アの 東端 にあ って
、当 時、 その 中華 文明 の漢 字し か継 受し えな かっ たと いう 事情 を読 者は 理解 する 必要
があ ろう
。し かし
、中 国語 では 主語 のあ とに 述語 がく るし
、中 国語 より 多く の助 詞・ 助動 詞が ある
。と りあ えず
、 漢字 だけ で日 本語 表記 をす るに は工 夫が いる
。﹃ 古事 記﹄ の序 文は その 苦労 を語 って いる わけ で、 漢字 の表 意性 を 無視 して 音だ け採 用す るこ とに した
。助 詞も 助動 詞も
、そ して 敬語 表現 もで ある
。 それ が万 葉仮 名で ある
。夜 麻︵ やま
・︶ 可波
︵か わ︶
・波 奈︵ はな な︶ どな ど。 万葉 仮名 は漢 字一 字で 一音 だが
、 散︵ さ︶ とい うよ うに 音の 一部 を省 略す るこ とも ある し、 訓読 みの 読み だけ を使 う︵ 間は
﹁ま
﹂、 跡は
﹁と
﹂な ど︶ こと もあ る。 つま り、 万葉 仮名 は漢 字の 意味 をす て﹁ 読み
﹂だ けを 借り る一 字一 音で ある
。前 述の 古文 章で ある 漢 文・ 変体 漢文 に続 いて
、漢 字の 訓主 体の 和文
︵日 本語 の語 順に 漢字 を並 べる
︶に
て にを は を送 り、 一字 一音 の音 仮名 表記 をつ くり だし たの であ る︵ 二二︱二 四頁
︶。 しか し、 平安 時代 の五 国史
、格 式、 学術 書、 仏教 注釈 書は すべ て漢 文で ある
。ま た﹃ 凌雲 集﹄
﹃経 国集
﹄﹃ 文華 秀 麗集
﹄な どの 文学 も漢 詩文 であ る。 ただ その 読み 方は
、い わゆ る﹁ 返り 点﹂ を付 した 訓読 であ った
。そ して 漢字 の 右上
・右 中上
・右 中下
・右 下に
﹁・
﹂を 記す
﹁ヲ コト 点﹂ とい う助 詞の 書き 込み を考 案し た。 こう して 漢文 を和 語 で読 み下 すた めの 工夫 の末 に生 まれ たの が、 万葉 仮名 の一 部分 をと った
﹁カ タカ ナ﹂ の発 生で あっ た。 こう して 漢 字カ タカ ナ交 じり 文が 誕生 した
︵例
・﹃ 今昔 物語
﹄︶
。ま た万 葉仮 名の 字形 を崩 し草 体化 して
﹁草そう 仮が 名な
﹂が つく られ
、 それ をさ らに 崩し たの が﹁ ひら がな
﹂で ある
︵五 四︱ 七二 頁︶
。 これ は日 本人 の創 意工 夫性 の豊 かさ を示 す恰 好の 話題 であ ろう
。漢 字の 表意 性と 万葉 仮名 のよ うな 表音 性と の両 天秤 に加 えて
、﹁ カタ カナ
﹂﹁ ひら がな
﹂の 発明
、さ らに
、漢 字に つい ても
、俗 字︵ 例・ 恥↓ 耻、 佛↓ 仏な ど︶
、略 字
︵例
・應
↓応
、賣
↓売
、學
↓学
、黨
↓党 など
︶を つく り、 果て は日 本人 がつ くり 出し た国 字︵ 例・ 俤おもかげ
、凩こがら
、し
峠とうげ
、榊さかき
、 笹ささ
、躾しつけ
、辻つじ
、閊つかゆる
、鱈たら
、鴫しぎ
、麿まろ など
、訓 だけ で音 はな い︶ とい うよ うに
、日 本人 の知 恵を 察す るこ とが で
( )
きる
。こ うし
U
た日 本語 の使 いご なし は、 一方 で豊 かな 語彙 を利 用し た言 葉遊 びを 生み
、他 方で は感 性の 細や かで 妙味 ある 表現 を
工夫 する こと がで きた だけ でな く︵ 感性 の話 題は 第五 節︶
、近 代以 後に 移入 され たア ルフ ァベ ット の処 理に つい て片 仮名 が巧 みに 利用 され たこ とは 周知 の通 りで ある
。
અ
いず れに せよ、日 本語 にと って は、 古今 を通 じて 漢字 は必 要欠 くべ から ざる もの であ り、 日本 語と して の漢 字・ 漢文 を解 説す る本 が必 要に なっ てく る。 この 場合
