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「 女性の視点」による心理学研究への影響

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秋田大学教育学部研究紀要 教育科学部門 49 pp. 87‑9 8. 1 99 6

Bem と Gi l l i ganの研究か ら見 る

「 女性の視点」による心理学研究への影響

佐藤 順子,森 和彦

Thei nfl uenceoffemi ni sm perspecti veon psychol ogi calresearch i n vi ew ofBem' sand Gi l l i gan' spaper.

J unko SA TO andKazuhi ko M oR I

I nt hi spape r ,wec ons i de rt hei nf l ue nc eoff e mi ni s m per s pe c t i veonps yc hol ogi c al r e s e ar c h. Fe mi ni s m pe r s pe c t i vei nc l ue de st wovi ewpoi nt s .Onei sapos i t i onai mi ngat t hef or mat i onoft hei mageofahumanbe i ngbeyonds e xdi f f er e nc e s .Anot he ri sa pos i t i one mphs i z i ngt hewomanor l gl nalde ve l opme ntbas e done s s e nt i alge nde rdi f f e r ‑ e nc e .Thef or me rpr oduc e dt hec onc e ptofandr ogynyandge nde rs c hemat he or yof andr ogynyandge nde rs c he mat he or ybyBe n.S. L " andt hel at t e rbr oughts t udi e s aboutt hedeve l opme ntofmor al i t yofawomanbyGi l l i gan.C‥ Wemadec l e art he ge nderbi a swhi c hps yc hol ogi c als t udi e sa sbe f or ehadbyc ompar i ngt he s et wor e ‑ s e ar c he r s .Andwer e vi ewe dt hes i gni f i c anc eandt hepr obl e msofge nde rdi f f e r e nc e wi t hde ve l opme nt alps yc hol ogyl npar t i c ul a r .

1 女性の視点か ら心理学を再考する必要性 地球上で軍事的,政治経済的に優位 に立 つ多 くの国の歴史 は " hi ss t or y" であ り,常 に周縁 化 された存在であ った女性 はその対象 にな って いない。科学 としての道 を歩みだ した当初 の心 理学 のなかで も,女性 は切 り落 とされている部 分であった。 たとえば,最初心理学 の研究対象 にな ったのは男性であ り,集 め られ る被験者 も 男性が中心であ った し, もちろん研究者 に女性 の姿 はない。今 日明 らかにな っている生物学的 な性差を考えてさえ も,極 めて限定的対象 か ら 集め られたデータを集計 し分析 して,人間の心 理 ・行動原則 としていたといえる。すなわち唱 え られて きた人間の行動原則 は男性的行動 の原 理であ った。それ らが安易 に一般化 され , 「 人間 の心理」 として語 られて きたのであ り,その こ との問題性 を指摘 す る もの ほ とん どいなか っ

た。 この傾 向 は,女 性 が社会参加 す るよ うに な ってか らも続 く。 た とえば Kohl be r gの道徳 性理論 は男性被験者か ら導 き出 した理論 である し ,Pi aget も男性的発達 を相定 した理論 と考え られ る 。Er i ks on のアイデ ンティテ ィ理論 も, 本質的な人格間の結 びっ き,親愛,関係性 を説 明 していないとい う批判があるが ( Fr anz &

Whi t e ,1 9 8 5 ) ,結局 は女性 の発達 に視点が置か れていないアイデ ンテ ィテ ィを想定 したか らで ある。

社会の発展 に伴 って研究対象が多様な人間に 広が るようにな り,当然被験者 に も多 くの女性 が加 わることにな った。1 9 40 年代頃か らアメ リ カを中心 としで性差心理学が盛んになる。 しか し, そこでは性差が社会や文化 の文脈 の中でつ くれ るもの とい う考え方 はな く, どの くらい男 性 と違 っているのか とい う差異 の列挙 にす ぎな か った。

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秋 田大学教育学部研究紀要 教育科学部門 第 49 集

その後,性差その ものを延 々 と語 ってい くこ とか ら性差 の背景 にあるもの, そのメカニズム へ と関心が移 ってい く。男性 ・女性 に特有 と考 え られて きた心理的特徴が普遍的 ・絶対的なの で はな く,社会的 ・文化的要素 を無視で きない ことがわか って きたので あ る。 それぞれの社 会,文化 の持つ規範が,女性 ・男性 に違 った役 割を期待す るのであ り, それが 「 性役割」 とし て心理学的に性差をつ くってい くと説明 され始 めた。このよ うに性差研究 は , 「それまでの性差 を測定 し,比較 し,記述す るとい う静態的な捉 え方か ら,性 による役割 の差をつ くり出す文化 的 ・社会的条件を明 らかに しよ うとす る動態的 な捉え方へ変化」 ( 伊藤,1 9 8 4) していった。

心理学 の中で も性役割研究が蓄積 され,性役 割認知,性役割取得,子 どもの性別認知など理 論的研究が次 々にされてい った。 しか し, これ らの研究 の多 くの理論 的基礎 とな って い るの が, 社会学者 Par s ons ,T.( 1 95 5) の理論であ る。 そ こに仮定 されているのは,父萩 は道具的 役割 ( i ns t r ume nt alr ol e ) ,母親 は表 出的役割 ( expr e s s i ver ol e ) を担 うとい った固定的な性 別役割分化 の考 え方 で あ り, そ こか らの逸脱 は,心理学 で い う不適応 と考 え られ た。 この Par s ons の理論 は,性役割 スケールの開発 に強 い影響 を及 ぼす こととな り,性 にともな った役 割分業 は自然だとみなされ る風潮 を助長 した。

