2014 年度 上智大学経済学部経営学科 網倉ゼミナール 卒業論文
女性視点のネットビジネス戦略
美容サロンのネット予約サイトに見る現代女性の購買心理
A1042715 百濟 ちなみ
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はじめに
現在では、女性による消費が全世界の消費のうち 64%を超えさらに成長を続けている。自 分自身の買い物だけではなく、家族が何か大きな買い物をするときも最終的な決定権は女 性にある場合が多いという。私は消費活動において女性の占める割合はさらに高くなるこ とを予想し、主に今後の成長が見込まれるインターネットビジネスと女性の関わりについ て調べる。現在、スマートフォンの普及によりインターネットとの接触機会が増えたにも かかわらず、スマートフォン導入後に EC サイトの利用機会が増加した女性は 35%にとど まっているという。私はその原因として女性視点のマーケティングが正しく行われていな いからではないかと考える。そこで本論文では「EC 事業の消費活動を女性が支配していく」
という仮説の下、EC サイトにおける女性の正しいセグメントや無意識的な意思決定プロセ スについて考察したい。
また、2 年間で利用者が 6.6 倍にまで膨らみ新たな市場を開拓した女性向けヘアサロン予約 サイトを研究することで、現代女性が求めているインターネットビジネスの可能性を探る。
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目次
はじめに
Ⅰ.現代女性について
Ⅰ-1女性の消費活動
Ⅰ-2女性のストレスと不満
Ⅰ-3幸福レベルとライフステージ
Ⅱ. 「女性視点」の誤り
Ⅱ-1中途半端なプロダクトデザイン・カスタマイズ ブラックベリーピンク戦略
Ⅱ-2的外れな営業・マーケティング della の女性向け戦略
Ⅱ-3コミュニティづくりを怠る
#McDstorys の失敗
Ⅲ.女性消費者セグメント
Ⅲ-16つの女性消費者セグメント
ⅰ.超多忙主婦
ⅱ.生活エンジョイ派
ⅲ.悠々シニア層
ⅳ.自力生計型
ⅴ.家計切迫型
ⅵ.エリート女性層
Ⅲ-2エリート女性とネットビジネス
① エリート女性とネットビジネス
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② オピニオンリーダーとしてのエリート女性
Ⅳ.レシピサイトにみる現代女性
Ⅳ-1食と女性
Ⅳ-2レシピサイト利用率
Ⅳ-3現代女性の求める食生活
Ⅴ.美容サロンのネット予約
Ⅴ-1ネット予約にみるニーズの変化
① ニーズの 24 時間化
② ニーズのスマートフォン化
③ ニーズの直前化
④ ニーズのお得化
Ⅴ-2ネット予約普及の心理的側面
① 電話の与えるストレス
② オンライン上の出会い
③ 顔写真による疑似的体験
Ⅴ-3顔写真
① 顔認識機能
② 女性の想像力
今後の課題
まとめ
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Ⅰ.現代女性について
Ⅰ-1.女性の消費活動
世界の消費の半数以上は女性が支配し、女性の消費は現在の 2000 兆円から数年でさらに 上ることが予想されている。近年になって女性の消費が増えた理由としてまず働く女性の 割合が増えたことが挙げられるだろう。世界全体で高等教育を受けている人の 47%が女性 であり、アメリカでは 57%と男性を上回るというデータがある。現在世界全体で働く女性 の数は 10 億人を超え、女性は自分の財布を持つことによって自由な消費活動が出来るよう になった。
Ⅰ-2.女性のストレスと不満
女性の多くは現在の生活に不満を持っており、さらに生活が豊かに出来る方法を常に模 索している。以下のグラフは時間不足や家計管理に関する不満を感じている女性の割合で ある。
50%もの人が家計管理に不満があり、45%の人がやることの多さや自分の自由な時間に関 して不満があるという。また、以下は主婦に向け家事や育児の責任が誰にあるかという調
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査をした結果である。全ての項目において自分一人で行っていると答えた女性が半数以上 であった。また、夫やパートナーが家事を手伝うかというアンケートに対し、「まったく」
または「ほとんど手伝わない」と答えた人の確率は以下のものである。
日本と欧米諸国で調査を行った結果、日本が 74%と断トツで高いことがわかった。時間が なく生活に不満を持っている女性が多いこれらのデータから、不満を解消させ時間短縮を させる商品・サービスに需要があることがわかる。
Ⅰ-3.幸福レベルとライフステージ
男性に就職・結婚・退職といった基本的なライフステージがあることに比べ、女性のライ フステージはさらに流動的である。一度の人生の中に、就職、専業主婦、仕事と家事の両
