第64巻 第2・3号 1991年11月 171-214
業績尺度の利用に見られる現状
一一日米経営の比較
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一一
田 中 嘉 穂
1 はじめに一問題提起 2.. アメリカにおける業績尺度の利用 (1) 調査の趣旨と概要 (2) 代表的な業績尺度 ( ⑦ 調査結果の集計 (4) 業績尺度の重要性に見られる特徴 (5) 業績尺度の種類と報告頻度に見られる特徴 ( 紛 各管理階層での業績尺度に見られる特徴 (7) アメリカの業績尺度の利用に見られる特徴(以上本号〕 3.. わが国における業績尺度の利用(以下次号) (1) 調査の趣旨と概要 (2) 代表的な業績尺度 (3) 調査結果の集計 仏) 業績尺度の重要性に見られる特徴 (5) 各管理階層での業績尺度に見られる特徴 (6) 日本の業績尺度の利用に見られる特徴 4 むすびーわが国の財務尺度の利用-172- 香川大学経済論叢 246 L はじめに一問題提起 財務的な業績尺度の利用に関する各種の調査や所見は少なくないが,それが 社内的にどう利用されているかを具体的にうかがうものはそれほど多くないよ うに思われる。さまざまな財務尺度が,社内的にどう利用されているかは,お そらく組織内部での諸業務の分担と公式・非公式に作用する諸力の力関係を反 映するものと思われる。そこで,本論では,日米の調査資料を用いて,適合的 な情報を提供すべき管理会計が,現実にどのような財務尺度をいかに提供して いるか,また, ¥,、かなる事柄を考慮、して諸尺度が利用されているかを総括的に うかがうこととしたい。そのため,拙論は新たな調査による成果を紹介するも のではないが,いくつかの代表的な会社に典型的と見られる諸業績尺度の利用 状況を確かめようとするものである。 管理尺度の社内事情を詳細にうかがう統計調査はむしろ少なく,すでに公表 されたデータを再論するまでもないともいえるが,ここで取上げるデータは先 進な試みであるという点に重点がおかれて,せっかくの調査結果が
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分活かさ れていないように思われる。この種の調査は実施すること自体が容易ではない から,今後のためにもこれまでの資料を見直しておくことは意義なしとしない であろう。幸い,ここでの資料は日米の経営比較をすることが可能であり,社 会制度や背景を異にする国際比較の視野で相対的にわが国の特徴が明らかとな るであろう。 統計データを主な素材として利用するが,できるだけ偏見を少なくして確か らしさを補うために,若干のケース・スタディ的な調査をも参照することとし たい。 2.. アメリカにおける業績尺度の利用 現実の管理会計システムがどのような管理尺度を管理者に提供しているかを うかがう資料のーっとして,N A
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鮒年以前に行った業常尺度の調査が ある。調査結果は,すでにエドワースによる『業績尺度の利用i
において報告247 業績尺度の利用に見られる現状 -173-されており,本節では,その公表データから総括的にどのような現状と;宮、味が うかがえるかを見ることにしたい。 (1) 調査の趣旨と概要 著者によると,この調査は,当初
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.。管理会計担当者が内部目的のために 一般に採用している業績尺度を明らかにすることを意図するものであった。実 務について統計ベースによる経験的調査 Cempiricalstudy) を行おうとするも のではなかったが〔実務はあまりにも多様である入全米会計士協会は,それと は別に,管理会計担当者が現に採用している業績尺度の一般的な『感触』を手 にいれ,管理会計実務の知識を蓄積するのに役立つ関連情報を発見することを 希望していた。」統計的な現状の掌握ではなく,むしろ実務における利用尺度 の多様性をうかがうことが狙いのようであったが,協会の希望との兼ね合いで 統計的な集計が試みられたようである。 とうして行われた調査の概要は以下のようである。まず同協会の会員に調査 への自発的協力をもとめ,結局参加意思を表明した5
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社からの回答が集計され ている。調査報告書のはじめに「本調査は,あらゆる業種〔製造業,流通業, 金融業,サービス業など〉において,管理会計担当者が内部目的のために採用 している業績尺度に焦点を当てるものである九とされており,サンフ。ノレは多 様な業種を含むように選定されたと思われるが,実際にいかなる会社が選ばれ たかは言及されていない。せっかくの集計値がし、かなる母集団を想定してのも のであるか明らかでなくまことに心許ないが,管理階層についての選択肢,から からうかがう限り,比較的大規模な会社が選ばれているのではなかろうか。集 計値の解釈にあたり,あまり細部にとらわれないよう留意しておきたい。 調査の実施時期も言及されていないが,報告書が公表された1
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年からそれ ほど前ではないと推定される。(1) James B Edwards.“The Use of Performance Measures". National Association of Accountants. 1986
(2) Edwards. op.cit. p3. p 63
-174- 香川大学経済論叢 248 調査の方法は,調査会社を19社と39社の二つのグループに分け,前者には 「調査 1
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,後者には「調査IIJ
という異なる調査票を送付して行われた。各調 査票には共通な部分と異なる部分があって,つぎのような事項は両者に共通に 調査されている。A
,各尺度に関するつぎのような属性 ① 報告頻度(連続的,日次,週次,月次,四半期次,年次などの例示 をあげながら,自由記入方式による回答がもとめられる。〉 ② ③ 報告階層(親会担,経営幹部,事業部,グ、ループ,営業区,工場, センター(5)部門なと、の例示をあげながら,自由記入方式による回答が もとめられる。〉 有用性(自社における各尺度の有用性をo~~10 のランク・スケール で示すようにもとめられる。その場合のスケールr
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はまったく有 用でなく, r10Jはもっとも有用性が高いことを表わす。〉B
,自社で採用を中止した業績尺度および中止した理由 C,自社で現在は使っていないが,将来導入の計画がある業績尺度 D,現在はないが,開発を必要とする新たな尺度についての見解や提案 また,各ク、!ループで質問内容が異なる事項はつぎのようである。 [19社のグループに対して] 内部目的で利用される一般的な102個の業績尺度を例示し,各社が採用 するものについてその報告頻度,報告階層,有用性のランクが尋ねられる。 そのうちもっとも重要な10個の尺度については,計算式,報告書式,そ の測定を支援するデータベースの形態と運用の記入がもとめられる。 また,これらいずれの尺度についても,自社に固有な点があれば例示と 報告書式がもとめられる。 もしリストにない尺度(とくに自社に囲有の尺度〉 の計算式と報告書式がもとめられる。 (4) Edwards.opcit.pp.3"'-'4. pp.105"'-'113 の利用があれば,そ (5) エドワーズはとくに投資センターを念頭においていたのであろうか。 Edwards. ojう じit.p 152
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業績尺度の利用に見られる現状 に υ ヴ , , , I[
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社のグループに対して]1
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社のグループのように一般的な尺度の例示は提示されず,内部目的で 各社が録用している最も重要な1
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個の尺度の自由な記入がもとめられる。 各尺度の報告頻度,報告階層,重要性のランクの記入が要請され,できれ ば計算式や報告書式,測定を支援しているデータベースの形態や運用を付 記するように依頼される。 この「二つの方式を採用したのは,あらかじめ選定した報告尺度のリストを 掲載することが,回答会社で,ある尺度が管理会計のツーノレとされることに影 響するかどうかを確かめてみるためであった九とされており,調査の重点は むしろ前者のグループの方にあって,リストに掲載した一般的な業績尺度が, 各管理階層でし、かに利用されているかその状況を知ることが調査の主な目的で あったといえよう。(
