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IX 8−1 「かたつむり」
確かに東西の両極にナメクジ系の語が見られる。そして,その内側にッブリ 系やカタツムリ系が見られ,近:畿のデデムシ系をとりまくようにマイマイ系 が分布している。
ダイロという語形が見られる。肇国はこれを「出ろ」という語源を持つと 考えた。アイの連母音がエーとなる地域が各地に存在することはこれまでに
も述べてきたことであるが,この事実が,反対に「エー一 :方書,すなわち誤 り/アイ=正しい雷い方」という意識を生み出し,それが「でろ」を「ダイ ロ」に「正しく」直して変化させたと考えた。この事実の認識について,現 在では異論が出されているが,変化の把握のしかたとしては言語地理学にお ける重要な理念である「誤った回帰」の適用であり注fiに値する。
その他,細かく見て行くときりがないが,ツブリ系は「巻貝」をあらわす
「ツブ」と関係があろうし,カタツムリ系のツムリの部分も頭の「つむじ」
と無関係ではなく,またカタの部分は「笠」(その丸い形)と関係してくる。
タマクラという語形は藁を巻いた民具とも関係がある。…などなど,実は「か たつむり」の歴史の考察には広範な国語史的また民俗学的な知識が必要であ り,なかなか一筋縄ではとらえることが難しい。そういう意味では,複雑な 国外をはらんだ分布であり,以下ではもう少し歴史的な観点からとらえやす
い分布を持つ語を見てみよう。
8.2.「牛」の方言地図と歴史
ここでは「牛」をあらわす方喬の分布を多角的に検討し,その歴史との関 わりを考えてみよう。それと同時にさまざまな地図解釈上の手法や方言語彙 の性質にも書及することがあろう。順番としては「牛」の総称から入る前に
「雄牛」「雌牛」「子牛」の分布図を見,それから「牛(総称)J「牛の鳴き声」
を見ることにする。資料は循本書語地図』を基にした略図を用いることに する。なお,以下においては特に断わらない限り「中央(語)」というのは,
かつての文化の中心地であった京都・大阪ならびにそこで用いられていたこ
とばを指す。
8.2.1.雄牛
pa 8−2は「雄牛」の地図である。
古語では澤梁塵秘抄』に「淡路の門渡ることいこそ,角を並べてわたるな れ後(しり)なる女牛の産むことい,背まだら子女牛は今ぞ行く」のように
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1関8−2 「環W[tl=」
「ことい」が見られる。この古典に見られる「ことい」に相当するコトイ・
コットイ・コットゥイが近畿の周辺部から中国・四国・九州の一部に分布し ている。またその変化形コテー・コッテー・コッチーが兵庫・中国地方東部・
九州北東部・東海地方の一部・房総:半島・介護県北部に分布している。同じ く変化形のコテ・コッテ・コチが全国に散在しつつ,近畿地方を中心に九州 全域・山陰・青森下北地方にそれぞれまとまった分布を見せている。琉球の
クティ・クティーなども岡系統である。
この分布から近畿から中国を経て九州にかけては吉典語の「ことい」を基 にする語が根強く残っていることがわかる。徳島・兵庫などに見られるゴッ
トイ,長野北部・福井などのゴッテー,岐阜・石川・熊本・鹿児島に見られ るゴッテなども関連する語形であろう。これらが語の頭で濁音化する理由は はっきりしない。これらの地方で語頭の力行音が濁音化する規則はないから である。おそらくは「雄牛」の持つ「力強く」「ごつい」というイメージと無 関係ではないかもしれない。
「ことい」の系統以外では,「牡」や「男」に相当する形が「うし」を表わ す語の頭についた「男(牡)+牛」系(正確には「牛」のイ寸かない形も含めて)
が広く分布している。東北の南部から北陸・中部に分布を見せるオトコウシ,
関東にまとまった分布が見られるオス(ウシ),近畿を中心とするオンタ(ウ シ)・オンツ,千葉のヤローウシ,四国を中心とするオン(ウシ),東北地方 に兇られるオトコベコなどがそうである(後で述べるように東北地方ではほ
とんどの地域で総称としての「牛」はべコである)。琉球の先島を除く地域に 見られるウーウシも(本土のオに琉球ではウが対応することかち)「おうし」
もしくは「おすうし」に当たるものであろう。沖縄の先農に見られるビキウ シもやはり「男(牡)÷牛」の系統で,この地域では「男」をビキドゥンとい う。これら「男(牡)÷牛」に類似した語として秋田のチチベコがある。語源 的には「父牛」であり,F乳牛」ではなかろう。
このように「男(牡)÷牛」系は主に東B本を中心に分布が見られる。一 方,近畿の中央もこの「男(牡)+tt 」の系統であり,中央語(近畿中央)で
。 メウシ む メウジコ ミョ ジ
。ミーウシ ㌔
ロ メン{ウシ}
d メンタ,メタ 濫メ・力
罎 メンチョーウシ 弓 メス ウシ}
r tンナウシ ∠ オナゴウシ 7 tナゴペコ
) メロウシ
1 メラ(ウシ1 6 ト メナ{ウシ}
マ. ビー{ウシ}
a オ{ン}ナメ,
κウバ