こうい う学問,科学 の体系 に一石を投 じたの が,1 9 6 0‑1 9 7 0 年代 には じまった フェ ミニズム 運動である。 フェ ミニズムとは,性差別 の撤廃 の実現か ら男女 の平等 を目指 した女性解放運動 である。 フェ ミニズムはジェンダーとい う概念 を持 ち込むことによ り,男性中心 の近代西欧文 化 に基づいて構築 されているあるゆる分野 にイ ンパ ク トを与えた。 この フェ ミニズムを学問 と して体系 づ けたのが女性学 で あ る。女性学 と は,女性が無視 されて きた認識 の構造全体 を問 題 に し, それを女性 の視点か ら 「 脱中心化」 も

しくは 「 複中心化」す る,一種 の認識革命であ る ( 上野,1 9 8 6 )とも言 えよう。女性学 の登場 によ り,性差 という要因が生物学 的根拠 にのみ ゆだね られていた今 までの研究 に再検討が加 え

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られ るようになった。女性 の視点が導入 される ことは,心理学 の中で切 り落 とされて しまった 部分 を再考す ることである。それによって現代 社会が抱えている矛盾や問題点 を浮 き彫 りに し て,暗黙 の内に了解 されていた男性原理では解 決で きなか った様 々な問題点 に新 たな道 を指 し 示す ことが期待 されている。

1 9 9 3 年 に日本心理学会で 「ジェンダー ・イデ オ ロギ ー と心理学 の近未来」 と題 した小講演 が, また同年, 日本教育心理学会で 「 女性 の視 点を心理学的にどう活かすか」 とい う題の シン ポジウムが開催 された。 このように日本で も近 年 にな って 「 女性 の視点」 を取 り入れ る試みが 積極的になされているが , 「 女性 の視点」とは何 か, どのよ うな意味を持っのかが共通理解 され るようになるためには, まだまだ時間がかかる と思 われ る。本稿 は現段階において 「 女性 の視 点」 といった言 い方 をあえてす ることにより, 心理学研究 に新 しい視点 を導入す る影響 につい て考察す ることを目的 とす る。

2 「 女性の視点」を導入する際の 2 つの立場

「 女性 の視点」を導入す るにあた って は,その 基本的姿勢 に 2 つの立場が考え られる。

1 つ は , 「ジェンダー」という概念を持 ち込む

ことで,社会的な意味合 いでの性差をな くして

いこうとい う立場である。 この立場で は,基本

的に女性 と男性 は人間 として平等であることが

強調 され る。 もちろん生物学的な性差 まで否定

しているわけで はない。性別 を生物学的構造に

還元 し, それを社会的 ・文化的 に規定 された性

別観 に重ね る考えに対抗す るために, この立場

ではセ ックスか らジェ ンダーを切 り離す事 を目

指 している。 それによって混同 された性差別の

重要 な要因が ジェンダーであることを明確 にす

る。生物学的な性 と社会 ・文化的な性を区別す

ることによって,常識 として信 じられている性

別観 に異 を唱えることがで きるのである。すな

わち,女性 と男性 の間の社会行動学的境界線が

実 は社会的に規定 された ものであって,社会変

革 によ り平等 な性が実現 し得 ると見なすのであ

る。 この立場では,文化的な構造 に差別が組み

Akita University

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佐藤 ・森 : Be m とGi 1 1 1 ganの研究か ら見 る 「 女性の視点」 による心理学研究への影響

込 まれている現状で,女性 に焦点をあて るだけ の研究 は性差別 を理論的に補強す ることにな り かねないと考え られている。「 女性 の視点」の導 入 は,言 い換えれば ジェンダーの視点 の導入で

もある。

2 つめは, ジェンダーとい う概念を持 ち込 む ことによ り,女性が女性であることを, または 男性が男性であることを本質的な発達 の姿 と考 え る立場である。 ここでは近代社会 において普 遍的 とされて きた男性パ ラダイムに別 のパ ラダ イムを提示す る方法を とる。 この意味合 いでの ジェンダー概念 は,男性中心 に構築 された科学 を もって普遍的 とす ることを批判す ることで展 開 され る。基本的には性 は男女 の文化 という名 の生態群 システ ムで あ り,社会環境 の適応 を 個々の個体 の行動の多様性で実現 させ るための 機能でのみ括 られた生物社会学的に異 なる発達 システムである。 したが ってそれぞれの文化 の 中で男女 を記述 す るに適 した固有 の方法 が あ る。性 の違 いを考慮 し,独 自の生 き方を相互 に 受容 で きる社 会 こそが 目指 され るべ き社会 で あって,男性が研究 の対象 とな り, その男性 に よってつ くられた物差 しを持 ってきて女性 に当 てはめるのは間違 っているとす る。それぞれの 性 は求 め られ る方向が違 い, また自ら求めてい く発達 の方向が違 うと考え るべ きで,女性 は女 性 として,男性 は男性 として質的に検討 され る べ きであると考え る。つま り , 「 性」の独 自性 を 考慮 した立場である。

さて このよ うな視点 か ら価値観 を含 んだ行 為,心理的機能 の発達研究 において 「 女性の視 点」を導入す る重要性を指摘 したことで注 目で き る研 究 者 は,性 役 割 に お け る発 達 研 究 の B e n,S. L .( 1 9 82 ) と, 道徳性の発達研究 の Gi l l i gan, C.( 1 9 8 2 )である。 この二人 の研究の 理論的基盤 はフェ ミニズムにあるが, それぞれ 違 った立場 か ら研究 を展 開 してお り ,Be m は 前者 の性差解放主義 の立場,Gi l l i ganは後者 の 性差本質主義 の立場か らの研究 といえ る。以下 二人 の研究を中心 に比較検討 してい く 。

