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報文 リモートセンシングを利用した水田地帯における土壌特性の把握 小特集大規模水田農業の未来を支える技術 5 報 19 文 リモートセンシングを利用した水田地帯における土壌特性の把握 Visualizing the Spatial Variability of Soils in Paddy Fiel

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Academic year: 2022

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I. は じ め に

農林水産省は平成 25 年 11 月に「スマート農業の実 現に向けた研究会」を立ち上げ,平成 26 年 3 月に中 間とりまとめ,平成 27 年 7 月には 3 回目の研究会が 行われている1)。そこではスマート農業実現のための ロードマップの一部に,衛星や低空リモートセンシン グの活用があげられており,圃場管理システムや可変 施肥などへの利用を目指した,センシング技術,画像 解析技術の開発がすすめられている2)

以前より,リモートセンシング技術は,広域かつ面 的な情報を一度に収集できるという特性から農業分野 でもその利用が期待されてきたが,空間・時間の分解 能の低さやコストを含めたデータ入手・解析の困難さ などの課題があり,実用化は一部に限られていた。し かし近年,センサーの性能の向上に加え,米国におけ る規制緩和により,高い空間分解能画像が得られるよ うになり,さらには多数の衛星による高頻度観測で時 間分解能が向上しつつある3)。また,無人航空機

(UAV)による低空リモートセンシング技術開発が急 速に進み,衛星に比べると小面積ではあるが,リアル タイムに面的な情報の収集が容易になっており,今後 ますます発展していくと考えられる。

国内における今後の大規模水田農業を考えると,リ モートセンシング技術はリアルタイムの診断技術とし ての役割を果たす一方で,農地の生産性を維持してい くためのモニタリングや,基盤情報の整備を目的とし た情報収集の役割もよりいっそう重要になると考えら れる。本報では後者に着目し,土壌特性を把握するこ とを目的とした,リモートセンシングデータ利用につ いて,大規模水田輪作地帯における圃場レベルの研究 事例を紹介する。

II. リモートセンシングによる土壌特性の把

農業分野におけるリモートセンシング技術の実利用

の一つとして,土壌特性の把握が試みられてきた。

農耕地の土壌情報は農業生産における基盤情報である が,フィールドでの土壌調査ならびに試料の分析には 時間と労力を要し,実施する点数は限られる。リモー トセンシングデータの解析によって得られる情報は,

土壌調査や分析を効率化するとともに,このような点 データを補間し,面に広げる上で有効である。

土壌の反射特性を利用した土壌表層の腐植含量や水 分特性の推定は,国内でも以前から研究が行われてお

4)〜7),これらを応用して,衛星画像から推定された

腐植含量と土壌図や地形図を組み合わせた大縮尺土壌 図の作成8)も試みられている。また,作土の情報に限 らず,ランドサット TM データを用いて礫深度を推 定する9),ムギ作付け期と裸地期のイコノスデータを 解析し,浅い位置に出現する礫層により有効土層が制 限されているエリアを推定する10)など,リモートセン シングを利用した下層土の情報収集も試みられてい る。

III. 水田地帯における土壌特性のばらつき 国内の水田地帯では作業の効率化や低コスト化を目 指し,不整形・狭小な圃場,さらにはかつて 30 a 区画 に整備された圃場を合筆し,1 ha や,より大きな区画 化が進められている。大区画化によって大型機械の導 入が容易になり,目的が果たされているが,一方で圃 場内での地力ムラが報告されており11),12),場合によっ ては数十年経過しても作物生育に影響を及ぼしてい る。

筆者が調査対象とする茨城県の水田地帯は,小貝 川,大谷川,五行川の 3 本の川の間に位置し,農耕地 土壌図では主に灰色低地土が分布する。約 540 ha の うち 500 ha では 3 年 4 作(水稲−水稲−小麦・大豆)

のブロックローテーションが実施されており,大規模 に圃場整備が実施されてから約 20 年が経過している ものの,土壌特性のばらつきが原因で,一筆圃場内で 極端な作物生育ムラが生じる圃場が点在している(写

リモートセンシングを利用した水田地帯における土壌特性の把握

Visualizing the Spatial Variability of Soils in Paddy Fields by Using Remote Sensing