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立、育児と仕事の両立、離婚、死別、リタイアなどといったそれぞれのライフステージが ある。これらのライフステージごとに彼女たちの経済状況は一変し、また消費活動も大き く変化する。これらの転換期に生活への満足度も変化する。以下は年齢ごとに幸福レベル とストレスレベルを表したグラフである。
Ⅱ. 「女性視点」の誤り
女性をターゲットとした企業戦略の多くは、ビジネスチャンスを逃している。その理由と して企業は女性を一つのターゲットとして捉え、細かなセグメントに分類する作業を怠っ ていることが挙げられるだろう。それらの企業が犯している誤りは以下のものである。
Ⅱ-1.中途半端なプロダクト・デザインとカスタマイズ
デザインを女性の好きそうなものに変えるだけで、中途半端な表 面上のカスタマイズのみ行う。
・ブラックベリーパールのピンク戦略
女性向けの商品にみられる伝統的な特徴の中に「ピンク」がある。
ただピンク色にカスタマイズするだけでは充分とは言えず、失敗に 終わるケースが多くみられる。しかし家電製品の世界では未だにピ ンク戦略が重要であるという。RIM と Verison Wireless は、バレンタ インの販促のためピンクのブラックベリーの開発を進めた。ちょう
ど良い色味のピンクを出すため開発に試行錯誤した結果、仕事やプライベートなど様々な シーンにも順応するシックな色味に落ち着いた。純粋に女性ユーザーに支持された唯一の 色味として、このピンク戦略は成功に終わった。
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Ⅱ-2.的外れな営業・マーケティング
現代女性のライフスタイルに着目せず、時代遅れな女性像に基づくマーケティングを行 っている。
・della の失敗例
アメリカで DELL のノートパソコンの販売を促進されるために、女性をターゲットとしたサ イト『della』が開設された。della は女性向けということで、自社のノートパソコンを利用 したカロリー計算やレシピ検索の動画などの見方を紹介するものであった。内容が簡単す ぎる上に製品のスペックや価格などの情報は不十分であったことから、レビューサイトで は「女性を馬鹿にしている」と顰蹙をかってしまった。女性はパソコンの技術には疎く、
専門的な情報など興味がないというイメージは強い。しかし、イギリスのテクニカルサポ ート・サービスの企業 Gadget Helpline 社の調査によると、そのイメージは必ずしも当ては まるわけではないということが証明された。調査によると、コンピューターや機器につい て問い合わせる電話をかけてきた人の内、男性の 36%が事前にマニュアルを読んでいたこ とに対し、女性は 76%もの人がすでにマニュアルを確認し試行錯誤をした上で問い合わせ ていた。女性=美容と家事、情報に疎い、という誤ったターゲティングをしたことによっ て起こったマーケティングの失敗例である。
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Ⅱ-3.コミュニティづくりを怠る・失敗する
女性にとって重要である、商品・サービスを通した仲間意識や思い入れを育てていない。
口コミパワーを利用出来ていない。また、ただ口コミを発信できる場所を設けるだけで 満足してしまう。
・マクドナルドの失敗例
消費者の自由なコミュニケーションを妨げたことによるマーケティングの失敗として、ア メリカのマクドナルド社が挙げられる。
マクドナルドでは 2012 年に消費者が 自身の体験したマクドナルドでの懐か しい思い出を Twitter にて募集した。自 由なコミュニケーションの場を提供し た結果、クレームや過去の嫌な思い出 などの悪い口コミが並んだ。SNS を利 用して口コミを自由にさせるだけでは 戦略としては不十分であることがこの 例によって実証された。
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Ⅲ.女性消費者セグメント
2006 年度米国国勢調査およびボストンコンサルティンググループの調査によると、女性消 費者は収入やライフステージ別に 6 つの基本パターンに分類できるという。
Ⅲ-16つの女性消費者セグメント
① 超多忙主婦
6つのライフスタイルパターンの中でも最も家事や育児などの責任にプレッシャーを感じ ている。時間がなく、生活をより豊かにするものを常に求めている。生活用品や車などへ の不満が大きい。便利であればよいというわけではなく、美的センスに関して忘れたくな いという想いがある。
② 生活エンジョイ派
高学歴ではあるものの、キャリアを積んで成功を収めるよりも幸せな家族と家庭を築くこ とにより生きがいを感じるセグメントである。モノやお金以上に人との関わりを重視し、
旅行や外食といった交際費に好んでお金を使う。
③ 悠々シニア層
