Granulocyte colony-stimulating factor
および parathyroid hormone related protein
産生胃癌の 1 例
下松谷 匠
1)橋本 恭一
1)竹内 豪
1)松木 豪志
1)青山 諒平
1)松山 剛久
1)日並 淳介
1)久保田良浩
1)仲井 理
1) 1) 宇治徳洲会病院外科 症例は 72 歳の女性で,白血球増多,胸部異常陰影にて紹介となった.諸検査で肺癌合併の進行胃癌と診 断した.審査腹腔鏡にて肝表面に結節を認め,針生検で胃癌の肝転移と診断し化学療法を開始した.一時 腫瘍は縮小するも,経過中白血球は 46,500/μl,血清カルシウム値は 15.7 mg/dl と高値を示し,胃原発巣, リンパ節転移とも著明に増大していた.血清 granulocyte colony-stimulating factor(以下,G-CSF と略記), 血清 parathyroid hormone related protein(以下,PTHrP と略記)は上昇していた.噴門側切除,肝部分切除, 膵尾部・脾臓切除術を行った.免疫組織学染色で腫瘍細胞に G-CSF,PTHrP が陽性で,術後血清 G-CSF, PTHrPは低下した.胃癌において両因子の産生腫瘍であることを証明した報告はなく,本症例が最初であ ると考えられる.キーワード:胃癌,G-CSF,PTHrP
はじめに
Granulocyte colony-stimulating factor(以下,G-CSF と略記)産生胃癌はまれであり,1985 年に Obara ら1) に最初に報告され,急速に進行し予後不良との特徴を有する.また,副甲状腺ホルモン関連蛋白 parathyroid hormone-related protein(以下,PTHrP と略記)産生胃癌もまれであり 1993 年に Sato ら2)に報告され,高カ ルシウム血症を来す予後不良の疾患でとされている.今回,著者らは G-CSF および PTHrP 産生胃癌症例 を経験した.胃癌において同時に証明した報告はなく,本症例が最初であると考えられ,文献的考察を加 え報告する.
症
例
患者:72 歳,女性 主訴:特になし. 既往歴:高血圧,脂質異常症 家族歴:特記すべき事項なし. 現病歴:2018 年 11 月近医にて胸部レントゲン検査で右上肺野に結節影を指摘され,精査目的に当院に 紹介受診となった. 初診時血液検査所見:WBC 15,000/μl と上昇し,Hb 10.8 g/dl と軽度の貧血を認めた.白血球の左方移動 〈2020 年 9 月 16 日受理〉別刷請求先:下松谷 匠 〒 611-0041 宇治市槇島町石橋 145 番 宇治徳洲会病院外科 日本消化器外科学会雑誌.2021;54(3):173-183 doi: 10.5833/jjgs.2020.0024症例報告
は認めず,CRP は 5.47 mg/dl と軽度上昇し,血清カルシウム値は正常で腫瘍マーカーの上昇は認めなかっ た(Table 1).
画像検査所見:胸部レントゲンにて右上肺野に結節影が認められ,胸部 CT にて右上肺葉に約 21×17 mm 大の胸膜嵌入像伴う不整結節影が認められたが有意なリンパ節腫大は認めなかった.腹部 CT にて胃弓隆 部に腫瘤影を認め(Fig. 1A),腹腔動脈沿い(Fig. 1B)脾門部にリンパ節腫大を伴っていた(Fig. 1C). 上部消化管内視鏡検査にて胃弓隆部に 2 型胃癌が認められた(Fig. 1D).
Table 1 Laboratory data on admission
WBC 15,000/μl CRP 5.47 mg/dl Na 138 mmol/l
RBC 379×104/μl CPK 41 U/l K 4.4 mmol/l
Hb 10.8 g/dl AST 15 U/l Cl 102 mmol/l
Ht 32.7% ALT 10 U/l Ca 10.1 mg/dl
Plat 34.8×104/μl LDH 159 U/l TG 104 mg/dl
Neu 81% ALP 303 U/l HDL 38 mg/dl
stab 0% Ch-E 249 U/l LDL 91 mg/dl
seg 81% γ-GTP 31 U/l BS 118 mg/dl
mono. 5% T.bil 0.5 mg/dl
eosino. 2% amylase 33 U/l CEA 0.77 ng/ml
baso. 0% TP 7.7 g/dl CA19-9 <2.0 U/ml
Alb 3.4 g/dl AFP 2.69 ng/ml BUN 9.3 mg/dl CYFRA 0.7 ng/ml Cr 0.52 mg/dl Ferritin 173 ng/ml UA 3.8 mg/dl
Fig. 1 Abdominal CT and endoscopy. A: CT revealed a large gastric tumor in the stomach (arrow). B: CT showed lymph node swelling along the celiac axis (arrow). C: CT revealed lymph node swelling at the hilum of the spleen (arrow). D: Endoscopy showed a type 2 gastric cancer in the fornix of the stomach.