渕 山 律 子

(FUCHIYAMARitsuko)

中央農業総合研究センター リモートセンシング,GIS,地力ムラ,圃場整

備,大区画化,土壌情報

報 文

(2)

真-1)。特に転作時の生育ムラが顕著で,極端な場合 には収穫適期が圃場内でばらつき,収量や品質の低下 だけでなく,収穫作業に影響することもある。

このような生育ムラを解消し,収量や品質を向上さ せるためには,生産者レベルでの精密管理や土作り,

農業土木的な手法による有効土層の確保や土壌の均一 化,または地域レベルでの適地適作の実施など,いく つかの対応策が考えられるが,まずは,作物生育に影 響を及ぼす土壌特性のばらつき(地力ムラ)を把握す る必要がある。ここでは,対象地全域をカバーし,圃 場内を把握するために十分な空間解像度を得られるこ と,また,高額ではあるが,撮影を依頼し,必要な時 期のデータを取得できることから,航空機リモートセ ンシングにより,地力ムラの把握を試みた。

IV. 地力ムラをリモートセンシングで捉える 生産者が作付け経験に基づき地力ムラを把握する場 合,作物の生育ムラが大きな判断材料である。そこで 同様にして,作物生育時期のリモートセンシングデー タから,地力ムラの把握を試みた。

作物の生育ムラの評価には,赤波長と近赤外波長の 輝度値から算出される正規化植生指数(NDVI)を利 用した。経験的な指数ではあるが,農業分野での研究 の蓄積も多く,値が大きいほど,植物の量が多い,活 性が高いことを示す。ただし作物の生育ムラの要因は 土壌だけでなく,気象や病気,雑草などいくつか考え られる。NDVI の値だけでは要因分けすることはで きないが,土壌に起因する生育ムラは年次および作目 が異なっても同じような形状で生じると考えられる。

そこで,転換畑を対象に,表-1に示すデータを用い て,NDVI 画像の比較を行った。

NDVI を比較した結果,類似のばらつきが見られた エリアの一例を図-1に示す。図より,作目・時期が 変わっても同様の生育ムラが生じていることがわか る。このような生育ムラは実際に土壌に起因するのか

を確認するため,解析結果をもとに土壌調査を行っ た。

図-1に示す圃場のうち,一筆圃場内で NDVI の高 い(生育の良い)地点と,低い(生育の悪い)地点を 選出し,調査を実施した結果の一つを図-2に示す。

作土(18 cm)直下の土性に違いが見られ,NDVI の高 い地点では壌質であるのに対し,NDVI の低い地点で は砂礫質の土壌が分布していた。作土の理化学性には 大きな差はなく,一見均一に見えるが,作土直下に礫 層が存在すると保水力・保肥力が異なり,作物生産に 影響を及ぼすと考えられ,異なる時期・作目の生育ム ラと地力ムラが一致する結果であった。

V. 地力ムラとその要因

上述の結果より,複数の作物生育時期のリモートセ ンシングデータが,地力ムラの把握に有効であること が示唆される。しかし,対象地域における地力ムラの 主要因は,図-2のような砂礫質の下層土だけではな い。国内生産のほとんどが水田作付けである小麦と大 豆は,水田の特性から,湿害が生育阻害要因としてあ 農 業 農 村 工 学 会 誌 第 84 巻 第 3 号

Water, Land and Environ. Eng. Mar. 2016 20

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写真-1 一筆圃場内における大豆の生育ムラ

図-2 一筆圃場内の異なる地点の土壌断面(一例)

図-1 転換畑における作目・時期の異なる NDVI

(NDVI を生育ムラとしてとらえると,作目や時期が 異なっても類似の生育ムラが見られる。)

表-1 NDVI の比較に用いたデータ 撮影日 センサー 解像度 波長 作物 2009 年 5 月 9 日

ADS40 40 cm 赤・近赤外 小麦 2009 年 10 月 15 日 大豆

(3)

げられるが,対象地域も類に漏れず,湿害も生育阻害 要因の一つとなっている。そこで,地力ムラの要因を 区分するため,対象地域で主要因となる,圃場の排水 性の区分図と浅礫層分布図の作成についての取組みを 紹介する。