3 性差解放主義への過程 ‑Bem

( 1 ) 性役割の一次的モデル

性役割研究 で注 目で きるのが,Br ove r man ,

Ⅰ . K.らの研究 ( 1 9 7 2 )であ り,男性 に求 め られ ている性格特性 は " c ompe t e nc e M ( 独立, 客観 性,競 争,勇 敢, 自身, リー ダ ー シ ッ プ な ど ・ ・ ・),女 性 に求 め られ る性 格 特 性 は war mt handexpr e s s i ve ne s s "( 優 しさ,信仰 心,芸術 ・文学 の愛好,清潔など ・・・)であ ると指摘 している。 この研究 の寿 吉論 として示 さ れているのは,性役割をパー ソナ リティー特性 に帰属 させ るステ レオタイプ的な考え方が文化 や時代 の差を超えて普及 していること,社会的 に望 ま しいとされ る特性が,女性で はな く男性 にあてがわれているということ,男女 ともステ レオタイプはど男性的で も女性的で もな く,固 定 的性役割 イ メー ジが存在 す るに もかかわ ら ず, それを体現 している人 はほとん どいないと いうことなどである。

ここで使 われているテス トは,男性性 と女性 性を相互排他的な両極を持っ一次的特性である もの として仮定 されている。つま り,男性的で なければ女性的であ り,女性的でなければ男性 的であることを意味す ることになる。 この,一 次元上両極 モデルについで陸産概念 の効用 と妥 当性 について批判 したのが Cons t ant i nopl e ,A.

( 1 97 3 ) である。男性役割 と女性役割 はそれぞれ 独立 した別 々の次元 に属す るもの と考え るべ き で, ひとりの人間のなかに両役割が存在す るこ

ともあ り得 るとした。

( 2 ) Bem による性役割の発達研究

多 くの性役割研究 の中で示 されて きた男性性 一女性性 とい う二分法 は, ほとん どの女性 たち が示す心理的な特性 は女性性であるとい う トー トロジーであ る。 この よ うな心 理特性 の記述 は,女性 を劣位 に位置づ ける社会 によって容認 された性役割 ステ レオタイプその ものである。

伝統 的 な心理学 は男性 中心 の社 会体制 を温存 し,女性 を偏 見 に満 ちた位 置 に押 し込 めて き た。 そこで,男であることや女であることが社 会的な価値 を含 まないあ り方 を示すために提出 されたのが,Be n,S. L の ps ychol og ic alan‑

dr ogyny ( 心理的両性具有性) とい う概念であ

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秋田大学教育学部研究紀要 教育科学部門 第 4 9 集

る。「 固定的な性役割分化 がすでにその有効性 を失 った社会 のなかで は, たぶん アン ドロジニ アスな人間が心理的健康のよ り人間的な標準 に なるであろう 」( 1 97 4)とい うよ うに,性を超 え た人間観が示 された。Be m は,これまで望 ま し い とされて きた男性 や女性 の固定 的性別観 を s ex‑ t ype dと名付 け, 新 しく今後 あるべ き人間 像を両性具有性 に求 めることで一連の研究 を展 開 した。

すなわち Be m ( 1 9 7 4 )は,男性役割 と女性役 割を相互独立 な ものとして扱 い,二次元 モデル を仮定 した BSRI( Be n SexRol eI nve nt or y) を作成 した。 これは, アメ リカ社会 に住 む人 々 が男性および女性 にとって望 ま しいと考えてい る性格特性 を尺度項 目として採用 してお り,回 答者 はそれぞれの性役割特性が どの程度 自己を 記述 しているか 7 点評定で答える。そ して,そ れぞれ特性 を有 している度合 に応 じて Ma s c u‑

1 i ne , Fe mi ni ne , Andr ogynous に分類 され る 。

この 目録 の作成 にあた って Be m は 2 0 0 の性格 特性を大学生 に評価 させ る方法を とっている。

それぞれを男性的か,女性的か,両性的かを答 えて もらい,高 いコンセ ンサスのあった項 目だ けを目録 に採用 してい る。 このよ うな F‑ M 研 究 は ,1 9 3 0 年代 に も行われているが,その結果 は 40 年以上 た って もほとん ど変 わ らず,性別 役割 ステ レオタイプが社会 の中で, また時代 を 超 えてか な り一貫 した特徴 で あ る ことがわか

る。

さらに Be m は,翌年 「 andr ogynous はs e x‑

t ype dよ りも状況 に応 じた役割行 動 を と りう る」 とい う仮 説 を検 証 す るた め に,事 前 に BSRI によ って 3 タイプに分類 された被験者 を 使 って実験 した。実験 は,漫画の面 白さの設定 というア ッシュ型 の同調性 の実験であ り, ここ で は男性的性格 では他者 の判断に惑 わされるこ とが少 ないと仮定 され, また子猫 と遊ぶ とい う 場面で は,女性的性格 はこのような行動 をとり やす い との仮定 にお いて観察 され た。 その結 果,s ex‑ t ype dの場合 は性別 の対応 した課題 に 対 してのみ役割行動 を示 し ,andr ogynous の 場合 には,両方の課題 について行動 した ことが

示 され,両性具有者が最 も適応 にとんだ人物で あることを示 した。

また,1 9 7 6 年 Le nneyとの追試実験では,異 性 に特徴的な活動 に参加す ることでお金 をよ り た くさん稼 げる状況 を設定 し,次のような報告

している 。s e x‑ t ype dは,頑固 にステ レオタイ プに固執 し,得 にな るとわか っている状況で も 適応 しようとせず, 他方 andr ogynous は, そ れぞれの状況 に適応 した行動を とり,新 しい状 況 に も適応 して柔軟 な態度 で取 り組 もうと し た。結局,両性 を具有 している者 は,状況 に応

