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本章では,歩行者挙動モデル,および車両・歩行者の相互回避行動モデルの構築に必要となるデータ収 集を実施し,左折車の横断歩道への進入状況,左折車と横断者との交錯状況について予備的な分析を行っ た.分析結果からは,横断者交通量の多寡にもよるが,横断者が疎らな状況での交錯が多数発生している ことが示されており,このような交錯パターンにおいてはドライバーの停止/通過判断にばらつきが生じる ことが推測される.前章での事故発生状況の比較では,左折車と横断者との事故発生がいずれの交差点に おいても高く,特に大規模交差点である西大須交差点,太閤通3交差点において多いことから,これら横 断者間のギャップの生じ方がドライバーの停止/通過判断に影響を及ぼしていることが考えられる.今後は,

左折車と横断者との交錯について,横断者の進入速度,位置関係を考慮した詳細な分析を行うことが課題 といえる.

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累積横断者率

青開始からの経過時間[秒]

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9. 総括 

本年度は,今後開発するシミュレーションモデルに必要となる挙動モデルの構築のために,主として事 故多発交差点においてビデオ観測調査および走行実験を行い,安全・円滑上重要となる信号切り替わり時 の車両挙動データを収集し,以下の項目に着目しモデル構築を進めた.

(1) 停止/通過挙動の分析:信号切り替わり時の停止線通過タイミングを観測し,黄・全赤時間中の駆け込 み進入の状況について,交差点構造および信号制御との関連を考慮したマクロ的分析を行った.また,停 止先頭車両および通過最終車両それぞれの走行軌跡を信号切り替わり前から観測し,信号切り替わり時の 加減速特性について分析を行った.その結果,複数交差点において車両の停止/通過挙動を分析した結果,

矢印制御において直進青矢に続く黄表示の後に全赤表示が挿入されている場合には,停止/通過判断タイミ ングが全赤開始までにずれ込み,停止車両であっても加速傾向にあるなどといった知見が得られ,これら の実態を表現可能なインターグリーン時の停止/通過選択モデルの構築を行った.

(2) 交差点通過時の速度変動の分析:交差点右左折時の速度変動プロファイルを観測し,道路構造および 車両の交差点進入タイミングとの関連分析を行った.その結果,交差点規模が大きいほど右左折時におけ る速度変動のばらつきが大きいことを確認した.

(3) 交差点内の車両動線の分析:走行軌跡を定量的に分析するために,右折走行軌跡を複数の線形要素で 分割近似することによりパラメータ化し,これらパラメータ値と交差点の道路幾何構造および車両の走行 条件との関連について精査した.その結果,右折走行軌跡については,交差点の内部空間が大きい場合に は軌跡の曲線半径とそのばらつきがいずれも大きくなること,交差点進入速度が高くなるとショートカッ ト軌跡となることが明らかとなった.また,左折走行軌跡については,隅角部の隅切り半径,交差角度の 影響が大きいことが示された.これらの分析結果を踏まえ,道路構造および右左折車両の進入条件に応じ た右折時および左折時の走行軌跡を確率的に推定可能なモデルの構築を行った.

(4) 交差方向車両の発進挙動の分析:右折矢終了後の交差側青開始時における先頭発進車両の発進挙動に ついて,交差方向車両の青開始時の発進タイミングを観測し,車両の発進遅れ,交錯点通過までの所要時 間,速度変動などについて分析を行った.その結果,青開始時に交差点内に残留(交差側の全赤時間中の駆 け込み車両)が存在することで発進遅れが増大し,その影響は通過車両までの距離が近いほど大きくなるこ とが明らかとなった.すなわち,大規模交差点ほど通過最終車両の影響を受けにくいことでドライバーの 個人差の影響が現れやすく,発進挙動のばらつきが大きくなることが示された.さらに,ここでの分析結 果を踏まえ,青開始後の発進タイミングを確率的に推定するモデル,および発進時の加速度を推定するモ デルの構築を行った.

なお,車両挙動分析については観測対象交差点のサンプル数の制約から道路構造の影響,黄・全赤時間 長の影響について十分に明らかになっていない点もあり,今後精査が必要である.これらについては既往 の観測実施交差点の他に継続的に観測調査を実施し,分析を進めていくことが課題である

また,これら信号切り替わり時の車両挙動分析,およびモデル構築とともに,調査対象交差点において 事故データが参照可能な場合には,車両挙動の分析結果と実際の事故発生状況について考察を行った.い ずれの交差点においても発生事故類型は追突事故および右左折車×車両事故が大半を占めており,信号切 り替わり時のドライバーの停止/通過挙動,右左折車と横断者との交錯事象を取り扱うことの重要性が示唆 された.特に,矢印制御の交差点において直進矢の後に全赤時間が挿入されていたり,右折矢後の全赤時 間長が必要以上に長い場合には,ドライバーの停止/通過判断にばらつきが生じたりすることで,追突事故

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の危険性が生じていると考えられる.さらに,歩行者挙動モデル,および車両・歩行者の相互回避行動モ デルの構築に必要となる歩行者挙動データ収集を行い,基本的な特性について分析を行った.分析結果か らは,横断者交通量の多寡にもよるが,横断者が疎らな状況での交錯が多数発生していることが示された.

本データを用いた歩行者挙動,および歩行者・車両相互の交錯に関する詳細な分析については今後の課題 である.

以上のように,本年度の研究実施内容については,いくつかの課題を残しているものの当初想定してい た目標はおおむね達成することができたといえる.本研究の成果は,信号交差点の計画・設計と信号制御 の各段階において,安全性を担保した合理的な信号交差点設計を進めるにあたって有用であり,今後シミ ュレーションモデルを構築する際に必要不可欠である.

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