女性人力活用戦略序説
目 次Ⅰ
はじめにⅢ
研 究の 目的 ・方法 ・範 囲 Ⅲ 女性 人力の労動環境Ⅳ
女性人力活用の方針Ⅴ
女性人力の社会参与と経済活動Ⅵ
むすぴ 新 潟経営大学 片上 洋女性人力活用戦略序説
目次 Ⅰ は じめに Ⅱ 研 究 の 目的 ・方法 ・範 囲 Ⅲ 女性 人力の労動環境 Ⅳ 女性 人力活用の方針 Ⅴ 女性 人力の社会参与 と経済活動 Ⅵむすび
Ⅰ は じめに新潟経 営大学
片上
洋
本研究では, 日本女性の職業に対す る認識の多様化 と勤続年数 の長期化,そ して経営の 戦略化のために女性人力を活用する新 しい人事戦略を構築す るために,第- に,女性人力 の労動市場参加機会の拡大方案 と諸政策 を考察 し,第二に,女性人力のライ フワー ク とし ての就業活動 と母性保護の強化な ど,女性人力の活用促進 と女性人力の資質向上のための 諸戦略をい かに樹立 してい くことができるか とい う問題 に対する現況 を把握 し,第三 に, 日本女性人力活用 に対す る研究実態 と女性人力の文化 と女性人力の特悼,そ して さまざま な制度を重点的に分析 してきた。 日本では働 く人そのもの,ない しその能力 を入札 労働力 とよんでいるが,人の能力は 「働 く力」のみな らず,ま してや 「人的資材」ではないoそ こで,働 く能力が全人的な能 力 の発揮であるとい う意味で,人材 とい う用語に代えて人力 とい う用語 を使用 している。 別紙での掲載になるが,第四に,女性人力の潜在能力開発のための教育 と研修の形態を, そ して最後 に,女性人力 を競争力 として活用す ることができる新 しい人事戦略 と方向を提 示す る予定である。-3-Ⅱ 研究の目的 ・方法 ・範囲 21世紀の企業経営は業種 と規模にかかわ らず国際化,情報化,ハイテ ク化 ソフ ト化 サー ビス化,高齢化,女性人力の社会参加拡大な どの巨視的な動 向に適応 してい く政策 と 戦略 が実行 されてい る。 この ような動向に ともない柔軟で繊細な感性 を持った女性人力の 能力活用の幅が拡大 してきてお り,女性人力の教育水準 と自己実現意識 の増大,家族規模 の縮小 と技術発展 による育児 と家事分担 の緩和などによ-り女性人力の経 済活動欲求が大き く向上 してお り,また国家的次元で世界化時代の無限競争体制に備 えるためには人力開栄 に よる企業の国際競争力向上が重要な課題 である。.特に女性人力の積極的な開発 と人的資 源 の効率的利用 は企業の構造改善を可能 な らしめ,国家競争力を高 めるのに大 きく寄与す るこ とになるであろ う。 そ して 日本が女性人力活用の諸政策において韓国より10年以上先立って研究 されて来て い る と思われ る。 ここに女性人力の特性であ_る紬 軌 姫娠,出鼠 育児 ,家事な どについ ての細密な諸政策が法制化及び制度化 され,多 くの企業で実施 されてい ることが らを,韓 国における女性人力の活用 と研究に役立てることができるようにす ることが 目的である。 本研 究の 目的 を果たすために既存の文献 を基礎 に,男女雇用機会均等法を含 めた各諸法 規 と諸制度 を分析 して今後女性人力 を企業競争力向上の指針 とす ることができる活用方案 と戦略を中心に理論的に研究 した。 本論文では,紙数の制約 か ら, Ⅱで研究の 目的 と方法及び範囲 を,Ⅲ以降で理論的背景 を扱 った。 また女性人力の労動環境,女性人力活用領域 と女性人力の母性保護 と福祉増進,女性人 力の社会参加 と経済活動状況,女性人力活用に関す る制度,女性人力活用制度の変化,女 性人力活用の戦略な どについては,別語において発表の予定である。 Ⅲ .女性人力の労動環境 労動環境 とは,勤労者が働いている社会,文化,経済的環境の下位概念であ り,勤労生 活 の与件 と状況 として定義 される。l) 一般的に労動経済学や労動法学でい う労動環境は,作業環境 よ りも広い意味を持 ってい る。 本論文ではこのよ うな用語 と概念 を包括的に使用 し,労動環境 とは,勤労者の職業観, 企業主の考え方,企業風土 と職場内の作業環境,労動市場環境な どを含む意味で用いる。 このような労動環境の もとでの労動行為は環境 と人間 とい う二つの要因によって決まる 1)♀
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-4-とい うレウィン(Lewin)の生活空間的概念に接近する必要がある。2)
