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<論文>多様性社会に求められるキャリア教育の検討 ―女性活躍の視点から―

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1.はじめに

多様性を尊重する社会はダイバーシティとも呼ばれ、性別、年齢、障害の有無、性自認、学 歴、人種といった属性やライフスタイルなどで人を制限せず、積極的にその人の能力を活かし ていこうとする考えである。社会は、同質であることが組織としての能力を高めるとした従前 の価値観からの転換が迫られている。詳細は後述に委ねるが、本稿においては、特に女性の視 点から課題点を指摘し、性差を越え活躍するために必要となる高校生を対象としたキャリア教 育について検討したい。 総務省統計局「労働力調査2018年3月分」によれば、非正規の従業員数は2,111万人で前年度 比113万人が増加している。正規、非正規の全体の比率が61.8%と38.2%であるのに対し、女性 に限って見れば、それぞれ42.7%、57.3%と、非正規の占める割合は高く、非正規全体に女性 が占める割合は69.3%と極めて高いことが分かる1)。こうした背景には、女子の職業継続上の 課題があり、特に出産・育児をはじめ家庭の事情を理由とする退職や、その後の再就職におい て、正社員として復帰するものが少なくなっていることがある。 「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(通称:男女雇用機 会均等法)が1986年に施行され、2007年の改正では、出産・育児などによる不利益取扱の禁止 や、男性に対する差別、セクシャルハラスメントの禁止などが規定されている。 こうした法整備や女性の社会参画の推進などが行われている一方で、女性の家庭を支える役

多様性社会に求められるキャリア教育の検討

―女性活躍の視点から―

岡 俊

之*

Examination of Career Education Required

For a Society of Diversity:

From the Perspective of Women’s Participation

(MARUOKA Toshiyuki)

*近畿大学教職教育部教授 〔キーワード〕キャリア教育、ダイバーシティ、女性活躍、男 女協働、ライフプランニング

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割等から、通勤時間や労働時間の制限、育児、介護との両立を図ることなどが課題となってい る。また、非正規雇用者に与えられる賃金対価は低く、同時に責任の重い仕事や難度の高い仕 事を与えられることがなく、自らの能力を生かす場面を少なくしている。 こうした実態を見ると、男女の区別なく学校教育を受けながら、性差によりもてる能力を十 分に発揮することができていない現実に、現在のキャリア教育や進路指導が、子どもたちの意 識の変容や能力の育成に結びつき、女性が社会の壁を乗り越える力になり得てないのではない かとの疑問が出てくる。 「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(平成23年1月中教審答申) において「これらの課題は、少子・高齢化の進展により、将来的に大幅な労働人口の減少が見 込まれる中、労働生産性の維持向上や、労働力の確保等の面から語られることが多いが、その 根幹には、一人一人がより幸福な人生を送っていくことができるようにするためのものという、 教育や学習の本旨があることを忘れてはならない。」2)と示しているが、これは性差やマイノリ ティを含めた普遍の考えである。 今、社会は男女が協働して参画する仕組みづくりや企業における多様性を生かすための制度 など、いわゆるダイバーシティ環境の整備を進めているが、同時に現在のキャリア教育の課題 に照らしたとき、多様な社会に生きることになる高校生が、性差を越えて自らの生き方あり方 への考えをもち、その実現に向けて乗り越える能力を身に付けるための教育が求められている。

2.問題の所在

 女性の就業継続の課題 厚生労働省委託調査「両立支援に係る諸問題に関する総合的調査研究」(2008)によれば、 図13)に示すように、正社員だった女性71名を対象として、「妊娠・出産前後に退職した理由」 として最も多かったのは、「家事・育児に専念するため自発的にやめた」が39.0%で、「仕事を 続けたかったが仕事と育児の両立の難しさでやめた」が26.1%、「解雇、退職勧奨された」が 9.0%と続き、結果から自己の意志に反して退職している者が、35.1%に上るのである。 特に「仕事を続けたかったが仕事と育児の両立の難しさでやめた」26.1%の具体的内容は、 「勤務時間があいそうになかった(あわなかった)」が65.4%、「職場に両立を支援する雰囲気が なかった」が49.5%、「育児休業を取れそうもなかった(取れなかった)」が25.0%、「保育園等 に子どもを預けられそうもなかった(預けられなかった)」が20.7%、「会社に育児休業制度が

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なかった」が19.1%となっている。 制度が女性のニーズに合ったものになっていないことや、実際に活用しづらい空気・雰囲気 があることを示している。 また、同委託調査において、女性の両立支援をするため就労形態別の勤務先の制度について、 女性正社員1,028人から得た回答によると、「育児のための休業制度」について、「利用しやす い」が60.4%、「利用しにくい・制度がない」が34.1%となっている。「育児のための短時間・短 日数勤務制度」では、「利用しやすい」が34.7%、「利用しにくい・制度がない」が54.2%に上っ ている。また、「在宅勤務制度」については、「利用しやすい」が5.1%、「利用しにくい・制度 がない」が86.7%と、制度の種類により利便性に差異がある。 ここでも、制度があっても利用しにくいと言う企業や社会の風土があることがわかる。 ここで、欧米と日本の状況を比較して見てみたい。図2に示した、「日本とアメリカ・オラ ンダ・ノルウェーの社会環境指標」4)のように、日本の社会環境は国際的に比較して見ても遅 れをとっていることが反映されている。特に、「雇用機会の均等度」「働き方の柔軟性」「社会 の多様性寛容度」「家庭内役割分担の柔軟性」といった項目は顕著に他国に比し乖離がある。 社会や企業が女性をはじめとする多様性を受け入れ価値を高めるには、社会の仕組みや制度の 改革をはじめ、「家庭内役割分担の柔軟性」の項目に象徴されるように、男性も含めた社会の 図1 妊娠・出産全前後に退職した理由 [出典:厚生労働省委託調査(2008)両立支援に係る諸問題に関する総合的調査研究]