じて男性役割 も女性役割 も自由に選択で き, そ の場面で最適 な役割が遂行で きるとい うことで ある。

日本での性役割の研究 の先等 区的な もの として あげ られ るのは,相木の 「 青年期 における性役 割 の認知」( 1 9 67 ,1 97 2 ,1 97 4)の一連の研究で ある。 ここでは女性役割特性のほうが不明瞭で 一義性を持 たず,社会の基準が男性役割特性で 示 されていることが指摘 された。 この後, ステ レオタイプの特性 をメジャーとした研究が相次 いでなされている。個 々の研究の視点や方法 は 違 っているが,結果 として得 られた ものは共通 性がある。それをまとめると,伝統的な性役割 に合致す るよ うな男性役割特性や女性役割特性 のステ レオタイプが依然 として強固に存在す る こと,男性役割特性のほうが社会 の中で望 まれ る諸特性 に通 じ,高 い社会的価値が置かれてい ること,社会か ら求 め られている性役割期待 と 自己が望む役割特性 とのギ ャップは女性 に顕著 であ り,大 きな葛藤が存在す ること,女性役割 特性の受容を拒否す る女性 は男性役割特性を求 める傾向があること, 自らの性役割受容 に消極 的な女性 も,男性 には男性役割特性を期待 して いること, などである。 いずれに して もステ レ オタイプな特性 を用いて意識や行動を研究 して いるものであ り, これ らの研究 はかな り累積 さ れている 。

( 3 ) ジェンダー ・スキーマ理論の展開

Be m の ps yc hol ogi c alandr ogynyの概念提 唱 は当初か ら反響 を呼んだが, またその問題点 も多 く指摘 され た。 この点 につ いて は,三井

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佐藤 ・森 :Be m と Gl l l i ga n の研究か ら見 る 「 女性の視点」による心理学研究‑の影響

( 1 9 8 9)が研究展望 している。結局 Be m はその 後 の研究 の関心 を s e x‑ t ype dに移 し,その形成 のプロセスを ジェ ンダー ・スキーマ理論 で説明 す るようになった。

性役割 に関す る理論 と しては ,Fr eudの精神 分析学 的理論,Bandur a に代表 され る社会学 習理論,Kc ) hi be r gに代表 され る認知発達理論 があるC これ ら の 至論 に対 し新 し く 第 4 の撃論

と して提唱 さ れ た

Be l nC :

ジ ェ ン ダ ー を

ヌ 土 ‑‑ マ 理 論 (

1 9 81 千 三 9

85) で あ る 。 ジ ェ ン

ダ ‑ 食 ス 土 ・ ‑ マ こ ; 言 , 充 ち . , や る 責 童 情 登 の 率 か ら 注 に 結 びつ いた情報 を組織化す るためF J情報 , さ理 の , 7 7テ ゴ リー化 を指 して い る, この理論 揺,従来 の認知発達理論 と社会学習理論 に立脚 している。 ジェンダー ・スキーマ理論 は認知発 達理論 のように,性別化 ( s ex‑ t ypi ng)は子 ど もたち自身 の認知過程 によって形成 され るとす る。 しか し.認知発達論者 は性の違 いを身体 の 大 きさや力 といった知覚的な記述か ら説明す る のみで,なぜ s e x が他 の社会的カテゴ リーよ り 卓越す る認知 になるのかを説明 してはいない。

ジェ ンダー ・スキーマ理論 で は, さ らに進 ん で,性別化 の過程 はその社会集団の慣習が性 の 違 いによって賦与す る価値か ら導 き出されると す る。つ まり,社会学習理論 のように,性別化 の過程 は学習 した ことであ り,それゆえに必然 的だ とか,修正不可だ とかい うものではないと 説明す る。

Be m によ り, この ジェ ンダー ・スキーマ理 論 の実験的研究 が されてお り ,BSRI によ って 分類 された 4 つの タイプの人たちが どのように 情報処理 す るか につ いて調 べ た ところ,特 に s e x‑ t ype dな被験者が特徴 的なパ ター ンを示 し た。 この研究では自己を説明 しているものか ど うかについて 「 私 」 「 私でない」とい うボタンを 押 させ る。 す ると ,s e x‑ t ype dは明 らかに速 く 反応 す る。 これ は自分 の性 に適合 した ジェ ン ダー ・スキーマを利用 して判断 しているか らで あ る。 また 4 つの分野 の 61 語 の言葉 を記憶再 生 させ ると , s ex‑ t ype d な被験者 はジェンダー を基 に して ことばを分類す る。 これ らの結果か ら , s e x‑ t ype dは情報を組織化す るのに男性性

一女性性でカテゴ リー化 しているといえる。

Be m はジェ ンダー ・スキーマ理論 を説 明す るにあた って,生物学的に説明され る s e xと社 会環境がつ くり出す ge nde r をは っきりと区別 し,文化的文脈の中でつ くられ る性差を問題視 している。 その ことは,生物学的な次元の性差 を! 、 [ 滝′ 考慮 しないとか,除去 しよ うとしている

'V

、 ‑ L意味ではな く,男性 と女性 の活動や役割 藍分 は, rA 三 舎学的に反映 され る性差 のみであるこ と を意猿す る。つまり,人間社会が生殖作用の よう‑ , 三重転学的根拠 に基づ く性差 を強調 しす ぎ るl =とを警告 し,社会や文化がつ くり出す, 目 貫に組 み込 まれた性の枠組みを取 り上 げたので ある。

子 どもたちは, ジェンダーに関す る情報 を学 習す るだけでな く,新 しい情報 を評価 し理解す るために, ジェンダーに関連 した連想 のネ ット ワークを働かせ るようになる。 この連想のネ ッ トワークが ジェンダー ・スキーマである。 この ジェンダー ・スキーマは知覚を体制化 した りあ る方向に導 いた りす るが,新 しい情報 によ って いつで も修正可能 な ものである。社会 の中に埋 め込 まれている 「 女 らしさ 」 「 男 らしさ」を 自分 の ものの見方 として身 につけていき, さらに, 自分 自身を見 る上で も適用す ることにより,敬 在す る人間の特性 の中か ら自らの性 にふ さわ し

い特性 だけを自分の属性 として選択す る。 した が って,子 どもの自己概念 は型 にはまった もの にな り,女 の子 と男 の子 は量 的,質 的 に も異 な った ものとなる 。

この子 どもの ジェンダー ・スキーマの形成 に は社会が一役買 っているわけであ るが,身近 な お とながそれに代 わ り得 る別 のスキーマを与え ることによ り, ジェンダ‑ ・スキーマを組織化 し吸収す ることを弱めることがで きるとす る 。

