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⑵ 著 者

ドキュメント内 法 文 化 論 序 説 ︵ 三 ︶ (ページ 48-51)

の比 較文 化論 の基 本的 立場 は、 欧米 対日 本に つい て、 遊牧 対農 耕の 両極 にお いて 捉え よう とす ると ころ にあ る。 即ち

、 遊牧 の民 は、

﹁苛 烈き わま りな い自 然と

、放 置す れば 食い 合い 殺し 合う 人と 人、 徹底 的略 奪と 全村 皆殺 しの 如き 惨劇 のく りか えし であ った

﹂。

﹁こ うい った 情況 のな かに あっ て、 人が 生存 して ゆく ため に要 求さ れる 精神 は、 頼る もの は自 己一 人と いっ たあ くな き自 立の 心構 えと

、も うひ とつ 共存 のた めの 知恵 とし ての 契約 の精 神で あっ た﹂

︵六

〇頁

︶。 そし て﹁ 個と 個と の断 絶﹂ とそ こか らく る﹁ その 断絶 を超 えし める べき イデ アへ の憧 れ﹂ がヨ ーロ ッパ 思想 の本 質に 秘め られ てい る。

﹁こ うい った 人と 人と が共 同の 生を 分か ちあ って ゆく ため には

…… 共存 のた めの 橋 をか けね ばな らぬ

。そ の橋 こそ が…

…﹁ 愛﹂ と呼 ばれ るイ デア であ った

六二 頁︶

。﹁ 自律

﹂﹁ 個﹂

﹁契 約﹂

﹁愛

﹂な どの 諸項 目が 欧米 人の 基本 的人 間認 識の 仕方 であ った

。 これ に対 し、 農耕 の民

、即 ち﹁ 日本 の共 同体 は…

…そ の中 心に 聖な る共 同体 の神 をい ただ いた

、き わめ て閉 鎖的 にし て神 聖な る小 宇宙 であ った

﹂。 日本 の個 人は

﹁共 同体 の一 員﹂ とし て集 団の 構成 要素 にす ぎず

、共 同体 にコ ミ

ット する こと によ って 平和 にし て快 適な る生 活を 送っ てき た。 この よう な連 帯の 原理 は﹁ 和﹂ の哲 学︵ やっ ぱり で てき た・ 筆者 で︶ あり

、﹁ 人間 性の 貴さ も、 醜さ も、 集団 とい う依 存母 胎の ダイ ナミ ック スの なか で、 つね に稀 薄 化・ 類型 化さ れて ゆく

﹂。

﹁日 本の 神は

、…

…も とも と共 同体 の神 であ り、 共同 体と のか かわ りに おい て示 現す るの がそ の本 来の 姿で あっ た﹂

。そ れゆ え、 神は 共同 体︵ ムラ

︶の 全人 格的 支配 への 契機 をも ち、 ムラ 論理 の象 徴と なっ た。 この よう な神 と 人と の全 人格 的支 配に よっ て、 ムラ びと の﹁ 集団 論理 性﹂

﹁他 律性

﹂﹁ 受身 性﹂ は強 化さ れて ゆく

。神 の意 志と し て、 個の 論理 の否 定、 個性 の廃 棄が 要請 され

、ム ラび とは 共同 体を 離れ て個 人で ある こと は許 され ない ので ある

︵ム ラは 今も ある のだ ろう か?

︶。 土居 健郎 の﹁ 甘え

﹂に よれ ば﹁ 自他 の分 離の 事実 を止 揚し

、も っぱ ら情 緒的 に自 他の 一体 の情 緒を かも し出 すも の﹂ で、 神と 人と の関 係は

、そ のま ま人 と人 との 関係 にほ かな らず

、現 実処 理と して の契 約は まっ たく 無用 のも の であ る。 こう いっ た人 間関 係に おけ る自 己実 現の 方法 は、

﹁他 人と の連 帯﹂ にお いて 現実 化し よう とす る﹁ 自然 展 開﹂ 的方 法で なけ れば なら ない

。自 己実 現を

﹁自 我﹂ の否 定に おい て現 実化 しよ うと すれ ば、 宗教 的・ 哲学 的思 索 の方 途と して

﹁無

﹂の 思想 に結 実さ せる ほか はな い、 とい う。 ただ し、 仏教 的﹁ 空﹂ 観、 老荘 的﹁ 無﹂ の思 想か ら いえ ば無 反省 な重 ね合 わせ にす ぎな いと し、 日本 的﹁ 無﹂ は中 国の

﹁空

﹂﹁ 無﹂ とは 重な り合 わず

、日 本人 が練 り あげ た独 自の 価値 概念

・思 想で ある

、と さえ 言い 切っ てい る︵

!︶

︵一 部四 章よ り︶

。つ まり は中 国思 想の 和風 化

︵?