1. 排水性区分図の作成

リモートセンシングを利用した土壌水分特性に関す る研究事例は多く,可視光領域でも,土壌水分量が多 いほど反射輝度値が低く,少ないほど高くなることが 知られている。降雨後の土壌表面の水分量は排水性に よって異なると考えられるため,降雨後のリモートセ ンシングデータを用いた排水性の区分に関する取組み も報告されている。そこで対象地域内の排水性の区分 を目指し,予備試験的に降雨後のリモートセンシング データの Digital Number(DN)を相対的に 5 段階区 分した。データは表-1と同様のセンサーで 2009 年 4 月 6 日に取得し,水稲作付け前の裸地圃場の赤波長の DN を用いた。対象地域内に設置されているアメダス のデータでは,4 月 1 日から 2 日に 33 mm の降雨が あり,その後 4 日目のデータである。区分結果は

2008 年の大豆作付け期にモニタリングした土壌水分 の変化と一致する傾向にあり(図-3),排水性の区分 に利用できる可能性が示唆された。ここでは一時期の 赤波長の DN を単純に区分した結果を示したが,引き 続き作土の水分と DN との関係や,多時期の画像利用 などについて検討を行っている。

2. 浅礫層分布図の作成13)

河川の氾濫の影響を受けた低地土壌であることか ら,砂礫質で保水力・保肥力が低い土壌が分布する。

圃場によっては,図-2で示したように作土直下に砂 礫質の層(浅礫層)がある土壌とそうでない土壌が一 筆圃場内に混在し,極端な生育ムラが生じている。国 土調査によればかつては小貝川の氾濫によりできたと 考えられる微高地が点在し,小規模な蛇行流路の跡が 網状に分布していた14)。しかし現在では圃場整備に よって流路や微地形は改変されており,現状の,5 m メッシュ標高図や地形図などに基づく田面標高差や微 地形から土壌特性を判断することはできない。

国土地理院で発行されている地形図では,圃場整備 以前,畑や桑畑が広く点在していたことがわかる。そ こで,国土調査の記述にある砂礫質の土壌は,その性 質からかつて畑や桑畑として利用されていたと仮定 し,大豆作付け期の NDVI と圃場整備前の地形図を 重ねることにより浅礫層の分布域を推定した(図-4)。

図-3 赤波長 DN の 5 段階区分と土壌水分の変化

(上図:白の点線部分が対象。DN の大小と排水性が 関連するとすれば,結果から圃場内でも場所によっ て排水性が大きく異なる様子がわかる。下図:2008 年の大豆作付け時の A・B 地点における体積含水率 の変化。DN が低く,排水性が悪いと想定される地点 ではまとまった降雨の後,土壌水分がしばらく低下 しない。)

図-4 圃場整備前の地形図と大豆作付け期の NDVI

(国土地理院 1/25,000 地形図「下館」図幅より。圃場 整備前(1915 年)の地形図では,畑(畑・桑畑)が広 く分布している。畑では水田に比べて砂礫質な土壌 が分布していた可能性が高いことから,大豆作付け 期の NDVI の低い(生育不良)部分と,圃場整備前の 畑が重なる部分を浅礫層の分布図として推定する。)

(4)

条件を満たす 8 圃場の土壌調査の結果,作土直下に礫 層が出現し,解析結果と一致していた。情報が限られ ているため推測の域を出ないが,かつて,土壌特性が 異なり,おそらく標高も異なっていたのではないかと 考えられる圃場が,圃場整備により合筆され,標高を 均一にする際,有効土層が十分に確保されなかったこ となどが要因として考えられた。

各主題図には今後改良の必要があるが,たとえば,

排水性の区分図で湿に区分される場所と NDVI が低 い場所が一致する場合には湿害の可能性が考えられる し,排水性の区分図で乾に区分され,NDVI が低いと いう条件に加え,圃場整備前の地形図で畑の分布と重 なれば,保水力・保肥力の低さが要因だと考えられる など,複数の主題図の重ね合わせにより,地力ムラの 主要因の推察に役立つと考えられる。

