• 検索結果がありません。

病原真菌Candida glabrataにおけるステロール輸送の生理的役割

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2023

シェア "病原真菌Candida glabrataにおけるステロール輸送の生理的役割"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

化学と生物 Vol. 50, No. 4, 2012 241

今日の話題

ラムで分子量分画した試料を化学発光窒素検出器に送り 込み,窒素の分子量分布を測定する方法(サイズ排除高 速液体クロマトグラフィー/化学発光窒素分析法;HP- SEC-CLND)である.その結果から,土壌の水抽出物 の有機態窒素の分子量は,数千Da 〜数十万Daの広い 範囲に分布しており,分子量毎にUV280 nm吸収やフル ボ酸様蛍光 (Ex. 340 nm, Em. 440 nm) の強さが異なっ ていることが明らかになった(図1.したがって,土 壌の80℃・16時間水抽出物は分子量と分光学的性質が 異なる複数の有機態窒素集団から構成されていると考え られる(8).また,地力窒素の高い堆肥連用土壌と地力窒 素の低い化学肥料連用土壌の抽出物を比較すると,数万 Da程度の有機態窒素が堆肥連用土壌に多く含まれてい ることもわかってきた.一方,河川の溶存有機物につい ても,液体クロマトグラフィー/有機態炭素分析/有機態 窒素分析法 (LC-OCD-OND) によって,分子量の異なる 複数の有機物が存在していることが報告されている(9). 今後は,これらの有機態窒素集団の個々の土壌中での分 解・蓄積特性を明らかにすることによって,地力窒素の

動態を知ることが可能となるであろう.また,有機態窒 素のアミノ酸組成やそれに結合する有機物・無機物の組 成の解析により,その存在形態や起源物質の実体が明ら かになることが期待される.

  1)  森泉美穂子,松永俊朗:日本土壌肥料学雑誌,80,  304 

(2009).

  2)  X. C. Wang & C. Lee : , 44, 1 (1993).

  3)  M. Kleber, P. Sollins & R. Sutton : , 85, 9 

(2007).

  4)  H.  Knicker  &  P.  Hatcher : , 84,  231 

(1997).

  5)  A. Piccolo : , 75, 57 (2002).

  6)  S.  Matsumoto,  N.  Ae  &  M.  Yamagata : , 46, 139 (2000).

  7)  上薗一郎,  加藤直人,  森泉美穂子:日本土壌肥料学雑誌,

81, 39 (2010).

  8)  M. Moriizumi & T. Matsunaga : , 57,  185 (2011).

  9)  S. A. Huber, A. Balz, M. Abert & W. Pronk : ,  45, 879 (2011).

(森泉美穂子,松永俊朗,農業・食品産業技術総合研 究機構中央農業総合研究センター)

病原真菌 Candida glabrata におけるステロール輸送の生理的役割

血清からのコレステロール取り込みが病原性に必須か?

生物にとってステロールは,細胞膜を形成し様々な生 理活性をもつ必須な脂質であるが,合成過程において酸

素が必要である.出芽酵母 は,

好気条件ではエルゴステロール(哺乳類でのコレステ ロールに相当する)を合成し,細胞外にステロールが存 在しても取り込んで利用することはないが,嫌気条件下 でエルゴステロール合成が抑制されると,細胞外ステ ロールの取り込みが観察されるようになる.

は,ステロール合成が可能な条件では「栄養」とな りうる細胞外ステロールを排除して,自身のステロール 合成のみで生育するという戦略でステロール恒常性を維 持していると考えられる.

人間に感染症をひき起こす病原真菌

は と遺伝的に近縁種であるとされており,

遺伝子やステロール代謝機構に関しても多くの共通性が 認められるが,筆者らは が自身のエルゴス テロール合成が可能な状態でも血清を添加すると血清由 来 の コ レ ス テ ロ ー ル を 取 り 込 む こ と を 見 い だ し

(1).ここでは, 固有のステロール取り込 み機構と,生理機能との関連について考察する.

で は,嫌 気 条 件 で 特 異 的 に 発 現 す る ATP-binding cassette (ABC) タンパク質スーパーファ ミリーに属するAus1pまたはPdr11pが細胞外ステロー ルの取り込みに必須であることが示されている.また,

Aus1pおよびPdr11pによるステロールの取り込みが ATP依存的であることから,これらのタンパク質は他 の基質排出型のABCタンパク質 (floppase) とは反対 に,細胞外由来のステロールを細胞膜外葉から細胞膜内 葉に能動的に移動させる (flippase) と推測される(2). 細胞膜内葉まで到達した細胞外由来ステロールは,Osh 

(oxysterol binding protein homolog) タンパク質によっ て小胞体に輸送され,アセチル化,エステル化などの修 飾を経て,その後の輸送経路が決定されるが,小胞体ま でのステロール輸送経路と比較して小胞体以降のステ ロール輸送については未解明な部分が多い.

