早い 時期 に
感性 を とり あげ た論 著は︑山 本正 男﹃ 感性 の論 理﹄︵ 一九 七一 年︶ であ る︒
①ま ず︑
﹁感 性﹂ の意 味に つい て︑ 第一 に︑ 対象 から 触発 され る感 受性 であ り︑ 第二 に︑ われ われ の日 常生 活に おけ る欲 求・ 性向
・激 情と いっ た自 然本 性の 要求 全体 をい い︑ 第三 に︑ 美的 対象 に対 する 能動 的認 識で 美学 成立 の もと とな るも ので あり
︵一 六九
︱一 七〇 頁︶
︑本 書で 扱わ れる のは
︑こ の第 三の 意味 の感 性で ある
︒ その 基礎 付け につ いて は︑ 自然 説︵ 民族 伝説
・童 話・ 神話 など
︶と 精神 説︵ いわ ゆる 美学
︶が ある が︑ 美学 では
あ るべ き完 全な 感性 的認 識 のこ とで あり︑感 性と 理性
・自 然と 精神
=
の 統一 調和・未 分化 融合
︵シ ラー ま︶ で もが 予想 され てい る︵ 一七 五︱ 一七 七頁
︶︒ しか も︑ 西洋 近代 にお いて は美 的観 念に 分化 の傾 向が みら れる が︑ 芸術 の純 粋性 は美 の自 律性 に基 づい てお り︑ 感性 によ る単 なる 複合 的全 体で はな く︑ 法則 的構 造を 担う 全的 統一 が機 能 して いる
︑と いう
︒ かく して
﹁美 とは まさ にあヽ るヽ べヽ きヽ 完ヽ 全ヽ なヽ 感ヽ 性ヽ 的ヽ 認ヽ 識ヽ にほ かな らず
︑⁝
⁝こ の認 識に 規範 を与 える もの とし ての 美 学は
⁝⁝ 自由 芸術 の理 論と なる
﹂︵ 一七 五頁
︶︒ 換言 詳説 すれ ば︑ 美的 自律 性に よっ て把 握さ れた 芸術 の純 粋性 が︑ 感性 によ る対 立的 諸機 能を 構造 的統 一に 導い て︑ 人間 と対 象を つな ぎ︑ 美と 芸術 の統 一を 設定 する 場と なっ てい る とい うこ とに なろ う︵ 一八 七︱ 一八 九頁
︒︶
②と ころ で︑ 美的 法則 とい う感 性の 論理 構造 には
︑自 然中 心的
︱人 間中 心的
︑感 動的
︱直 観的
︑形 象的
︱理 念的 とい った 動的 契機 の三 種が あり
︑そ の類 型学 的考 察は どう か︒ さら に︑ 感性 の真 理︑ 即ち 美的 真理 の性 格に つい て 検討 する のが 当然 の課 題と なる
︒
この 点に つい て︑ われ われ がす でに 知り えた こと とい えば
︑感 性の 論理 とし ては
︑第 一に
︑作 品内 容に つい て主 張さ れた 経験 的表 現技 術︑ 例え ば︑ 遠近 法︑ 比例 と調 和︑ 点描 や色 彩分 割に よる 色の 視覚 混合
︑な どが ある
︒第 二 に︑ 感性 の先 験的
・認 識論 的な 論理 の性 格に つい ての
︑感 情移 入と か純 粋感 情や 直観 主義 に関 する 美学 があ り︑ 換 言す れば
︑わ れわ れの 経験 や現 実を こえ て︑ 体験 的明 証の 先験 性を 主張 する もの で︑ 全現 実性 秩序 の小ヽ 宇ヽ 宙ヽ 的ヽ 象ヽ 徴ヽ とい われ てい るも の︵ キュ ビス ム︶
︒そ して 第三 に︑ 美の 存在 論や その 形而 上的 意味 に関 わる もの であ る︵ シュ ー ル・ レア リス ム︶
︒ 何れ にし ても
︑
美 は︑ 感性 のダ イナ ミッ クな 作用 にみ られ る法 則に 従い︑体 験と して 直接 に確 実性 をも って 目の 前に 存在 する
︵原 文の 難解 な用 語を 平易 に説 いた つも りだ が?