パ ン ドラ(Bandura)の社会学習理論によれば, レウィンの 「場」の理論伍 eldtheory)と 同様 に B-f(P,E),すなわち人間の行動(B)は個人要因である(P)と環境要因(E)の関数 とい う立場 を取 りなが ら, 人 間行動 は個人要因 と環境要 因が相 互作用 をす るこ とに よって B-f(Pく=)E),行動 と個人そ して環境 とい う三つの諸要因が相互間でお互いに違 う諸要因に 対 して決定因子 として作用す る。 この よ うなパ ン ドラの立場 を取ったばあい,労動環境 は職務遂行おける主要 な決 定因子 にはかな らない。 したがって職務満足度 を測定す るためには,労動環境 を考察す ることに 大 きい意義があるといえる。 職務遂行 =F (職務満足く=〉労動環境) 女性人力の労動環境は,女性人力の特性,勤労生活環境の 2種の側面か ら考察す ること とす る。 ィ.女性人力の 特性 女性人力 の特性 には,家庭,学校,社会などを通 じた社会化過程において確 立 された価 値観 ,職業観 倫理観な どが生んだ女性人力の家事専担観念,男性人力優位 の考え方が影 響 を及ぼ している。 例 えば 日本女性人力は,東洋的思考に染まった家庭内 とい う家族社会において生活 して きたのであるか ら,1960年以前においても,女性人力が就職す る場合には,生活のための 最後 の手段であると考えられた。ひいては自分を犠牲す るとい う考えを持つ にいた り,女 性人力の最高の善 と思われた良妻賢母 とい う基準か ら逸脱 してその資格 を喪失す ることの よ うに認識 された。 このよ うな考 え方が女性人力の機能や技術 を蓄積す るとい う機 会 を剥 奪 し,就業職種 も比較的精神労動 を要す る教軌 看護婦,事務職 などの職種 に限定 された のである。 このような諸般の事情が職場生活で男性人力 との格差 を深化 させ る要因 となった。 その後 1960年代 と1970年代を経て就業機会は拡が り,都市集 中化現象が起 きたが,主 に生理的欲求 と安全欲求充足にのみ汲汲 としていたため勤労条件 を振 り返 る余裕がなかっ たのであ り,1980年代に入 って生計維持がある程度解決 され ると,職場生活のや りがいや 質 を考えるよ うにな り,ここで惹起 され る劣悪な勤労条件 との現実的距離感 が顕在化 した のである。 一方女性人力が持 っている特性は職種選択における制約条件 となったが, ロゼ ンクラン ツ (P・Rosenkrantz)教授は,男性人力 と比較 した女性人力の持っ労動特性について 5種類
2 )N・RLewis,FinancialReportingtoEmployees:mejもttem ofDevelopmeDt1919-1979. AccouJ7tl.ng,9Tganl'zatl'oDSandSoC1'etY.Vo1.9.No.3/4.(1984)
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pp.364-368.を提示 してい る。3) ① お しゃべ りで他人 の感情 を よく受容 し,② 才能があ り粋であ り,③感情的で 自分の美 貌 に関心を持 って,④ こぎれいで芸能 にす ぐれ,⑤安全に対す る強い欲求を持つ。 プ ロポマ ン(D.Broverman)教授 は,勤労女性人力の特徴 として4)①女性人力は, よ り服 従的で非独 立的で あ り,② よ り容易 に影響 を受 けて競争力 も弱 く容易に興奮す る。③危険 が嫌 で感情的である。④ 目的志向的ではな く数学 と科学が嫌いであると指摘 してい る。 また女性 人力 は,肉体的な勤労能力の限界点での重量物の取 り扱い,立ってす る作業, 高速度作業 ,化学有害物作業な どは,肉体的 ・生理的側面か ら作業が困難であるとい う。 以上の よ うな様 々な女性人力特有の制約のため,女性人力が就職す るのに容易な業種 は 電気 ,電子,繊維,裁縫,工芸,食 品加工な どであると述べている。 日本女性 人力の職業意識 の調査 によれ ば,総就業者 の中で女性人力の比重は 1965年の 31.7%か ら1997年の 39.7%に増加 してお り,その後にも一貫 して増加傾向を見せてい る。 ま た中小企業で働 く女性人力 の割合 は 41.9%で大企業の33.5%を大き く上回ってお り,女性人 力の活用戦略 の必要性 は中小企業 の方が一層高い といえる。