VI. おわりに 情報の利用について

リモートセンシングデータの解析結果には,隔測・

非破壊で得られたデータの性質上大きな誤差が含まれ ることもある。ここで紹介した事例のように土壌表面 をセンシングする場合,耕起状態や作物残さ・雑草の 影響を受けることは,容易に想像できるだろう。ま た,浅礫層分布図のように既存情報と組み合わせる場 合には,組合せの条件や,組み合わせるデータの精度 などに影響される。そのため,現地での調査は重要で あり,結果のフィードバックや,異なる時期のデータ を追加・蓄積していくことにより,基盤情報としての 精度の向上が期待される。

このようなデータの性質を理解した上で利用すれ ば,リモートセンシングが地域や圃場の概要を把握す るための優れたツールであることに違いはなく,さま ざまなメリットがある。解析結果は図として示される ことから,表やグラフのデータに比べ,視覚的に訴え る効果がある。専門家以外の研究者や行政・農家を対 象とした説明や,情報共有にはこのような効果が役に 立つと考えられる。さらに,地域内での圃場の順位付 けなどには,圃場管理者の主観でなく,センシング データという客観性が役立つ場面もあるだろう。

今回の事例で作物生育に影響を及ぼしていた排水性 の良否や浅礫層の存在など,物理性に関する特性は通 常の圃場管理では改良が困難で,農業土木的な改良が 必要なケースが多い。生産性の向上のために,水田地 帯でさらなる大区画化や暗渠の施工といった改良が進 められる昨今,リモートセンシングや GIS を利用して 土壌情報を取り入れた効率的・効果的な改良・施工に つながることを期待する。

引 用 文 献

1) 農林水産省:スマート農業の実現に向けた研究会,

http://www.maff.go.jp/j/kanbo/kihyo03/gityo/g_

smart_nougyo/index.html(参照 2015 年 12 月 4 日)

2) 農林水産省:「スマート農業の実現に向けた研究会」検 討結果の中間とりまとめ,別添 2,p.5,http://www.

maff.go.jp/j/kanbo/kihyo03/gityo/g_smart_nougyo/

pdf/cmatome.pdf(参照 2015 年 12 月 4 日)

3) *岡成樹:最近の地球観測衛星の動向,航空と宇宙 730,pp.1〜8(2014)

4) 畠中哲也,塩崎尚郎,福原道一,宮地直道,齋藤元也:

ランドサット TM データによる畑地表土の腐植含量評 価,土肥誌 60(5),pp.426〜431(1989)

5) 志賀弘行,福原道一,小川茂男:ランドサット TM デー タによる湛水下水田の腐植含量推定,土肥誌 60(5),

pp.432〜436(1989)

6) 小川茂男,安養寺久男,福本昌人:分光反射率による土 壌の腐植量および土壌水分の推定,農土誌 57(6),

pp.5〜9(1989)

7) Hatanaka,T.,Nishimune,A.,Nira,R. an d Fukuhara,

M.:Estimationof available moisture holding capacity of uplan d soils using Landsat TM data,Soil Sci. Plant Nutr. 41,pp.577〜586(1995)

8) 丹羽勝久,清野伸孝,明石憲宗,菊地晃二:北海道十勝 管内の火山性土地帯における大縮尺土壌図の作成,土 肥誌 75(1),pp.69〜78(2004)

9) 畠中哲哉,西 宗昭,福原道一,新良力也:ランドサッ ト TM データを利用した十勝畑土壌の礫深度推定,土 肥誌 68(1),pp.30〜36(1997)

10) 丹羽勝久:作物生産力向上のための土壌図のアプリ ケーション 北海道十勝管内を例とした 2,3 の事例

,ペドロジスト 47(1),pp.46〜54(2003)

11) 鳥山和伸:フィールドから展開される土壌肥料学 新 たな視点でデータを探る・見る 1.大区画水田におけ る地力窒素ムラと水稲生育,土肥誌 72,pp.453〜458

(2001)

12) 関矢博幸,斎藤秀文,冠 秀昭,中山壮一,大谷隆二:

レベラー均平作業による合筆大区画水田圃場の地力ム ラ,日本土壌肥料学会講演要旨集 60,p.97(2014)