︶と いい たい ので あろ うか

やま とこ とば の﹁ さだ め﹂ は前 世か らの 決ま り・ 運命 を指 して いる

。そ れは 人間 存在 から 超自 然的 存在 に関 する 恒常 不変 の論 理に まで 広げ て使 われ てい る。 同様 に、 日本 人の 行為

・判 断が 依拠 する 原理 を正 当化 する 動機 を示 す﹁ もの

﹂︵

﹁人 生は 空し いも

﹂﹁ 出掛 けに 客

が来 たも です から

﹂な ど︶

、当 然に 口に 出し て言 うべ き言 葉を 指示 する

﹁も の﹂

﹁物 も言 わず に…

…﹂

﹁…

…に 物申 す﹂

、︶ 不変 的も しく はさ だめ にふ れて 起こ る情 感を 表わ す﹁ もの 思ひ

﹂﹁ もの のあ はれ

﹂、 さら に﹁ 世間 の道 理﹂ を

﹁も のの 道理

﹂と いい

﹁も のわ かり がい い﹂

﹁物 の心 を知 らぬ

﹂と いう 使い 方に なる

。ま た、 世間 の役 にた たな い

﹁も のの 用に 立た ない

逆は 役に 立つ

﹁も のに なる

﹂︶

、自 分の 支配 に組 み入 れる 意味 の﹁ もの にす る﹂ があ り、 超自 然的 存在 物を さす

﹁物 にお そわ れる

﹂の ほか

、﹁ もの おも しろ い﹂

﹁も のか なし い﹂ とい う使 い方 では 存在 にか かわ る情 感を 暗示 して いる

、と いう

︵二 部一 章よ り︶

﹁も の﹂ が原 理的

・法 則的

・不 変的 な﹁ 規範

﹂の 世界 の言 葉で ある のに 対し

、﹁ こと

﹂︵ 言・ 事︶ は﹁ 非原 理・ 一回 性・ 可変

﹂の 意味 をも つ言 葉で ある

︵﹁ こと わざ

﹂と は言 葉の 内的 威力 によ って 人を 動か す言 語の 技芸

︶。 日本 人は 生起 変転 する

﹁こ と﹂ の世 界に 敏感 に反 応し

、さ まざ まな 反応 の仕 方を 示し たも のが

﹁こ とわ ざ﹂ であ る︵﹁ 標語

﹂ も同 じ︶

。標 語は 一回 的な 性質 のも ので

、﹁ こと

﹂に 当た って 使わ れた ら打 ち棄 てら れて しま うの であ る。 標語 は、 言語 に内 在す る言 霊の 力を かり て、

﹁こ と﹂ 的世 界を ひと つひ とつ 処理 して いこ うと する 言葉 であ る。 間投 詞の

﹁ヨ イシ

﹁コ ラシ

﹁ド ッコ イシ

﹂ も、 古い

﹁こ と﹂ をな し終 えた のち 新し い﹁ こと

﹂に 立ち 向か う力 を呼 び込 む移 行の 過程 に発 する 一種 の﹁ はや し﹂

﹁生 やし

﹂と 同根 の生 成を 促進 させ る言 葉で

、民 謡の 例を 考え て みよ

︶で ある

。 先の

﹁こ と﹂ を終 え、 新し い﹁ こと

﹂に 向か う姿 勢を みせ よう とい うと きに は、

﹁そ れで は﹂

﹁さ らば

﹂︵

﹁そ うで ある なら ば﹂ の意 味︶ など の別 れの 言葉 を用 いる

。こ うい う態 度を 表現 する 言葉 は日 本人 の行 動様 式に 特有 のも の で、 列車 の出 発風 景に は古 い﹁ こと

﹂に 訣別 し新 しい

﹁こ と﹂ へ出 発す る、 例え ば﹁ 発車 のベ ル﹂

︵ヨ ーロ ッパ では 停車

・出 発に 際し 無音 であ る︶

﹁停 車時 のチ ャイ ム﹂ があ り、 また ニュ ース の導 入と 終結 の場 面に おけ る案 内︵ 音︶

、 式典 での

﹁起 立・ 礼﹂ の例 にも みら れる

︵二 部二 章よ り︶

﹁や まと こと ば﹂ は法 律用 語と 余り 関係 がな いと 思う 読者 がい るか も知 れな い。 法律 用語 に翻 訳語 が多 いの は確 かで ある が、 本稿 での 関心 事が 日本 文化 から 法を みる とい う点 にあ る以 上は

、日 本文 化の 一環 であ る﹁ やま と こと ば﹂ も検 討の 対象 にせ ざる をえ ない こと に留 意し てい ただ きた いと 思う

。 それ にし ても 外圧 のな い島 国の こと

、﹁ やま とこ とば

﹂の 心理 が現 代ま でそ の影 響を 留め てい ると いう 点を 確認 しえ たこ とに は一 驚す る。 即ち

、﹁ 自然 展開 的﹂

、﹁ 自発 志向 の心 情﹂

、﹁ 他律 的・ 受身 的﹂ 心理

、﹁ 自我 の否 定﹂ な ど、 法文 化論 に響 き合 うキ ー・ ワー ドが 打ち 出さ れて いる こと に注 目し たい

最後 に、 山口 明穂

﹃日 本語 の論 理

ドキュメント内 法 文 化 論 序 説 ︵ 三 ︶ (ページ 48-51)

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