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今後の課題

ドキュメント内 Ductile fracture mechanism of metal foil (ページ 138-145)

第6章 結言

6.2 今後の課題

1 .表面あれによる局部くびれとボイドの発生

本論文では,表面あれによる局部くびれは部分的であるため,くびれ変形量が少なく,

くびれ後に発生・成長するボイドは,生じにくくなると述べた.しかし,くびれ後の材料 観察は破断時のみであるため,くびれ変形における箔材の挙動は明確にはされていない.

したがって,箔材の延性破壊メカニズムのさらなる追及を考えた場合,くびれ後から破断 までの箔材の観察を行い,くびれとボイドの関係性を見極める必要がある.

2 .表面あれの延性破壊挙動に及ぼす影響

箔材における表面あれと同程度の割合の疑似表面粗さを有した板材の延性破壊挙動を観 察したところ,箔材と似た挙動示し,箔材における表面あれは延性破壊挙動に影響を及ぼ すと述べた.しかし,実際に表面あれ進展が箔材の延性破壊にどのように影響を及ぼすか は明らかにされていない.したがって,箔材における表面あれの進展と延性破壊の直接的 な関係に着目し,箔材の延性破壊挙動を観察する必要がある.

3 .他の材料における箔材の延性破壊挙動

本研究で用いた材料は,純銅,純アルミニウム,純チタンと純金属であった.生産現場 では,純金属だけでなく,合金も多用されている.合金は,介在物や不純物を含んでおり,

純金属よりもボイドを発生しやすい材料である.したがってその箔材は,純金属とは異な った挙動を示す可能性が高い.箔材の延性破壊メカニズムを体系化するためにも,純金属 箔とは性質が異なる箔材の延性破壊挙動の観察も必要である.

4.表面あれを考慮した箔材の破断予測

本研究の成果により,表面あれが箔材の延性破壊挙動に大きな影響を及ぼしていること がわかった.したがって,表面あれを考慮することによって箔材の破断予測が可能になる といえる.今後は表面あれを考慮した箔材の破断予測の提案が大きな課題となる.

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付録

Fig.1 に示すように,純銅箔(t=0.05mm)と純チタン箔(t=0.05mm)の破断箇所をイオンミ

リング加工し,SEM観察を行った.各々の破断箇所のSEM 画像はFig.2に示すとおりで ある.Fig.2より,純チタン箔ではディンプルが見られるが,純銅箔ではディンプルを見ら れない.したがって,Fig.2.4.16,18 と同様の結果が得られ,純銅箔ではディンプルが生じ ないことが再度確認できた.

t

Fig.1 Observation point of fracture point

Fig.2 Fracture point

5μm

(a)C1020-O(t=0.05mm)

5μm

(b)TR270C-O(t=0.05mm)

質疑応答

筧幸次准教授

【1】純銅および純アルミニウム箔と純チタン箔で破壊形態が異なったのは,結晶構造の 違いが大きいのではないか?

結晶構造の違いも箔材の延性破壊挙動に影響していると考えられる.今回,箔材におけ る破壊形態の決定因子として表面あれの傾きα とボイド発生時のひずみ εvを挙げたが,表 面あれの傾きαでは結晶構造の違いも考慮されている.

表面粗さは一般的に以下の式(1)で与えられ,両辺を板厚tで割ると,式(2)が得られる.

𝑅𝑍 = 𝑐𝑑𝜀+𝑅0 (1) (

𝑐:材料定数 𝑑:結晶粒径 𝑅0:初期粗さ

)

𝑅𝑍/𝑡 = 𝑐

𝑡/𝑑𝜀+𝑅0/𝑡 (2)

α値は,板厚に対する表面あれの傾きを表していることから,式(2)は式(3)のように置き換 えることができ,α値は式(4)で表すことができる.

𝑅𝑍/𝑡 = 𝛼𝜀+𝑅0/𝑡 (3) α= 𝑐

𝑡/𝑑 (4)

式(4)において,c値は材料定数であり,結晶構造に依存するパラメーターだといわれている.

したがって,表面あれの傾き α では結晶構造の違いも考慮されているため,純銅および純 アルミニウム箔と純チタン箔の破壊形態は,表面あれの傾き α とボイド発生時のひずみ εv

で決定されると考えられる.

【2】結晶構造によってc値はどのように変化するのか?

hcpの方がfcc よりもすべり系が少なく,表面があれやすいため,c値はhcpの方がfcc よりも大きいといわれている.

高橋智准教授

【1】表面あれはどうして起こると考えているか?

多結晶金属を構成する結晶粒は,各々の大きさや向いている方向が異なるため,それぞ れ示す変形挙動も異なる.したがって,結晶粒の不均質性が変形とともに表面粗さとして 表れる.

【2】板厚が大きい場合は,他の結晶粒の拘束を受けるが,板厚が小さい場合は,他の結 晶粒の拘束を受けず,板厚が大きいときと小さいときでは,結晶粒が示す挙動は異なると 考えられる.今回用いた箔材と板材の結晶粒の大きさは変わらないのか?

今回使用した板材と箔材は,市販のものを購入したため,結晶粒径を同じにすることは できなかった.しかし,結晶粒間の拘束には,結晶粒径ではなく板厚に対する結晶粒の数 が影響を及ぼしてくると考えられる.板厚に対する結晶粒の数が多いと結晶粒間の拘束も 大きいが,板厚に対する結晶粒の数が少ないと,結晶粒間の拘束も少ないといえる.今回 使用した箔材および板材の結晶粒径は異なるが,箔材(t=0.05,0.1mm)と板材(t=0.3,0.5mm) では板厚が小さい箔材の方が板材より,板厚対する結晶粒の数は少ない.板厚に対する結 晶粒の数が少ないと,結晶粒は他の結晶粒の拘束を受けにくく,各々の変形挙動を示しや すくなり,材料の不均質が表面あれとして顕著に表れる.したがって板厚に対する結晶粒 の数が少ない箔材の方が板材よりも,表面あれの影響を受けやすく板材とは異なった変形 挙動を示したといえる.

また,式(4)に示すように,表面あれの傾きα は板厚に対する結晶粒の数に依存するパラ メーターであり,表面あれの傾き α によって板厚に対する結晶粒の数および結晶粒間の拘 束も考慮されていると考えられる.したがって,本論文で述べたように箔材および板材の 破壊形態には,表面あれの傾きαが大きく関わっているといえる.

表1 各材料の結晶粒径および板厚に対する結晶粒の数

Thickness t/mm Grain size d/μm Number of grains in thickness t/d

0.05 16.6 3.0

0.1 65.5 1.5

0.3 57.5 5.2

0.5 50.0 10

0.05 11.3 4.4

0.5 11.0 45

0.05 7.6 6.6

0.1 27.3 3.7

0.3 51.1 5.9

0.5 55.0 9.1

Cu

Ti Al

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