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代表的な業績尺度 「調査1J
で代表的なものとしてあらかじめ用意された1
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個の業績尺度の リストと算式は,本論末尾の付表1
に掲載しているから,必要に応じて参照し ていただきたい。各尺度に固有の番号1""102
のある尺度がそれである。調査 票では,尺度の分類や計算式を一切明らかにせず,単なる尺度名がこの番号順 で列挙されている。 列挙された尺度が,どのような趣旨や方針で選ばれたかの説明はないが,一 つは伝統的によく取り上げられた尺度(教科書でよく言及された尺度〉をできj
るだけ巾広く取上げることを趣旨として選ばれたものと思われる。業績尺度の 一般的な利用をうかがうものとして,このような選定がなされたといえるであ ろう。 (6) Edwards. opcit.p.63 (7) 各尺度名とその算式は,兼子春三,岩崎功『業績評価会計の国際比較に関する実証 的研究-J:l米企業の業績指標利用に関する研究一』平成元年5
月2
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日.9
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ペー ジにも掲載されているが,正確を期すため,尺度の怠味の確認も兼ねて若干調整し たものを再録することにした。-176- 香川大学経済論叢 250 それにしても尺度は多岐にわたるから,著者の調査意図をうかがうために, また後に集計される結-果の意味を理解するために,調査報告書でなされている 解説にしたがって諸尺度を分類しておくと,つぎのようである。 ① 基礎的尺度 (50指標〉 1)流動性
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指標〉 満期の到来した債務を支払う短期的能力の尺度。 2)回転率・回転期間 (6指標〉 資産がいかに有効的かつ能率的に利用されているかに関する尺度。3
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収益性05
指標〉 一定期間中の財務的な成否の程度に関する尺度。 4)安全性 (5指標〉 債権者および投資家を保護する程度に関する尺度。5
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市場活動00
指標〉 利益の源泉となる収益(
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が生ずる際の顧客の反応, 資産の利用,原価の発生の相互作用に関連する尺度。6
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調達活動(調査なし〉 価格,納期,品質に関連する尺度。 7)人的資源(調査なし〉 労働力に関連する尺度。 8)物価変動(調査なし〉 物価変動の影響に関連する尺度。 9)将来性 (12指標〉 会社がどのようにうまく将来に備えているかに関する尺度。 ② 製造活動の尺度 (52指標〉 各尺度の分類は,尺度の形態による違いを中心としながら,測定対象,測定時 (8) そのため,付表lの掲載JI隠は,調査票での掲載JI慎をいくらか調整している。多様な 尺度の分類や各尺度の解説は,報告書の第 3~4 章に見られる。 Edwards, op cit, pp .1 5~62.l
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251 業績尺度の利用に見られる現状 -177-点,適用業種の違いなどによる分類の視点をミックスさせているようである が,尺度が代表的なものであることを意、識しながら,それなりに系統性と多様 性が配慮されているようである。 大きく基礎的業績尺度と製造活動の業績尺度に二分され,ほほ同数の尺度が 取上げられている。基礎的業績尺度は,I
大半の業種(製造業,流通業,金 融業,サービス業など〉で一般的に関心がある 「と見られる尺度であり, 特定の業種や会社に特殊なものでないとされている。ただし,調達活動,人的 資源,物価水準の各尺度は,代表的尺度としながらもなぜか調査対象とされて いない。 これに対して伊造活動の業績尺度は,I
製造活動で一般に用いられる基 礎的業績尺度"人J
であるとされ,いわば製造業に同有のものであるが,製造 業においては広く知られているものとの趣旨であろう。 集計された19社の製造活動の尺度の採用率および39社の集計結果から推定す ると,集計会社の少なくとも6"'7
割,おそらくそれ以上が製造業であり,残 りがサービス,金融,流通の各種産業であると思われる。(
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調査結果の集計 このような調査の結果は,各調査項目ごとに単純集計の一覧表にまとめられ ている。報告書に掲載されている一覧表につぎのようである。 ① 前記の各種業績尺度の採用ギ11) ② 各業績尺度の有用性の平均点数(12) ③ 各業績尺度の採用率と有用性の両方を勘案した重要性の順位(3種の ( 9) Edwards, opαt, p 15 (10) Edwards, opcit, p.47 (11)回答会社09
社〉が,各尺度を管理会計のツールとして採用した相対度数(%)が 集計されている。 102個の尺度のうち, 11個が採用されていなかった。 (12)各社に,管理会計のツールとして採用している尺度をどの程度の有用性で利用し ているかを 0'"10のスケールで表明させ,その尺度を採用している会社の平均点数 が掲載される。 0はその尺度がまったく有用でないことを, 1は有用性がもっとも 低く, 10は最高の有用性であることを示す。-178- 香川大学経済論議 表〉 ④ 各業績尺度のもっとも代表的な報告頻度 ⑤ 各業績尺度が報告されるもっとも代表的な下位管理階層 ⑤ 前記リストにない業績尺度の追加 ⑦ 各社で,もっとも重要な業績尺度
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個の有用性と報告頻度 ⑧ これまで利用したが採用中止した業績尺度およびその中止理由 ⑨ 導入を計画している業績尺度 ⑮ これから必要になると思われる業績尺度 252 このうち① ⑥は19社について,⑦は39社についての集計であり,⑧ ⑩は両 者を合わせた5
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社について集計したものである。 報告書の末尾に「本調査は,決してこの調査に含まれる素材から導き出され る推論をつくしたものではない。研究者,参加会社,読者がし、っそう検討する ことによって,管理会計担当者による業績尺度の利用がし、っそう深く理解され るものとなるでむあろう;
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としているように,多彩な調査結果について必ずし も詳細な検討がなされていない。2
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ページにわたる集計表への言及は,わずか 数ページの文章に簡潔にまとめられるのみである。本節ではこれをそのまま紹 介するのではなく,公表データの集計表を工夫することによって,各尺度の利 用状況とその背景事情ができるだけ総括的に考察できるようにしたい。尺度の 一般的な利用状況をうかがわせてくれるものとしては,とくに① ⑤のデータ が有用であると思われるから,ここでは専らこれを分析することとする。(
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管理階層について 分析に入る前に,前提となる事項について若干の予備的考察が必要であろう。 その一つは経営管理階層に関するもので,この調査では,業績尺度が報告され る管理階層にはつぎの階層が例示されている。 親会社 (parent) (13) Edwards. op.cit.p 104 (14) Edwards. op.cit.p.1 05. p.ll1253 業績尺度の利用に見られる現状 経営幹部 (executive) 事業部 (division) グループ (group) 営業区 (region) 工場 (plant) センター Ccenter) 部門 (department) -179-それぞれは,管理職能を異にする特定の組織階層として例示されていると思 われるが,各階層の職務や互L、の階層的な上下関係はどこにも説明されていな い。しかし,たとえば一口に「経営幹部」といっても,どのような規模や組織 における経営幹部であるかによって管理職能にはかなりの違いがあって,それ ぞれに期待される職務内容も違ってきうるであろう。職務内容が違えば,必要 な業績尺度も多様なものとなりうる。事業本部制をとっている会社の本社の経 営幹部と単一の工場だけを擁する会社の経営幹部とが,果たして職務内容の複 雑さや視界の広さや不透明さにおいて類似しているといえるであろうか。ま た,