一般的に子供が自分の手から離れ、時間の余裕が出来た 50 代以上の女性。優雅に年を取る ことを最大の目的としている。ロイヤルティが高く新たな顧客とすることが難しいためこ の層はしばし企業からターゲットとされない場合が多い。経済的に安定しているが支出が 少なく物欲もあまりないとされる。
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④ 自力生計型
何らかの事情で夫がおらず、自分でお金を管理し自らの力で生活しなければならない女性。
過半数が自主自立に価値基準を置き、消費に対して慎重な姿勢をとる。ぜいたく品ではな いが「いいもの」に対しては敏感である。
⑤ 家計切迫型
お金のやりくりに苦労しており、その負担から幸福感が低い。格安店を好んで利用し、出 費以上のバリューとパフォーマンスを求めている。自分で使えるわずかなお金で喜びを感 じる。
⑥ エリート女性
高学歴で経済的地位の高い女性であり、人との繋がりが多く口コミ力が高い。生活エンジ ョイ派と同じく、旅行やグルメなど生活を豊かにするものを求めている。同じセグメント 内にいる者同士で積極的に情報交換が出来る。多忙なスケジュールの中でも新しい情報を 得る時間や買い物をする時間を作ることができる。自由に使えるお金が多いため、気に入 った商品は多少値が張っても手に入れる傾向にある。購買意欲が高く、不況時も関係なく 買い物が出来る。
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Ⅲ-2.エリート女性
① エリート女性とインターネットビジネス
私はインターネットビジネスにおいて最も注目すべき層がこのエリート女性層であると考 える。エリート女性層は女性の中でも最もインターネットとの接触率が高い層である。こ の層の女性はスマートフォンの中でも特に iPhone の利用率が高い。スマートフォンの有料 アプリ・コンテンツの利用率調査によると Android ユーザが有料アプリやコンテンツを利用 している割合が 23%であることに対し、iPhone ユーザーはその倍以上にあたる 49.5%が使 っていることがわかっている。iPhone ユーザーの多いエリート女性層は最もネット上での 買い物に慣れており、新たなサービスを取り入れ易い層である。
② オピニオンリーダーとしてのエリート女性
エベレット・ロジャースは新しいイノベーションの普及について、時間軸に沿って採用者 を5つのセグメントに分類している。
このうち最初の 16%の段階にいるアーリーアドプターに分類される人々は、その後の採用 者たちの手本となるオピニオンリーダーと呼ばれる。最も早い段階で採用するがネットワ ークからは孤立しているイノベータ―と異なり、オピニオンリーダーは社会ネットワーク 内の中心に位置する。オピニオンリーダーは情報の収集・拡散をする点で優れており、彼
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らに採用されることがその後の採用を左右するとされる。イノベーションの採用が 16%を 超えるとヒットととらえることが出来、その後の自動的に普及していく。私はインターネ ット上の新たなイノベーションにおいてエリート女性たちが女性カテゴリーの中で最もこ のオピニオンリーダーに近い存在であると考える。情報を吸収・拡散する力があり、金銭 的余裕もある彼女たちを主要ターゲットとすることによって他の女性セグメントに影響を 与えることが可能になる。インターネットビジネスという革新的なイノベーションにおい てある程度冒険的である彼女たちの支持は今後の普及に不可欠である。以下の章において、
主にエリート女性に向けてインターネットのビジネス戦略について考えたい。
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Ⅳ.レシピサイト
私は女性と関連深い分野(食・美容・アパレル・ヘア)の中に、まだインターネットビジ ネスのチャンスが眠っていると考える。その中でも食に特化した近年多くの主婦層の支持 を集めているレシピサイトについて考察したい。
Ⅳ-1.食と女性
女性と食の繋がりは深い。食事は人との繋がりの象徴であり、食事を大切にすることが人 を大切にすることに繋がるのである。一日に少なくとも一度は家で食事を作って食べる女 性は 90%、週に 1,2 回は家族と食事をとる女性は 72%と多い。幸せに感じる瞬間は何か というアンケート(複数回答)に対し、食と答えた女性は 67%にも上るという。どのセグ メントに分類される女性も食事に対するこだわりは自炊・外食共に強い。
Ⅳ-2.レシピサイト利用率