そのスキーマとは , 「 個人差のスキーマ 」 「 文化 的相対主義 のスキーマ 」 「 性差別 のスキーマ」で ある。個人差 のスキーマとは,集団間の平均の 差 より集団の中での個人 のば らつ きのほうが大 きいという認知,文化的相対主義 とは,社会や 文化が異なれば考え方 も異 なるという認知,性 差別のスキーマとは,性差別 とは何かが認知で

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秋出大学教育学部研究紀要 教育科学部門 第 4 9 集

きることであ る。 このよ うな意味で Be m は, このスキーマの形成 において影響を与える環境 として,教育 の作用 を非常 に重視 しているので ある。

Be m は,暗黙 の うちに自明 の ことと考 え ら れていた性差や性役割が,実 は男 と女 とい う強 固な二分法のなかでつ くられた ジェンダーで説 明され ることを示 し,社会 ・文化の中でつ くら れ る性差 は不変 な もので はな い と した。Ben の研究 は支配的権力の優勢なパ ラダイム,つま り男性パ ラダイムを シフ トさせ る試 み としてな され た と もいえ る。人 間 の行動 やパ ー ソナ リ テ ィを ジェ ンダーに帰属 させ るべ きで はな い し,社会 は生殖 という無関係 な ものにまで ジェ ンダーを投影 させ るのはやめるべ きだ とす る。

男であること,女であることと同時に人間であ ることを受 け入れ られ る,性 を超えた人間像を 求 め,人為的な ジェンダーの強制か ら解放 され

るべ きであると した。

( 4) Be m の問題点

Be m が最 初 に提 唱 した andr ogynyの概 念 か らgender ‑ s chema へ と関心 を移 した ことに ついては, フェ ミニズムが社会的に認知 され, andr ogynous な人間 の適応性 が スローガ ンと

しての意味合いを失 ったか らといえる ( 三井, 1 989) aLか し,ジェンダー ・スキーマ理論 に関 して もい くつかの問題点が挙 げ られている。第 一 に, ジェ ンダー ・スキーマの理論提唱 にあ た って相変わ らず BSRI を用 いた ことである。

もともと特性記述的な方法論 を とった BSRI を 認知形成度 の測定 に読みかえていることか ら, 理論的上 の矛盾が生 じている。つまり, ジェン

ダー ・スキーマが弱 まれば,両性具有的になる のか, あるいは女性性 も男性性 も少 ない未分化 なパ ーソナ リテ ィになるのか,両性具有の人間 と未分化の人間 はジェンダー ・スキーマが弱い 人 と して質 的 に同 じなのか とい う疑 問で あ る ( 石田,1 9 94 ,土肥,1 99 4) 。第二 に,Be m 理論 の中心 にある 「 適応」のとらえ方 の問題である。

性差別を構造化 している社会 に適応す る有効 な 方向性が両性性 にあるとした ら,少な くとも現 在の ところ男性社会 に適応す ることを良 しとす

ることにな り,新 しい道 を構築で きる理論 とは いえない ことにな る。「このよ うな形 で適応 を 問題 に してい く限 り, その社会 において優位な 側の論理や価値 に何 らイ ンパ ク トを与え ること はな く, む しろその構図を補完す ることにさえ なる」( 伊藤,1 995)と考え られ,Be m が望むよ うな,性を超えた役割 の実現が 目指 され るとは 思われない。第三 に考え られ る問題点 に,研究 が性役割 ステ レオ タイプを強調す る結果 となっ て いるとい うことであ る。Be m の研究 は生物 学的性差か らジェンダーとい う社会的性差を引 き離すのが 目的であった。 したが って,男性, 女性 とい う名称 その ものが性の価値観 を含む一 般社会の中で, もし男性 と女性が両極対立でな い とい うことを強調 したいのであれば , 「 男性 性 ・女性性」 といった名称 その ものを変え るべ

き, とい った指摘 もある ( 藤永,1 98 6) 。 この よ うにい くつか の問題点 は指摘 され る が,Be m が,社会が作 り上 げるジェンダーに視 点をおいた理論 を提唱 し,性 を超えた人間像を 提示す ることによって男性中心 に構築 されてい る理論 に反証 した ことは意義があると考 え られ る。特 に, セ ックスとジェ ンダーの構成要素を 独立 させた ことは,心理学 のみな らず, ジェン ダーを扱 う近接学 問すべ て に貢献 した といえ る。

4 性差本質主義の立場 ‑Gi Hi gan ( 1 ) 認知論 による道徳性の発達理論

Kohl ber g 派 は認知発達理論 の立場 か ら,道 徳判断の発達段階 は文化的 に普遍であ り,一定 の順序性があると主張 した。道徳性 の発達段階 は認知の発達 と同 じように説明され,個体 と環 境 との間の相互作用の中で, よ り高 い均等化へ 向か っての認知構造上 の再組織化が行われ ると 説明す る。道徳判断の発達 の画 し 、 に認知発達が あるとい う考えは ,Pi aget の論理的思考の発達 段階 に対応 した理論であ り, この道徳性の発達 段階 も 6 段階の順序性 を持つ もの として提示 さ れた。

また Kohl be r g 理論 によれば, この道徳判断 は役割取得のプロセスで, その中心的 メカニズ

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佐藤 ・森 : Be m とGi l l l ganの研究か ら見 る 「 女性の視点」 による心理学研究への影響

ムは平等 と相互性 としての<公正 >である。道 徳的葛藤状況 を解決す るために用 い られ る最 も 高次 な道徳判断 はこの公正 の原理であ り,人 と 人 との関係 の基本的な規範であって, どの段階 にお いて もその根底 にあ る もの は公正性 に向 か っているとす る。道徳性 の判断が個人的判断 とは異 な り,普遍的,包括的であ って一貫性 を 持 ち, 客観的, 理論的であるとす る Kohl ber g 派 の考えは形式主義 の立場を とるものであ り, 脱中心化 した人格 と普遍的倫理を求 める姿勢が あ らわれている。