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センター」は,それが投資センターか利益センターかコスト・センターか によって職務内容や階層にかなりの巾があるといえないであろうか。報告書の 本文の解説では「投資センター(investmentcenters)Jとあるから,主に投資 センターが念頭にあったかもしれないが,集計の結果では,利益センターやコス ト・センターが多いようである。階層別の尺度利用からできるだけ正確な意味 を引出すために,管理階層について少なくともある程度の共通理解が必要であ るが,例示の階層が果たしてどの程度共通に理解されていたかがわかりにくい。 (15) たとえば, .John P Kotter“The General Managers" Harvard Business Schoo.l 1982, pp.23"-'30,金井議宏,加護野忠男,谷光太郎,字問川富秋訳『ザ・ゼネラル・ マネジャー』ダ、イヤモンド社,昭和59年, 38"-'48ページでは, 7種のゼネラル・マ ネジメント職のタイプが区別され,ある巨大企業では,そのうち6種のタイプがる り,組織階層の地位の高低によって管理課題の大きさ,横断的な対人関係の多さな どの面で見た職務内容が相対的に相違することが確認されている。 (16) Edwards, op.. cit, p 15-180- 香川大学経済論叢 254 そのため本論の解釈では,つぎのように各階層を緩やかに巾を持たせて解釈 する方が安全であろう。各社は,事業規模や多様性などに応じて職能別組織, 事業部制組織,事業本部制組織などとなりうるが,経営幹部は,そのいず、れの 組織の幹部であるかによって,かなり広い管理職能を包摂しうる。したがっ て,経営幹部は,図表 lのように,購買,製造,販売,財務,労務などすべて の経営過程を統括する固有のゼネラノレ・マネジメント職務を受けもつ管理者層 であると解しておきたい。 グノレープは, ¥,、くつかの事業部を統括するゼネラル・マネジメント職務を受 けもつ管理者層を表わすものと解されるであろうか。 営業区は,一つのまとまった地理的な営業区域を単位としてそれにかかわる 事業分野全体を統括するゼネラル・マネジメント職務を分担する管理者層であ ると思われるから,経営幹部と事業部(典型的には特定の製品,サービス分野 にかかわる事業分野を統括する管理者層〉との中間的な管理職能を受持つもの と見られよう。 センターはどのような職務を受けもつものと規定するかがむずかしいが,投 資,利益に関しでかなり限られた権限・責任をもつことがあるとしても,多く は特定の職務分掌にかかわるコスト責任をもっ専門管理者層であると解される であろうか。管理職能的には,工場や部門との関連が紛らわしいように思われ る。 工場は特定の工場内の諸活動を統括する下位のゼネラル・マネジメント職務 を受けもつ管理者層であり,部門は,上記
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つの経営過程のいずれか一つある いはその一部を専門的に分担する専門管理者層であろう。 こうして,例示した各管理者層は,必ずしも特定の管理職能を規定するとは 限らず,お互いにある程度のオーバーラ yプを許容したものと見ておくことが 無難であろう。 (17)たとえば,コッターによると, 7種の代表的なゼネラル・マネジメント職のうち, 「クやループ・ゼネラルマネジャーは,典型的には,事業部制最高経営責任者を上司 とし, 6"-' 7人の事業部ゼネラルマネジャーを部下としている。j とされる。 Kotter, op cit , p.24,金井議宏外訳,前掲書, 39ページ。i
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-255 業績尺度の利用に見られる現状 -181-図表 1 経営組織と管理階層 称 呼 一 役 一 む わ -の 湖 ⋮ 抑 刷 抑 剛 一 で 取 一 域 業 一 ﹁ 査 駅 一 部 一 プ 池 崎 一 二 配 的 欄 階 一 幹 一 一 区 部 一 タ 一 階 場 部 崎 級 一 営 一 ル 業 業 一 ン 一 級 能 日 一 経 一 グ 営 事 一 セ 一 中 工 験 ︹ 下 級 階 層 ] 岩 子 寸 i l P I l l i -i l -i o j o l l i -l i ﹁ l i f i l l i p -i i i l i i i l l i l﹂
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i i S L I -職能別組織 a l p -s ' l i -l i l i - -ト
i l l i t -- 1 l i l i -L 事 i 部 門 ・ーー寸 (3)-2 尺度の重要性について 各業績尺度は,管理上どの程度重視されているかが調査されている。各尺度 の重要性は,各尺度の採用率と個々の会社での優先度または有用性を総合的に-182一 香川l大学経済論叢 256 勘案したものとして測定されている。いわば回答会社における有用性の総計の ようなものと解されているといえよう。採用率と有用性を勘案する仕方には, 推察によると,つぎの三つの方式が試みられている。 ①「採用率+ (有用性の平均点
x
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の多いものが重要性が高いとする。 ②「採用率の順位+有用性の平均点の順位」の合計順位が高いものが重要 性が高いとする。 ③「採用率x
(有用性の平均点x
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の多いものが重要性が高いとする。 ①と③で有用性の平均点を1
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倍しているのは,採用率(%)と有用性の数値の ウェイトを揃えるためであろう。 実際に各尺度を採用率と有用性のそれぞれの11闘で並べたものを較べてみる と,かなりずれている。つまり,採用率の高い尺度が,採用会社において有用 性が必ずしも高いとは限らないし,採用会社での有用性の高い尺度が必ずじも 普及しているとは限らない。双方を総合的にi勘案する① ③の順位を比較する と,①と③は比較的順位が似ているが,②は他の二つと違いが目立っている。 著者は,相対的な重要性を判定するのにこういった状況の全体を参照するよう に奨めているとも思われるが,最終的には読者の判断に委ねているナ〕 ここでは,③は,回答会社全体における有用性の総点数を表わしていでわか りやすく,また各尺度の採用率と有用性のそれぞれの固有値を強調しているか ら,③によって一般的な重要性を評価することにしたい。これによって重要性 の違いを大まかに判断するため,③の1
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闘で並べた各尺度をほぼ三等分し1
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位(点数で7
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を相対的に重要性の高い尺度, 31~66位(点数で3
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を重要性が中位の尺度, 67~-91位(点数でし 500~480) を重要 性の低い尺度とランクづけることとし,これを以下の分析で使用したい。 (3)-3 調査結果のまとめ こうして報告書では,さまざまな尺度の重要性,利用階層,利用頻度が集計 されているが,それぞれを単独に見たのでは,事態を十分掌握できないと思わ (18) Edwards.ot..cit.p 102257 業績尺度の利用に見られる現状 -183-れるので,われわれは,報告書の集計値を図表
2
のように つの表にまとめ, 一種のクロス表を作成することにした。これによって財務尺度の典型的な利用 実態の特徴をより簡潔にうかがうことができるであろう。この表は,つぎのよ うに作成したものである。 調査では,各尺度の報告階層が尋ねられ,.
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句"回答会社において,尺度を利 用する代表的なもっとも下位の報告階層!
