第4章 価格変化による交通サービス需要の変動に関する事例分析-高速道路の無料化 85
第 3 節 他の交通機関への無料化の影響
3.5. 第 3 節のまとめ
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3.4.4. 経年的なトレンドの小括
高速道路の無料化により、高速道路利用は大幅に増大し、一般道利用は減少となった。ま た、無料化終了後は、一般道は無料化以前の水準に戻ろうとするものの、引き続き減少とな っており、そのうちのある程度は一般道から高速道路への転換が起きているロックイン効 果によるものと考えられる。影響の現れ方には地域的な差が大きく、高速道路の新規整備が あると、その影響も受ける。
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ている。ある時点で政府の政策として高速道路の料金割引が導入され、それによって利用減 となった公共交通が事業を廃止した場合、その後に政策転換がなされて料金がもとの水準 に戻ったとしても、失われた公共交通を再び構築することが困難であることが示された。あ る特定の交通モードを税金によって優遇した場合に、別のモードへの影響がどこまで許容 されるか、慎重な検討が必要である。
「人口減少・低成長下にはどのような形の公的関与(規制や財政支援など)のあり方が望 ましいか」という観点からは、高速道路を巡る政策の変遷によって、これまでの一律料金か らの転換の可能性が示されたことは重要であると思われる。現在の高速道路料金は対距離 課金になっているが、その料金水準は全国一律の基準に基づいて決定されており、路線・区 間ごとの利用状況など地域の状況を反映した料金設定になっていない。この点について、道 路の効率的な利用を促すという考え方からは需要の価格弾力性に基づく料金設定が導かれ る。つまり、需要が少ない路線では料金を引き下げることが望ましい可能性がある。しかし ながら、価格弾力性のみに基づいて料金を設定するのではなく、社会的費用を考慮した政策 的な料金設定が求められる。
例えば、高い高速道路料金を避けた車両が一般道を通行すれば、一般道の混雑と沿道環境 悪化を引き起こすことにつながる。一般道が混雑している一方、高速道路は混雑していない ような地域であれば、交通調整の観点から理論上は一般道に料金を課す方向性になるが、そ の代替策として、高速道路の料金を割り引くことが考えられる。
逆に、一般道も高速道路も混雑しているような地域では、私的トリップ費用に混雑料金を 課して社会的限界費用に基づく料金設定をし、交通需要管理を行うべきである。そしてその 財源収入を、混雑緩和のための道路整備に充てることや、道路環境改善を促す公共交通整備 を行うことが求められる。
この考え方は、全国一律の料金体系ということから離れて、現行の料金水準を基本としつ つ、地域の状況に応じた弾力的な料金設定を行うということを意味する。つまり、実際の交 通量が交通容量よりも下回る場合には料金の引き下げ(割引)を、上回る場合には料金の引 き上げ(割増)を行うことになる。より具体的にいえば、高速道路と並行する一般道が混雑 している一方、高速道路容量に余裕がある場合には、高速道路料金を引き下げることが適切 であり、混雑している場合には、引き上げる方向が望ましいということになる。そのような 政策が供給者目線ではない、利用者目線に立った交通政策である。
2014年11月28日開催の第17回国土幹線道路部会(国土幹線道路部会(2014))におい ては、均一料金区間を含む首都圏ネットワーク全体において、料金水準などを統一し、対距 離制を基本とした共通料金を目指すことが検討されており、対距離で負担を求めることに ついては本論文の主張と合致している。さらに、大都市圏においては、経路の自由な選択を 実現するという観点から、同一発着地点間での料金を揃えることを基本とすることも提案 されており、ネットワーク全体の最適化の観点からの料金設定が重要であることが指摘さ れている。これを受けて、首都高では2016年4月から、近畿圏の高速道路では2017年6
110 月から対距離制が導入された。
本論文ではネットワーク全体の最適化の観点からは特段述べてはいないが、今後はこう した点も考慮して料金のあり方を考えていくことが重要である。第 4 章 1.7.でもみたよう に2013年以降の料金制度のあり方を議論する国土幹線道路部会においては、データや理論 に基づき、極めて科学的な議論がなされており、これからの料金設定の議論の展開が期待さ れる。
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