転移の検索のために行われた PET-CT にて右肺上葉 S2 に径 21 mm の結節性病変を認め集積の亢進 (SUVmax=4.1)を伴っていた(Fig. 2A).胃は弓隆部を中心に塊状の高集積(SUVmax=14.8)を認めた (Fig. 2B).腹腔動脈沿いや脾門部リンパ節にも集積を伴っていた(Fig. 2C). 肺生検では腺管形成少なく,核小体が明瞭で核形が不整であり,低分化腺癌が考えられた.免疫染色検 査では TTF-1(+),NapsinA(+),CDX2(−)で原発性肺癌の診断となった.肺腺癌で T1cN0M0,ステー ジ 1A3 と診断した. 胃生検では細胞はシート状に増殖し腺管形成は少なく,核は大小不同で,核小体は明瞭であり,低分化 型腺癌の診断で,HER2(−),TTF-1(−),NapsinA(−)となり,原発性胃癌と考えられた.以上より,肺 癌と胃癌の重複癌と考えられた. 高度進行胃癌のため審査腹腔鏡検査を行ったところ腹膜播種はなく洗浄腹腔細胞診は陰性あったが,肝 表面に小結節を認め針生検を行った.病理組織学的検査では低分化型腺癌を認め,CK7(+),Arginase1 (−),TTF-1(−),NapsinA(−),CDX2(−)となり,胃癌の肝転移と診断した. 肝転移を伴う Stage IV 胃癌の診断で,通院にて 1 次化学療法として SOX(S-1+oxaliplatin)療法[S-1 80 mg/m2/day 2週間内服,1 週休薬,oxaliplatin 100 mg/m2,day 1,3 週毎]3)を開始した.3 コース後の腹部 CT で胃原発巣,リンパ節転移とも縮小しており(Fig. 3A~C),上部消化管内視鏡検査でも腫瘍径は縮小し, 形態は 2 型から 1 型に変化していた(Fig. 3D).
継続して通院化学療法を行っていたが 5 コース終了後に食欲不振で外来を受診した.血液検査にて白血 球増多,高カルシウム血症を認め,精査治療目的に入院となった.高カルシウム血症に対しては輸液療法 を行い,ゾレドロン酸を投与した.
Fig. 2 FDG-PET: A: A lung tumor had moderate uptake of fluorodeoxyglucose (SUV=4.1). B: A stomach tumor showed a very strong signal (SUV=14.8). C: Lymph nodes along the celiac axis and splenic hilum showed abnormal uptake.
日本消化器外科学会雑誌.2021;54(3):173-183
再入院時血液検査所見:WBC 46,500/μl と上昇し,そのうち好中球が 81%(桿状核球 4%,分葉核球 86.5%)を占め,CRP は 7.0 mg/dl と軽度上昇しており,血清カルシウム値は 15.7 mg/dl と上昇していた. 血清 G-CSF は 493.3 pg/dl(~39.0)と上昇し,PTH intact 14.1 pmol/l(10~65)は正常で,血清 PTHrP は 13.7 pmol/l(~1.2)と上昇していた(Table 2).
再入院時の腹部 CT にて胃原発巣,リンパ節転移巣ともに著明に増大していたが肝転移は画像上認めな
Fig. 3 Abdominal CT and endoscopy after 3 courses of SOX therapy. A: CT showed decreases in size for the gastric tumor and metastatic lymph node. B: Lymph nodes along the celiac axis were not observed. C: Lymph nodes at the splenic hilum were also not observed. D: Endoscopy showed that the tumor had decreased in size and changed to a type 1 form.
