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エピローグ

ドキュメント内 2012_ID_text (ページ 48-52)

2.   運動技能のインストラクション

2.7   エピローグ

――アイダさん,スモールステップと即時フィードバックの重要性がよくわかりました!

スモールステップの原則は,運動技能だけじゃなくて,広い範囲のインストラクションで有効 な原理だよ.

――そうなんですか.

運動技能に限らず,基礎的なスキルが積み上げられて複雑なスキルを構成しているような場合 はすべてこれでいける.

――たとえば数学のようなものでも?

そうだよ.

――でも,なんで数学嫌いが多いんでしょうね?

それはね,数学に限らず,教室での一斉授業は,スモールステップにはならないからだ.

――なぜですか?

個人によって理解のスピードが違うから.

――だからドロップアウトが出るんですね.

そうだ.だから,教室でドロップアウトした人も,個人ベースでスモールステップ方式で学び 直せば,完全習得できる.

――うーん.じゃあ,教室で勉強する意味はなんですか?

教育の最も安上がりな形態だということ.あとは……,友だちを作ることかな.

――まあ,確かに個別指導してくれる先生がいるなら,ちょっと大変なことでもマス ターできそうですが.

ヤマダくんも,スモールステップの原則を使えば,たいていのことはうまく教えられるよ.

――すみません,私,ヤマダではなく,ヤマモトです.

いや,これは失礼.即時フィードバックしてくれてありがとう.

――あ,これも即時フィードバックなんですね.

会話は,即時フィードバックの応酬だ.

――そういわれれば,そうですね.

会話をすればするほど,両者の間に信頼関係が育まれていく.

――アイダさん…….

あ,いや,そういうことではなくて.

――何,考えているんですか?

何も.

⽂文献紹介

杉⼭山尚⼦子(2005)『⾏行行動分析学⼊入⾨門̶—ヒトの⾏行行動の思いがけない理理由』集英社新書  行動分析学の十分な入門書としては,杉山尚子・島宗理・佐藤 方哉・リチャード=マロット・マリア=マロットによる『行動分析 学入門』(産業図書, 1998)がある.しかし,ちょっと大きな本 なので,その入門編としてこの新書本をお勧めする.

 全体として,行動随伴性,シェイピング,単一被験体法とバラン ス良く,しかもわかりやすく解説されている.インストラクショ ナルデザインの源流は,行動分析学にあるので,まずこの本から スタートするのはよいだろう.

カレン・プライア(1998)『うまくやるための強化の原理理』⼆二瓶社

 すべての親,教育関係者,教師に読んでもらいたい本である.

 この本は,どのようにしたら望ましい行動をさせることができ るか(強化と強化スケジュール),どのようにしたら望ましい行 動を形成することができるか(シェイピング),どのようにした ら最小限の命令で行動をさせることができるか(刺激制御),ど のようにしたらやめて欲しい行動をやめさせることができるか

(消去),という原理と具体的な方法を伝授している.

 とりわけ,次のようなことは読者の目を開かせてくれる.

 「生徒のことを考えている」と自称する先生が使う「体罰」や,

体罰の代わりに使われる「叱り」,「小言」,「脅し」といった方法は最も効果がな いこと.何が相手の好子になるかをいろいろ考えることはトレーナーや教師の創造的 な仕事であること.教師と生徒の「コミュニケーション不足」とは本質的には,生徒 に理解されない命令を乱発していることであり,教師によるいい加減な刺激制御に よって生徒が弁別刺激と行動との関係を形成できていないということ.すなわち,生 徒の心を理解しようとする前に,自分が適切にコミュニケーションしているかどうか を自問しなければならないことに気づくだろう.

島宗  理理(2004)『インストラクショナルデザイン-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒教師のためのルールブック』

⽶米⽥田出版

 なぜ「教育」ではなくて「インストラクション」というコトバを 使っているのか.ある種つかみどころのない「教育」と,きっちり と定義づけられた「インストラクション」とはどこがどう違うの か.適切なインストラクションを行うには具体的にはどうすればよ いのか.以上のことが,まさに適切なインストラクションによって 学ぶことができる.

島宗  理理(2000)『パフォーマンス・マネジメント-‐‑‒-‐‑‒-‐‑‒問題解決のための⾏行行動分析 学』⽶米⽥田出版

 現実の社会や組織や個人のさまざまな問題を解決するために行動 分析学をどう使っていけばよいのかを,具体的な事例を取り上げ て,背景となる研究論文を駆使しながら説明している.

 パフォーマンス・マネジメントは行動分析学を使って問題解決の ための確実な方法を提供する.この本はとりわけ,教師や塾の先 生,パソコンのインストラクター,スポーツのコーチなどあらゆる 意味で何かを教えることを仕事にしている人や,会社などでプロ ジェクトを指揮する人,リーダー,管理職の人に必読の本と言える だろう.

■ホームワーク2

(1)  運動技能のインストラクションの設計(50点)

 身近にいる人に,何か運動技能を教えてください.誰に何を教えるということを書 いてから,その具体的なインストラクションの方法を,スモールステップの原則にし たがって考え,400字以内で書いてください.インストラクションは長くても1時間を 超えない程度のものを想定します.

 以下に,「誰に,何を教える」の例を挙げますので参考にしてください.

• 同級生の友だちに,けん玉の技を教える

• サークルの後輩に,クラブでさまになるダンスの踊り方を教える

• バイト先の新人に,ハンバーガーの作り方を教える

• 自分の子どもに,パジャマのたたみ方を教える

• 会社の新人に,ネクタイの結び方を教える

• おじいちゃんに,スーパーマリオのコントローラーの操作の仕方を教える (2)  インストラクションの実施結果と考察(50点)

 (1)のインストラクションの設計にしたがって,実際にインストラクションを実施し てください.その途中経過と結果(成功しても,失敗してもOKです)について客観的 に報告してください.そして,なぜそのような結果になったかについて考察してくださ い.以上を,400字以内で書いてください.

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