地球惑星圏物理学2018年度前期 期末レポート
以下の問いに対し途中計算も含めレポートにまとめること。これまでの講義資料は https://members.elsi.jp/∼hiro.kurokawa/lecture.htmlに掲載されている。講義時間外の質問 は [email protected] まで。
講義後に直接もしくはメールにて提出。(提出締切:2018年7月9日(月))。
大問 1
地球と金星は軌道半径や質量が同程度であり、兄弟惑星と形容されることもある。しか し、地球と比較して金星ははるかに厚い大気を持ち、その結果として地表面温度には大きな 隔たりがある。ここでは地球と金星の大気の違いについて考察する。
問 1.1
静水圧平衡の式は次式で与えられる。
dp
dz =−ρg (1)
ここで、pは圧力、zは地表からの高さ、ρは密度、gは重力加速度である。(1)式を積分する ことで、惑星の地表大気圧ps及び重力加速度gと大気の柱密度∫ ρ dz (単位地表面積上に存 在する大気の質量)の関係式を導くことができる。このことを利用し、惑星の大気質量Matm が、
Matm= 4πR2p ps
g (2)
と書き表されることを示せ。ここで、Rpは惑星の半径である。ただし、大気圏の厚みは惑 星半径に比べて十分に小さいことから、大気圏において重力は一定とし、曲率は無視できる ものとする。
問 1.2
問1.1の関係式を使って地球と金星の大気質量を計算せよ。地球・金星の地表大気圧は それぞれ、1.013×105 Pa, 9.21×106 Pa, 地表重力は9.78 m s−2, 8.87 m s−2, 惑星半径は 6.37×103 km, 6.05×103 kmである。
問 1.3
地球の海水中では大気中の二酸化炭素(CO2)が溶け込み、石灰岩(CaCO3)として沈殿す る(CaO + CO2 →CaCO3)。原始地球において大気中に存在した二酸化炭素の大部分は、こ のような反応を通じて石灰岩中に取り込まれたと考えられている。地球の地殻中に存在する 石灰岩の総量の推定値は3.6×1020kg程度である。この石灰岩中の二酸化炭素がすべて大気 中に気体として存在したと仮定して、原始地球の地表大気圧を計算せよ。
大問 2
惑星大気は開放系であるため、太陽放射で加熱されたり、太陽風と相互作用することで 宇宙空間に流出していく(大気散逸)。水蒸気として、または水素を構成原子とする様々な分 子(CH4, H2)として上層大気に輸送された水素が散逸することで、地球の海水は失われてい く。余剰の酸素は地表付近の物質を酸化することで消費される。ここでは大気散逸が地球海 水量に及ぼす影響を考察する。
問 2.1
水素の大気散逸率は下層大気からの拡散率によって律速されている。単位時間・単位面 積あたりの拡散率は次式で与えられる。
Φdif = 2.5×1017fT(H) m−2 s−1 (3) ここで、fTは総水素体積混合率であり、水素を構成原子とする分子種iの体積混合率fiを用 いて次式で与えられる。
fT =fH+ 2fH2 + 2fH2O+ 4fCH4 +... (4) 拡散律速フラックスの表式(3)と現在の地球大気(均質圏界面)における水素を含む分子の存 在量(H2: 0.5 ppmv, H2O: 3 ppmv, CH4: 1.8 ppmv)から、過去40億年に失われた海水量 (割合)を計算せよ。なお、1 ppmv = 10−6である。水素原子質量1.7×10−27 kg、地球半径 6.4×106 m、海水の総質量1.4×1021 kgを用いてもよい。
問 2.2
暗い太陽のパラドックスを解決する候補の一つとして、初期地球においてはメタンCH4 が大量に存在することで地表を温暖に保っていたという説が提唱されている。始生代(40億 年前から25億年前)の間にかけて、海水を起源とするfCH4 = 1000 ppmvのメタンが大気中 に存在した場合、この時代に大気散逸によって失われた海水量(割合)を計算せよ。
問 3. 表層環境史
地球の表層環境の歴史についてA4・1ページ以内でまとめよ。