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無学年制(米)からの影響とそれによる変容

第3章  オランダにおけるイエナ・プランの受容と変容 第1節オランダにおけるイエナ・プラン

第2節  無学年制(米)からの影響とそれによる変容

1 アメリカの無学年制

 無学年制における明確な理論付けと実際の運営にあたっての指針は、カリフ ォルニア大学教授のJ.グラッドラツド(John.I.Goodlad)教授とハーバード大 学講座担任教授のR.アンダーソン(R・bet.H.Ander・㎝)教授の著書、<Th・

No㎎raded Elementary Schoo1(邦訳;学校革命一無学年制による改革一)>によ って、1959年に初めて与えられた(註1)。

 では無学年制とはどのようなものなのだろうか。端的にいえば、無学年制と は一人ひとりの子どものあらゆる違い(子ども間及び多子ども内の領域毎に見

られる違い)に着目し、それぞれの違いにもとづく基準を設定し、画一的な学 年制の枠を取り払って、子どもたちの持つ潜在的な可能性を最大限に伸ばすよ

う工夫された学校組織である。そのために学校組織は、すべての子ども連の継 続的な、途切れることのない、進歩を可能にしなければならない(註2)。

 以下には、グラッドラドとアンダーソンが、(I)無学年制を志向した理由、

そして、(1I)無学年制が主張する内容、の2点について述べていく。

 まずは彼らが、(I)無学年制を志向した理由、を以下に示す(誌3)。

一、ディーイなどにみられる㌧教育目標を在来からの単に知的・道徳面からの   考察に加えで、子どもの健康や個性や社会的適応を重視していこうとする   広い視野からの考察

二、教授の目的を知識の獲得よりもむしろ思考の発達に置きその見地から教育   の内容を再編成しようとする学習理論の展開

三、子どもの間における身体的、社会的、知的発達の広い開きへの認識 四、学年制に伴う諸制度、とくに進級落第制度の諸検討

 このうち、三と四の<子どもの間における発達の差>、<学年制に伴う進級 落第制度>に関して、彼らは自らの研究結果か一 轤「くらか言及している。

 まずは、<子どもの間における発達の差>についての彼らの見解である。

彼らは、アメリカの平均的ないくつかの小学校における研究結果から、<子 どもの個人間及びひとり一人の子どものなかの領域毎の差の実態>を、①学習 への準備度(精神年齢)、②成績、③身体的発達度、④社会的熟成度、などの観 点で以下のように主張している(詩4)。

一、第1学年に入学する子ども.間には、①学習の準備度(精神年齢)には約4   年の差(3〜4年の差)がある。またそれは、第2学年に進むにつれてさら   に大きくなる

二、第1学年の子どもが学校の授業を受けるようになってから間もなく、子ど   もの②成績の差が、白身の①学習の準備度(精神年齢)の差に近づき始め   る

三、子どもが小学校中学年に達する頃には、子ども間の①学習の準備度(精神   年齢)と②成績の差(ほとんどの領域)は、その子どもの学年数と同じか、

  それ以上になる

 (つまり①学習の準備度(精神年齢)と②成績の子ども商の差は、上位と下   位で、第4学年であれば4年間以上、第5学年であれば5年間以上、第6   学年であれば6年間以上、あるということである)

四1個人内の領域間(教科間および同一教科内の)の差も大きく、特に成績上位・

  下位にある子どもの方ボ平均的な成綾の子供よりもその傾向が強い

五、③身体的発達度、④社会的熟成度に関しても、同一の暦年齢の子どもであ   つても大きな差がある

  (③身体的発達度に関しては体重・陸上競技、④社会的熟成度に関しては    ソシオメトリー(註5)による調査結果から)

六、ひとり一人の子どもは一定の速度で進歩するのではなく、ある時は急に進   度を速めたり、停滞するという様に不規則な形の進歩を示す

  (①学習への準備度(精神年齢)、②成績、③身体的発達度、④社会的熟成    度、のすべてにおいて)

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 彼らの研究結果からは、暦年齢が同じ子ども同士でも①学習への準備度(精 神年齢)、②成績などにおいて、学年標準の上か下に大きく拡がっていることや、

個人の領域内においても同じように差ができる、ということなどが例える。

 次に<学年制に伴う進級落第制度>についてである。学年制には、、個人差に 応じた教育的措置のようにみえる落第制度がある。しかし、それについて彼ら は、それまで行われてきたい・<つかの先行研究も吟味し、それは子ども達にと ってあらゆる側面において望ましくない影響を与える、としている。

根拠となった研究成果は以下の通りである(註6)。

一、落第生は上級学年の者と付き合う傾向がある

二、一般的にいって、落第生は正規に進級した者から社会的に認められず、受   け入れられない

三、落第生は友達付き合いが悪く、意地悪で、同級生をいじめるという評価を   受ける場合が多い

四、抽出した落第生の徹底的な分析によって、自信・自尊心・一般的幸福感を   驚くべきほど欠いていることが明らかである

 このような結果から、落第した子ども達はその経験により、社会的適応とい う面で大きな損失をこうむる、ということ読み取れる。

 次に、(1I)無学年制が主張する内容、についてである。それについては、<

学年制の撤廃と同質性〉、<個人のカリキュラムと成績>の2つに絞って以下

に説明する。

 まずは、<学年制の撤廃と同質性>についてである。上記の<子どもの間に おける発達の差>に示したように、同一年齢の子どもであっても、発達の様々 な側面において大きな差(開き)があることが明らかになった。このことを踏 まえると、年齢別学年学級において5年生を担当する教師は、3〜9年生の子ど も遠を同じくくりにして扱っているとも言える。従って、4年生や5年生という 呼び名は実質的には無意味なものであり、子ども遠の実態を考えた時、私たち は子ども連の進歩は長い目で見なければならず、一定の期間に一定の内容を一同

