【平成18年度日本保険学会大会】
報告要旨:山下 典孝
保 険 契 約 関 係 者 の 変 動 を 巡 る 法 的 諸 問 題
大 阪 大 学 山 下 典 孝
1 . 報 告 の 目 的
生 命 保 険 契 約 に お い て 保 険 契 約 者 の 変 更 が な さ れ る 場 合 に は 、 被 保 険 者 の 同 意 と 共 に 、 保 険 者 の 同 意 を 要 す る 旨 約 款 に 規 定 さ れ て い る の が 通 常 で あ り 、 本 件 約 款 規 定 も 同 様 な 内 容 が 規 定 さ れ て い る 。 保 険 契 約 者 の 変 更 は 保 険 会 社 に と っ て 利 害 関 係 が あ り 、 変 更 に つ い て 保 険 会 社 の 同 意 が な い 限 り 、 保 険 契 約 者 の 変 更 の 効 力 は 発 生 し な い 。
保 険 契 約 者 の 変 更 に つ き 保 険 者 の 同 意 を 要 求 し て い る 理 由 は 、 契 約 上 の 地 位 の 移 転 に 関 す る 一 般 原 則 に 基 づ く も の で あ る こ と 、 保 険 契 約 者 は 、 契 約 上 の 諸 義 務 を 有 す る と と も に 、 保 険 者 に 対 し て は 保 険 料 支 払 等 の 義 務 を 負 う の で 、 保 険 契 約 者 が 誰 で あ る か は 保 険 者 に と っ て も 利 害 関 係 が あ る こ と 、 生 命 保 険 契 約 で は 道 徳 的 危 険 の 増 加 を チ ェ ッ ク す る 意 味 が あ る と 解 さ れ て い る 。
近 時 、 生 命 保 険 買 取 に 関 し 、 保 険 契 約 者 変 更 に お け る 保 険 者 の 同 意 を 巡 る 訴 訟 が 提 起 さ れ 高 裁 レ ベ ル で の 判 断 が 下 さ れ て い る 1。 そ の 訴 訟 に お い て 、 簡 易 生 命 保 険 法 57条 に お い て 、保 険 者 の 同 意 を 得 る こ と な く 保 険 契 約 者 の 地 位 を 任 意 承 継 で き る 旨 規 定 し て お り 、 そ の こ と を 理 由 に 、 保 険 者 は 同 意 義 務 が あ る と す る 主 張 が な さ れ て い る 。 ま た 保 険 者 に と っ て は 、 保 険 料 の 支 払 い を 受 け な け れ ば 、 保 険 金 支 払 義 務 の 履 行 を 免 れ る だ け で あ る こ と か ら 、 債 権 譲 渡 に 準 じ て 、 債 務 者 た る 保 険 会 社 は 保 険 契 約 者 の 地 位 の 譲 渡 の 成 否 に 利 害 関 係 を 有 し な い と す る 考 え 方 も 成 り 立 ち 得 る こ と が 指 摘 さ れ て い る 。 さ ら に モ ラ ル ハ ザ ー ド と は 無 関 係 な 契 約 者
1 東 京 高 判 平 成 18年3月 22日 金 判 1240号6頁 。本 件 の 評 釈 に つ い て は 、野 村 修 也「 判 批 」 保 険 事 例 研 究 会 レ ポ ー ト207号1頁 以 下(2006年 )、原 審 の 評 釈 等 に つ い て は 、肥 塚 肇 雄「 保 険 金 受 領 権 買 取 に 関 す る 法 的 問 題 点 - 東 京 地 裁11月18日 判 決 を 契 機 と し て - 」 日 本 保 険 新 聞2005年11月28日3頁(2005年 )、鈴 木 達 次「 判 批 」ジ ュ リ ス ト 1313号115頁 以 下(2006 年 ) 、 榊 素 寛 「 判 批 」 私 法 リ マ ー ク ス33号126頁 以 下 (2006年 ) 、 山 下 典 孝 「 判 批 」 金 判 1240号 57頁 以 下 (2006年 ) が あ る 。
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【平成18年度日本保険学会大会】
報告要旨:山下 典孝
変 更 が な さ れ る 場 合 に は 、 保 険 者 は 同 意 義 務 を 負 う べ き と す る 見 解 も 唱 え ら れ て い る 2。