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多様性を受け入れる意識の醸成が求められるのである。  キャリア教育の現状と課題 キャリア教育は、「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を 育てることを通して、キャリア発達を促す教育」であると定義されている5)「キャリア」は人 生の轍とも訳され、一人一人の発達というものを、自己と働くことを結びつけながら歩んでい く人生行路であるとみなし、それを支援するのがキャリア教育である。 高校生は青年期という発達段階にあり、自分とは何かを問い、一定の答えを出す時期で、自 我同一性の発達がなされる。こうした過程を経て自己への理解を深め、次第に自己受容してい くのである。 図3に示すように、三村(2004)によれば、高等学校における進路指導は、「自己の理解」 「進路情報の理解」「啓発的経験」「キャリア・カウンセリング」「卒業後の進路選択・決定の支 援」「卒業後の追指導」の6項目の活動により進められている6)。ここに言う「啓発的経験」や 「キャリア・カウンセリング」は、インターンシップやボランティア参加により成功・失敗を 図2 日本とアメリカ・オランダ・ノルウェーの社会環境指標 1 ノルウェーは「社会の多様性の寛容」はデータが取れていない [出典:内閣府(2005)少子化と男女共同参画に関する社会環境の国際比較報告書より作成]

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経験することや社会で活躍する先輩などの成功体験を聞くことや、さらに教員等から課題解決 への適切なアドバイスを受けることなどである。 しかしながら、キャリア形成への手順や手法が様々に示されているものの、職業や働くこと への自己の価値観を育む教育は十分ではない。職業観は職業に対する概念、さらには価値観を もつことであり、勤労観は働くことについての自己の考えがあり、その価値観をもつことであ る。 高校段階におけるキャリア教育の目標として、職業観・勤労観の醸成は重要な事項に挙げら れているが、これらの形成が、その人の生育環境や経験に多分に任されているところがあり、 社会がもつ勤労に対する既成の概念や風土などから脱することを困難にしている。 国立教育研究所が2003年に高校生を対象に行った、「生涯にわたるキャリア発達の形成過程 に関する総合的研究報告書」に、女性の望ましい就業の在り方についての高校生の意識調査結 果がある。女子高校生の将来希望するライフコースのパターンは、「学校卒業後就職し、その 後結婚、出産により一旦仕事を離れ、子どもが一定の年齢になったら再び仕事につく」という パターンを選択した者が、39.4%と最も多く、「結婚、出産後も仕事を継続する」というパター ンは25.9%であった。その他の少数意見を見れば、「結婚し仕事を離れ出産し子どもが一定年齢 になったら再び仕事につく」が11.3%であり、「出産を機に一度は仕事を中断する」というもの も合わせて50.7%となり過半数になる7) このように、高校生という年齢層においては、「子育てのために一旦退職し、子育て後に再 図3 高等学校段階の進路指導のスキーム [出典:三村隆男(2004)キャリア教育入門、実業之日本社、p.76]

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就職する」という考えが根強い。これは女性の育児期の就業継続の支援や再就職支援の必要性 を示すものであるが、同時に女性の多くが職業を持ち続けたいという意志があっても、結婚、 出産、育児という現実を見るとき、こうしたライフコースにならざるを得ないとの認識をもっ ていることを示している。 こうした実態からの脱却を図り、男女を問わず持てる能力を発揮できることが、多様な社会 に求められているのであり、そのための教育が必要とされている。しかしながら、多様な社会 を生きるためのキャリア教育の研究は十分とは言えない。 「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(平成23年1月中教審答申) で示された「基礎的・汎用的能力」の「人間関係形成・社会形成能力」において「多様な他者 の考えや立場を理解する」とあるが、多様性を尊重しダイバーシティに対応するための具体的 事項にまでは言及されていない。 少子化の急速な進行と共に、労働生産力が低下する中、一億総活躍社会、女性活躍社会が叫 ばれるのは好ましいことであるが、重要なことは、女性がもつ能力が生かされ、女性が社会で 活躍できると共に、自己実現に向かうことができるキャリア教育が必要とされていることである。

3.多様性社会への変遷と女性活躍社会の現状

ここで、多様性社会すなわちダイバーシティ環境について、先進的かつ長期にわたり取り組 んできた米国社会の変遷が、人々の雇用労働状況に与えた影響を確認するとともに、我が国の ダイバーシティ環境の現状と比較する。また、女性の社会進出の現状を整理する。  米国の積極的格差是正措置からダイバーシティ・マネジメントへの進展 米国政府内の独立行政機関として、1964年公布の公民権法の下に、雇用機会均等委員会(以 下 EEOC と表記)が設置された。この組織は、人種、宗教、性別などあらゆる雇用差別を防止 するための行政活動を行うものである。 米国の雇用機会均等法(以下 EEO と表記)は、採用、昇進、異動など雇用上のあらゆる決 定において、人種、信条、国籍、性別、肌の色、宗教などによる差別を禁じたもので、女性や 有色の人々にとって、社会進出の重要な一歩となり、差別事案が生じたときに、EEOC を通じ、 雇用者(事業者)を告訴できる仕組みをもっている。 翌年の1965年、米国ではアファーマティブ・アクション(以下 AA と表記)、すなわち積極