r一フ速度で学び進んでいくことを前提とする(それを要求する)<学年制>の

不合理さは明らかであり、子どもの実態と学年基準は両立しがたいものである

(註7)。

 また、一般的に学級編成において同質性の高い子ども達で構成しようとする

(EX能力別学級)する試みがよく見られる。しかしこれについても、<子ども の間における発達の差>に示したように、個人間や個人内の領域毎に大きな差 があることから、何らかの同質性を基準にして学級編成することは無意味に等 しい。ただ、読む、言語という能力は重要かつ他の能力とも深く相関している ため、その能力を基準とした学級編成は一定の意味がある(註8)。

 次に<個人のカリキュラムと成績>についてである。繰り返し述べてきたよ うに、同年齢・同学年であれ子どもによって学習の到達段階は大きく異なる。

よって学年毎に到達目標を定めるのではなく、3年間なら3年目での、9年間な ら9年目での全期間を通じた到達目標(概念・技能・価値)を定める。さらに そこに到達するまでのカリキュラムは多子どもに合わせて設定する。そのため、

教師は何を何時数教えるかではなく、多子どもがどのような概念・技能・価値 をどの程度学んでいるのかを把握する必要がある。従って、優秀な子どもは、

学年のレッテルを無視して先に進むよう奨励される。ただ、どの程度指導計画 を個別化できるかは教師の裁量にかかっており、疑問もある。また、成績評価 に関しても個別化されたものになっており、無学年制の学校では、従来の数字 や記号のみの成績通知の方法に代わって、個別化され、文章や保護者との面接

による成績通知の方法をとっている(註g)。

2 基幹集団(学級)と無学年制の相違点

 以下からは、クラッドラッドとアンダーソンの提唱した無学年制は、ぺ一夕 ーゼンの提唱したイエナ・プランがオランダヘと受容される際にどのような影 響を与えたのか、またそれは、オランダのイエナ・プランのどのような点に見

られるのか(変容の内容)について考察する。

 まず、無学年制がべ一夕ーゼンのイエナ・プランのどの部分に影響を及ぼし オランダのイエナ・プランとして変容したのかということに関し、筆者の仮説 を述べる。ぺ一夕ーゼンのイエナ・プランでは、基幹集団(学級)というもの

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を提唱している。これについては第2章の第3節で示したように、ぺ一夕ーゼ ンは、どの年齢の者を一緒にするのが良いか、年齢の幅はどの程度にすべきか、

という実験を重ね、下級集団は第1〜3学年、中級集団は第4〜6学年、上級集 団は第6〜8学年、青年集団は第8〜10学年の子どもから編成することが望まし いとしている。これに対しオランダのイエナ・プランでは、<イエナ・プラン 20の原則>の第16項において「集団の構成に関し、学校では、子どもが互いに 学び合い助け合うという目的のもと、年齢や発達のレベルに違いのある子ども 達のグループが慎重に考えられたうえで造られる(P.67)」と述べている。また、

オランダのイエナ・プラン協会HPを見ると、基幹集団(学級)の編成は3年齢 ずつが基本になっているが、<いくつかのイエナ・プラン学校は学級において

は、構成する子どもの年齢の幅を変更し、上記に示したものとは違う新たな学 級形態を模索している。>と記されている。つまり、ぺ一夕ーゼンのイエナ・

プランでは、基幹集団(学級)を無条件で3年齢ずっとしていたのに対し、オ ランダのイエナ・プランでは、ぺ一夕ーゼンのイエナ・プランを継承し、基幹 集団(学級)編成を基本的に3年齢ずっとしている点は例えるが、実際は学校 の当事者に委ねられ、その編成はべ一夕ーゼンのイエナ・プランに比べ、より 柔軟なものとなっている。この基幹集団(学級)編成の変容という部分に無学 年制の影響があると考えられる。

 以下、それについて検討する。まずこの課題を考察するうえで押さえておか なければならないことは、そもそもぺ一夕ーゼンのイエナ・プランが提唱され る上で、無学年制からの影響はなかったのかということである。これについて は、オランダのイエナ・プラン協会がオランダのイエナ・プランに影響があっ たと主張する無学年制は、ぺ一夕ーゼンのイエナ・プランより数十年後に提唱 されたものであることから、すでにそこに無学年制の影響があったとは当然考 えられない。ただ、ぺ一夕ーゼンのイエナ・プランでは、上に示したように1 つの基幹集団(学級)において3年の年齢差がある子ども達が一緒に生活をし、

そこで3年過ごすと次の段階の基幹集団(学級)へ進学することを主張してい る。このことからぺ一夕ーゼンのイエナ・プランは、従来の年齢別学年学級を 廃止し1学級を3年間としたこと、というその表面的な事実においては、無学 年制の先駆的なものであり類似したものである、と言えるかもしれない。また