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が確認されている。その意図 は,さまざまな尺度を利用する権限・責任がどの辺りの階層まで委譲され,し たがってまた,それぞれがどの程度明細に測定されているかをうかがうことに あると思われる。ある尺度が報告される下位の階層は,当然,各社で異なりう るが,報告書では,もっとも多い階層のみが掲載されたようである。これによ り,もっとも典型的に報告される下位の階層がうかがえ,図表2
は,これにも とづいて,まず各尺度をもっともよく報告される下位階層に振り分けている。 各階層に振り分けた尺度はなお多様であるから,さらに流動性,収益性など の尺度の種類別に分けている。とくに「製造活動の尺度」は数が多いから,こ れを細分して製造統括指標(製造活動を比較的包括的に管理するのに用いられ るであろうと思われる尺度),直接材料費差異,直接労務費差異,製造間接費差 巽に分けることにした。 同じ種類の尺度であっても,その報告頻度が尺度によって異なるであろう。 各尺度の頻度は,会社によって異なりうるが,報告書ではもっとも多い頻度の みが掲載されたようであり,図表2では各種類ごとの尺度をその報告頻度が少 ない順に並べている。各尺度の報告頻度,したがって報告サイクルの違いに よって,それがいかなる種類の管理課題の解決を目指しているかかがある程度 うかがえるであろう。 最後に,報告階層と種類と報告頻度が同じである尺度は,重要性が高いもの から順に並べることにした。 (19)兼子春三,岩崎功,前掲書においてもエドワーズの報告書が紹介されているが,残 念ながら,各尺度の重要性,利用階層,利用頻度で別々に集計したものがそのまま 紹介されるにとどまっている。 (20) Edwards。
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ριit,
p64-184- 香川大学経済論叢 258 図表2 米国の報告階層別の尺度 報告階層 種類 ABC 報 告 尺 度 報告頻度 重(採。有) 親 会 社 報告尺度なし 経営幹部(基礎的尺度:11個 , 製 造 活 動 の 尺 度 個 〕 収益性 A 19)普 通 株 株 当 り 当 期 純 利 益 四半期次 26 (29 -6) C 21)株価投資利回り 四半期次 67 (66・32) A 18)普通株持分利益率 月次 16 (14 -70) 安全性 B 20)普通株薄価 四半期次 53 (41・71) B 11)自己資本比率 月次 40 (29・71) B 12)支払利子控除前純利益対支払利子倍率 月次 55 (56“32) 将来性 A 97)回収期間法 必要時 19 (17・59) A 98)正味現在価値法 必要時 27 (25“57) A 100)内部利子率法 必要時 28 (29・9) B 101)収益性指数法 必要時 63 (66- 4) C 99)超過現在価値指数法 必要時 90 (80・84) 製造活動 〔製造総括指標 cl伺) ] C 46)帰属原価収益性 必婆時 83 (80・19) グ、ノレープ(基礎的尺度:12個,製造活動の尺度なL) 収益性 A 13)売上総利益率 月次 2 ( 3・19) A 14)営業利益率 月次 4(3"52) A 28)全部原価計算営業利益 月次 17 (25" 6) B 31)限界利益 月次 31 (29・32) B 29)直接原価計算営業利益 月次 39 (41刷19) C 33)セグメント別差益 月次 81 (80・9) C 34)セグメント別営業利益 月次 85 (56“90) C 32)短期業絞差益 月次 85 (80・32) 市場活動 B 36)市場占有率変動率 四半期次 47 (56・9) B 35)市場規模変動率 四半期次 60 (56・62) B 37)販売数量実績率 週次 31 (29・32) B 38)売上高実績率 週次 44 (41・57) 事業部(基礎的尺度:16個,製造活動の尺度なし〕 流動性 A 1)流動比率 月次 12cl1・32) B 2)酸性試験比率 月次 49 (41-66) 回転率" 回転期間 A 6)売上債権滞留日数 月次 5 ( 3・59) A 5)売上債権回転率 月次 19cl7・59) B 7)閤定資産回転率 月次 62 (41・84) B 8)総資本回転率 月次 64 (56・71) 収益性 A 16)総資本利益率 月次 11 (11・17) C 15)残余当期純利益 月次 79 (80"1) C 17)総資本残余純利益率 月次 79 (80 -1)
259 業 績 尺 度 の 利 用 に 見 ら れ る 現 状 -185-報告階層 種類 ABC 報 告 尺 度 報告頻度 重(採“有〕 安全性 A 10) 負債比率 月次 30cl7・79) B 9)回定負債適合倍率 月次 40 (29"7l) 市場活動 A 94)損益分岐点売上高 四半期次 24cl7・7l) C 93)損益分岐点販売量 四半期次 78 (41・89) B 39)売上品構成差異 月次 49(41“66) 将来性 B 26)弾力性予算による貸借対照表 月次 57 (41・80) B 23)回定予算による貸借対照表 月次 57 (29・87) センター(基礎的尺度:4個,製造活動の尺度:2個〕 将来性 A 25)強力性予算による損益計算書 月次 14 (14“28) B 27)弾力性現金予算 月次 31 (29“32) B 22)固定予算による損益計算議 月次 37 (17・86) B 24)間定的現金予算 月次 57 (29・87) 製造活動 〔製造総括指標 (2個) ] A 43)コスト・センター別資任原価 月次 9 ( 7・30) A 44)利益センター別賞任利益 月次 13 (13・25) 工場(基礎的尺度:4個,製造活動の尺度:40倒) 回転率。 回転期間 A 3)棚卸資産回転率 月次 1 ( 1・54) A 4)棚卸資産在庫日数 月次 22cl7・66) 収益性 A 30)製造貢献差益 月次 25 (25" 32) 市場活動 C 92)単位当り限界利益 月次 67 (66・32) 製造活動 [製造総括指標 (3個) ] B 42)生産組合せ差異 週次 40 (29・7l) B 41)売価生産額実績率 週次 B [4直0)接材生産料量費差笑績異率(14個) ] 日次 41 " 16) A 48)材料消費数量差異 週次 28 (29・9) B 55)指図書別材料費差異 週次 43 (41 " 32) B 50)材料消費歩留差異 週次 54 (56・25) B 49)材料混合差異 週次 66 (66・19) C 52)品目別材料費差異 週次 67 (66" 32) C 54)製品別材料費差異 週次 76 (66・71) A 84)廃棄処分差異 日次 15(14・30) A 86)補修費差異 日次 21 (17“65) B 81)仕損品発生差異 日次 52 (56・19) C 53)作業別材料費差異 日次 67 (66・32) C 85)減損発生差異 日次 67 (66・32) C 82)作業屑発生差異 日次 85 (80・32)
-186ー 香川大学経済論議 260 報告階層 種類 ABC 報 告 尺 度 報告頻度 重(採・有〕 C 83)残材発生差異 日次 8637 (80・19) C [5直1接〕材労料務変費差更差異異(6個) ] 必要時 (66" 32) A 56)賃率差異 週次 7 ( 6・54) B 62)職場別労務費差異 逓次 65 (56・80) C 66) 指図脅!iJU労務費差異 週 次 81 (80" 9) C 65)製品別労務費差異 逓次 85 (80・32) A 57)作業時間差異 日次 8(7"25) ト A一""""~~Lj空業別賞務理差異
~ê"~""""""_"
23 (25-28) 製造活動 [製造間接費差異 07個) ] A 67)変動間接費予算差異 月次 6(7・17) A 71)間接費配賦過不足 月次 10 ( 7・32) A 69) 固定間接費予算差異 月次 18 cl7・54) B 70) 固定間接費操業度差異 月次 34 (41・ 4) B 89)作業別製造間接援差異 月次 35 (41“6) B 68)変動間接費能率差異 月次 36 (41- 9) B 76) 正常操業度差異 月次 45 (29・83) B 75)現実的操業度差異 月次 46 (41 " 62) B 88) タイプ別製造間接費差異 月次 47 (56“9) B 74)理想的操業度差異 月次 49 (41・66) B 72)遊休能力差異 月次 55 (56" 32) C 90)製品別製造間接費差異 月次 67 (66・32) C 73)年次期待操業度差異 月次 76 (66" 71) C 77)設備組合せ差異 月次 89 (80" 80) C 91)指図書別製造間接費差異 月次時 9671((8606" ・9302〕〉 C 78)工作技術変更差異 必要 C 79)作業ノレー「変更差異 必要時 75 (66 -62) 部門(基礎的尺度なし,製造活動の尺度:1個〉 製造活動 f直接材料費差異c1個)J A 47)材料価格差異 週次 3 ( 2ρ52) 利用なし(基礎的尺度:3個,製造活動の尺度: 8個〕 市場活動 95)安全余裕率 不採用 不採用 96) 陸路要素単位当り限界利益"
"
将来性 102) リスク調整済割引率法"
"
製造活動 45)投資センター別責任投資利益率"
η 58)作業組合せ差異"
"
59)作業能率差異"
"
60)作業変更差異"
"
61)統計的習熟曲線と実際習熟度との差異"
"
64)交替制別労務費差異 日次ワ"
80)機械要素変更差異 不採用"
87)原価回収差異"
"
注) 末部の 164) 交替制別労務費差異Jの報告頻度は日次であるとされるが,おそらくその尺度は 利用されていないものと思われる。261 業績尺度の利用に見られる現状 -187-要するに,図表
2
を概観することにより,し、かなる尺度が,どの辺りの階層 まで下りてどの程度の頻度で報告されることが典型であるかをうかがうことが でき,一般的な利用状況が簡潔に知られるであろう。 なお,図表におけるA
B
C
とは,各尺度の重要性のランクを示し,I
AJ
は前節 で述べた相対的に重要性の高い尺度,I
B
J
は重要性が中位の尺度,I
C
J
は重 要性の低い尺度を表わす。ついでに,表の右端の数値は,I
重」が各尺度を採用 率x(
有用性の平均点x
10)の多いものから並べた重要性の順位, I採」は採 用率の大きいものから並べたときの順位,I
有」は有用性の大きいものから並 べたときの順位を示し,原表の様相をある程度推察していただくように併記す ることにした。 それでは,この表から一般にどのような特徴がうかがえるであろうか。 (4) 業績尺度の重要性に見られる特徴 はじめに図表から概括的な状況をうかがうと,調査した伝統的尺度102個の うち図表2の末部にある11指標はどの会社にも採用されていなかった。製造活 動の尺度がやや多いが,概して測定そのものが難しいか,差異のなかでも詳細 な測定を要すると思われる尺度のようである。その結果,いずれかの会社で採 用されている尺度は9
1
尺度(全尺度に対する採択率892%)
で,よく知られた かなり広範囲の尺度が利用されていることがわかる。 各尺度の採用率から推計すると,各社が平均的に採用する尺度数は31
.