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的格差是正措置が成立し、1967年には性別も対象に加えられ、不利益を被ってきた人々が、採 用、昇進などの格差を是正することを雇用者に求めることができるようになった。しかしなが ら、この頃は制度ができたとはいえ、強制力は弱い状況だった。 1970年代に入り、EEO 法、AA ともに制度の拡充が図られ、強制力が強くなってきた。その ことにより、雇用者は、使用者(従業員)へのコンプライアンス措置を取り、告訴の回避を試 みている。 その後、様々な論争を経て、AA の制度により、1970年代には、事業成果を損なわず、女性 やマイノリティの人々に、雇用の門戸を開き、これらの人々の地位向上を促すことができたの である。こうした状況は、雇用者側が AA、EEO の措置を事業成果や企業力向上などの観点か ら、肯定的に捉えるよう変容してきたことによる。公民権法が施行されたのが1964年であるか ら、わずか10数年で AA、EEO を大きく定着させたことは驚くべきことである。 しかしながら、企業は多様な労働力に門戸を開いたものの、雇用者たちは企業文化に適合す る人材を期待し、企業側への同化を要求してきた。それは女性やマイノリティ者の文化やパー ソナリティなどを発揮できないことでもあった。これは、多様な従業員の離職を招くこととな り、企業側は改善の道を模索することになる。

Carr-Ruffino(1998)は、改善への模索の中、1980年代から1990年代にかけ、Valuing Diver-

sity(多様性の尊重)の活動がはじまり、企業側は多様な人材による労働力は、企業の価値創 造の資源とされてきたと指摘している8)。すなわち「ひとり一人に個性があり、その個性が私 たちの偉大さの源泉である」との考えに変容し、やがて1990年代に誕生するにダイバーシティ・ マネジメントに発展していくのである。 ダイバーシティの考え方は、雇用機会均等などの問題だけではなく、多様性が組織にどのよ うな影響を与え価値をもたらすかにあることが分かる。これは、同質であることが企業の生産 性や競争力の向上をもたらすと思われてきた価値観からの転換を果たしたことになる。 Rosener(1990)は、女性が社会で活躍する視点に立った見解を示しており、指示命令型の 従来の男性的リーダーシップスタイルは、新しい組織に適合しなくなっており、女性的リーダー シップが非伝統的な中規模企業の中で成果を出しつつあると指摘する9)。ここで言う、女性的 リーダーシップは「参画を促す」「権限と情報を共有する」「部下の自己認識を高める」「人を 活性化する」など、これまで米国の伝統的企業がもち得なかったもので、人々を巻き込み、そ れぞれがもつ能力を最大限に発揮させることが企業の貢献度を最大にするとしている。

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 日本のダイバーシティへの取り組み 日本では、企業の実質的な男女の扱いの平等性を確保するため、格差是正への積極的な取組 みを促進してきた。1986年男女雇用機会均等法の施行、さらに1997年に同法が改正され、女性 労働者に係る措置として、ポジティブ・アクションが規定・施行された。 雇用機会均等法第8条には、「事業主が雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確 保支障となっている事情を改善することを妨げるものではない」と示されており、女性労働者 への措置を容認している。また、同法第9条では、女性労働者の婚姻、妊娠、出産等を理由と する不利益扱いの禁止等を示している。2007年には同法が改正され、性別による差別禁止の範 囲の拡大並びに禁止される差別の内容が明確化され、他の理由による排除、いわゆる間接差別 が禁止されるようになった。 一方、日本でダイバーシティについて議論が始まったのは、2000年以降とされる。日本にお けるダイバーシティの考え方は米国と異なり、表面上見える属性の多様性より、むしろ働き方 の多様性に注目し、より働きやすい職場、より風通しの良い組織を作るという、これまでの積 み上げをさらに進めることがダイバーシティに繋がるという考え方が主流であった。 こうした中、経済産業省では「競争戦略としてのダイバーシティ経営の在り方に関する検討 会」が、「ダイバーシティ2.0~競争戦略としてのダイバーシティの実践に向けて~」と題する 報告書を2017年3月に出した。この中で「日本企業が今後目指していくダイバーシティ2.0は、 多様な属性の違いを活かし、個々の人材の活力を最大限引き出すことにより、付加価値を生み 出し続ける企業を目指して、全社的かつ継続的に進めて行く経営上の取組と定義できる」10) している。これまで日本が取り組んできた、ポジティブ・アクションの取り組みからの脱却を 図る「ダイバーシティ2.0」を示したことになる。 具体的には、次の4つのポイントの重要性を示している。 1点目、経営判断として中長期的かつ継続的に実施する必要性 2点目、企業の組織経営上必要な取り組みと連動させる体系的な体制整備の必要性 3点目、外部ステークホルダーとの関わりの重要性 4点目、女性の活躍はじめ属性を超え多様な個性が相互作用を起こすことを目指す11) こうしたポイントを踏まえ、図4の態様を示したところである。特に4点目の取り組みが多 様性社会をつくる、ダイバーシティ・マネジメントである。