5) 女性人力 の活用戦略において,過去か ら指摘 されて来たい くつかの点 を考察すれ ば次の よ うである。6) (1)女性人力 の勤続年数 女性人力 の平均勤続年数 は7.9年で男性人力の12.9年 よ り実績 としては低いのであるが, 最近女性人力 の長期勤続化 が顕著 であ り,女性人力の28.1%が10年以上勤続 してお り,20 年以上勤めている女性人力 も毎年増加 の傾 向を示 している。 (2)労動意識 が高い女性人力の増加 女性人力 の労動意識 は個人間において差があるものの概 してみれば最近労動意識水準が 高い女性人力が増加 してい ることが分かる。 厚生労動省 の就業構造基調の調査 によれ ば,7)20歳か ら59歳までの女性人力を対象に, 仕事 を中心 と しているのか,あるいは附属物 として見るかに対す るアンケー ト調査の結果, 仕事 が主であると考えてい る女性人力は1970年代の30%台半ばか ら.2001年には56%と大き く増加 してい る。 特 に女性人力の専門職 と管理職が増加 しているのであるが,例 えば薬剤師,教師,医者, 公認会計士,弁護士な どで増加 している。
3 )P.Rosenkrantz,CommonMisconceptionsAboutBehaviorModelingandSuperviory
SkillTraining,TmJ'Dl'ngaDdDevelopmeDtJouma1,33, (1989),pp.40・44.
4 )D.Broverman,TheLegalofCollectiveBargainingAgreements,HumanRelatl'on,
39,no,ll(1986),pp.204・212.
5) 日本能率協会,女性人力活用の人事戦略,(2001),pp.72・75. 6) 日本能率協会,同上書,pp.89・98.
7)厚生労動省,労動 白書,(2002),p.127. 6
-女性が仕事 をす る理 由も多様 となってきてお り,過去 には家計負担 を減 らす ためや生計 費充当の経済的な理 由が主流 をな したが,最近 では小遣いを稼 ぐためとい うのが一番高い 割合で現 われている。 そ して 自分の能力・機能・資格 を活かすためや,視野 を広 げたい,友 達 と付 き合 うため とい う理 由が増加現象 を見せている。 人 口の都市集 中化現象 は女性人力の社会進 出を容易 に し,輸 出入 国 とい う経済開発戦略 は女性人力 の都 市生活基盤 を準備 した。 このよ うな事実は,低廉 で豊富な女性労動力 の労 動市場形成 を意味す る。 日本 も第
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次世界大戦以後の1
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年代 を輸出拠点確保 の時代 と位置づけ,1
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年代 は国 際競争力強化のための基盤拡充の時化1
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年代 はプ ラン ト輸出時代 と区分 してい る。8) このよ うな経済 と輸出の構造変化は労動市場の変化 を不可避 に させた。すなわち単純労 動集約産業が技術集約産業に変化す ることによって,労動力 も単純未熟練労動か ら技術の 多様化 量的増大 と質的高級化-の変化 を要求す る。 このよ うな経済の構造的変化 の要請 に応 じよ うとすれ ば,女性人力 は一層不利 な立場 に置かれ ざるを得 ない。 なぜ な ら,第- に,女性人力 の就業分野は単純労動集約産業である軽工業部 門で あった ため技術蓄積が微弱であ り,第二に,就業分野が限定 されて多様 ではな く,第三に,女性 人力が主 として就業 していた分野である軽工業部門はそのほ とん どが輸出産業であ るため 国際競争 (景気)に敏感であ り,労動市場 における労動力需給の弾力性が高 く,勤続年数が 短期化 されつつ諸般 の勤労条件の低下現象が現われたか らである。 口.勤労生活の 環境 勤労生活 とい う場合,勤労者個人の生涯全体 を通 じた期間の一部 とい う概念 で把握 され て兄弟姉妹 の間柄 にお ける社会的私生活 も含 ませ ることもできよ うが,本論文では職場生 活 に限定す る.