7個で あり,各社は,多様ではあるけれども重点的に指標を選んで利用していること がうかがえる。経営諸側面や全体と部分の徴妙なパランスへの配慮,異常事態 の見落しの防止,権限・責任の自立的な分担への支援などを考慮しながら,他 方では戦略的な重点が意識されるのであろう。 このような多様さの一面として,重要性が高い尺度にはどのような特徴が見 られるであろうか。相対的に重要性が高いI
AJ
の尺度の種類別の分布を見る と,つぎのようである。 基礎的尺度 ::18/47=38%
-188- 香川大学経済論叢 回転率・回転期間
4/6=67%
流動性1/2=50%
収益性7/15=47%
将 来d性4/11=36%
安全性1/5 =20%
市場活動1/8
=13%
製造活動の尺度:12/44=27%
直接労務費差異3/6=50%
製造統括指標 :2/6=33%
直接材料費差異 :4/15=27%
製造間接費差異 :3/17=18%
262 利用される各尺度数はまちまちであるが,重要性の高い尺度は一応どの種類 にもまたがっており,業績測定が,多方面にわたりかっそれぞれの方面で重点 指標が意識されている。しかし,各方面で配慮されるウェイトは必ずしも均等 でなく,とくに資本の回転,資金の流動性,直接労務費の管理,収益性が重視 されている。逆に,市場活動,製造間接費の管理し出資・融資の安全性などは 相対的には重視されていない。 基礎的尺度38%
と製造活動の尺度27%
の違いは,調査対象が製造業ばかりで ないととを考慮すれば,あまり大きな差とはいえないであろう。 多様さ一面を報告階層別の分布でうかがうと,つぎのようである。親会社
;報告尺度なし 経営幹部5/12=42%
グ、ノレープ 営業区 事業部 セ ン タ ー工場
部門:
3/12=25%
:報告尺度なし:
6/16=38%
3/6
=50%
:
12/44=27%
:
1/1=100%
263 業績尺度の利用に見られる現状 -189-親会社へ報告することが典型となる尺度が見られないのは,比較的大手の会 社が対象とされたごとによるのであろうか。営業区に固有の尺度も見られない が,営業区の事例が少なかったのかもしれず,ここでは判断を留保しておきた い。工場レベルでの尺度がとくに多いのは,製造活動の尺度がここに集中した からであろう。部門レベルでの尺度が少ないのは,この辺りから財務尺度を用 いる管理の機会がにわかに少なくなることによるのかもしれない。 総じて重要とされる尺度は,工場レベルより上の階層に広がっており,どの 階層が重視されるかにはそれほどの差はないようである。それだけ管理が,各階 層の管理者へ権限・責任の配分が広く分散して行われているという印象である。 最後に,報告頻度別の分布をうかがうとつぎのようである。 年次 :報告尺度なし 四半期次
2/7
=29%
月次 :18/50=36%
週次 :3/15=20%
日次 :4/10=40%
連続的 :報告尺度なし 必要時3/9=33%
各尺度は必要なときに不定期に報告されることも少なくないが,大抵は四半 期次 日次の比較的多様な頻度で(なかでも月次サイクルの報告が多し、〉定期 に報告されており,年次サイクルと常時連続的に報告される尺度は見られない。 作業経過は,概して比較的短い間隔で漸進的に監視されるようである。重要な 尺度も,必要時,四半期次 日次のどの頻度にもあり,軽重の差はあまりない ようである。中長期,短期,当座的課題のいずれにも財務指標の重要性が意識 されているようである。 要するに,米国での財務尺度も,多面性と重点を考慮して各社で利用される 尺度はほぼ3
2
前後であり,指標の内容はかなり多様である。具体的な利用の形 態を報告階層について見ると,経営幹部から工場にいたる中堅以上の階層に広 く分散して報告され,また報告頻度は,四半期次 日次にわたる定期の報告を-190- 香川大学経済論叢 264 中心とした多様な頻度で報告されている。しかも,いずれの場面においても重 点尺度がそれぞれに用意されているようである。工場以上の階層において,総 じて,多様性と戦略的重点を意識した財務尺度による管理が行われているとい えよう。
(
5
)
業績尺度の種類と報告頻度に見られる特徴 各尺度の種類と報告頻度の面からも,全体を概観するとつぎのようである。 図表3
は,種類別の特徴をうかがうため階層別の利用とクロスさせしたもの である。複数の階層にまたがっている種類が多く,報告階層とのあまりはっき りした傾向はうかがえない。 図表4は,種類別の状況を報告頻度と関連させている。製造活動と市場活動 の尺度は,週次,日次などの日常的,当座的に管理される部分が少なくないよ うであるが,他の尺度は,必要時,四半期次,月次に報告され,中長期に取り 組まれる課題とかかわっている。 さらに図表5
は,報告頻度別の利用を報告階層と関連させている。同じ報告 頻度の尺度でも報告階層がいくつかにまたがっているため,両者の関連はあま り明白ではないが,大まかには報告サイクルが短いほど,報告階層は下がる傾 向にあるといえよう。 こうして業績尺度の利用状況を概観すると,多様な尺度が多様に使われてお り,必ずしも傾向がはっきりしいるわけではないが,かといって尺度の利用が ランダムに行われているとも思われない。そこで,さらに個々の尺度が,どのI
ように利用されているかをうかがうこととしたい。 (6) 各管理階層での業績尺度に見られる特徴 各階層の管理者は,何らかの職務を分担しながら自社の事業を専門的に管理 する立場にあり,その管理者に対して一定の利用形態による一定の財務尺度を 適用することは,彼に事業活動を誘導するための一つの政策的な視点を提供す ることとなるであろう。典型的には,各管理階層へいかなる配慮のもとにし、か265 業績尺度の利用に見られる現状 -191-図表3 種 類 別 尺 度 の 利 用 ー 管 理 階 層 別 の 状 況 種 類 経 営 幹 部 グ ル ー プ 事 業 部 セ ン タ ー 工 場 部 門 合 計 安全性 3 2 5 (60) (40) (100) 将来性 5 2 4 11 (45) (18) (36) (100) 収益性 3 8 3 15 (20) (53) (20) ( 7) (100) 市場活動 4 3 l 8 (50) (38) (13) (100) 流動性 2 2 (100) (100) 回転率・期間 4 2 6 (67) (33) (100) 製造統括指標 2 3 6 (17) (33) (50) (100) 直材料費差異 14 15 (93) (7) (100) 直労務費差異 6 6 (100) (100) 製間接費差異 17 17 (100) (100) ( )内の数値は,各種類別尺度数の合計を100とする%。 図表4 種 類 別 尺 度 の 利 用 一 報 告 頻 度 別 の 状 況 種 類 四半期次 月 次 週 次 日 次 必要時 合 計 市場活動 4 2 2 8 (50) (25) (25) (100) 安全性 l 4 5 (20) (80) (100) 収益性 2 13 15 (13) (87) (100) 将来性 6 5 11 (55) (45) (100) 回転率・期間 6 6 j (100) (100) 流動性 2 2 (100) (100) 製間接段差異 15 2 17 (88) (12) (100) 製造統括指標 2 2 1 6 (33) (33) (1わ (17) (100) 直労務費差異 4 2 6 (67) (33) (100) 直材料費差異 7 7 l 15 (47) (47) ( 7) (100) ( )内の数値は,各種類別尺度数の合計を100とする%。