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 女性活躍社会の現状と求められる環境整備 一方で、我が国の女性活躍の現状の確認しておきたい。 総務省「労働力調査」によれば、図5に示すように約30年前の1980年頃は、男性が主な働き 手の時代だったが、その後、共働き世帯が増加し、1997年には共働き世帯が片働き世帯数を上 回った。その後も共働き世帯は増加を続け、その差は拡大している12)。このように女性の社会 進出は大きく進んできている。 また、女性の就業率について、図6に示すように1975年には25~29歳の世代では41.4%、30 ~34歳の世代では43.0%だったが、2011年にはそれぞれ72.8%、64.2%まで増加している13) このような女性の就業率の上昇の背景には、働き続けたいとする女性の意欲と、そうせざる を得ない社会環境の変化があるものと推察できる。ゆえに、女性が働き続けることやそれぞれ の能力を発揮できる環境整備や男女を含めた多様性を受け入れる風土が醸成されていくことが 望まれるのである。 図4 ダイバーシティ2.0の効果と時間軸 [出典:経済産業省(2017)競争戦略としてのダイバーシティ経営の在り方検討会報告書、p.27により作成]

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図5 共働き世帯、片働き世帯の推移 1「片働き世帯」とは夫が非農林業雇用者で妻が非就業者の世帯 2「共働き世帯」とは夫婦ともに非農林雇用者の世帯      [出典:総務省(2011)労働力調査年報より作成]        図6 年齢階級別女性の就業率の推移 1 1972年以前は沖縄踏まれていない        2 2011年は東日本大震災の影響で岩手県、宮城県、福島県は補完的に推計した [出典:総務省(2011)労働力調査年報より作成]      

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一方で、管理職に占める女性の割合を見ると、図7のように14)、係長、課長、部長等の職位 別に見ると、女性の登用率はどの職位についても年々上昇しているが、部長級の職位になれば 女性が占める割合は低くなっており、まだまだ十分な水準になっているとは言えない。 管理職の女性比率は国際的に見ても日本は韓国と並び極めて低位にある15) 厚生労働省平成30年度「国民生活基礎調査の概況」によれば、20歳~24歳の非正規雇用者は 男性34.8%、女性34.8%、40歳~44歳では、男性8.1%、女性52.9%となっていることから16) 結婚や出産後の再就職で多くの女性が非正規となっている実態がある。これは、女性にとって 当初の正規雇用者として仕事と子育てを両立することが困難であることを示している。子育て 世代で就業継続を希望する者が7割を超えている現実を見るとき、就業環境の改善が期待され るところである。 男女共同参画社会基本法が平成11年に施行され、最近になってようやく男性が育児休暇をと るようになってきたが、子育てはまだまだ女性の分担といった考えが根強くある。総務省統計 局社会生活基本調査(2016)によれば、6 歳未満の子どもを持つ夫と妻の家事に従事する時間 は、平成28年で夫が約1時間半に対し、妻は約7時間半となっていることからも17)、日本社会 の風潮として存在した男性社会の価値観が色濃く影響している。 図7 女性管理職の割合 [出典:厚生労働省(2011)賃金構造基本統計調査により作成]

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 女性の就業継続を支える企業内の教育的啓発活動事例

2017年9月に、日本キャリアデザイン学会にて報告された、損害保険ジャパン日本興亜株式

会社取締役常務執行役員(当時)伊東正仁による「Diversity for Growth~経営戦略としての

ダーバーシティ~」18)は、重要な示唆を与える。 当社は損害保険事業を始め、保険事業や介護事業を営み、社員約26,000名の6割が女性、女 性管理職比率は2010年の2.8%から2017年では12.3%になっているという。また働き方改革とし て、テレワークやシフト勤務、男性の育休取得制度を導入している。女性の活躍が大きく見直 されたのが、東日本大震災の対応であったと言う。状況に応じた引き出しの多さ、電話対応の 目の付けどころなど、相手の立場に立ってきめ細やかな対応ができたと言う。 女性の活躍社会を考える上で、最も重要な要素が女性のライフイベント(結婚、出産、育児、 介護等の出来事)への対応である。これらに対する取り組みを進め、現在までの指標となる項 目についての変容を表1に整理した。 当社が行った女性のライフイベントへの対応の第1は、制度の充実である。働き方改革に係 る法制度を踏まえ、社内で女性が柔軟に活用できるよう制度の整備を進めたことである。第2 は、女性が休業する職場への支援体制である。女性が安心して休業に入るには、自分が抜けた 後のあとの人事的手当てが必要であるが、適切な社員の派遣や新規採用を進めている。第3は、 休業女性の職場復帰支援で、これが最も効果が大きかったという。育休向けフォーラムを定期 表1 ダイバーシティ環境に取り組む企業の変容 〈女性活躍の専門部署設置(2003年)後〉 14倍 産休取得者 33倍 育休取得者 82倍 時短勤務者 〈30年間の変容 (1986年~2016年)〉 2016年 1986年 約26,000人 約10,000人 社員数 4:6 6:4 男性:女性 41歳 27歳 女性平均年齢 17年 6年 女性勤続平均年数

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的に開催し、いわば社内における教育的行為としても啓発活動を進めており、これが復帰に向 けた不安の解消に役立っている。

