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第 2 章 紙とコンピュータによる幼児の描画行動の比較分析

3.3 アプローチ

インタビュー調査より判明した問題点を解決するため,ユーザが所望する色を作り出 す作業を支援するシステムを検討する.まず,色作り作業を支援することの重要性を確 認し,色の選択やカラーパレットに関する従来研究を調査する.その結果より,新しい

3.3.1. 色作り作業支援の重要性

コンピュータでは,色合いや色彩を表示する場合,RGBやHSVなどいくつもの方式 があり,また,アプリケーションによって様々なカラーモデルが表示され,複雑なもの となっている[25].前節に述べたように,従来システムの印象調査からも,システムの仕 組みを理解することが難しいと意見が得られている.これらを使いこなすためには,そ れぞれの仕組みについて理解する必要があり,色彩に関する学習が要される.しかし,

制作時には自分の頭に描いた色を作りたいと思いながらも,専門知識を学ぶまでの意思 がない,または,学習が困難なユーザもいる.

色の選択時に大切な事は,自分が求める色を再現できること,つまり所望する色を作 れることであると考える.しかし,現状では前述の理由より,色の作成は困難な作業と なっている.色のイメージや感覚は,色を混ぜ合わせていく活動の中で色彩の変化を体 得するといった,個人の経験や訓練によって体験的に身につけている場合が多く,各ユ ーザによって異なる[26].色彩の専門知識を持っていなくても,個々のユーザが持つ色彩 感覚を活かしながら,所望する色が作れる支援を行うことが重要である.

3.3.2. 従来研究

色の選択方法やカラーパレットに関する従来研究には,下記のようなシステムが提案 されている.

タンジブルなインタフェースを用いる事で,数値入力を用いず,子供でも簡単に色の 選択・設定が実行できるシステムがある[27-29].I/O Brush[27]は,小型カメラを内蔵した 筆インタフェースを用いることで,ダイレクトに身の回りの物理オブジェクトの色を選 択し,選択した色で描画ができるシステムである.同様に,筆状のペンインタフェース を用い,6 色のパレットから色を選択し描画できるlivePic[28]がある.色の選択方法は,

絵の具と同様に筆でパレットの色を付けて選択する.Digital Palette[29]は,描画システ ムではないが,5つの球にそれぞれ色が割り当てられた物理的なパレットインタフェー スを操作し,別に設置された球型の物理オブジェクトに色をつけることが出来るシステ ムである.パレットより1色の球を選択し,横に取り付けられたノブを回して選択した 色の濃淡調整を行う.

これらのシステムは,色の数値表現を用いることなく目的の色を選択できるため,操 作は直感的でわかり易い.しかし,I/O Brush,livePicは,自由に色を混色し新しい色 を作ることは出来ないため,絵の具のようにどの色をどのくらい混ぜ合わせればどんな 色になるかという,色の効果を体得することは出来ない.一方,Digital Palette では,

パレットより他の球を選択し,ノブを回すことより色を混色することは出来るが,絵の 具のようにパレットを見てどの色をどのくらい混色したかという過程を,視覚的に確認 することは出来ない.また,これらのシステムは,特別な装置を必要とするシステムで あるため,コンピュータのディスプレイ上で実用的に使用できるという汎用性に欠け る.

ディスプレイ上で実用的に使用可能なパレットとしては,CCP[30]が提案されている.

ディスプレイ上で表示された色彩を,RGBをそれぞれ軸とした立方体の中に3次元で 表示するインタフェースを持つシステムである.ユーザは,3次元色空間で色の位置を 容易に確認できるが,色調整はRGBスライダで実行するため,色彩の知識が必要とな る.ディスプレイ上でも,数値表現を用いらずに,使用した色の量や作成過程が直感的 に理解できるインタフェースが必要である.

3.3.3. 提案システムの設計方針

従来システム,従来研究の分析より,新しい色選択ツールの所要条件を下記のように 設定した.

【 実用性 】

ディスプレイ上で自由に混色可能.実用的に使用できるレベルのパフォーマンス が得られるシステム.

【 手続きの習得支援 】

特別な装置を用いずに,ディスプレイ上で容易に操作を習得できるインタフェー スを持つシステム.

【 混色作成支援 】

専門知識を要する数値表現なしに,個々のユーザの持つ色彩感覚を活かしながら 混色可能なシステム.また,混色した色の量や作成過程を視覚的に表現すること より,操作とその結果の意味内容理解を促進させる,混色の作りやすいシステム.

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