-192- 香川大学経済論叢 266 図表5 報告頻度別尺度の利用ー管理階層別の状況 報告頻度 経 営 幹 部 グ 、 ノ レ ー プ 事 業 部 セ ン タ ー 工 場 部 門 合 計 四半期次 3 2 2 7 (43) (29) (29) (100) 月 次 3 8 14 6 19 50 ( 6) (16) (28) (12) (38) (100) 週 次 2 12 15 (13) (80) ( 7) (00) 日 次 10 10 (100) (100) 必要時 6 3 9 (67) (33) (100〕 ( )内の数伎は,各種類別尺度数の合計を100とする%。 なる尺度が提供されているといえるであろうか。
(
6
)
-1
経営幹部の特徴 経営幹部では収益性,安全性,将来性,製造活動の尺度が報告されている。 個々の尺度とその利用形態から,つぎのような特徴がうかがえるであろう。 ① 経営幹部は,必要な資本の調達をめぐって自己資本や有利子資本の調達 市場における自社の地位を憂慮しているように思われる。 月次においては,普通株持分利益率により経営の全社業績が株主への成 果配分にどう影響するであろうかがうかがわれ,また,支払利子控除前純 利益対支払利子倍率によって有利子資本融資者への利子負担余裕が監視さ れ,これら資金調達の結果が自己資本比率などで見る経営の基礎体力にど う影響しているか,したがって市場における自社への好感に.どうはねかえ るかが月次に注目されているのであろう。 このような資金提供者とりわけ株主との力関係に対する配慮は,四半期 次にあらためて総合的に取上げられるようである。普通株一株当り当期純 利益および普通株簿価による潜在的な投資誘因と実際の株価投資利回りと を照合しながら,調達市場への対策が考慮されるものと思われる。 こうして資本調達市場における自社への有利な評価を準備して,資金調267 業績尺度の利用に見られる現状 -193-達を有利に運ぶことは,経営幹部に国有の責任事項の一つになっている。 アメリカの会社の経営幹部が,資金提供者からの評価を気にしていると いっても,株式を広く公開している大・中規模の会社において,その創立 当初に成立していた同族取締役による完全所有と支配が形の上で受け継が れているということではないであろう。大規模で,広く株式を公開してい る株式会社の典型においては,
1
0 社長と取締役会メンλーは,ほとんど 株式を所有していない。ここでは,法律上の支配力が,数千の所有者,株 主に分散している。株主は,一般的に,所有者として組織されておらず, また,本来組織できない。」という状態にあり,また ,1
新しい社長が,年 次株主総会か年次総会と年次総会の聞に選任される過程は,調査した会社 によってかなり違いが見られた。」にしても,1
たいていの会社の取締役 会は,厳密に法的な手続きとして,また事実上意味のない手続きとして行 う以外,および危機的な場面に遭遇するとき以外,社長を選任していない。 社長が,通常,その地位を継ぐ人物を選んでおり,取締役会は,選任を確 認し,票決することによって法的儀式を行っている。」この状況にある大 規模な株式公開会社では,所有者による支配が組織されていないから, 「““典型的には,事業企業の支配力は社長にある。」とされるにもかかわ らず,上記のような尺度が採用されるのは,資金調達市場における会社の 地位を憂慮、してのことであろうし,また,し、くらかはこれまでの慣習と法 の伝統にもとづくものといえるであろう。 ② この階層におけるもう一つの尺度群は,これまでの事業に新たな戦略的 に必要とされる活動を導入して,大なり小なり経営の向きを変えようとす ることにかかわっている。(21)Myles L Mace,“DIRECTORS Myth and Reality", President& Fellows of Harvard College, 1971, p191道明義弘訳『アメリカの取締役一神話と現実』文民 堂, 1991年, 222ページ。
(22) Mace,。ρ cit,p66道明義弘訳,前掲書, 75ページ。 (23) Mace,。
ρ
cit,p.70道明義弘訳,前掲書, 80ベージ。 (24) Mace,。ρ cit,p.76道明義弘訳,前掲書, 86ページ。-194- 香川大学経済論叢 268 不定期に報告される回収期間法,正味現在価値法,内部利子率法,収益 性指数法,超過現在価値指数法は,いずれも特定の中長期プロジェクトの 経済性を評価したり序列づけるためのものであり,その選択いかんによっ て今後の経営基盤のあり方が影響をうけるであろう。製造活動の指標であ るとされる帰属原価収益性も,潜在的な選択機会に照して現状の収益性を 評価するものであるから,いずれも将来の営業活動を方向づける戦略的, 戦術的な選択機会の財務的評価であり,経営幹部はそのような機会が生ず るつどその評価と選択を統括する主導性を発揮しているものと思われる。 これらの経営側面は互いに絡みあっており,中長期の営業基盤改変の成否は やがて資金提供者からの評価に影響しうるであろうし,資金提供者との関係の 刻々の変化は,あらたな投資機会への態度にも影響するであろう。経営幹部に は,このような両者の関係をにらみながら,資金調達市場における有利な関係 を確保することおよび将来の収益性の新たな基盤を用意すること,どちらかと いえば中・長期戦略的な課題への取組みに固有の業績課題がおかれているよう である。 当然,全社を統轄する他のさまざまな指標も報告されているであろうが,そ れらを監視すべき第一責任は下位に委譲されていると見ることができょう。
(
6
)
-2
グ、ループの特徴 引き続いてグループで典型的に報告される尺度は,収益性と市場活動の諸尺 度に集中している。この階層では,とくに販売業績の管理に重きがおかれ,そ れとの関連でグループ全体の営業利益から見た収益性(投入・産出の活動効 率〉が管理されている。 ① 販売活動の業績は,週次におそらく製品、や地域ごとの売上高実績が予算 からどの程度議離するか監視がされ,そのし、かんによって必要なリアク ションをとる予算統制が実施され,そのような当座的管理が行われでもな お生ずる売上高差異の影響は,月次の営業利益のなかで全体的に見直され るようである。他方,四半期には,グループがかかわる市場全体に視野を269 業績尺度の利用に見られる現状 -195ー 広げて,前期との対比による販売市場の動向や自社の競争状態の変化が確 認され,グ、ループ・レベルでの長期策が検討されるようである。 週次の販売数量実績率,売上高実績率は,販売実績が予算目標を越えて 達成される達成率を表わしており,グ、ノレープ内の事業部別,製品ライン別 など各種市場セグメントに焦点を当てて当座的な動きが注視されているも のと思われる。そうした週次の経過的な販売管理を行いながら,月次には 各セグメント別の営業利益において当座的管理の成果が評価されるようで ある。