現在ではインターネット上のレシピサイトが多く存在する。コミュニティサイト「ママス タジアム」の調査によると、2013 年ママ達が最も使う Web サイトはレシピサイト「クック パッド」であった。アンケートは、生活情報サイトから SNS まで幅広い選択肢の中で1週 間に1度以上閲覧している Web サイトを選択(複数選択可)する形式で行われた。この結 果によると主婦の60%がクックパッドを選択している。この結果は同時に主婦の過半数 が週に1度以上のペースでレシピについて悩んでいることでもある。2位以下はレシピと はほとんど関係のないサイトであることから、現在レシピの閲覧はほとんどクックパッド に頼っている人が多いことがわかる。
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Ⅳ-3.現代女性の求める食生活
2013 年のクックパッドによって同サイト内で最も多かった検索ワードのランキングが発表 された。
順位 キーワード
1 再現
2 大量消費
3 母の日
4 こどもの日
5 お花見
6 メイン
7 夏
8 ピクニック
9 かわいい
10 恵方巻き
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レシピサイトを利用する主婦は簡単な献立で時間短縮を図りたいというイメージが強い中、
検索ワードランキングの結果はそのイメージとは大きく異なるものであった。1 位の再現と いうのは、漫画や映画に登場する凝った料理を再現することが今年流行したためであるこ とが予想される。また、3 位以下のものを見ると「母の日」「子供の日」「かわいい」といっ た、イベント時に家族に見た目の凝った料理を作ろうとしているキーワードが目立つ。イ ンターネットを利用して料理を作ろうとしている女性の多くが、簡単な食事よりも見た目 に拘った食事を作りたいと考えているのである。また、2014 年 1 月 10 日に発表された同社 の最新の急上昇ワードランキングは以下のものである。
順位 キーワード 人気レシピ
1 関東 関東風お雑煮
2 年越しそば 年越しそばに鶏牛蒡のそばつゆ
3 お雑煮 我が家のお雑煮
4 田作り 田作り
5 おせちリメイク おせちで和風グラタン
(12 月 30 日~1 月 5 日、クックパッド調べ、人気の検索キーワード)
この結果から、インターネットを利用する現代の女性の多くが『楽な生活』より『質の良 い生活』を求めていることがわかる。
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V.美容サロンのネット予約
近年ではヘアやネイル等、美容に関連したサロンのネット予約が盛んになっている。予約 数が業界一であるリクルート社のホットペッパービューティでは、2007 年にレストラン等 の予約サイトであるホットペッパーの 1 コーナーとして立ち上げられ、現在では予約数が 500 万件を超えるまで成長した。また、ここ1~2年で予約件数は激増しており、ネットで ヘアサロンの予約をする人が 2 年前と比べ 6.6 倍に膨らんだという。何故ここまで急激に 利用者が増加したのか原因を探る中で、女性のネット上での行動を紐解く。
Ⅴ-1.ネット予約普及の背景にあるニーズの変化
① ニーズの 24 時間化
サロンをネットで予約する理由として、サロンの開店前や閉店後であっても予約が可能と いう点がまず挙げられるであろう。実際にネットで予約している時間帯のデータを見ると、
開店前(平均的な時間として 1 時~9 時)と閉店後の予約(21 時~24 時)の予約が全体の 45%を占める。忙しく働く女性が仕事から帰宅した時にはすでにサロンが閉店していると いうケースが多いのであろう。21 時~23 時台のネット予約が最も多いことから、仕事から 帰宅してから、または子供が寝静まってからの自由な時間帯に予約をしている事が推測さ れる。次に予約数の多い時間は 12 時から 13 時のお昼の時間帯である。一般的に会社の休 み時間は 12 時台であるためであることが予想される。忙しい女性の増加がサロン予約のニ ーズの 24 時間化を招いているのである。
② ニーズのスマートフォン化
ネット予約が急増した背景にはスマートフォンの普及がある。スマートフォンの利用者は 朝起きてから夜寝るまで常にネットに接触していることから、女性の消費行動は 24 時間化
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しているのである。スマートフォンを使って他のサービス業(レストラン、ホテル等)の 予約も可能になっており、その文化が根付き始めていることもサロンネット予約数激増の 背景にあるだろう。
③ ニーズの直前化
資料によると、ネットを利用して予約する人の約 30%が前日に予約をしていることが分か った。当日に予約している人も含むと 50%近くに上る。サロンによっては前日や当日の予 約が出来ないものもあるが、利用者のほとんどが直前予約している事が分かった。突然予 定が出来てそれまでに髪型を変えたい、ネイルをしたいという人がいることも予測できる が、それだけでは 50%という数字は出ないだろう。
④ お得化
インターネットでの予約をする際、様々なクーポンを利用しお得に予約をする事が出来る。