4.高校生の職業選択意識から課題点を指摘する

実際に高校生が職業を選択するときの意識について、男子と女子に違いがあるのであろうか。 あるとすれば、内容を分析し必要となる教育の要件を検討したい。以下に高校生の職業選択意 識について、質問紙による調査を行ったものを報告する。  調査方法 ①調査の対象:普通科公立高校2年生(約3/4が大学進学)男子51名、女子101名対象 ②調査時期:2019年7月 ③調査方法:質問紙調査で自由記述により以下の質問を行う。       「将来の職業を選ぶとき、あなたが参考とすることはどのような事か」  男子生徒の職業選択意識 男子生徒51名中、記述者は44名で、自由記述の内容を KHCoder に読込み、サブグラフ検出 を行い、結果を図8に示した。分析対象テキストからの総抽出語数526、うち分析に使用する 語数242、語のカウント数である異なり語数163、うち分析対象となる使用語数120であった。 また、意見の頻出語(頻度3以上)を表2に示した。 これらの結果から、男子については、自分を活かし、興味関心があること、人と関わること、 人のためになる仕事をしたいと言った意見が強く出ており、自己を擁護する考えは、良好な職 場環境や安定などがあるものの比較的少ない。仕事を選択するにあたり、制限や障害を感じて いる様子は見受けられない。

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 女子生徒の職業選択意識 女子生徒101名中、記述者は96名で、自由記述の内容を KHCoder に読込み、サブグラフ検出 を行い、結果を図9に示した。分析対象テキストからの総抽出語数1106、うち分析に使用する 図8 普通科2年生男子生徒の職業選択意識サブグラフ 表2 普通科2年生男子生徒の進路選択意識の頻出語 頻度 頻出語 頻度 頻出語 4 就職 15 仕事 3 環境 14 自分 3 興味 9 給料 3 時間 8 職業 3 就く 8 人 3 生かせる 6 楽しい 3 話し 5 職場 4 安定

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語数511、語のカウント数である異なり語数217、うち分析の対象となる使用語数159であった。 また、意見の頻出語(頻度6以上)を表3に示した。 図9 普通科2年生女子生徒の職業選択意識サブグラフ 表3 普通科2年生女子生徒の進路選択意識の頻出語 頻度 頻出語 頻度 頻出語 7 環境 35 仕事 7 興味 32 自分 7 時間 26 給料 6 関係 18 人 6 職場 15 収入 6 続ける 14 安定 6 雰囲気 10 楽しい 10 好き

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女子については、男子同様、自分のやりたい事をしたい、人のためになりかつ給与面の保障 もされることなどを望む者が多い。しかし、「職場環境・人間関係・雰囲気」や「仕事内容と 勤務時間」など取り巻く環境を重視する意見も多い。また、広く布置されているものに、仕事 の「継続したいが生活が気になる・自分との適合性」があり、将来にわたって仕事が続けられ るかどうかを懸念する考えが伺える。こうした結果から、女子生徒は職業選択に制限を感じて いることがわかる。これは、前述した国立教育研究所(2003)の「生涯にわたるキャリア発達 の形成過程に関する総合的研究報告書」に示されていた、女性の望ましい就業の在り方につい ての高校生の意識調査結果に符合するものである。 そのため、これらの結果を踏まえたキャリア教育の必要性が見て取れるのである。

5.女性リーダーが示唆するキャリア形成の要素

これまで、ダイバーシティ・マネジメントの有用性や、高校生、特に女子高校生の職業選択 意識の課題点、女性の就業継続や社会進出の障害となる事項等につき、先行研究や調査研究に よる指摘をしてきた。ここで、ダイバーシティ環境に必要とされるキャリア教育の要件をより 実践的に示すため、実際に各界で活躍する女性リーダーを対象に、面接調査を行った。 なお、6 名中5名が出産・育児の経験をしている。  面接調査の対象者 ①広域(都道府県)行政組織部長経験者 ②大規模大学職員課長経験者 ③ IT 関連企業執行役員 ④グローバル人材派遣会社取締役 ⑤介護福祉関連会社起業者 ⑥ IT 関連企業専務  主な質問項目 ①女性が働く上でのインフラ整備の現状と課題 ②女性の就業継続に必要なことや覚悟しておくこと ③高校時代や大学時代に学んでおくこと

