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5. 一次荷重に対する設計手法

5.3 穴あき鏡板に対する極限解析

れる。

一方、WRC Bulletin 254に基づくと、崩壊荷重を応力解析で求める場合は極限解析 を用いればよいと考えられる。しかしながら、WRC Bulletin 254を策定した当時(1979 年)では現在のように弾塑性FEM解析が容易に使える時代ではなかったので、応力解 析を用いるにしても崩壊荷重の設定に対しては二倍勾配法のようにある程度の目安が 必要だったものと推定される。この二倍勾配法に対しては、ASME B&PV Codeでは いくつかの変遷が有ることがわかった。最初は Sec.VIII の 0.2%オフセットひずみ法 及び比例限による方法が用いられたが、これらは降伏点に対応する圧力となっている。

その後、Sec.IIIで二倍変位法が適用され、Sec.III では翌年、Sec.VIIIでは3年後に 現状の二倍勾配法が適用されている。いずれの手法も崩壊荷重を実験で求めるにはひ ずみゲージの位置、計測誤差等が精度に影響してくる。0.2%オフセットひずみ法、比 例限による方法及び二倍変位法については、降伏点に相当する荷重を求めることに対 し、二倍勾配法は弾性域と考えられる範囲の勾配を最小自乗法で整理すればいいので、

二倍勾配法の方が設計者の違いによる影響は小さいものと考えられる。ただし、二倍 勾配法を適用するとしても、変位着目点や実験におけるひずみ・変位計測位置につい ては注意が必要であることはCodeでも示されている。

弾塑性 FEM 解析を用いて極限解析を実施する場合、コンピュータの発達により 3 次元 FEM モデルであっても崩壊荷重が必要な精度になるまで計算することは可能に なってきている。したがって、WRC Bulletin 254で定義されている極限解析の考え方 を用いて弾塑性 FEM 解析を行い、極限荷重を求めればよいと考えられる。また、二 倍勾配法は保守的な方法であり、それにより求められた崩壊荷重が許容値を上回り、

それ以上解析を継続する必要がない場合に適用すれば解析を簡略化することができ、

有効である。

5.3.2 解析モデル

穴あき鏡板の形状、寸法及び物性値を図5-4及び表5-3に示す。穴は三角配列とし、

板厚は穴の補強に必要な面積が補強に有効な面積に対して 95~98%程度となるように 設定した。構造の対称性から解析モデルは 30 ゚の範囲をモデル化した。また、内圧の 負荷において、穴部に本来加わる内圧を補償するため、穴の容器内面側の外周に等価 な外力を加えるものとする。この荷重は穴の位置(穴の角度θ)によって内圧を受ける面 積と周長Lがそれぞれ異なるために異なる値をとり、内圧をP、穴径をdとすると、

荷重Fは次式で表され、その荷重が周長のθ方向に加わるものとする。

π θ cos / 4 ) (

d2

P

F = ⋅ ··· (5-2) 解析には穴の内面の内周にfが一様に作用するものとする。

f = F/L··· (5-3)

5.3.3 降伏点及び等価剛性

極限解析においてはASME Sec.IIIに従い、材料はSy =1.5Smとする弾完全塑性体と する。また、弾塑性FEM解析では次式の応力-ひずみ関係を用いる。

σ < 370 MPa : σ = E・ε

σ ≧ 370 MPa : σ = 370.0+862.62・(ε-ε0)0.54 ··· (5-4) ε0= 370/E = 2.1×10-3

ここで、許容圧力はこの解析で得られた崩壊荷重を(2/3)倍することで求める。また、

2次元モデルに対する穴あき部の等価剛性については、穴が三角配列なので、ヤング率 とポアソン比についてはASME Sec.III, Appendix A-8000に従い設定する。

2次元モデルの等価降伏点(Sy* )については、Uragami et al.[5-5]に基づき平板に対す る三角配列の穴に対する評価式の x 方向と y 方向の値を平均した次式を用いることと する。