特に初回の予約の際には通常料金から大幅に安い価格で施術を受ける事が出来、初期費用 が下がることから新たなサロンを試す際のリスクを下げる効果がある。また、サイトによ っては予約をするごとに料金の数%分のポイントが加算され、次回の予約の際に値引きす ることが出来る。そのため、クーポンを利用しないリピーターであってもネットによって 予約をする方がお得なのである。
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Ⅴ-2.ネット予約普及の心理的側面
サロンのネット予約の急増の背景にあるのは消費者ニーズの変化だけでなく、消費者の心 理的要素が大きく関わっていると予想する。
⑤ 電話の与えるストレス
ネット予約が普及する前のサロン予約は電話での予約が唯一の選択肢であった。電話予約 をやめネット予約をするようになった原因として、電話ではっきりと意思表示をすること や時間をかけて返答することに難しさを感じる人が多いことが挙げられるのではないかと 考えた。例えば、レストランでメニューを開いて選択する際に、同伴している人と「同じ ものを」と頼む人をよく目にする。居酒屋にて大人数で飲み物を頼む際に「とりあえず生」
と頼む人もまた同じ心理であろう。空気を読んで同調するというのはもちろんレストラン で共に食事をする仲間への配慮である場合が多いが、その配慮は店員に向けたものでもあ るだろう。レストランのように対面的ではないものの、直接人と接するという意味から電 話は人にプレッシャーを与える。インターネットであれば監視されているというプレッシ ャーから解放されるのである。
⑥ オンラインでの出会い
出会い系サイトの分析を行ったアラン・マーティンによると、オンライン上での出会いは 通常の出会いよりも魅力が増すという。バーで誰かに出会う時よりも、オンラインで知り 合ってから実際に会う時の方がお互いについての知識を持っている。相手についての情報 がないまま出会うよりもオンラインで情報を得ている場合の方が共通の話題があり魅力が 増すという。この理論はサロンのネット予約にも活用できる。ヘアサロンの予約をする際 に事前にそのサロンのメニュー・地図・価格などの基本的な情報に加え、スタイリスト・
店舗周辺や店内・得意なスタイルなどの写真を閲覧することが出来る。実際にサロンに行
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った時のビジョンが持ちやすく、自分の条件にあてはまるかどうか事前に確認することが 出来る。
一方で、オンラインの出会いにはマイナスの要素もある。出会い系サイトでは事前に相手 の情報を多く知ることで期待値も上がってしまい、会った瞬間にその期待が満たされない とむしろ魅力を損なってしまう可能性もある。美容サロンもまた、インターネットによっ て出会うきっかけを与えられる一方で失敗に対するリスクも通常以上に背負うことになる。
Ⅴ-3.顔写真
① 顔認識機能
ヘアサロンの予約サイトには多くの顔写真が並んでいる。私はこの形式こそ予約サイトの ヒットの大きな要因ではないかと考えた。
人は生まれつき顔を認識する機能を持っており、物心のついていない赤ん坊のころから顔 を好んで見る性質を持っている。新生児の視力はおよそ 0.01 から 0.02 ほどとされており、
視覚的世界はぼやけて全て曖昧に映っているのにもかかわらず母親の顔を認識する能力は すでに備わっている。顔の内容を認識しているのではなく、全体として「顔」というもの をみているとされている。このことから、生態的に人は顔に注目する機能を持っており、
インターネットサイトにおいても人の顔の画像があることによって視点をキャッチするこ とが出来る。
② 女性の想像力
男女問わず顔を認識する機能を持っているのにもかかわらず、同じ企業のサイト内で女性 向けのものには顔写真があり男性向けのものには顔写真がないというケースをよく目にす
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る。それは女性が無意識のうちに買い物により「想像力」を求めている結果から来るので はないかと考える。
人気のあるヘアサロン予約サイトを見ると、髪型に焦点を当てた写真よりも、着ている洋 服がはっきり見え、自然な背景で撮影された写真が多く支持されている。
女性誌 ar は近年美容業界で支持され、多くの美容院で必ず常備されている雑誌である。ar では毎号ヘア特集が載っているのだが、通常の女性誌の髪型の特集とは異なり、より自然 なロケーションで自然な角度から撮った写真を掲載している。ファッションのページやビ ューティー特集のページもまた、スタジオではなくハウススタジオやロケで撮られた写真 がほとんどであるという。この結果、イメージを伝えやすいとして多くの美容師に好まれ るようになったのである。美容師によると、実際に自分の望むヘアスタイルを説明するた めに客が持ってくる切り抜きにも最近変化があったという。髪がきれいに整えられた正面 からのヘアカタログの写真よりも、全身が写ったファッションページの切り抜きを持って くることが多くなったという。私はこの理由として、女性は無意識的により自分の生活の 中でのヘアスタイルをイメージしやすい写真を選択しているのではないかと考える。美容 院に来る女性は「髪型」ではなく、その髪型を得た後の「雰囲気」に重きをおいている。