Table 2 Laboratory data on re-admission
WBC 46,500/μl CRP 7 mg/dl Na 137 mmol/l
RBC 353×104/μl CPK 13 U/l K 3.4 mmol/l
Hb 11.3 g/dl AST 21 U/l Cl 97 mmol/l
Ht 34.3% ALT 14 U/l Ca 15.7 mg/dl
Plat 21.3×104/μl LDH 146 U/l TG 104 mg/dl
Neu 81% ALP 567 U/l HDL 56 mg/dl
stab 4% Ch-E 148 U/l LDL 66 mg/dl
seg 86.5% T.bil 0.43 mg/dl BS 147 mg/dl
mono 4% amylase 35 U/l
lymph. 5.5% TP 7.1 g/dl PTH intact 14.1 pmol/l
baso. 0% Alb 2.7 g/dl PTHrP 13.7 pmol/l
BUN 22.1 mg/dl G-CSF 493.3 pg/dl Cr 0.82 mg/dl
かった(Fig. 4A).また,右上肺葉の約 26×15 mm と大きな変化を認めなかった.白血球増多の原因とし て発熱はなく CRP の上昇は軽度で,血清 G-CSF は上昇していることより G-CSF 産生腫瘍を疑った.高カ ルシウム血症の原因検索として骨シンチグラフィ,副甲状腺シンチグラフィを施行したが明らかな集積は 認めず(Fig. 4B, C),PTHrP 産生腫瘍による腫瘍随伴症候群と考えられた.右肺癌の大きさが増大してお らず症状を伴わないこと,胃癌による腫瘍随伴症状が出現していること,胃癌に対する一次化学療法が不 応の場合の二次化学療法の生存期間延長効果も限定的であること,胃癌に対して conversion 手術も可能で あることなどを考慮し胃の切除術を行う方針となった.入院後血清カルシウム値はある程度コントロール できたが,白血球数は手術直前は 62,500/μl まで上昇した. 入院 21 日目に手術を施行した.胃体上部にから弓隆部に主に胃内腔に発育する径約 10 cm の腫隆を認め 漿膜浸潤を伴っていた.小彎側の腫大したリンパ節は肝左葉 S3 区域に直接浸潤していた.肝臓は肉眼的 にも触診上も腫隆は認めず,腹膜播種も認めなかった.ステージは ycT4bN+H0P0 で ycIVA と診断した. 噴門側胃切除 D2 郭清,肝左葉部分切除,膵尾部切除および脾臓摘出術を施行し,ダブルトラクト法で再 建した.手術時間 5 時間 47 分,出血量 880 ml であった. 術後は白血球数は低下し,血清カルシウムも安定した(Fig. 5).術後の G-CSF 79.8 pg/dl,PTH-rP <1.1 pmol/lと低下を認めた. 切除標本所見:胃弓隆部に径約 12×7 cm の腫瘍を認め漿膜浸潤を伴っていた.胃小彎のリンパ節が腫大 し肝外側区域に浸潤していた(Fig. 6).
切除標本の組織像所見:poorly differentiated adenocarcinoma,solid type,ypT4b(liver),INFb,Ly1a, V1a,pPM0,pDM0,ypN3a(11/45),Cy0 で ypStage IIIc であった.化学療法前に腫大していた脾門部のリ ンパ節には組織学的に転移を認めなかった.胃原発巣では G-CSF 染色,PTH-rP 染色はいずれも陽性であっ
Fig. 4 Abdominal CT, MIBI scintigraphy and bone scintigraphy after readmission. A: Abdominal CT showed that the gastric tumor and metastatic lymph node had rapidly increased in size. B: MIBI scintigraphy showed no abnormality. C: Bone scintigraphy also showed no abnormality.
日本消化器外科学会雑誌.2021;54(3):173-183
た(Fig. 7).リンパ節転移巣では G-CSF 染色は陰性であったが PTHrP 染色は陽性であった.また,K-ras codon12の変異を認めた.
術後経過:術後 1 か月目の CT にて多発肝転移認め(Fig. 8),2 次治療として paclitaxel-ramucirumab 療 法[paclitaxel 80 mg/m2 day 1,8,15+ramucirumab 8 mg/kg,day 1,15,3 週毎]4)を開始した.計 5 コース施 行し比較的病勢はコントロールできていたが,徐々に全身状態が悪化し術後約半年で永眠した.また,術 後経過中も右肺癌の増大は認めなかった.
考
察
G-CSF産生腫瘍は 1977 年 Asano ら5) によって証明されて以来さまざまな悪性腫瘍で報告されている.G-CSF産生腫瘍の診断基準は,①他に原因のない著明な白血球の増多,②血清 G-CSF 値の上昇,③腫瘍切除
Fig. 5 Clinical course. WBC counts and serum calcium decreased to the normal range after surgery. WBC, white blood cell; SL, staging laparoscopy; OP, operation; SOX, S1+oxialiplatin.