保 険 契 約 者 変 更 と は 異 な り 、 保 険 金 受 取 人 の 変 更 に 関 し て は 、 一 般 的 に 、 被 保 険 者 の 同 意 以 外 に 、 保 険 者 の 同 意 を 求 め る 旨 の 約 款 規 定 は 置 か れ て い な い 。 さ ら に 、 受 取 人 変 更 に 対 す る 保 険 者 の 対 抗 要 件 を 加 重 す る 約 款 規 定 で は 、 保 険 会 社 所 定 の 手 続 書 類 の 提 出 及 び 保 険 証 券 の 承 認 裏 書 を 要 す る 旨 の 規 定 が 置 か れ て い る が 、 こ の 申 請 が な さ れ た 場 合 、 保 険 者 は そ の 申 請 手 続 に つ い て 原 則 と し て 、 そ れ を 承 認 す る こ と を 要 す る と 解 さ れ て い る 3。
保 険 者 は 、 生 命 保 険 引 受 の 際 に 、 被 保 険 者 の 健 康 状 態 と い っ た リ ス ク 以 外 に 、 モ ラ ル ハ ザ ー ド 対 策 と し て 、 被 保 険 者 と 受 取 人 の 関 係 等 を 調 べ 、 一 定 の 利 害 関 係 の な い 者 が 受 取 人 と な っ て い る 場 合 に は 、 引 受 を 拒 否 す る こ と も 許 さ れ る も の と 解 さ れ て い る4。 ま た 近 時 、 下 級 審 裁 判 例 で は 、 受 取 人 指 定 を 公 序 良 俗 と し て 指 定 部 分 の み を 無 効 と す る 考 え 方 が 示 さ れ て お り 、 学 説 も こ の 結 論 を 妥 当 と 考 え る 見 解 が 多 数 を 占 め て い る5。
そ う な る と 、 引 受 段 階 に お い て は 、 引 受 基 準 に 妥 当 す る 受 取 人 を 指 定 し 生 命 保 険 契 約 を 締 結 し 、 そ の 後 、 受 取 人 を 自 由 に 変 更 で き る こ と を 認 め る が こ と が 妥 当 で あ る の か と い っ た 疑 問 が 出 て き て も お か し く は な い 。 さ ら に 、 近 時 、 モ ラ ル ハ ザ ー ド 対 策 と し て 、 約 款 で 、 保 険 金 受 取 人 の 変 更 に は 、 被 保 険 者 同 意 に 加 え 、 保 険 者 の 同 意 を 要 す る 旨 の 条 項 を 置 く と こ ろ も 出 て い る6。
今 回 の 報 告 で は 、 生 保 買 取 を 発 端 と し た 保 険 契 約 者 及 び 保 険 金 受 取 人 の 変 更 を 巡 る 法 的 問 題 を 中 心 に 、 保 険 契 約 関 係 者 の 変 動 を 巡 る 法 的 問 題 に つ き 検 討 を 加 え る こ と を 目 的 と し て い る 。
2 鈴 木 ・ 前 掲 116頁 参 照 。
3 山 下 友 信 著 『 保 険 法 』504頁 ( 有 斐 閣 、2005年 ) 。
4 山 下 友 信 ・ 前 掲 書 488頁 。
5 東 京 地 判 平 成 8年7月30日 金 判 1468号45頁 、 東 京 高 判 平 成 11年9月 21日 金 判 1080 号30頁 等 。学 説 に つ い て は 、塩 崎 勤「 保 険 金 受 取 人 の 指 定 と 変 更 」塩 崎 勤 ・ 山 下 丈 編『 新 ・ 裁 判 実 務 大 系19 保 険 関 係 訴 訟 法 』293頁 -294頁 (2005年 ) 参 照 。
6 例 え ば 、 某 社 の 5年 ご と 利 益 配 当 付 き 積 立 型 介 護 保 険 普 通 保 険 約 款 30条1項 で は 、 「 契 約 者 ま た は そ の 承 継 人 は 、 保 険 金 お よ び 死 亡 給 付 金 の 支 払 事 由 の 発 生 前 に 限 り 、 被 保 険 者 お よ び 会 社 の 同 意 を 得 て 保 険 金 受 取 人 を 指 定 ま た は 変 更 す る こ と が で き ま す 。 」 と 規 定 さ れ て い る 。
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