すなわち職場雰囲気,勤労条件状態,寮生活な ど職場内で成 り立っ一連 の 生活が含 まれ る。 職場生活 にお ける男女不均等の雰囲気 においては,女性人力 の意見が反映 され ない場合 が多 く,対話の通路が詰まっている場合 も多い。 職場生活 を伴 にす る監督者 または上司の大多数 が男性人力であるか ら公式的な関係 は も ちろんの こと感情論理 に大きな影響 を及 ぼす非公式的な関係 を形成す ることもできず, 管 に上下関係 が維持 され るため意思疎通が不可能であ り,作業 中にも身体的,精神的緊張感 を解消す るに値す る雰囲気 が形成 されず硬直化 され,家庭や個人の問題解決のための助力 を求めた り理解 を求めた りとい うことができない とい う点が多い。 そ して女性人力相互間の関係 も彼 らが就職す るよ うになった動機 を否定的に認識 して相 互 に排他的な属性 が強い とい う面がある。また使用者 の態度 にも経済的優越性 と男尊女卑 8)蘇 田忠一,現代人事労務管理論 ,東京:白桃書房 ,(
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の観 念 が残 ってお り,水平 関係 を形成す るために主従 関係 を脱す る とい うこ とがで きない とい う面 もあ る。 女性 人力 の生活 実態 を調査 した一研 究 においては,職場 を離職 した理 由の中で人 間関係 が悪 くて とい うのが11.7%となってい る。9) この よ うな問題 か ら,まだ使 用者 が好 ま しい職場衰 囲気 の造成 を疎 かに してい ることが 分 か る。 Ⅳ 女性 人 力活 用 の方 針 ィ.女性人 力活用 と領域 過 去 の よ うに女性人力 を事務 室 の雰 囲気造成次元や 男性人力 の補助労動力 と して見 る職 場 で は,女性 人力 が意欲 を持 って 自分 の能力 を発揮す る機 会 が与 え られ なか った。 そ うい う職 場 では意欲 が高 く能力 のある女性人力 が存在 して も結婚 と出産 をきっか けに退職す る 慣行 があ り,勤 労意欲 と能力 のあ る女性人力 は応募 しなか ったか ら,優秀 な女性人力 を確 保す るこ とがで きなか った。 従 来 の女性 人力 は若年労動力 が豊富で企業 に成 長潜在力 のある時代 には通用 した が,今 日の よ うに企業 が構 造調整 と生産性 向上 を追い求 めな けれ ばな らない時代 には優秀 な女性 人力 の有用 な活用 を推進す ることが企業 の競争力強化側 面でも必要 なこ とといえる。 女性人力 が 自分 の能力 を向上 させ ,そ の能力 を,仕事 を通 じて発揮 したい とい う意欲 の あ る女性人力 が大幅 に増加 してい る。10) この よ うな環境 変化 を勘案 して労動法 に根拠 した女性人力保護規定や ,また男女雇用機 会均 等法 に基づい て,募集 ,採用 ,配置 ,昇進及 び教育訓練 に関す る差別的待遇 に関す る 規定 も廃止 されてい る。 女性 人力 の能力活用 に よる企業 の競争力 強化 を追及す ることが重要 な課題 となってい る。 ll) 労動 法の改訂 内容 を遵守 し,意欲 あ る女性人力 の能力 を充分 に発揮す るよ うに仕事 と育 児 を両立 させ る制度 ,再雇用制度 ,性差別 防止 な どの制度 を確 立 し,定着化 していかな け れ ば な らない こ とは 日本 にのみ限 った こ とではな く,すべ ての国家 に当てはまる。 またそ の制度 が実際 に可能 とな るよ う,経営管理者 は運営す る義務があ り,そ のよ うに して意欲 と能 力 のあ る女性 人力 が 自 らを新 しい人事制度 に順応す る よ う勤労意欲 を現実化 し,能力 を発 揮 させ るこ とがで きる よ うにす るこ とは,男性人力 の志気向上 に も肯定的 な影響 を及 9)厚 生労紗 乱 雇用 動向調査,
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10)第4回世界女性会議行動綱領 ,(1995).ll )ⅠnternationalLabourOfficeGeneva,ZDtematloDalLabourRe'q'ew,(1993),pp.79・82.