( 2 ) 女性 の道徳的発達 IKohl ber g 批判 ‑ アメ リカの心理学者 Gi l l i gan,C. は,絶対的 普遍性の立場か ら道徳性 の発達 を唱えた立場を 批判 し, これ とは異 な った道徳性 の発達がある ことを 2 つの点か ら主張 した。 1 つ は文脈的相 対主義の問題であ り , 2 つめは男性 とは異 なる 女性独 自の道徳 性 の発達 につ いてで あ る ( 山 岸,1 987 ) 0

Mur phyと Gi l l i gan ( 1 980) は,道 徳 性 を 個 々の状況や実際の文脈 とい った相対主義 の立 場 か らKohl ber gの理論 を批判 した。抽象的, 客観的な道徳性 の発達 を示 した Kohl ber gの考 えでは相対的 ・状況的な側面 は正 しい発達 の道 筋 の中に組み入れ られてお らず,退行 として扱 われ る ( 後 には 4 y 2 段階)o Lか し,成人の発達 には文脈的相対主義 の立場‑の関わ りがあ り, その決定 は個人的責任を負 うとす るものである が, この状況依存的な立場 は, Kohl ber g 派が 考 える原理的水準 とは異 なるもう一つの道徳性 発達であ り,新 しい理解 の上でよ り高 い道徳性 と判断 され る。つ まり,場面 の実際的 ・具体的 状況 に応 じて対処 し, その結果への責任 という 指 向性が,Gi l l i ganらの文脈的相対主義 の枠組 みである 。

さ ら に Gi l l i ganは , 「も う ひ と つ の 声」

( 1 9 82 ) とい う著書 の中で女性 の道徳性 の発達 について言及 している。道徳性やアイデ ンテ ィ テ ィの発達 を研究す る中で,人が他者 と自己の 関係を語 るときに 2 つの語 り方があることを示 している。 この異 なる声 は,性の違 いによる語 り方 の差異 ではな く, テーマの違 いか らくる異

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なる声 といることを意味す る。 しか し,心理学 の理論 の中にはその声 は反映 してお らず,男性 的発達 に基づいた理論がつ くられて きた。そ し てその発達 の理論 にかみ合わない女性 は,発達 に失敗 しているとみなされて きたのである。女 性 の発達が,既成 の発達モデルか らはみ出 して いるとい う事実 は,第 1に,従来 の人間一般 の 発達理論 に欠陥があるとい うこと,第 2 に,人 間一般 とい う概念規定 には限界があ るとい うこ と,第 3 に,人間世界 におけるひとつの事実を 捨象 しているとい うことを指摘 していることに はかな らないのではないか と指摘す る。

Kohl ber g 理論 の公正 の道徳性発達 は,西欧 文明社会 における男性的発達 を記述 しているも のであ り,実際に女性 を被験者 に していない。

ここで示 され る発達観 は, 自他 を分化 し,独立 した個 へ の プ ロセ スをた どる とい うもので あ る。基本的に発達 を自立 の過程 と考 えている。

この理論 の中心 テーマは<分離 >であ り,他者 との関係では自立 を,思考や判断 に関 しては自 分 を状況か ら切 り離 して状況を客観 的,合理的 に見 ることがで きるよ うになる脱中心化 を求 め てお り, それが人間 としての発達課題であると 考えている。 しか しGi l l i ganは,女性の場合他 者 との関係 やその と らえ方 が違 って い るとす る。西欧文明社会 における男性が発達 とともに 他者か ら自立を してい くのに対 し,女性 は他者 との関係を保っ ことを志向 し続 ける。 この こと は,性役割 にも反映 している。男性 は独立 して 一人で生 きてい く強 さや能動性が期待 され るの に対 し,女性 は優 しさや思 いや りといった共感 性や受動性が期待 され る。

この女性 と男性の質的違 いに注 目 して,女性 を被験者 として道徳的葛藤や 自己の とらえ方 に 関す る研究 を Gi l l i ganは面接法 を用 いて行 っ た。著書 「もうひとつの声」では , 大学生 に関 す る研究調査 」 「 妊娠中絶 の決定 に関す る研究」

「 権利 と責任 に関す る研究」 の 3 つが紹介 され

ている。 その結果,男性 と女性 の間では道徳 の

とらえ方が異 なること,それは自己の とらえ方

と関連 していることが示 された。女性の場合,

道徳的問題 は他者 に配慮 し傷っけない義務 とと

(8)

秋 出大学教育学部研究紀要 教育科学部門 第 4 9 集

ら え ら れ , そ う い う 配 慮 が 責 任 の 成 就 と され

る 。 女 性 に と っ て は 責 任 を と る こ と に お ける葛

藤 が 道 徳 的 葛 藤 で あ り, 自 分 と つ な が りを持つ

他 者 に い か に 配 慮 を 払 う か が 考 慮 されている。

こ の よ う な 道 徳 性 の あ り 方 は,男性 と女性 の

発 達 の 道 筋 が 質 的 に 違 っ て いるか ら, とい うの

が Gi l l i gan の 主 張 で ある。Kohl ber g理論 にお

い て は , 直 接 的 な人間関係を超え られず道徳性

を 広 い 視 野 か ら体系的にとらえ られないあ り方

は , 道 徳性 の低 いステー ジに評定 されて しま う。Gi l l i ganが指摘 しているのは,女性 は道徳 性が低 いので はな く,別 の道徳性を目指 した発 達を しているとい うことなのである。つ まり, 道徳性 には自己や世界 を客観的に対象化す る<