︶と いう
︵一 九五 頁︶
︒そ れを 人間 の営 みと いう 観 点か らみ れば
︑﹁ 自我 の視 と問 いが あら たな 生の 場を 開き
︑生 の場 がま たあ らた な自 我の 視と 問い を導 くこ の無 限 の連 続は
︑け っき ょく 自我 が世 界を もつ こと
︑い や自 我が 自我 であ るこ と⁝
⁝に ほか なら ない
﹂︵ 一九 六頁
︶と
︒ 芸術 の場 にお ける 美的 関心 は自 我が 自分 の世 界を 持つ こと であ り︑ 感性 にと って 美的 とは
︑対 象か らく る感 受性 で はな く︑ 対象 を触 発し てあ らた な作 用に 高め る能 力を 指し てい ると いえ る︒
③前 述し た
心 とこ こで 述べ た 感性 と を比 較す れば︑東 西の
美 に 対す る関 心の 違い は明 瞭で ある︒こ の著 者か らみ た日 本の 芸術 論を 是非 とも 聞き たい と望 むの は筆 者だ けで はあ るま い︒ つい ては
︑﹁ 日本 民族 の美 意 識﹂
︵一 九七 八年 ミュ ンヘ ン大 学・ ハイ デル ベル ク大 学講 演︶
︑お よび
﹁わ が国 芸術 精神 の類 型的 特性
﹂︵ 同年 ミュ ンヘ ン 大学 講演 が︶ 掲載 され てい るの で︑ それ を紹 介し よう
︒ まず 前者 から
︒西 欧美 意識 の歴 史に は三 区分 の時 代的 特性 が見 出せ る︒ 即ち
︑古 典古 代に おけ る美
・善
・真 の諸 価値 の融 合︑ 中世 にお ける 聖な るも のに 規定 され る美 意識 の他 律性
︑ル ネッ サン ス以 降に おけ る諸 価値 の自 律性 で ある
︒そ れに 対し
︑日 本の
︑﹁ うつ くし
﹂は
︑語 源﹁ いつ くし
﹂が 神の 霊を 尊崇 し愛 護す る意 味で
︑
崇高 なこ とと
美麗 なこ と の二 つの 意味 に使 われ た︵﹃ 万葉 集﹄︒︶ 古代 歌集 での
﹁う つく し﹂ の対 象は 自然
︑そ れも 内的 世界 中心 のも ので
︑美 的自 然主 義的 表象 語で ある
︒奈 良時 代の
﹁う つく し﹂ の美 意識 は﹁ みや び﹂ で︑ 自然 感情 と生 活感 情と の美 的融 合が みら れ︑ 仏教 の影 響も あっ て
も のの あは れ の美 意識 が成 立す る︒ 平安 時代 には︑密 教の 影響 もあ って
︑﹁ 幽玄
﹂︑ 暗く 神秘 な美 に変 貌し
︑歌 論の 中心 的理 念と なっ た︒ 連歌
︑能 楽へ の影 響は いわ ずも がな
︑芸 道思 想と して 発展 する
︒鎌 倉・ 室町 期に は禅 の影 響 をう けて
︑
無 の世 界観・人 生観 をふ まえ た美 意識 とし て﹁ さび
﹂が いわ れた
︒閑 寂・ 枯淡 の意 味か ら︑ すべ て の矛 盾を 包括 する
﹁無
﹂の 情趣 であ る︒ 江戸 時代 は︑
﹁を かし
﹂︵ 愛 する の 意︶ が︑ さら に﹁ いき
﹂が 生ま れた
︒ つま り︑ 日本 の美 意識 の時 代的 文化 特性 には
︑﹁ みや び﹂
︑﹁ もの のあ はれ
﹂︑
﹁幽 玄﹂
︑﹁ さび
﹂︑
﹁を かし
﹂︑
﹁い き﹂ を中 心と する 美の 様相 がう かが われ る︵ 九三 頁︶
︒
④次 いで
美 的真 理 と 芸術 的真 理 の 一致 に つい てふ れる︵西 欧の 場合 は 分離 ︶
︒双 方を 結び つけ た 第一 の契 機は 美的 自然 主義
︵汎 神論 的自 然観 をふ まえ た人 間の 体験 的表 現と して の美 で︶
﹁風 雅﹂ とよ ばれ るも の︑ 第 二の 契機 には 風雅 にみ られ る﹁ 花月 の遊 び﹂
︑そ して 自然 に対 する 嘆賞 と自 然へ の帰 依が あり
︑伝 統美 と芸 術と の 結合 とい う第 三の 契機 が現 れる
︒ 伝統 的美 意識 にと って
︑美 的・ 芸術 的真 理は 人間 の自 我に よっ て創 作さ れる もの では なく
︑お のず から 成ヽ るヽ もの であ る︒ 換言 すれ ば︑ 芸術 創作 は素 材た る自 然を 支配 して 自己 の美 的理 念へ と形 成す るの でな く︑ 素材 の美 的生 成 発展 を助 けて 美的 理念 の顕 現に 関与 する こと とい える
︒創 作は 素材 を生 かす こと で︑ 茶室 建築 はそ の代 表例
︒
成 る 意識 にお いて 創作 と享 受は 重な り︑ 日常 生活・社 会生 活の なか で文 化機 能を 果た すの であ る︵ 九五 頁︶
︒ その 日常
・社 会生 活の 美意 識の 一つ とし て﹁ 芸道
﹂︵ 美的 生活 芸術 が︶ ある
︒そ れは
︑第 一に 芸術 の総 合的 教養 性 であ り︑ 第二 に個 我が 自然 と重 なる 大我 にな るこ とで ある
︒こ うし た﹁ 芸ヽ 道ヽ とヽ しヽ てヽ のヽ 芸ヽ 術ヽ は︑ まさ にモ ラル とし て
の美 的行 為に ほか なら ない
﹂︵ 九八 頁︶ と︒ 連歌
・茶 道な どは
﹁美 的共 同体 験の 場の 構成 であ り︑ 特殊 な芸 術価 値 の創 造で もな く︑ 日常 生活 その もの の美 的深 化で ある
﹂︒
﹁し かも この 場合
︑生 活の 芸術 化は その 個性 化・ 人間 化と いう より
︑む しろ 普遍 化・ 自然 化に ほか なら ない
﹂と いう ので ある
︵一 九七 八年 ミュ ンヘ ン大 学︑ ハイ デル ベル ク大 学講 演︶
︒
⑤次 いで 後者
︑﹁ わが 国芸 術精 神の 類型 的特 性﹂ につ いて 紹介 する
︒そ こに は︑ 自然 中心 性︑ 美的 特性
︑形 式的 特性 の三 傾向 があ げら れて いる
︒