眼界利益,短期業績差益,セグメント別差益,セグメント別営業利 益などのグループ内の各市場セグメントや多段階に分けた各種利益によっ て,売上高を週次に予算統制した管理努力の成果が評価され,実績が示唆 する課題や今後の方針が検討されるのであろう。併せて,直接原価計算営 業利益,全部原価計算営業利益,売上総利益率,営業利益率などでグルー プ全体の総括的収益性が確認,評価されるようである。営業利益による業 績は,販売実績のみならず生産実績によっても左右されるが,販売活動を 統轄しているこの階層で営業利益金体が統括的に管理されるようである。 さらに販売業績は,個々の経営がほとんど影響力を行使しえない市場規 模の変化や,同業他社との相対的な競争状態の変化からの影響も受けるで あろうから,四半期ごとの市場占有率変動率,市場規模変動率によって, 製品市場におけるグループの相対的な地位の変化が確認され,中・長期的 な対応策が検討されるようである。 グループは,いくつかの事業部を統轄する管理職能をになうかなり上位の階 層と理解しているのであるが,週次の売上高実績率のような経常的な販売管理 のためのかなり詳細な情報から,四半期の市場占有率変動率のような中・長期 の販売戦略の基礎となる情報までを広く利用することが典型であり,やや不自 然な感があるが,グ、ノレープの販売活動全体の統轄と営業利益による収益性の管 理が主要職務のようである。
-196- 香川!大学経済論叢 270
(
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事業部の特徴 事業部レベルの利用が典型となる尺度にはかなりパラエティがあり,製造活 動の尺度を除くすべての種類が揃っている。それだけ多面的な管理責任が集結 しているのであろうが,個々の尺度を見ると,管理の視点は必ずしも分散的で はなく,留意されているポイントはつぎのようである。 ① その一つは,各事業部が担当する事業分野について月次の収益性が総合 的に監視されている点である。 まず,投下資本運用の利回りという意味での総合的収益性としては,月 次の総資本利益率,総資本残余純利益率によって,本社から各事業部に投 下された資金の運用からいかなる運用報酬がえられるかがうかがわれてい る。 そのような運用利回りの良否を支える一つの要因は,各種資産の循環的 な運用効率の良否であり,総資本回転率のような資産全体の回転率をはじ め,売上債権滞留日数,売上債権回転率による売上債権の循環,固定資産 回転率による長期滞留資産の循環など,各種資産別の循環効率が月次に監 視されている。 利回りとし、う意味での収益性を支えるもう一つの要因は売上高利益率で あるが,各事業部においてこれに関する管理責任は必ずしも本格的に取上 げられていない。利益に関する指標としては残余当期純利益と売上品構成 差異があるが,典型的には,売上高利益率に関する責任は必ずしも各事業 部に固有のものとはされないようである。 ② 事業部の管理には,このような経営の活動効率だけでなく,貸借対照表 における資産,負債,資本の構造を事業継続の妨げとならないように均衡 的な状態に保つことも含まれる。 たとえば固定予算による貸借対照表,弾力性予算による貸借対照表は, 月次管理によって,実際の資産構成を各月の売上高に見合う予定貸借対照 表の資産構成へ誘導しようとするものであろう。 また,流動比率,酸性試験比率は支払手段と支払義務を対比して支払能271 業績尺度の利用に見られる現状 -197-力を見る周知の指標であるが,要するに短期に循環する流動資産と流動負 債がλランスのとれた状態で循環しているかどうかが留意され,また,聞 定負債適合倍率によって,長期間滞留する固定資産は長期資金でまかなう ことが好ましいとの考えにより,両者のバランスが保たれているかどうか が月次に監視されている。 資産,負債,資本の構成が,日々の事業活動の継続によって調和を欠い たものとならないよう月次に予算的に誘導されるようである。 ③ 事業部で配慮されるもう一つの視点は,安心して本来の事業活動に専念 することができる余裕の確保に関するものである。 損益分岐点売上高,損益分岐点販売量は限界利益で固定費がちょうど回 収される,または損益が均衡する営業量を確認するものであり,四半期ご とにその営業量にいたるまでの営業リスク吸収の余裕が確認されるようで ある。 またこの場合の負債比率は,各事業部の立場から見て,なお必要であれ ば外部資金に依存しうる借入れ余裕をうかがうものであろう。とのような 営業余裕の確認がこの階層で行われるようである。 要するに,事業部では,資金運用の利回りによる事業部収益性を総括的に監 視しながら,それを直接支える要因の一つである各種資産の循環効率の維持, 資産・負債・資本の調和のとれた構成の確保,営業余裕の確認など,どちらか といえば事業活動の営業利益から見た収益性以外のその周辺にある環境を整え ることに固有の力点がおかれているようである。円滑な事業活動の継続を妨げ ないように,しかし諸資源の必要以上の投資とならないようにその環境を整備 することが,事業部レベルでの管理の主眼となっているように思われる。 (6)-4 センターの特徴 前述のように,センターといっても,投資センター,利益センター,コスト ・センターによって課される権限・責任の範囲が異なると思われるが,調査で はとくに区別されていない。
-198- 香川大学経済論叢 272 調査結果によると,各センターで利用される尺度はあまり多くなく,財務尺 度による管理は限られているようである。 ① 利益センターでは利益センター別責任利益が,コスト・センターではコ スト・センター別責任原価が主な尺度となるようであるが,いずれも各セ ンターが担当している業務活動の効率を問うものといえよう。 責任利益や責任原価の内容は,各センターが直接,間接にかかわる利益 ないしは原価の全体を含むとされるようで,そのようなセンター別の利益 や原価が,センター別の固定予算や変動予算による損益計算書によって月 ごとに予算統制され,事後に実績に対する聞有の管理責任が評価されるも のと思われる。 ② センターでは,典型的には,経常的な営業活動に必要な現金管理が統括 されるようである。 弾力性現金予算,固定的現金予算が月次の指標として用いられていると ころから,各センターの経常的な業務活動の効率について・責任が課される ついでに,経常的な現金収支に対しでも予算管理されるようである。営業 債権・営業債務の循環過程と経常業務の進行とは密接に関連していること によるのであろう。 センターの階層では,各センターの管理責任の範囲内にある業務活動の全般 的な効率や現金収支(あるいは金融資産全体〉の予算管理に権限・責任が付与 されるようである。
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工場の特徴 工場レベルでの利用尺度はもっとも数が多いが,その大半は製造活動の尺度 (多くは予定・実績差異の尺度〉である。財務的尺度による製造活動の業績管 理は,実質的にはこの階層で行われているといえよう。そこでは,工場全体の 総括的な管理尺度や各製造原価費目別の管理尺度など多様な尺度が工夫されて いる。 ① 直接材料費の管理では,とくに各作業区分における材料消費量の日程管.
