私事であるが,来年度以降の進路として海外でのポスド クを志望していた筆者は,今回の学会で多くの人と交流を 持 と う と 考 え て い た.学 会 2 日 目,イ ン グ ラ ン ド の Exeter 大学の Gero Steinberg 教授が,プレナリーレク チャーの最後に,3 年間のポスドク募集中というメッセー ジをスライドに映したため,自分はその翌日に声をかけ,
その場で 30 分間の面接を受けた (写真 4).面接内容は,
ポスドク志望の動機に始まり,これまでの研究経験,そし て Steinberg 教授の講演に関する内容や今後の研究の方向 性に関する質問であった.私は,これまでに Steinberg 教 授の行っている,二形性の酵母 における モータータンパク質を中心とした細胞内輸送の研究を,あ る程度把握していたので,質問にはそれなりに答えること ができたと思う.翌日 CV を送ると,次の日の朝に,その 日の午後もう一度面接を行おうとの連絡をもらった.そこ では,同大学で Steinberg 教授と同僚という Nick Talbot
教授が同席し,2 人から 30 分程の面接を受けた.そこで も,具体的な研究内容に対しての意見を聞かれた.ちょう どその面接の後が自分のポスターの時間であったため,
Steinberg 教授に発表を行ったところ,かなりの高評価を もらえた.そして,その 1 時間後,Steinberg 教授は笑顔 で,“Youʼve got a job.” と言ってくれ,すぐに今後のこと について 30 分ほど打ち合わせをした.現在,Steinberg 教授の研究室に移るための準備を行っている.
最後になりましたが,このような貴重な経験および機会 を得るに当たって支援して下さった財団法人農芸化学研究 奨励会の関係者の方々に深く感謝致します.今後,研究成 果という面において奨励会に恩返しができるよう,そして またこのような国際学会に出られるよう日々研究に精進し ていきたいと思います.
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に参加して
東京大学大学院農学生命科学研究科 福田良一
2010 年 7 月 27 日から 8 月 1 日にかけて,カナダ・バン クーバーのブリティッシュコロンビア大学において,2010 Yeast Genetics and Molecular Biology (YGM) Meeting が 開 催 さ れ た.YGM Meeting は The Genetic Society of America の主催であるが,世界中から酵母研究者が参加 し,酵母の遺伝学と分子生物学に関して議論,情報交換す る場となっている.この会議は通常はアメリカ国内で隔年 開催されるが,前回に引き続き今回もカナダでの開催と なった.なお,次回は 2012 年にプリンストン大学で開催
される予定である.
今 回 の 会 議 の ハ イ ラ イ ト は,Paul Nurse 博 士,Lee Hartwell 博士,Jack Szostak 博士の 3 人のノーベル賞を 受賞した酵母研究者の講演であった.特に Nurse 博士と Hartwell 博 士 に 元 宇 宙 飛 行 士 で カ ナ ダ の 国 会 議 員 の Garneau 氏を交えたパネルディスカッションでは,科学と 社会についてユーモア交えた討論がなされ,また会場から も活発に意見が出され,たいへん興味深く拝聴した.
一般講演では,プラットフォームセッションで 80 題,
シンポジウムで 14 題の講演が,またポスターは 586 題の 発表があった.今回の会議では,トロント大学の Charles Boone 博士によって開発された Synthetic Genetic Array (SGA) を 用 い た 研 究 の 発 表 が 特 に 目 を 引 い た.酵 母 は真核細胞で最も早くゲノム配
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写真3 ポスター発表を終えた筆者. 写真4 学会会場内で,イングランドの Exeter 大学の Gero Steinberg 教授 (左から 2 人目) に面接を受ける筆 者 (右から 2 人目).
列が解析された生物であり,非必須遺伝子のほぼ全てをカ バーするおよそ 5,000 株からなる遺伝子破壊株コレクショ ンが作製,分譲されている.SGA とは,目的の遺伝子の 破壊株と遺伝子破壊株コレクションの各株との掛け合わ せ,胞子形成,半数体の二重破壊株の選択という一連の操 作をプレート上で行うことで一度に大量の二重遺伝子破壊 株を取得する方法であり,これにより遺伝学的相互作用の 網羅的な解析が可能となる.Boone 博士のグループは,酵 母の実に 75%の遺伝子について SGA 解析を行い,540 万 株もの二重破壊株,変異株を作製し生育を観察することに よって,遺伝学的相互作用を網羅的に解析した結果を発表 した.また,SGA を用いて細胞内のリン脂質輸送に関わ る遺伝子の探索を行った結果など SGA を応用した研究の 成果についても多数発表された.SGA はポストゲノムの 遺伝学的解析法であり,今後様々な応用が可能であると思 われる.
筆者らは「Yas3p, an Opi1-family transcription factor in- volved in -alkane response, binds to phosphatidic acid in the alkane-assimilating yeast 」という タイトルで, -アルカン資化性酵母 の -アルカン代謝に関わるチトクローム P450 遺伝子の転写 制御におけるリン脂質の役割について発表を行った.
の特徴の 1 つとして脂溶性化合物の高い資化能 が挙げられるが,この酵母を多価不飽和脂肪酸の生産や
β
-カロテン等の生産に応用した結果も発表され,本酵母の 物質生産への高いポテンシャルが再確認された.ブリティッシュコロンビア大学には,太平洋北西沿岸の 先住民のコレクションで名高い UBC 人類学博物館があ
り,ガイドブックなどにも紹介されている.会議中はハー ドなスケジュールのため足を運ぶことができなかったが,
最終日の前日夜に UBC 人類学博物館でバンケットが開催 され,幸いにもその直前に展示物を見る機会が得られた.
トーテムポールをはじめ先住民の文化,歴史に関する展示 物の数々に圧倒された.
筆者はこの会議に初めて参加したが,酵母の様々な先端 研究に関する発表を聞くことができ,また幅広い分野の酵 母研究者と意見交換を行うことができた極めて有意義な会 議であった.最後になりましたが,本国際会議への出席に あたりご支援いただいた日本農芸化学研究奨励会に感謝申 し上げます.
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写真1 ポスターセッションにて.