、字 形に よっ て漢 字を 知る こと
、字 音に よっ て漢 字を 知る こ とと いう 複式 タイ プの もの がな けれ ばな らな いこ とに なる はず であ る。
⑴
中国 では、字 形に よっ て漢 字を 知る
﹃玉 篇﹄
・﹃ 説文 解字
﹄、 字音 によ って 漢字 を知 る﹃ 切韻
﹄、 漢字 の字 義を 説く
﹃爾 雅﹄ など があ って
、日 本で もそ のま ま用 いら れて いた が、 平安 期に なる と︵ 平仮 名・ 片仮 名の 発明 も行 われ るが
︶、 辞典 の編 纂が 行わ れる よう にな る︵ 以下
﹃日 本を 知る 事典
﹄よ り︶
。 空海
﹃篆 隷万 象好 義﹄ 三〇 巻︵ 八三
〇年
、︶ 菅原 是善
﹃東 宮切 韻﹄︵ 巻数 不詳 八五
〇年
、︶ 僧昌 往﹃ 新撰 字鏡
﹄一 二 巻︵ 九〇
〇年
、万 葉仮 名の 注記 に日 本製 漢字 四〇
〇余 を収 め和 訓︽ 日本 語読 み︾ の漢 和辞 典・ 国語 辞典 とし て最 古︶
、源 順
﹃倭 名類 聚鈔
﹄一
〇巻
︵九 三〇 年、 日本 最古 の意 義分 類体 の漢 和・ 百科 辞典
、漢 語に 漢文 の注 記を ほど こし 和訓 を万 葉仮 名で 付記
︶、 著者 不詳
﹃類 聚名 義抄
﹄三 巻︵ 一一 世紀
、部 首引 きの 漢和 辞書 で俗 字・ 通用 字・ 異体 字に も漢 文の 注や 万葉 仮名 の和 訓を そえ てい る︶
、橘 忠兼
﹃色 葉字 類抄
﹄三 巻︵ 一二 世紀
、日 常使 用の 和語
・漢 語を いろ は順 に区 分し
、そ れぞ れを 二一 部に 序列 し、 和訓
・用 法を 示し た国 語辞 典で
、寺 社の 縁起 に詳 しい
︶な どで ある
︵七 二八 頁︶
。 こう して
、平 安時 代に は本 義や 出典 を知 り、 自由 に言 葉を 駆使 し豊 かな 言語 生活 を楽 しん だこ とは
、み ごと な女 流文 学の 存在 によ って も知 るこ とが でき る。 目で 見、 心で 思っ たこ とを
、で きる だけ 完全 に描 きお おせ たと いう 日 本人 の言 葉に 対す る洗 練さ れた 感覚 を思 いし らさ れる とい って いい ので はな いか
。
⑵
やが て、 漢字 を表 音文 字・ 表意 文字 の二 様に 用い てい た日 本人 が、 漢字 を表 意文 字に、表 音文 字に は仮 名を 用い る﹁ 漢字 仮名 交じ り文
﹂を 思い 付く のは 時代 の流 れと もい える
。こ うし て、 平仮 名を 主に した もの
、片 仮名 を
主に した もの
、漢 字仮 名交 じり 文、 そし て漢 文体 と四 種の
、ま た﹁ 男こ とば
﹂と
﹁女 こと ば﹂ の使 い分 けを し、 さ らに は身 内・ 仲間
・同 僚・ 年の 上下
・場 の空 気に よっ て言 葉の 交わ し方 に気 を付 け、 時に 敬語 の用 法を 考え るな ど、 時代 を追 うご とに 日本 語は きめ 細か な妙 味あ る表 現法 を工 夫す るよ うに なっ た。 単純 にい えば
、外 国人 にと っ ては 聞き 方は 勿論
、使 い分 けに つい ては 大へ ん複 雑極 まり ない 語法 を理 解し なけ れば なら ない とい う状 況に なっ た ので ある
。 そこ で、 しば しば 引用 され る一 人称
・二 人称 の数 の多 さ、 そし て敬 語の 種類
︵尊 敬語
・謙 譲語
・丁 寧語 な︶ どに つ いて
、参 考の 程度 に紹 介し
、つ ぎに
、複 雑な るが 故に 器用 な表 現法 を娯 楽と して 楽し んだ
、い わゆ る
言葉 遊び を紹 介し よう と思 う。