラメータとしてシェイク ダウン解析を行う。

[単軸モデル]

上記の検証計算の妥当性を確認するためにMiller線図の考え方と合わせた解析 を行うこととし、円周方向応力のみが発生するような単軸応力として、グループ Aの荷重条件を用いて、シェイクダウン解析を行う。

上記のグループ毎の基準の荷重を用いて横軸をそれに対する荷重の比率とし、縦軸 を9サイクルから 10 サイクルの間の相当塑性ひずみの増分で整理した解析結果を図 6-6に示す。図6-6で、相当塑性ひずみの増分が急激に上昇している領域において塑性 ひずみが蓄積され、ラチェットを生じている領域である。単軸モデルは基準との比が1 より大きいところで相当塑性ひずみの増分が急激に大きくなる。これは単軸応力に基

づいた Miller線図と対応しており、本モデルが妥当であることが確認された。また、

多軸を考慮した場合、グループAおよびグループBでは基準との比が1.2より大きい ところで相当塑性ひずみの増分が急激に増加しているため、Miller 線図に対して 1.2 倍の裕度があると判断される。

以上から、多軸の効果によりMiller線図には1.2倍の裕度があることが確認された。

そこで、図6-2の直線分布の10%t 位置での応力が0.8×3Smであり、それに上記の1.2倍 の裕度を考慮することで、表面から内側に10%t 位置で3Sm以下とすることをCYAの基 本的な判定基準とする。また、図6-3から、Pmが0.75Smを超える範囲ではMiller線図の 許容値は3Smを下回る。これについては、一様シェルに対してはMiller線図と同様の制 限を課すべきと判断し、Pmが0.75Smを超える範囲については許容値を3Smから6Sm-4Pm

に置き換えることとする。したがって、一様シェルに対するシェイクダウン評価の判 定基準は、「3Smか6Sm-4Pmのいずれか小さい方の値を超える範囲が表面から内側に板 厚の10%の位置を超えて広がっていないこと」とする。

構造及び材料の不連続部については、その部分の応力はピーク応力も含んでいるた め、6Sm-4Pmの判定基準を適用するのは過度に保守的である。また、一般的には構造 及び材料の不連続部から離れた位置に一様シェル部が存在するため、その部分に対し て一様シェルに対する判定基準を適用すればよい。構造及び材料の不連続部と一様シ ェル部との判別については、構造及び材料の不連続によって局部的に生じる応力は rt (r:シェルの平均半径、t:板厚)離れると減衰するので、一様シェルと構造及び材 料の不連続部との境界は局部的不連続部から rt の位置とする。

6.2.3 材料の局部的不連続

低合金鋼のノズルとステンレス鋼のセーフエンドとの異材継手や低合金鋼材に対す るステンレスのクラッド溶接のように材料が局部的に不連続となる部分がある。この 材料の局部的な不連続により発生する応力は、構造物の総体的な変形には寄与せず、

その境界部のひずみの不連続により生じるので、本質的にはピーク応力と考えられる。

したがって、シェイクダウン及び熱応力ラチェットの観点では基本的にはこの応力に よる影響はないものと考え、規定を統一するため、判定基準を「3Smを超える範囲が表

面から内側に板厚の10%の位置を超えて広がっていないこと」とする。

6.2.4 局部的構造不連続、総体的構造不連続及びノズルコーナ部

構造不連続についてはいくつかのタイプが考えられ、図6-1に示すように、ノズルの サーマルスリーブの取り付け部のような局所的な構造不連続、圧力容器において板厚 や内径が変化する場合のような総体的構造不連続及び総体的構造不連続の極端な例で あるノズルコーナ部の3種類に分類した。

これらの構造不連続部の表面に発生する応力にはピーク応力が含まれているが、

10%t 位置での応力ではその影響は小さくなると考えられ、また影響が残っていても応 力は高い側になることから、判定基準を「3Smを超える範囲が表面から内側に板厚の10%

の位置を超えて広がっていないこと」とする。