公正 の道徳性 ( mor al i t yofj us t i ce) >とは別 に,他者 との関係 の中で人間を相互 に依存す る もの とし,状況 に相対的な判断をす る<配慮 と 責任 の道徳性 ( mor al i t yofcar eandr es pons i ‑ bi l i t y) >があ り, 女性 は後者 の発達過程 をた

どると考え る。 表 1は, 2つの立場 を整理 した ものである。

日本 の研究で は女性性,男性性 といった名称 を用 いず に人間の発達 を表 した研究 もある。山 本 ( 1 989) の 「 一体性 一分離性」,伊藤 ( 1 993)

表 1 二つの道徳性 ( Lyons ,1 983:1 987) 正義 の道徳性

の 「 個人志 向性 一社会志 向性」 ,伊藤 ( 1 9 9 3 )の Gi l l i ganの研究を もとに してお り,用語 の用い 方 は違 うが 自己の持つ二面性を表 していること で共通 している。 また,各研究 においで性差を 示す場合 も,社会や文化 における男女 の様相の 違 いを考慮 した考察 も見 られ るよ うにな った。

( 3 ) Gi l l i gan の理論の意義

Gi l l i ganが女 性 の道 徳性 の発達 か ら問題提 起 した主 旨は,男性原理 とい う 1つのパ ラダイ ムだけで全てを評価 し,女性 の発達 が遅れてい ると結論 づ けて しま うよ うな既存 の理論 に対 し , 別 のパ ラダイムを示 して, その背後 にある 異 なる考え方 をどのよ うに解釈すべ きか焦点を あて ることである。女性 とい う視点が,西欧白 人男性社会の価値 に転換 を迫 ったといえる。

Gi l l i ganは このあ と も道徳性 に研究 の関心 を しぼ り, 意欲的に研究 を している 。 Gi l l i gan の研究 は Kohl be r g 派 の研究 に も影響 を与 え, 相対主義 を取 り入れて理論的枠組 みを修正 し, 評定法を変 えた。Gi l l i ganの研究 は従来 の道徳 性 の発達 に再考を促 し,新 たな道徳性発達 のス

テージを提示す ることにな ったのである。

また Gi l l i ganのよ うに, 自我 の発達 を分離

・ 配慮 と責任 の遺徳性 自己のとらえ方 ∃他者か ら分離、 自律 した もの !他者 と相互依存関係 にある

他者 の見方

道徳的問題 の

ン トに合致 し 、 2 ) 相互‑公正 さを含 2)他者 の幸福 を促進 し

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Akita University

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佐 藤 ・森 :Be m と Gl l l i ganの研究 か ら見 る 「 女性 の視点」 による心理学研究への影響

‑個体化 の過程 か ら論 ず るので はな く, 自己 と 他 者 が共 にあ る こ とか ら論 じよ うとす る視 点 は,近年見 られ る関係 の文脈 か ら人 間を と らえ 直す動 き ( 杉村 ,1 9 9 5 ) に も通 じるものが あ り, 新 たな発達理論 が構築 され る もの と思 われ る。

( 4 ) Gi H i gan 問題点

Gi l l i gan の理 論 が提 示 され た後 さ まざ まな 迫研究 がなされているが,道徳 的判断 の発達 に 対す ると らえ方 に 2 つの志 向があ ることはほぼ 一致 した見解 にな っているよ うであ る。 ただ, 女性 特 有 の別 の質 を持 った発 達 で あ る とい う Gi l l i gan の仮説 は必 ず しも支 持 され て い るわ けで はない。女性 に関す る研究 で も特 に性差 が 見 られた研究例 は少 な く , 2 つの志 向が性 に関 わ らず どち らに も見 られ ると した研究が多 い。

つ ま り,個 人 的 な領域 に関 わ る道 徳 的葛 藤 は

「 配慮 と責任 の道徳」,欲求 の均衡 を はか る こと が必要 な領 域 で の道徳 的葛 藤 で は 「 公正 の道 徳」 が使 われ ると言 うべ きで, どち らが使 われ るか は葛藤 の タイプによ るのであろ う。 また, 日本 にお ける男性 的道徳価値観 の重心 が 「 配慮 と責任」 よ りも 「 公正性」 にあるとは思 われな い。 このよ うに道徳的普遍性 か ら逃 れて相対的 視点 に立 っ とす る視座 に関 して も文化的固有性 の点 か ら見 れ ば整合 性 に疑 問 が残 されて い る ( 山岸 ,1 9 8 5 ) 。

これ まで依存性,配慮, 同調 とい った他者志 向的な特性 は,長 い間社会が女性 に期待 して き た ものであ る。 この社会 の中で女性 は人間関係 の しが らみに縛 られて きた。 したが って 自他相 互共存 はプ ラス面 もあるが,女性 にとって は現 にマイナス面 の方 が顕著であ る 。Gi l l i gan のい うよ うな配慮 や責任 とい った他者志 向的な傾 向 が女性 に顕著 であ ることを強調 して も,何 ら女 性 を性差別 か ら解放 しないのは明 らかであ る。

性 に付随 した役割 は社会 の要請 であ り,別 の言 い方 をすれば社会 ・文化的 につ くられた もので あ る。女性 独 自の発 達 とい う説 明 をす る こと で, や は り女性 は家庭役割 の家事,育児,介護 に合 ってい るのだ とい う解釈 を促 して しま う可 能性 もあ る。本来 このよ うな固定観念か らの解 放 を 目指すべ きで あるのに, マイナス面 を補強

す る結果 とな っている事 も事実 であ る。

また,性差 を本質 的な もの とと らえ る考 え方 は, フェ ミニズムか ら後退 した保守 的な思想 で あ り,歴 史 的 な挫 折 感 の産 物 で あ る ( 上 野, 1 9 9 5 ) とい う主張 もあ る。近代社会成立以降 は, 女性 は家庭 の役割 を担 うことで しかその存在 を 示 せなか った。現在 に至 って も女性 の状況が飛 躍 的 によ くな った とはいえない。選択権 はい く