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 主な意見の内容 ①女性が働く上でのインフラ整備の現状と課題 ○現在は、子育てはじめ、様々な支援方法が制度として整ってきた。 ○男性もイクメンになる時代である。今後は男女ともにワークライフ・バランスをとって、人生を楽 しむことが大事である。 ○自分自身が採用時の時代とは異なり、女性の活躍の場は圧倒的に広がっている。 ○勤務時間変更など、子育てのための配慮がなされている。 ○女性が働くポジションは広がっているし、働く女性の為のインフラ整備も進んでいる。産休もとり やすくなっている。 ○女性が活躍するために、めざすロールモデルがまだ少ない。大手企業では執行役員も増えているが、 中小企業では女性の社会進出に課題も多い。 ○一旦正社員の仕事を辞めると、次は非正規の採用となるが現状がある。 ○採用後、かなりの年齢に至るまで、女性と言うことで男性と同じような仕事内容が与えられてない と感じた。こうした風潮を感じてきた。 ○事業の経営を通じ、女性が資格を持つことで選択の幅が広がり、専門性が高まることを感じる。 ○女性の貧困は子どもの虐待に繋がる事もあり、女性の経済的自立があれば子どもを守ることができ る。女性の自立のため女性が仕事を辞めないことができる仕組みづくりが必要だ。 ○家族や職場のサポート以外に、地域の友人関係によるサポートなどのコミュニケーションも大事だ。 ○女性が働きやすい企業は、それが企業のブランディングになる時代である。 ○リーマンショック時に派遣切りになった社員を、自社内で他の開発に廻し雇用を継続したが、のち に業績向上の原動力になった。社員を大事にすることが会社の成長に繋がる事を示すものだ。 ○現在は結婚前提ではないライフスタイルになって、妻、母親、シングルと多様な生き方の時代に なっている。 ②女性の就業継続に必要なことや覚悟しておくこと ○子育てとの両立。 ○就業継続の困難さは、ライフイベントとしての介護や自身の病気との戦い、離婚や死別もあること を覚悟すること。 ○子育てなど苦労は多いが、その経験が女性を強くする。 ○子どもに負担をかけ、預けてまで仕事をしているのだから、その分質の高い仕事をしようと思った ことが、逆にプラスに働いたと思う。 ○子育ては大変だったが、良い循環になれば、時間内で全力投球する後押しになる。思えば仕事と両 立することで、家族と一緒であることの良さが認識できる。 ○性差に関係なくその人の実績や能力を認めていくべきと思うが、やるべき仕事はやらなければ会社 は回らないため、正社員としての自覚を持たなければならない。 〇女性がいなかったポジションに自分を配置してもらったが、そこでの踏ん張りが、新たな場を得る ことに繋がったように思う。 〇上司の勧めで登用試験を受けたことが就業継続に繋がった。自分への評価が意識の向上につながっ た。 ○成功体験や、適切な評価を得ることでモチベーションはアップする。 ○息長く続けること。しんどくても、目先のことでくじけない。長い目で見ていくことだ。 ○与えられたポジションでの踏ん張りが、次のステップに繋がる。 ○女性管理職は増えてきているが、管理職を務めるにはメンタル面の強さや責任を負う覚悟がいる。

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6.多様性社会に生きるためのキャリア教育の要件を示す

3.で示した先行研究の結果や、4 .5.で示した調査結果を踏まえ、女性が社会進出し就 業継続していくことの課題点を、以下の4点に整理した。 ①制度的要因として、法令や行政的制度の周知・理解に課題がある。 ②社会風潮的要因として、男女が協働する態度の形成に課題がある。 ③企業文化的要因として、企業において多様性受容・制度活用等の教育啓発活動が必要である。 ④個人的要因として、自己の役割を見いだしライフプランニングする能力が必要である。 ○いつでもどこでも仕事をするという覚悟で、やろうと思うことを自分で開拓してきた。こうした気 構えが大事だ。 ○働き方改革は定時退社ではなく、余暇で自己のスキルアップなど向上に努めることだ。 ○体力を作ること。 ○個人差があるが、特に女性の場合急に体力が落ちる場合がある。女性の中高年期は、健康面の曲が り角であり、ここをいかに乗り越えるかが大事。 ③高校時代や大学時代に学んでおくこと ○働くことが基本であること。若いときに何がしたいのかを決めておくことだ。例えば子どもに関す ることをしたいなど、将来の「核」となるものを見つけることだ。 ○学生には、仕事についての情報・知識は豊富にとれるし、インターンシップの機会にも恵まれ、準 備の材料は多いが、今後最も求められるのは人同士の中で決断する力である。人間力を高めること を忘れてはならない。 ○ボランティアや留学など、様々な経験を積み、自分で人間の幅や視野を広げることだ。これは、時 間をかけて、様々なアクシデントに見舞われながら経験していくことにより得られることを知って ほしい。 ○人は習慣や、身近なモデル(父親など)から行動様式を身に付けてしまうものだ。そうなる前に、 男女が協働して、家庭生活や社会生活を送ることを早くから学ぶことが大事だ。 ○常に勉強する姿勢をもつことだ。学び続けなければ平凡に終わるだろう。 ○世界に目を向け、視野を広げるべきだ。これからは世界の中で仕事ができることが求められる。 ○本を多く読み、文章力や表現力を養うことはすべての基礎となる。 ○体力を付けておくことは大事で、何かスポーツをしておくことを薦める。 ○大学生の進路指導では、就職先(出口)に関心が行ってしまい、生き方を考えるには遅い。高校時 代から、自分の将来の生き方を考えていく教育が必要だ。 ○女子高校生は、結婚、出産育児、転勤、さらには病気、介護までも想定しておくことだ。 ○高校生の段階で、お金とライフプラン(人生設計)について学んでおくべきだ。人生のいつどこで どれだけのお金が必要かを考えるゲームなどの活用も有効である。 ○高校時代は、大学進学後のその先が見えてないことが多い。大学卒業後のその先が見える指導が大 事になってくる。 ○女子高校生の進路選択幅が狭いとは現場教員の声である。選択肢を広げる指導をすべきだ。 ○仕事を持つという意識を持つことと、社会の中で果たしたい役割を考えることだ。 ○法律や制度を知り、社会の風潮に流され不利益を被ることのないようにすることだ。