13) 渕山律子,太田 健,福原道一:赤外カラー空中写真と 基盤整備前の地形図を用いた浅礫層分布の推定手法,

土肥誌 82(2),pp.134〜138(2011)

14) 茨城県:土地分類基本調査(小山,古河),国土地図

(株),pp.25〜29(1986)

〔2016.2.9.受理〕

渕山 律子(正会員)

1980年 長崎県に生まれる

2005年 岡山大学大学院自然科学研究科修了 農研機構中央農業総合研究センター 現在に至る

農 業 農 村 工 学 会 誌 第 84 巻 第 3 号

Water, Land and Environ. Eng. Mar. 2016 22

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水田地帯における土壌特性の把握 渕山 律子

農林水産省ではスマート農業実現のためにさまざまな取組み がなされており,その中の一つに衛星や低空リモートセンシン グの利用があげられている。以前よりリモートセンシング技術 は農業分野での利用が期待されつつも,実用化は一部に限られ ていた。しかし,近年センシング技術やデータ解析技術の開発 が進み,今後,利用場面が拡大していくものと考えられる。リ モートセンシングにはリアルタイムの診断技術としての役割を 果たす一方,農地の生産性を維持するためのモニタリングや基 盤情報の整備を目的とした情報収集の役割などが期待される が,本報では,後者に着目し,大規模水田輪作地帯における圃 場レベルの解析事例を紹介する。

(水土の知 84-3,pp.19〜22,2016) リモートセンシング,GIS,地力ムラ,圃場整備,大区画 化,土壌情報

6. 大区画圃場における

RTK-GPS 測位を用いた圃場管理技術の実証 若杉 晃介・原口 暢朗・船生 岳人 川野 浩一・広田 健一・岸 恵純

近年,担い手への農地集積によって大規模・大区画圃場が多 くなっているが,そのスケールメリットを生かす営農体系の確 立には至っていない。そこで,高精度な 3 次元位置情報が得ら れる RTK-GPS 測位を用いた大区画圃場における精密な圃場 管理技術の効果について現地実証試験を行った。GPS レベ ラーは高低マップを確認しながら的確な運土が可能となるた め,レーザー制御のレベラーに比べて,同等の均平精度を維持 しながら約 4 割程度の作業時間を短縮することができた。ま た,GPS ガイダンスによる除草剤散布試験ではガイダンスの有 無によって重複散布面積が約 13%減少し,適切な薬剤散布が 可能となった。

(水土の知 84-3,pp.23〜26,2016) 大区画圃場,RTK 測位,GPS レベラー,GPS ガイダン ス,圃場均平,薬剤散布

7. 水田における暗渠管を利用した地下灌漑に及ぼす 下層土の透水性の影響

原口 暢朗・若杉 晃介

暗渠管を利用した地下灌漑では,管内に供水された用水は上 方に移動する必要があるため,下層土の透水性は地下灌漑の適 用を判断する要因となる。そこで,地下水位制御システム FOEAS が施工された地区の現地調査や地下灌漑時の漏水に係 る簡易な試算をもとに地下灌漑を行うための下層土の透水条件 を検討した。現地調査では地下水位や用水量,収量などから地 下灌漑の可否と透水性と地下水位の関係を調べた。また,試算 では地下灌漑時の降下浸透速度と用水供給速度の関係,および 地下水位維持に必要となる用水量を算出した。その結果,安定 した地下灌漑を実現する閾値の目安として,暗渠管埋設深の透 水係数が 1×10−5cm/s 程度であることを提示した。

(水土の知 84-3,pp.27〜30,2016) 地下水位制御システム,FOEAS,地下灌漑,土層,透水

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(水土の知 84-3,pp.33〜36,2016) 水生昆虫,オタマジャクシ,ジャンボタニシ,スクミリン ゴガイ,溶存酸素,水温,水深

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(水土の知 84-3,pp.38〜39,2016) ゲリラ豪雨,短時間雨量,排水対策,被害額,ピーク流量,

田んぼダム

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(水土の知 84-3,pp.40〜41,2016) 小水力発電,再生可能エネルギー,水車,二酸化炭素削 減,維持管理

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