らか増 えたが有形無形 の圧力がな くな ったわけ で はない。 このよ うな現状 での性差本質主義 は 女性 の現状 を変革 す る有効 な理論 とな り得 るの か。 ジェンダーが社会 の権 力構造 の中でつ くら れた ものであ り,女 は男 とい う性 か ら差異化 さ れた存在であ るとい うことを この立場 は軽視 し ているとも言 え よ う。

Gi l l i gan が男 性 パ ラダイ ムで構 築 され た研 究 に新 たな視点 を導入 した意図 は,理論 の上 で も方法や解釈 において も排除 されて きた女性 の

「 声」を取 り入 れ ることで,女性 の発達 の形態 を 明確 に しよ うとい うことであ った。 しか し,男 性パ ラダイムの中で 「つ くられて きた女性」 の 姿 を独 自の発達 と して認 めて しま うことは,逮 に支配 的パ ラダイムを是認 して しま うことにな るので はないか。男性が強 いた理論 を,進 んで 補強 して いるよ うな ものであ る。従来 の性別観 を何 ら問 うことな く価値 を賦与 しよ うと して も 矛盾 が生 じるのは明 らかであ り,結局,差別 に な る。男性パ ラダイムに対抗 した女性パ ラダイ ム とい う二項対立 は,性 を互 いに排他的 にさせ るだけと思 われ る。

Gi l l i gan の研 究 の よ うな関係 性 の文 脈 の中 で発達 やアイデ ンテ ィテ ィを とらえ る方法 は, 現在 の心理学研究 にとって重要 な視点 であ る。

しか し, これ は女性 に とってだ け顕著 な もので はな く,男 性 に と って も当 て は ま る,人 間 に とって普遍 的な視点であ る。他者 か らの分離 ・ 独立 が唯一 の発達 の姿 で はな く,他者 との関係 を大切 に した相互成長促進的 な見方 は,女性, 男性共 に必要 な こととと らえ るべ きであろ う。

5 今後 の研究課題

こ こで 取 り上 げ た Be m と Gi l l i gan の研 究

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秋田大学教育学部研究紀要 教育科学部門 第 4 9 集

は,時代 の動 きに即 した研究 で あ るといえ よ う。方法論や理論 の内容 にはまだまだ議論 の余 地があるが,今 までの時代が持 っていたパ ラダ イムを転換すべ く注 目を浴 び,論争 を巻 き起 こ し, また現 に進行中の理論である。 これ らは, これか らの社会 の新 たな道を指 し示す手がか り とな る研 究 で あ ると考 え る 。Be m や Gi l l i gan のように, イデオロギーを研究 に持 ち込むのは 問題 で あ るとい った批判 が な いわ けで はない が, これか らの時代 を創 る新 しい視点を提供 し ているといえ る。現在 フェ ミニズムは,女性 の 問題 を照射す る視点か ら, そ こに男性 も含 めた 人間 としての権利回復を 目指 してい く視点 にか わ って きた (しま ,1 985) 。そ こか ら見えて きた のは,男性 もまた女性 とは違 った意味や領域で 抑圧 された存在であ った とい うことである。 し たが って,女性 のみに視点 を集中させ ることな く男性 との関係性の中でお互 いを語 るべ きであ る。

今後 の心理学研究 の展開 としては,従来の研 究 のよ うに,現段階の社会 ・文化を考慮せずに 男性を対象 として無意識 に作 られた物差 しを男 女同一 の ものとして適用 し, その量的差異 を男 女差 として捉 えて しまうような間違 いを改める 方向に転換す る事が望 まれ る。現在 よ く言われ るようにな った 「 質」 の考慮 はどの分野 におい て も大切 な ことであろう。男性 と女性 の性的ア イデ ンテ ィテ ィは,男 と女 とい う関係性 の中で 相対的に獲得 されているものであ り,質的な検 討がなされない限 りその研究 はいっ も同 じジレ

ンマに陥 ることとな る。 この 「 関係性」 と 「 相 対性」 に注 目 し,生物社会学的発達研究 の視点 か ら質的な違 いを検討す るのが これか らの研究 の主要点 になるであろう。 ジェ ンダーを特性で はな く関係性 と相対性の文脈 の中で捉 え,特 に ジェンダーの差異が明確 になる対人関係領域 の 結婚や恋愛,職業場面,家庭生活場面 など生涯 発達全体の中に位置づけて状況 を想定 し, どの ような質的関係性 の差異が見 られるかを検討す る研究が求 め られ る。

次 に心理学 における研究 の法則発見が,現実 の社会のなかで どのような価値体系 と結 びつけ

られ利用 され ることになるのか,研究結果が ど の よ うに解 釈 され, ど う応 用 され るのか, と い った ことを もう一度 よ く考えるべ きである。

たとえば,女性 と育児を語 る場合気 をつ けなけ ればいけないのは,女性が妊娠 と出産 の機能を 持 っているか ら,育児 の主 たる責任者 は女性で あ り,男性 は補助的役割 とい うバイアスを研究 者 自身が持 っていてそれが結果 の解釈 に影響す ることである。( 青野,1 993)このよ うなバイア スは心理学 に限 らず蔓延 している状況であ り, したが って研究が何 を目的 とし,何 を解 明 した いのかはっきりさせ ることがます ます必要 にな るといえる。性的機能 の二分化 は行動傾向の二 分化 と本当に同 じなのか ?性で行動 は二分化 さ れ るのか ?そのように認知 されて しまうメカニ ズムは何 なのか ?研究者 自身の文化的バイアス はどのような ものなのか ?とい う事 に疑問を持 つ ところか ら研究 は始 めねばな らないだろう。

性 はそ もそ も行動 の多様性 を生 み出すために流 れ着 いた進化 の道具である。 このような社会的 存在 を前提 に した発達過程 を二分化す ることの 功罪 について も問い直すべ きであろう 。

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秋田大学教育学部研究紀要 教育科学部門 第 49 集

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Akita University

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