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以上の4点を踏まえ、以下のとおり、高校生が多様性社会に生きるためのキャリア教育の要 件を示す。  法令や行政的制度の仕組みを理解し、かつ主体的に活用できる態度の育成 ①職場の雇用に関して、男女雇用機会均等法、女性活躍推進法等の制度及び活用方法につい て学習する。 1)雇用に関して、性差による禁止規定や不利益についての制度理解と現状把握を行う。 ・男女雇用機会均等法をはじめとした法令に示されている女性労働者への待遇や禁止事項 等に、グループ討議で列挙した女性の不利益等を照会し、制度についての現状と課題を 理解する。 2)雇用に関して、妊娠・出産・育児・介護等に伴う不利益等の事例を挙げ、制度による課 題解決について学習する。 ・出産、育児などに伴う、雇用に関しての減給、解雇、配置転換などの不利益や被害を想 定し、女性が働き続けることを前提に、制度による具体的な解決の方途をグループで検 討する。 ②家庭と仕事の両立支援に関して、行政支援制度による活用について学習する。 1)出産、育児、介護等に伴う家庭と仕事の両立支援する行政サービスの制度について学習 する。 ・保育所、託児所等の育児支援や介護支援に関する行政サービスの仕組みや制度の活用に ついて理解する。 ・勤務地による通勤条件、育児や親の介護による勤務時間の制限など、具体的に設定した 課題について、既存の行政サービスによる解決の方途をグループ活動により協議する。  男女の協働とともに男女相互の立場を尊重する態度の育成 ①職業における男女の性役割の有無について協議し、多様な職業選択について理解する。 1)多様な職業に関しての性役割について検討する。 ・様々な職業を挙げ、それぞれの仕事内容の特性と性役割について、グループ活動で検討 した上で、「男性の仕事・女性の仕事」の有無をディベートなどの手法により議論する。 なお、職業については、総務省等の公的機関による職業一覧等の資料を参考に実態を確

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認しておく ・性差による職務遂行上の障害について討議し、障害があれば克服できるか、または克服 のために配慮は必要かなどを協議し、職業選択の多様性について理解を深める。 ②円滑な両立支援のための男女の協働について学習する。 1)男女の役割についての認識の実態を把握する。 ・家事等の性役割の社会風潮について、グループで協議し、「男女共同参画社会」の在り 方について、「男女共同参画社会に関する世論調査」等の資料を活用しながら理解を深 める。 2)家事・育児・介護等の協働と相互理解 ・男女(夫婦)や家族、地域などを含めた支援、相互扶助について課題設定し、グループ 協議による解決を検討する。その際、課題への認識を男女が共に持ち、解決に向け協働 すること、すなわち男女が性差を超えて取り組むべき課題であることを理解できるよう にする。 ・社会や地域における社会風潮としての男女の立場の現状について意見交換するとともに、 今後男女が協働して形成する地域や社会の在り方について協議する。その際、男女協働 による社会づくり等に関する自治体プラン等も参考事例とする。  自己の適性の自覚と変化する職場の制度に柔軟に対応できる態度の育成 ①企業のダイバーシティ環境への取り組みについての学習 1)多様性受容に関する制度や仕組みについて ・育児休業制度や短時間勤務制度、介護休暇制度、在宅勤務制度、育休等からの職場復帰 プログラム、介護セミナーの実施など事例から現行の取り組み状況を学習する。 ・定時退社や短時間勤務等による仕事のスキルアップの妨げ、職務のチームワークの形成 が困難になることなど、具体事例をもとに想定される課題について協議する。 2)多様性を生かすための取り組みを検討する。 ・職場において、画一性(性別、国籍、学歴等が比較的揃った人による組織)と多様性 (多様な性、国籍、学歴等による組織)との、それぞれの長所と短所について協議する。 ・社会における女性活躍の意義や役割について協議するとともに、企業における女性のス キルアップや昇進・昇格、管理職登用への阻害要因や必要な配慮について協議する。

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②企業の社会的役割と自己の適性について学習 1)職業生活における自己の適性を見出す ・企業が果たしている社会的責任や役割を学習するとともに、自己の適性や、仕事を通じ た社会への貢献について協議する。 2)制度の活用と職業生活による自己実現について ・就業場所や勤務時間に課題がある場合のフレックスタイムやテレワークなどの制度活用 等、具体事例について理解を深める。 ・他の社員への負担増への気遣いや、育休等仕事中断による復帰不安等、制度の活用を阻 害する要因を挙げ、問題解決について協議する。 ・職業を通じ自身が社会で果たしたい自己実現について意見交換し、職業感の醸成を図る。  自己の役割とライフイベントを見据えたライフプランを設計する態度の育成 ①社会における自己の役割や生き方への考えを深める 1)ポートフォリオや生徒による評価活動を活用し自己の役割を見いだす ・職業適性検査や性格検査をはじめ、これまでのインターンシップや啓発活動への参加記 録や様々なキャリア開発に関する活動記録としてのポートフォリオを作成し、振り返り 等による気づきにより、自己の適性とともに、役割を見出す。 2)自己の役割を見出し社会に貢献する態度を養う ・どういう職業で生きていきたいか、そこで果たしたい自己の役割は何かについて、理由 と併せ個人の考えをまとめる。グループ活動で、自己の役割と社会への貢献についての 考えを深める。 ②ライフイベントを想定したライフプランニングをする 1)就職、結婚、出産、育児、介護、病気など想定されるライフイベントを理解する ・人生における、結婚や出産・育児、死別、介護など様々な出来事を列挙し、そのときの、 就業継続や就業中断、退職、転職など、自分の行動の選択やとる役割について考えを整 理し、グループ活動で意見交換する。 2)10年、20年後の自己を想定し、ライフプランを立てる ・10年後、20年後の自分自身を想定し、それまでに生起する出来事を具体的に挙げ、仕事、 家庭、地域等における自己のライフロール(役割)を踏まえたライフプランニングを行う。