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-ぼす ことにもなる。 新規就業者 と転職 を考えている女性人力に とって,求職の際に単純に高賃金 と企業の名 声,安全性ではな く,その企業に入社 して自分の能力発揮 と自己開発のできる職場である ことが非常に重要な要素である。 したがって 自分の能力を発揮す ることができる人事制度 を取 り揃えている企業は,より 意欲 と能力のある人的資源 を確保す ることができ,その結果 より良い能力向上,生産性向 上,企業成長,高福祉-の循環につながる。 そのようにするためには,企業側で次のような諸政策が必要である。12) (1)制度の構築 と慣行の改善 女性人力が男性人力 と同様の勤労条件 と職場で勤務 してい く場合,多 くの課題 をともな うことになるのであるが,過去に規定 されていた時間外労働 と深夜作業などの女性人力関 連規定が廃止 されている。 経営者は仕事 と育児を両立 させ る制度の定立,再雇用制度の導入,研修機会の女性人力 -の開放,適材登用,適材配置な ど, 自立 した勤労者 としての職業能力の育成 と活用のた めの人事制度を整備 し,女性人力の働 く意欲を引き出す制度を定着 させなければな らない。 女性人力の職務領域 を拡大 してい くためには,過去の男性人力を前提 とする職務設計を 女性人力にも無理な く仕事 をす ることのできる職場環境 を作ってい く職務設計にす ること 重要である。例えば職務再設計を行 うこ とで女性人力だけの熔接チームの活用,自動化・ロ ボ ッ ト化による女性人力の生産 ラインでの大幅な活用 な どの成果をあげるようにす る諸方 法を提案 し,そのよ うに している諸企業が増えつつある。 そ して労働時間の短縮が全体的 として相当進行 しているにもかかわ らず,一部業種など では相変 らず長時間労働 を してお り,長時間労働 を前提 とす る男女機会均等を女性人力に も要求することには無理があるので,女性人力の活用慣行の改善が強 く要求 されている。 また宴会や ゴル フ接待な どの度が外れた取引慣行は男性人力中心の取引慣行であ り,女 性人力の有効活用の観点か ら,このような部分についても改善する必要がある。 男女雇用機会均等法の精神 によって,働 く意欲 のある女性勤労者に,まず経営に関する 事についての情報 を積極的に提供 し,能力開発の機会 を提供 し,その能力を受 け入れ,公 正な業績評価を行い待偶す る,性差別のない人事制度 を確立 しなければならない。13) (2)経営者・管理者の役割 企業経営において経営者は人的資源管理制度の整備 と実行の必要性 を認識 しているが, これを実行に移そ うとする際に従来の習慣 と仕事に対す る不安などによってため らう傾向 12) 吉田和夫,現代の労務管理,白桃書房,(2003),p.102.
13 )B.Towers,HandbookofLaborRelationsPractice:KogaDPageLL'mL'ted,London,(1987),pp. 273・281.
-が現われ る状況 を打破 し,女性人力の自立 と業務推進の革新的な役割を担当す ることは経 営者 ・管理者の役割である。 このよ うな制度 をいかによく整備 した として も,その制度を運営す る経営管理者の意識 が女性人力 には仕事を任せない とい う伝統的考え方か ら脱する姿勢が要求 され る。 男女雇用機会均等法の施行後,女性人力の雇用は一層拡大 したが,また男女雇用機会均 等法のもた らした影響 も大きいが,経済のソフ ト化・サー ビス化による影響が一層大きい理 由であると思われ る。 女性人力に対 して再雇用制度,育児休業制度な どが導入 されているが,継続 して勤務 を した くて も育児や保育な どの家庭事情によって離職す る人,再就職の希望を持っていても 諦 めるしかない女性人力が相変 らず多いことが現実である。 経営者 はまず女性人力の活用 を経営方針 において決 め, 自社の女性人力の動機 をいかに 誘発 し,その能力 をいかに活用 してい く予定なのかに対 して,具体的な人事方針について 設定 しなければな らないであろ う。 経営者 と各部門の管理者 はこのような人事方針 に基づいて各部署の実態に当たるように 具体的な人事制度 を確立 し,戦略的な活用計画を立てて実践 していかなければならない。 このよ うな新 しい制度が有効 に機能す ることができるよ う,現場管理者の理解 と男性勤 労者 の協力 を得 ることができる社内の雰囲気を造成 し,意識改革を推進 していかなければ な らない。 このよ うな意識改革によって人事担当管理者は各部署に説得 させてい くことも企業の方 針 を明確にする効果をもた らすであろ う。 口.