ヴィルヘルムによるメルヘン礼賛であることから明らかである。ヴィルヘルムは『メルヘン集』 「大きな版」 第 1 巻序文で、「ドイツの」メルヘンの「大きな広がり」に言及し、このように語る。
ドイツのメルヘンは竜殺しのシグルズの英雄伝説にさかのぼるだけではありません。さらにそれをも 超えていくのです。まさにこの伝説が全欧州に広まっていることを見ると、この伝説には高貴な諸々 の民の親近性が開示されています。ノルド系の人々のもので私たちに知られているのはデンマーク人 の英雄詩だけですが、関係する多くのものが含まれています。それらは歌謡で、歌うためのものです から、もはや子供たちにふさわしくありません。しかし、ここではっきりとした境界を引くことはまっ たくできないのです。それは真剣な歴史伝説と同じであり、もちろんさまざまな共通点があります。 英国にはタバートの収集がありますが、それほど豊かとは言えません。しかし、ウェールズ、スコッ トランド、アイルランドには口承の伝説がなんと豊かに現存していることでしょうか。ウェールズの ものは(すでに出版された)マビノギオンだけでも真の宝です。同様にノルウェー、スウェーデン、 デンマークにも豊かに残っています。ひょっとすると南の国々ではもっと少ないかもしれません。ス ペインのものは何も知られていませんが、セルヴァンテスを読むと、メルヘンが実在していて語られ ていることはまぎれもありません。フランスではシャルル・ペローが報告していますが、まちがいな くさらに多くのものがあります。彼だけがそれらを子どものメルヘンとして扱いました(彼よりも劣っ た模倣者のオーノワ夫人やミュラー夫人はそうしなかったのです)。ペローは 9 つのメルヘンだけを 発表しましたが、それらは最も知られていて、最も美しいメルヘンに属しています(Grimm 1986, XV-XVI; Hofmannsthal 1922, Teil 2, 108-116)。
Show more
69
Read more