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7.おわりに

本稿は、女子高校生の進路選択幅が狭いこととともに、将来において職業継続に困難を感じ ていることに対する課題認識から始まった。 行政面における女性が働くためのインフラ整備や、企業における制度整備などの環境は整い つつあるが、重要なことは女性が職場で働き続けることに価値を見出し、自己のもつ能力が発 揮されてこそ職業継続の要因は生まれるのである。 公民権法の施行から多様性を追究してきた米国に比して、日本のダイバーシティ環境の熟度 は遅れている。今もポジティブ・アクションとして捉える多様性を、一人ひとりの能力を生か し、より企業も個人もが付加価値を見出せるよう高めていくことが求められているのである。 学校教育で行われているキャリア教育に目を向ければ、小学校からの取組みがなされてはい るが、2000年前後のニート、フリータ問題に端を発した危機感から始められた影響は否めず、 理念としての将来の生き方、在り方を見据えた教育に高まっているとは言い難い。仕事に対す る価値観を育み、人生を俯瞰したキャリアプランニングをもたせていく取り組みが求められて いるのである。 また、企業の女性活躍への取り組み実践事例から、多様性を受容し女性が活躍できるために、 ダイバーシティ環境に対する意識を醸成させる教育が重要であることが浮かび上がった。改め て、女性が働き続けることを価値づけるキャリア教育が必要であると考える。 実際に多様な社会に身を置き、様々なライフイベントを経て、今日女性管理職を務めている 方や起業家として活躍されている方に、女性として仕事をどう捉え、今日までいかに生きてこ られたかを面接調査したが、結果は極めて興味深いものであった。共通して社会に生きるうえ での厳しさへの覚悟をもちつつ、自身の生き方を堅持していることであった。特に女性として の、出産や育児といったライフイベントを、自身の成長の機会と捉え、むしろより良き仕事に 高めていることに深い感銘を受けた。 また、働くことは基本であり、高校時代や大学時代に何がしたいのかという命題に対峙し、 自身の考えの「核」をつくることの大切さや、女性のライフイベントはいいことばかりではな く、離婚や死別、自身の病気との葛藤もあることなど、指摘は深かった。こうした意見は、多 様な社会が求めるキャリア教育にとって極めて重要な示唆となった。 また提案については、生徒が変化する法制を理解し主体的に活用できることや、職業におけ る性役割や家庭や地域の性役割を討議により自己の考えを整理していくこと、また企業のダイ

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バーシティ環境の実態や育児支援の仕組みや活用方法を理解し自己の役割や価値を活かしてい くこと、人生のライフイベントを踏まえたライフプランニングができる能力を培うことなどを、 対話を重視した課題解決型の学習により進めることを示したところである。 この提案が、さらに具体化できるよう、今後研究を重ねていきたい。そして多くの女性が、 社会の多様化が進む中、現状を受け入れながらも、自身の生き方を堅持しつつ、社会における 役割を見出し、豊かな社会の形成者となり、豊かな自己の幸福を得てほしいと願っている。 参考・引用文献 1)総務省総務省(2018)統計局「労働力調査」概要,pp.47 https://www.stat.go.jp/data/ roudou/sokuhou/nen/dt/pdf/ndtindex.pdf(参照日2018年8月1日) 2)文部科学省(2011)中央教育審議会答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の 在り方について」,p 1 3)三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(2009),両立支援に係る諸問題に関する総合的調 査研究(子育て期の男女へのアンケート調査及び短時間勤務制度等に関する企業インタ ビュー調査)報告書:厚生労働省委託調査,pp.1723 4)谷口真美(2008)組織におけるダイバーシティ・マネジメント,日本労働研究雑誌 No.574, pp.7879 5)文部科学省(2011)中央教育審議会答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の 在り方について」p17 6)三村隆男(2004)キャリア教育入門~その理論と実践のために~,実業之日本社,p.76 7)国立教育研究所(2005)生涯にわたるキャリア発達の形成過程に関する総合的研究報告書 (別冊)―小・中・高校調査質問紙調査集計―,pp.298304

8)Carr-Ruffino, N.(1998)Managing Diversity, Simon & Schuster Custom Publishing

9)Rosener, J.(1990)“Ways Women Lead,”Harvard Business Review, Nov.-Dec, pp.

119125.

10)経済産業省(2017)ダイバーシティ2.0検討会報告書~競争戦略としてのダイバーシティの

実践に向けて~,競争戦略としてのダイバーシティ経営(ダイバーシティ2.0)の在り方に

関する検討会,pp.1516

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実践に向けて~,競争戦略としてのダイバーシティ経営(ダイバーシティ2.0)の在り方に 関する検討会,p16 12)総務省(2011)労働力調査年報,総務省統計局 http://www.stat.go.jp/data/roudou/ report/index.html(参照日:2019年5月4日) 13)総務省(2011)労働力調査年報,総務省統計局 http://www.stat.go.jp/data/roudou/ report/index.html(参照日:2019年5月4日) 14)厚生労働省(2011)賃金構造基本統計調査 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/ roudou/chingin/kouzou/z2011/index.html(参照日2019年8月11日) 15)労働政策研究・研修機構(2012)データブック国際労働比較 16)厚生労働省(2019)国民生活基本調査 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21.html (参照日2019年12月11日) 17)総務省統計局(2016)社会生活基本調査 https://www.stat.go.jp./data/shakai/2016/ index.html(参照日2019年12月11日)

18)伊東正仁(2018)Diversity for Growth 経営戦略としてのダイバーシティ:日本キャリア

参照

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