Sy*/Sy = 1.08η-0.055 ··· (5-5) ここで、ηは穴のピッチをp、穴と穴の距離をh(図5-4参照)とすると次式で得られる。

η = h/p ··· (5-6)

5.3.4 穴あき鏡板の崩壊解析

穴あき鏡板に対して5機関で3次元モデル及び 2次元モデルに対して極限解析及び 弾塑性FEM解析を実施した。

代表的な例として、グループAの3次元FEMモデルを図5-5、2次元FEMモデル を図5-6に示す。多孔部が45゚まであるので、2次元モデルでは45゚の範囲までの等価 剛性を考慮した。また、極限解析の荷重-変位関係を図5-7、弾塑性FEM解析の荷重

-変位関係を図5-8に示す。荷重-変位関係については、極限解析及び弾塑性FEM解

析とも3次元解析の結果の方が崩壊荷重は高く、2次元解析結果は3次元解析結果に比 べて保守的となった。図5-7及び図5-8に二倍勾配法による崩壊荷重を示す。二倍勾配 法による崩壊荷重は、極限解析だけでなく弾塑性FEM解析についてもFEM解析の最 終荷重とほぼ同等となった。荷重-変位関係からも荷重が崩壊荷重レベルになると急 激に変形が進んでいることがわかる。これは、内圧により穴あき鏡板に発生する応力 が基本的には一次応力であることを示唆している。

崩壊の状況を調べるため、3次元FEMモデルに対する相当塑性ひずみ分布を図5-9、

2次元FEMモデルに対する相当塑性ひずみ分布を図5-10に示す。図5-9から、3次元 FEM解析結果では穴と穴との間のリガメント部に塑性ひずみが集中していることがわ かる。特に、最外周の穴の方が斜角になることにより穴の占める割合が中央部に対し て相対的に大きく、荷重を受け持つ鏡部が相対的に少なくなるため、最外周のリガメ ントでの塑性ひずみの集中が大きくなっている。一方、2次元FEM解析は多孔部であ る 45 ゚の領域に対して外周部より低い等価剛性を用いており、その外周がそれより高 い剛性となっているため、頂部の変位が相対的に大きくなった。そのため、図5-10に 示すように頂部にひずみが集中し、頂部側から崩壊が進んだものと考えられる。

以上から、3次元モデルの穴あき鏡板の変形そのものを2次元モデルで模擬するため には更なる改良が必要であるものの、2次元モデルの等価剛性を適切に選べば保守的な 結果が得られることが可能と考えられる。

次に、図 5-7 から、極限解析における 3 次元解析モデルの崩壊荷重を評価すると

31.5MPaとなった。これより、許容圧力は21.0MPa (31.5×(2/3) MPa)となり、最高

使用圧力の17.16MPa よりも2割以上も高くなった。これは、穴の補強計算が保守的 であることを意味している。

5機関でベンチマークにより2次元モデル及び3次元モデルに対して極限解析及び弾

塑性FEM解析により二倍勾配法で崩壊荷重を求めた結果を表5-4に示す。表5-4より、

2次元モデル及び3次元モデルとも各機関での差は小さかった。2次元モデルの解析結 果は、Aグループと B グループでは、用いたプログラム及び節点数・要素数は異なる が、崩壊荷重は極限解析及び弾塑性FEM解析とも同等の結果が得られた。ここで、C グループが用いたSTANSA/STAXは、解析法としては降伏点を超えた部分のヤング率 を適用する応力-ひずみ関係に適合するように繰り返し修正して収束計算を行う「剛 性補正法」を使用している[5-6]。そのため、応力は高い側から収束していくので、他の解 析結果と比べると若干高い側の値になった。

3次元モデルの解析結果は、プログラム、要素のタイプ、節点数・要素数が異なって も有意な差はなかった。また、E グループでは弾性代償法も用いて解析を行った[5-7]。 表5-4に示すように、グループEで同じFEMメッシュを用いて計算したABAQUSの 極限解析及び弾塑性FEM解析の崩壊荷重の結果と比べると、弾性代償法の崩壊荷重の 方が保守的な結果となった。