女性の 母性 保護 と 福祉増進 女性人力の活用のためには仕事 と育児を両立 させ ることができる支援策が必要である。 在宅看護関連サー ビスには,ホーム-ルパー,シ ョー トステイ ・サー ビス,デイケア,也 張入浴サー ビス,給食サー ビス,看護器機 レンタル,訪問看護 と指導があ り,育児関連サ ー ビスにはベ ビーシッター,チャイル ドケアなどがある。 このような場合には,育児休暇 と看護休業を申 し込まない勤労者は被看護者の状態 と症 状及び家族状況,自分の職務環境によって,このような各種サー ビスを選択 して利用する。 しか しこのようなサー ビスは 日常生活に必要なサー ビス とは異な り,いかなる業者がい かなるサー ビスをいかなる価格で行っているかを分か らない場合が多い。 したがって企業または共済会がホーム-ルパーや看護サー ビスの斡旋 を家庭部会などを 通 じて支援する。14) このよ うなサー ビスは 自分が負担をする従業員 にとって経済的負担が軽いとはいえず, 14) 小笠原浩一,新 自由主義 労使関係の 原像,木鐸社 (2001),pp.25・29. -1
0-特 に看護 が長期 間 に及ぶ場合 には相 当な負担 になる場合 が多 い。 また この よ うな援助 を行 う方法 として福利厚生 メニ ュー を選択す るこ とがで きるカフェ テ リアプ ランを行 う企 業が増加 しつつ ある。15) (1)事業場 内の託児施設 の設置 事業場 内に勤労者 のた めの託児施設 を 自主的 に設置す る企業 は,人力不足時代 に労動力 確保 のために設置 され る場合 が多い。 事業主が共 同で設置す る場 合 もあるが,多 くの場合 は一 定規模以上 の勤労者 を持 った大 企 業 ではなけれ ば効率的に運 営 しに くいのが現実 で あ る。 大企業 の場合 も全 国 にあ るすべ て の事業場 に託児施設 を設置す るこ とがで きず,設置 され てい る事業場 で も通勤距離や定 員 の関係 な どで利用す るこ とができない勤労者 がい るな ど公 平性 あ るよ うに運営 しに くい 実情 がある。 (2)情報提供及び相談 これ は病院,看護 ,育児 に対す る経験や外部サー ビス, または看護 と育児 に関す る公的 サー ビスな どに関す る情報 を提供す るこ とと同時 に相 談 に応 じる体制の こ とである。 中小企業 の場合,専 門カ ウンセ ラー を置 くことがで きない場合 には,外部 の専門家 に相 談す るこ とがで きるよ うに取 り次いだ りして,福利厚 生制度 を包括 的 に外部 の専門業者 に ア ウ トソー シングす る方法 もある。 看護や育児 の難 しさと苦痛 な どはその分野 の経験者 で はなけれ ば よ く理解す るこ とがで きないので特 に男性管理者 は理解 の不足す る場合 が多 い。 したが って先 に管理者 が率先 し て看護 と育児 に関す る研修 を受 け。 この問題 に関す る理解 を深 める必要 があ る。 (3)家族扶養 手 当 日本厚生労動省 の賃金勤労時間調査 によれ ば,家族扶養手 当を支給す る企業 は 1996年 に 従業員 1000人以上の企業で 91.4%,30人 か ら 99人 の規模 の 中小企業 において も 76.3%を見 てい る。16) Ⅴ 女性人 力の社会参 与 と経 済 活動 ィ.女性の地位向上 と社会進 出 21世紀にな り,女性人力 の経 済活動参加希望率は大幅 に増加 してい るのが実情で ある0 15) 笹島芳雄,現代の労動問題,中央経済社 (2002),pp.102・107. 16) 笹島芳雄,前掲書,(2002),p.39.
このことか ら社会的現実 と時代の移 り変わ りによって,女性人力の意識が変化 してきてい る とい うことが分かる。 これか ら経済活動に参加す るとい う潜在的女性人力はその大部分が社会教育を受けてい ることか らみて,将来を準備する姿の中に将来を設計す る姿勢がすでに出来ているもの と 見 られ る。 潜在的女性人力が希望す る活動分野を見れば,社会福祉 とコンピューター,保健医療, 育児 と保育教育,消費者保護活動,環境分野な どすべての分野で働 くよ うに教育を受けて いる状態である。 今 まで社会活動に参加 しにくい理 由は,子供の養育 と家事のため時間が不足す ることと 社会的慣行,制約,そ して健康上の理由で活動に対す る自信不足な どと分析 されている。17) 2002年 の場合の 日本女性人力の社会参加活動年齢分布 を見れば,20代が 21.2%,30代が 26.6%,40代が 33.7%,50代以上が 18.4%である。 そ してこれを未婚既婚の別で見れば,72.2%が既婚で,25,5%が未婚であ り,学歴別では 高卒が46.90/0,大卒が53.20/Oと分析 されている018) このよ うな現実を考慮 した時,女性人力が社会活動 を しようと思 う理由は単純に経済的 な理 由のためではない とい うことが分か り,自分だけの領域で認 め られたい とい う欲求す なわち, 自己実現の欲求の充足であるといえるであろ う。 