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273 業績尺度の利用に見られる現状 -199-理をベースとして,週次のサイクルであらためて数量差異の発生状況や動 向に即した措置を検討するとL、う体制が採られている。 まず,日次において各作業区分における原因別の歩減発生が管理されて いる。廃棄処分差異,補修費差異,仕損品発生差異,減損発生差異,作業 屑発生差異,残材差異は,いずれも材料歩減の発生に係わるものであり, 主な原因別に発生差額が集計され,材料歩減の原因別発生の日々の動揺が 注目され,警戒的に監視されている。作業別材料費差異も日次に報告され るところから推察すると,歩減は,それが発生する作業区分を特定してい るケースが少なくないであろう。 このような日程管理を消費量管理のベースとしながら,週次にはあらた めて刻々の日程管理の結果を材料品目別,製品別,指図書別の消費数量差 異にとりまとめたり,消費歩留差異や混合差異など発生要因別にとりまと めて,工場内の消費量差異発生の程度や傾向を確認し,必要な措置が検討 されるようである。いずれにしても,材料消費量の管理は,生産現場にお ける日次,週次の経過的な材料消費を管理することにウェイトがあるとい えよう。 ときに代用材料が用いられる場合は,その材料変更にともなう価格差異 が材料変更差異として特殊分析され,工場レベルに報告されるようである。 主として工場サイドに責任のある差異と位置づけられるのであろう。 ② 直接労務費の管理は,ほぼ直接材料費の管理に照応しており,とくに各 作業区分における作業時間の日程管理を重視しながら,あらためて週次に その成果を見直すという短いサイクルの管理体制によって管理されている。 まず日程管理において,作業時間差異,作業別労務費差異がし、ずれも重 要性の高い尺度として利用されている。つまり直接工の作業時間による能 率は,各作業区分ごとに標準状態からの講離が日々どの程度生ずるかが監 視され,必要な当座的措置がとられるのであろう。このような作業時間差 異の日程管理は,週次にはさらに職場別,製品別,指図書別にまとめら れ,やや総括的に見直されるとともに,週次にはさらに賃率差異が報告さ-200ー 香川大学経済論叢 274 ③ れている。 このような作業実施を経過的に管理するという方式は,材料消費の経過 管理と合せて,直接工に対する現場管理を意図したものと思われるが,こ のような日次,週次の報告が,工場レベルという作業現場からある程度意 識的な距離のある階層に報告されるということは,少なくとも財務尺度に よる管理の権限・責任が,あまり下位に委譲されていないことを示唆する のであろうか。 製造間接費の管理は,こうした直接費の管理とはかなり様相が異なって いる。製造間接費管理では,一方において操業管理をめざす当座的管理を 行いながら,それでもなお発生する操業度差異は月次に総括的に検討さ れ,また各間接費目の予算差異も,各作業区分の主要な費目グループごと に月次に予算管理されている。 製造間接費は,直接材料費や直接労務費のように各費目をできるだけ 日々の作業実施のスポットでそのつど経過的に管理するという体制はとら れないが,操業面の管理は日次や週次の管理体制が基礎になっている。日 次の生産量}実績率,週次の売価生産額実績率は,それぞれ日次や週次の生 産目標を越える達成率を表わすものであり,生産実績が目標を下回ること のないように当座管理されている。月次の予定操業度を達成するために, 日次,週次の生産目標からの君主離がそのつど監視されるのであろう。 各費目別発生額の管理は,月次の予算管理が主体であり,そこでは,各 社の必要に応じて作業別・タイプ別(性質の異なる費目グ、ループをいうの であろうか〉 ・製品別の発生状況の掌握,総差異の予算差異・能率差異・ 操業度差異への要因別分析がなされ,それまでの操業管理による成果の評 価を含めて,工場全体の見地から月次の実績に対する措置が検討されるよ うである。そこでは,まず間接費の配賦過不足(総差異)が変動予算に よって
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分法的に分解され,変動間接費予算差異,国定間接費予算差異か らなる予算差異,変動間接費による能率差異,固定間接費による操業度差 異へ要因分析され,それぞれの要因別差異が,各要因の管理に利用されるのであろう。予算差異は,作業区分ごとに掌握されるタイプ別の差異を含 めて総合的に検討されるであろうし,ときに製品設計や作業手順の変更がな されると,工作技術変更差異,作業ルート変更差異などの特殊分析がなさ れるようである。操業度差異は,各種の基準操業度との関連で理想的操業 度差異,正常操業度差異,年次期待操業度差異,現実的操業度差異などが 確認され,あるいは影響要因的に遊休能力差異や設備組合せ差異(操業度 差異の一種であろう)に分解するなど,それまでの当座的な操業管理の経 過と合せて操業度差異発生の事態が解明され,必要な措置が検討されるで あろう。能率差異は,おそらく日次あるいは週次に行われる直接作業時間 の当座管理の経過と照応させて,その当座管理の結果が間接費の生産効率 へどのように跳ね返っているかが確認されるものとなるであろう。 工場レベルの管理では,以上のように各費目の性質に応じた部分管理が なされる一方,工場全体にかかわるより広い見地からの管理が実施されて -201-業績尺度の利用に見られる現状 275 ④ いる。 図表
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において,どちらかといえば工場生産に広くかかわりのある管理 尺度として,製造貢献差益,棚卸資産回転率,棚卸資産在庫日数,売価生 産額実績率,生産量実績率,生産組合せ差異,単位当り限界利益があるよ うに思われる。これらは,各工場の製造貢献差益を中心として,それとの 関連で工場実績を系統的に分析するためのものと思われる。 製造貢献差益が,果たして工場に固有の業績を過不足なく評価する指標 となりうるかどうかは疑問であろうが,その有用性は利用の仕方いかんに もよるであろう。各工場の製造貢献差益は,全社の営業利益のなかに位置 づけることは容易であると思われるし,これを計算要素的に分解すれば, たとえばつぎのような各工場の製造活動に固有の要素を含めた諸要素に細 分することができるであろう。 I r -F P I e s -h R L J e -4 1 J 4 9 l t r t b T t t h ? h i e f t e s t s -v i p i h e iE
- -202-製造貢献差益 香川大学経済論議 製品棚卸量の増減 (期首製品棚卸量一期末製品棚卸量〉 製品の総生産量 製品の生産量組合せ 単位当り限界利益 276 前記の諸尺度は,いずれもこれら製造貢献差益への影響要因に関連して おり,製造貢献差益の管理に有効に利用されるであろう。月次の棚卸資産 回転率や棚卸資産在庫日数の尺度は,製品棚卸量の増減を含めた棚卸資産 全体の管理に寄与するものといえるであろうし,日次の生産量実績率と週 次の売価生産額実績率は,当座的な操業管理によって製品の生産量計画を 達成しようとするものといえよう。週次の生産量組合せ差異や月次の単位 当り限界利益も,それぞれ,収益'性の有利な生産組合せやいっそう有利な 単位当り限界利益を促ずであろう。単位当り限界利益に影響するもっとも 大きな要素は通常直接費であろうが,それはすでに見たように,日次,週 次の経過的な管理で留意されているから,それを月次に集約して各工場の 貢献差益への効果を見るのが,この場合の総括指標としての単位当り限界 利益であると見ることができょう。 工場レベルでの管理はかなり煩璃ではあるが,ほぼ典型的といえる管理パ ターンが展開されているように思われる。そこでは,材料消費量,作業時間, 操業の当座管理を管理のベースとして日常的に実施しながら,月次において直 接費・間接費の要因別の管理,製造間接費の費目別管理あるいはそれらを総括 する製造貢献差益からの管理が行われているようである。工場レベルでこのよ うな系統的な管理を実施するため,製造活動にかかわる財務尺度のほとんどが この階層に集中的に報告されるようである。