筆者らの研究グループは,① 感染患者か

(2)

化学と生物 Vol. 50, No. 4, 2012

242

今日の話題

らステロールを合成できないステロール要求性変異株が 分離される(3),②マウス感染実験モデルにおいてエルゴ ステロール合成に必須である遺伝子のノックダウン株が 野生型と同程度の臓器定着率を示す(4),という研究報告 をもとに,細胞外ステロール取り込みが感染時の

のステロール恒常性維持と生育(病原性)に必 須であるという仮説を立てて,研究を行なってきた.

Tween80 : EtOH (1 : 1) に溶解させたコレステロール を培地に添加して へのステロール取り込み を検討したところ, と同様に嫌気条件下で しか細胞外ステロールの取り込みは観察されなかった.

しかし,前述のように宿主由来のステロール源として,

血清を培地に添加するとエルゴステロールが合成できる 好気条件においても からコレステロールが 検出された.また,血清添加によって の オルソログ遺伝子 ( ) の発現量が10倍以 上に増加し, をノックダウンした変異株では血 清からのコレステロール取り込みが減少することを明ら かにした.血清からのコレステロール取り込み活性化は

では観察されなかったことから,

と のステロール取り込み調節は,通常の 実験室で用いる培地では相違はないが,血清に含まれる 何らかの因子が, においてのみステロール 取り込みを活性化することが予想された.

血清添加以外に,どのような因子が にお いて の発現を誘導し,ステロール取り込みが 活性化されるのかを明らかにするために,ステロール取 り込みを活性化するような種々のストレス条件のスク リーニングを行なった.その結果,アポトランスフェリ ンまたは鉄キレート分子を添加し鉄欠乏条件にすると,

の発現が誘導され,細胞外ステロール取り込み が活性化されることを見いだした.一方で,血清によっ てステロール取り込みが活性化された状態にFeCl3を添

加すると, の発現誘導および細胞外ステロール 取り込みが抑制された.以上の結果より,

は血液中すなわち宿主感染時に,鉄欠乏が引き金となっ て の発現が上昇し,ステロール取り込みが活 性化されるものと推測された.鉄はステロール合成の複 数の反応における必須微量元素であり,鉄欠乏はステ ロール欠乏をひき起こす.したがって,鉄欠乏条件で不 足するステロールを補うために細胞外からのステロール 取り込みが活性化されるのは理に適っている.

また,筆者らはマウス感染実験において

ノックダウン 変異株の臓器定着率が野生型 株よりも低下することを見いだした.この結果は,ステ ロール取り込み活性が の宿主体内での生存 に有利に働くことを示唆しており,筆者らが最初に想定 した仮説の妥当性を支持するものである.

は消化管内に常在する真菌であり,臓器 移植や抗癌剤治療に伴い免疫が低下すると消化管から血 管へと移動して血行性の播種性感染をひき起こす.消化 管内の遊離鉄濃度は比較的高い一方,血液中の遊離鉄濃 度はトランスフェリンやフェリチンなどの鉄結合タンパ ク質の作用によって極端に低く抑制されている(図1 筆者らが見いだした鉄欠乏による のステ ロール取り込みの活性化は,播種性感染をひき起こすた めに必要な環境適応の一つであると考えられ,ステロー ル取り込みを抑制するような化合物を開発できれば,新 たな真菌感染症治療薬となりうるかもしれない.

  1)  H. Nakayama  : , 60, 1264 

(2007).

  2)  Y. Li & W. A. Prinz : , 279, 45226 (2004).

  3)  K. C. Hazen, J. Stei, C. Darracott, A. Breathnach, J. May 

&  S. A.  Howell :  52,  35 

(2005).

  4)  H. Nakayama, M. Izuta, N. Nakayama, M. Arisawa & Y. 

Aoki : , 44, 2411 (2000).

(田辺公一,国立感染症研究所)

図1 の 宿 主 体 内におけるステロール代謝調節モデ ル

参照

関連したドキュメント

Chailakhyanは, 日長を感知するのは葉であり,葉で作られた何らかの物 質が茎頂へと運ばれて花成を誘導すると考え,この物質 に対して花成ホルモン(フロリゲン)という名称を提唱 した1.1999年にシロイヌナズナにおいて ( )遺伝子が同定され,その後, 遺伝子は長日条件依存的に葉の維管束篩部で特異的に発

盈進の後輩へのメッセージ 現在東京で行っているダンスの仕事の中で、高校でもダ ンスのクラスを受け持っています。そこでいつも感じる のは、どんな生徒も無限の可能性に溢れているというこ と。高校時代はその可能性を夢中で探していい時期だと 思います。それがどんなに遠い夢でも、チャンスは意外 と世の中に溢れていて、それが見えるようになるまで努