社会参加 のための女性人力の希望事項は,社会参加 の時障害になる育児問題,家庭の理 解度,周囲の人たちの認識 な どであ り,時代的な変化 と共に女性人力 も社会における自身 の声 を高めて自我 を実現す る過程で専門家 として活動ができる多様 な職業領域が必要であ る。 女性人力が社会活動をす る一個人 としての能力を開発 した り自我 を実現するには,家庭 とい う垣根が相変 らず大きい負担 として作用す るので,周囲の理解が大きい として も女性 本来の役 目とされている家庭 を疎かにできないことか ら,専門家 として生活するには限界 がある。 したがって時間制であっても自分の素質や得意 を活か した業種 と資格を活用す る ことができる職種で短い時間にも一層効率を発揮す ることができる職業の開発を希望 して いる。19) 女性が社会活動に参加す る動機 は,経済活動-の参加 と自己の成長,そ して家庭で りっ ぱな親 になるためとい うこと,さらに周囲が専門家 としてかける期待値 に対す る自尊心で あるとい う研究も多い。 このよ うに女性人力が社会参加 をするようになる主な理由が単純に経済的な問題ではな い とい う事実 と同時に, 自分 を振 り返ろ うとす るとか 自己の成長のために参加す るとい う 事実が分かる。 17 ) 日本 中小企業事業団,中ノ」、企業の創造的 経営研究,中小企業研究所,(1993),p.45, 18)笹島芳雄,前掲書,pp.43・47. 19) 入江虎男,労使関係管理, 日本生産性本部,東京,餅 口41年,p.32,
-12-女性人力の社会活動活性化方案の側面か ら見れば,時代 に応 じた情報化教育,専門化教 育な ど諸般 の教育に参加することができる機会を通 じた 自我発見 と女性人力がよ り多様な 職業分野 と内容を希望することを土台 として女性人力の社会活動領域プログラムが開発 さ れなければならないことが分かる。 一線職業カ ウンセラー諸氏の女性人力社会活動活性化方案 をによれば,女性 も職業に対 す る理解 を持って資質を開発す る必要があ り,女性人力 とい う立場でのい くぶん不完全な 社会認識 よ りは徹底的な事前準備 を行い 自分の能力 を発揮す るよ うにす ることが, これか らの職業女性人力 として持続性を持って社会活動ができる足場 になるといわれ る。20) 女性人力の経済活動活性化のための支援については,優秀で多様な社会化教育の提供が 28.30/Oで一番高いパーセン トを占めてお り,女性人力の資質 と能力 を活かす ことができる多 様なプログラムの提供が24.2%であ り,女性人力の経済活動のために相応 しい需要機 関の紹 介 と適切な配置が 15.5%,女性人力が持続的に社会参加 できるよ うに適切な指導 と管理が 10.2%,女性人力の雇用 と就業のための時代的必要 を配慮 した情報化教育の積極的支援が 8.2%を占めた. そ して女性人力の社会活動のための個人的な努力については,責任意識の増進が 32.3%, 自分の能力 と専門性に相応 しい活動の長期継続が 26.6%,自分の業務に関する専門的な知識 習得が 23.7%となってお り21)女性人力の社会的活動のためであるが,週辺の諸般の与件が 不十分であるとい うより女性人力 自らの意識にも問題があるといえる0 女性人力が活動することのできる分野 として,社会福祉分野では老齢者 ・障害者 ・孤児 家庭などの 日常生活維持のためのボランティア活動において洗濯,掃除,買物,食事補助, 衣服着替え補助,入浴補助,理美容サー ビス,無料給食補助な どである。文化芸術分野で は図書館図書整理,保健医療分野では看病サー ビス,教育分野では学生指導,消費者分野 では消費者意識教育,環境分野ではごみ分離収去活動などであ り多様である。 口.女性人力の雇用と経済活動 日本の女性人力の雇用 と経済活動動傾 向を見れば若干差があるものの,2001年度 と2002 年度の現況は く表1〉〈表2〉のようである。 2001年度大卒就業率 を見れば,全体 で93.1%となってお り, この中で女性 の就業率は 93.0%であ り,男性の場合の93.2%に近似 的である。 そ して女性短 大卒 の場合就 業率が 89.5%であ り,幾分高 く現われている。男性高専卒業生 は毎年就業が100%となってい る のであるが,これは 日本政府が以前か ら実施 してい る機 能で ある技術者養成 のた めの独 特の教育政策である。 く表2〉で2002年度就業現況を見れば,男性の場合82.8%で,女性は81.2%である。全体的 20) 厚生労動省,前掲書,p.105. 21 )B.Towers,etal,p.121.
