元監 修﹃ 比較 思想 事典
﹄に よれ ば、
気 は﹁漢 字文 化圏 にお いて
、哲 学・ 思想 のみ なら ず、 あら ゆる 文化 の基 底に 存す る語
。春 秋・ 戦国 時代 から 儒家
、道 家を はじ めと する 各学 派の 文献 に登 場し た﹂ と。 中国 にお い
ては
、①
﹁見 えな い﹃ ある もの
﹄﹂
。天 地自 然の 間に あっ て威 力を もっ て確 かに 存在 する もの
。②
﹁あ らゆ る現 象の 根源
﹂、
﹁万 物を 構成 する 究極 極微 のア トム 的要 素﹂
、﹁ 人間 の精 神の 源泉
﹂。
③万 物万 象の 根源 であ る気 は宇 宙に 遍 満し て凝 集・ 拡散
・流 動す るこ とに より 一切 の現 象が 生起 する
、と 語義 を説 明す る。 それ は﹁ 自然 の気
﹂・
﹁人 間の 気﹂
・陰 陽・ 五行 のよ うな
﹁原 理と して の気
﹂の 三種 に分 化し てい る。 ただ し宋 以後 の性 理学 では 気よ りも 理を 根 源の 存在 原理 とし
︵朱 子︶
、気 は物 質的 根源 とし ての 性格 を確 立し た。 特に 医学 では 体内 の生 命エ ネル ギー を意 味 し気 を養 うた めの 身体 技法 が開 発さ れた
、と いう
。 日本 にお ける 気は
、﹁ 心の 持ち 方や 情緒
、な いし 一定 の精 神状 態﹂ を、 もし くは
﹁物 事の 漠然 とし た状 態﹂
︵雰 囲 気・ 気配
︶で ある
、と
。改 めて
﹃国 語大 辞典
﹄に よれ ば、
①空 間に あっ て目 に見 えな いも の。 空気
、大 気、 湿気
、 香気
、臭 気、 寒気
、暑 気、 暖気
、熱 気、 水蒸 気。
②く うき
。気 化、 換気
・通 気、 気圧
・気 温・ 気体
・気 団・ 気泡
・ 気流
・気 根・ 気孔
。③ いき
。気 息、 気絶
、口 気・ 酒気
・気 管。
④心 もち
・心 のは たら き。 意気
・心 気・ 志気
・才 気・ 気魄
・気 鋭・ 鋭気
・俠 気・ 狂気
・豪 気・ 剛気
・士 気・ 稚気
・覇 気・ 平気
・本 気・ 勇気
・短 気、 気炎
、気 概、 気 質・ 気性
、気 風、 気力
、気 脈。
⑤自 然界 の目 に見 えな いは たら き。 天気
・寒 気・ 磁気
、気 候・ 気象
。⑥ 物を 動か す 根元 のは たら き。 気勢
、正 気、 精気
、元 気、 病気
、気 運。
⑦け はい
、よ うす
・お もむ き・ いき おい
。活 気・ 生気
・ 和気
・陰 気・ 陽気
・鬼 気・ 怒気
・殺 気・ 語気
・霊 気・ 邪気
、雰 囲気
、気 色、 気味
。⑧ 二十 四気
・節 気︵ 小寒
・大 寒・ 立春
・雨 水・ 啓蟄
・春 分・ 清明
・穀 雨・ 立夏
・小 満・ 芒種
・夏 至・ 小暑
・大 暑・ 立秋
・処 暑・ 白露
・秋 分・ 寒露
・霜 降・ 立冬
・小 雪・ 大雪
・冬 至︶ の使 い方 があ る。
﹁気
﹂の 意義 とし て、
︹一
︺変 化、 流動 する 自然 現象
。ま たは
、そ の自 然現 象を 起こ す本 体。
①風 雨。 寒暑 など
、 天地 間に 現わ れる 自然 現象
。② 陰暦 の二 十四 気︵ 前述
。︶
③万 物を 生育 する 天地 の精
。天 地に みな ぎっ てい る元 気。
④空 気。 大気
。⑤ 雲、 霧、 煙な どの よう に、 上昇 する 気体
。⑥ その もの 特有 の味 わい
。か おり
。香 気。
︹二
︺生 命、
精神
、心 の動 きな どに つい てい う。 自然 の気 と関 係が ある と考 えら れて いた
。① いき
。呼 吸。
②精 気。 生活 力。
③ 心の はた らき
。意 識。
④精 神の 傾向
。気 だて
。気 ごこ ろ。
⑤緊 張し た、 さか んな 精神
。気 力。 気勢
。⑥ 何事 かを し よう とす る心 のは たら き。 つも り。 考え
。意 志。
⑦あ れこ れと 考え る心
。心 配。
⑧感 情。 気持
。気 分。
⑨興 味。 関 心。 また
、人 を恋 い慕 う気 持。
⑩十 分に はっ きり とは しな いが
、そ うで はな いか と思 う考 え︵ 気が する
。︶ 以上
、 その 使い 分け が困 難な ほど 多義 的で ある
。一 般に 使わ れて いる 用例 をあ げて みよ うと 思っ たが
、そ の数
、何 と一 五
〇弱 とい うの には 開い た口 がふ さが らな い思 い。
⑶
とこ ろで︵以 下、 赤塚 行雄
﹃﹁ 気﹂ の文 化論
﹄一 九九
〇年 の助 力を えた
︶、
気 と 心 は どう 違う のか。﹁ 気は 心か ら﹂ とい う。 つま り、
心 は 内に 閉ざ され てい るが、
気 は外 に向 かっ て動 いて いる さま であ る。 内な る 心 は 気 に よっ て外 に現 れる とい えば 判り 易い かも しれ ない。だ から
、﹁ 人の 間﹂ では
﹁気 を使 う﹂ が、 心ま では ふみ こま ない
︵あ るい はふ みこ めな い︶
。外 に現 れる から
、そ の具 合︵ 味︶ が判 り、
﹁気 味が 悪い
﹂な どと いう
。
﹁気 心が 知れ ない
﹂と いう
。こ れは 気と 心が 合っ てい そう もな く判 らな いの 意で あろ う。
﹁虫 が好 かな い﹂
﹁虫 が おさ まら ぬ﹂ も﹁ 気に くわ ない
﹂の 代り だろ うが
、気 の中 味が 判ら なく て、 虫に 代り をさ せた のだ ろう
。 仲間 には
﹁気 がと がめ る﹂ こと はせ ず、 特に
﹁気 の合 う﹂ 者と は﹁ 気分 よく
﹂﹁ 気の すむ
﹂ま で語 り合 うと いう ふう に、 気が 入っ てい なけ れば
、﹁ その 気﹂ にな れず
、気 がく じけ れば
、気 が滅 入っ てし まう
。相 手は 気を 損じ
、 気が 害さ れる
。
気 を めぐ る用 法は 無尽 蔵と いい たい くら いだ。日 本人 なら 判る が、 これ らの 言葉 の外 国語 訳は 不可 能で あろ う。 そこ には
、心 理と か論 理で は考 えら れな い微 妙な ニュ アン スを 含ん だ日 本人 の心 的情 況が 存在 する よう であ る。 もっ とも
﹁気 がな い﹂ とか
﹁気 を引 く﹂ とい うと きは
、
関心 の こと であ り、﹁気 まず い﹂ とか
﹁気 を悪 くす る﹂ は
感情 の こと であ り、 外国 語訳 は可 能で ある だろ う。