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男性が買い物をする際の心理は、その商品やサービスの持つ機能一つ一つを他と比較し、
よりスペックが優位にあるものはどれか、というシンプルなものである。
男性の購買心理 何故その商品を購入したかという問いに対して男性ははっきりとその理由を答えることが 出来る。そのため、男性に選んでもらうには他社に比べてスペックの高いモノを作り上げ ればよいと言える。一方で女性もまた他の製品と比較し価格やスペックなどを考慮するの だが、それらの優位性だけでは商品やサービスを選択しない。女性は買い物をする際にし ばしば「この商品を持っている自分・自分の生活」を想像するのである。
女性の購買心理 他製品との比較
•スペック
•価格
•デザイン...etc
購入
買った理由
•他製品よりスペックがいい から
•価格が安かったから
•デザインが良いから...etc
他製品との 優位性を比
較
商品・サービスを持って いる自分・自分の生活を イメージ
•人から見てオシャレか
•自分の生活に合うか
•○○のシーンに適応する か...etc.
購入 買った理由→
はっきりと答え
られない。
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衣類や化粧品など直接身に着けるものに限らず、本や家電製品を購買する時もまた、この 商品を持った後の自分というものを想像してからでないと購買に至ることができないのだ。
そのため、男性に比べ買った理由をはっきりと答えられないことが多いという。
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今後の課題
忙しい女性の増加により、女性向けインターネットビジネスのチャンスは日々増えている。
しかしその需要に対し、実際に女性の心をつかみ正しいターゲティングが出来ている企業 は少ないように思える。
本研究により、女性の買い物プロセスの中には購買後の自分を想像するという過程がある ことがわかった。インターネットでは実際に商品を手に取ることも、また接客による説明 を与えられることもない。そのため、購買後のイメージが実際の買い物よりも持ちにくい ことが予想される。現在のインターネットサイトの多くは消費者の生活と商品との繋がり を想像するための工夫が不十分なのではないだろうか。私は、今後インターネットビジネ スは女性が疑似的な購買体験ができるような写真やシステムを設けることによってさらに 成長出来ると考える。
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まとめ
今回研究することにより、私は現代女性の多くがもっと「欲しい」と感じていることを知 った。彼女たちの生活環境の変化に伴いこれまで以上にインターネットビジネスの需要が 高まることを感じた一方で、その需要に応えている企業の少なさを実感した。インターネ ットを利用する女性の多くが便利で簡単なものよりも、生活を豊かにしてくれるものを求 めていた。女性=家事、という偏った女性像からのターゲティングでは新たな市場を形成 することは難しい。現代女性に支持されるインターネットビジネスを作り上げるには、女 性を正しくセグメント化した上で彼女たちの行動心理を把握して行くことが必要なのであ る。
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参考文献
野島朗・田中公子・増田ゆみ「美容師が知っておきたい 50 の数字」女性モード社 2013 年 大塚信一 「顔を考える 生命形態学からアート学」集英社新書 2013 年
マイケル・J・シルバースタイン ・ ケイト・セイヤ― 「ウーマン・エコノミー 世界 の消費は女性が支配する」2009 年
エベレット・ロジャース「イノベーションの普及」翔泳社 2007 年
参考 URL
ホットペッパービューティhttp://beauty.hotpepper.jp/
クックパッド株式会社https://info.cookpad.com/
ママたちが最も使っているWEBサイトランキング(2013年1月28日)
http://www.interspace.ne.jp/press/press/130128.html スマートフォン利用動向調査(2013 年 3 月 22 日)
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2013/03/22/14593#report