に見て2001年度に比べて就業率が低 くなっ_てお り,男女間の差は女が1・6ポイ ン ト低い。前 年度 と比べ ると11・8ポイン ト低 くな り,相対的に女性人力の就業の難 しさが分かる. 日本文部科学省 で調査 した就業者数 をく表3〉で見れ ば,2003年 の場合就業希望者43万 9,800人 の うち40万6,800人が就職 して93.8%の就業率 を見せ て い る。そ して2004年5月現 在 就 業希 望者46万2,900人 の うち就 業者 は36万7,800人 で79,5%の就 業率 で あ り,前年度 よ り14・3ポイ ン ト低 く現 われ てい る。 この理 由は2004年 の場合5月 までの統計で あ り, 年 度 末 になれ ば変動 があ る と思 われ る。 く表4〉の 2003年度新規就業者 を見れば,平均的には女性が男性 よ り約5.5ポイ ン ト低 い就 業率 を見せてお り,大卒の場合は男性が67.0%,女性 の場合 は60.1%で6.9ポイ ン トも低い就 業率 を見せ てお り相変 らず女性人力の雇用 が男性人力 よ り難 しい とい うことが分か る. く表5〉の男女就業者給与 を見れば,年俸 300万円以下では女性 の比重が男性 に比べて高 く, 400万円∼2,000万円の間では男性が女性 に比べてかな り高い こ とが分か る。 これ によって は就業現場 で相変 らず女性人力が男性人力 に比べて差別的な待遇 を受 けてい ることが分か る。 Ⅵ
むすび
本研究 は経済の発展 とともに女性人力の社会参加意識 の向上 に ともない女性人力が質的 に も量的 にも増大 してきてお り,就業活動 においても長期勤続 であ り職業意識 が変化 して きてお り,社会的にも女性人力の役割が重要視 されているが,女性人力 に対す る社会的な関 心 と視覚がまだ充分でない部分が多 く,持続的な開発 して行かなけれ ばな らない状態 であ る。 日本のみな らず多 くの国で女性人力 の能力開発 と教育訓練な ど多 くの部分で一層 多 くの 研 究が必要であると考え られ る。 (付記) 本稿は,東亜大学校経営大学院における経営学博士請求論文の一部 を,博士審査終了後, 日本 において 日本語 としてま とめたもので ある。 東亜大学校経営大学院 における指導教授 である朴在麟前総長 と同 じ講座 の李鍾法教授 , 鄭 亨一教授 に改 めて感謝 申 し上げたいo とくに指導教授の朴在麟博士の指導が無けれ ば, この論文のみな らず,後半部分の本論 ともいえる戦略論 を完成す ることが出来なかった。 また筆者 の韓国語 に対す るったな さを, 日本語で指導 し,カバー して くだ さった鄭亨一 博 士の力がなけれ ば4年にわたる大学院 にお ける研究を無事終えることが出来なかった。 -14-図表 く表1〉2001年度男女就 業現況 (単位 :%) 区分 男字 女手 + 全 体 就業 希望率 就業率 希望率 就業 率就 業 希 望率就 業 就 業率 大学 71.0 93.2 58.5 93.0. 67.25 93.1 短 大(女) 74.4 89.5 74.4 89.5 資料 : 日本厚生 労動省 ,労動 白書 ,(2001),p.408. く表2〉2002年度男女就 業現況 (単位 :%) 区分 男字 女字 全 体 就業 希望率 就 業垂 希望率 就 業率・就業 希 望率就 業 就業 率 大学 62.6 82.8- 73.3 81.2 67.9 82.0 短大 (女) 78.0 68.5 78.0 68.5 資料 : 日本厚生労動省 ,労動 白書 ,(2002.4.1),p.397.
く表
3
〉
就業希望者数 (単位 :千名) 区分 2003年度 2004年度(5月現在) 卒業者 希 望者就琴 就 業者 -卒業者 希 望者就業 就 業者 大学 554 352 328 554 371 304 短大 (女) 111 83 74 111 87 59 高専 (男) 10 4.8 . 4.8 10 4.9 4.8 合 計 . 675 439.8 406.8 675 462.9 36ケ.8 資料 : 日本文部科学省 ,学校基本調査, (2004.6.1),p.14. 〈表4
〉
新規就業者 の推移 (単位 :%) 区分 (年度) 男性人力 女性人力 男性人力 女性人力 男性人力高卒 大卒 平均女性人力 1999 95.4 91.6 71.3 59.2 83二4 75.4 2000 94.1 89.9 66.4 57.7 80.3 73.8 2001 94.8 90.5 66.0 59.7 80.4 75.1 2002 91.9 87.2 67.6 60.■6 79.8 73.9 資料 : 日本厚生労動省 ,雇用動向調査,(2004.10.1),p.463. -16-く表