Fig. 6 Macroscopic findings of the resected specimens. The stomach tumor was 10 cm in diameter.
により白血球の減少および G-CSF 値の低下,④腫瘍組織における G-CSF 産生の証明,⑤細胞培養,ヌー ドマウス移植による造血因子産生の証明,などと提唱されている6).自験例では胃切除術前に白血球は 62,500/μlまで上昇し,血清 CSF 値は 493.3 pg/dl と上昇していた.胃切術後,白血球は低下し,血清 G-CSF値は減少した.免疫組織染色にて切除した腫瘍細胞内に G-CSF を証明することができ,G-CSF 産生胃 癌と診断した.また,経過中肺癌の大きさはほとんど変化せず,G-CSF,PTHrP の変動と連動しなかった
Fig. 7 Microscopic findings of the resected gastric tumor. A: HE staining showed diffuse infiltration of tumor cells (×40). B: HE staining showed pleomorphic tumor cells (×200). C: Cancer cells were partially positive for G-CSF expression (×200). D: Cancer cells were positive for PTHrP expression (×200).
Fig. 8 Abdominal CT showed multiple liver metastasis at one month after surgery.
日本消化器外科学会雑誌.2021;54(3):173-183
ため肺癌から産生されたものではないと判断された.本例では胃原発巣は陽性であったがリンパ節転移巣 陰性であった.G-CSF 産生腫瘍の免疫組織学的陽性率は 74%程度と報告されており7),これは G-CSF 蛋白 は turn over が早く,細胞内貯留時間が短いことが理由と考えられる8).G-CSF 産生腫瘍における白血球増 加の特徴としては多くの報告例で発熱や CRP の上昇を認めている9).Suzuki ら10)は G-CSF 産生腫瘍は IL-1 や IL-6 も同時に産生し,こうした炎症性サイトカインにより発熱がじゃっ起されると報告されている.白 血球数自体でなくサイトカイン産生が腫瘍随伴症候群に関連していると思われる. G-CSF産生腫瘍は未分化癌,扁平上皮癌,腺癌の順に多く,原発としては肺,膀胱,胃,の順に多いと 報告されている11).本邦の G-CSF 産生胃癌の報告は,1985 年の Obara ら1)による発表が最初であり,EIA 法による G-CSF 濃度の測定や,抗 G-CSF モノクローナル抗体を用いた免疫染色法が確立され,GCSF 産生 腫瘍の診断が簡便になり,症例報告も増えてきた12).江藤ら13)は G-CSF 産生胃癌の本邦報告例 27 例をま とめている.それによると性別は男性が多く,年齢は 45~92 歳と幅が広い.各症例の白血球数は 11,800~ 80,000/μlで,平均 37,460/μl であった.予後は極めて不良で,死亡例は発見後 3 週から 8 か月,平均 4 か月 で死亡しており,死亡例 14 例中 10 例に肝転移を認めた.また,化学療法を施行した症例も早期死亡が多 く,特に肝転移症例には化学療法の効果は乏しいとのことであった.自験例でも術後早期に多発肝転移が 出現し,paclitaxel-ramucirumab 療法を行ったが,約 5 か月にわたり病勢をコントロールしつつ化学療法を 行うことができた.G-CSF 産生による白血球増多作用は化学療法による骨髄抑制に対し相殺する効果があ り,また ramucirumab の腫瘍血管新生抑制作用は進行の速い G-CSF 産生胃癌に対し効果が期待できる可能 性があると思われる. 悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症は,腫瘍随伴症候群の一つであり,腫瘍随伴体液性高カルシウム血症 (humoral hypercalcemia of malignancy;以下,HHM と略記)と局所性骨融解性高カルシウム血症(local osteolytic hypercalcemia)に分類される.その 70~80%が HHM であり,主たる原因物質が副甲状腺ホルモ ン関連蛋白 PTHrP と考えられている14). PTHrPを産生する癌種は,頭頸部癌,食道癌,肺癌など扁平上皮癌に多いほか,乳癌,卵巣癌,胆囊 癌,膵癌などの腺癌などさまざまな悪性腫瘍で産生されることが知られている.PTHrP 産生胃癌は Sato ら2)により 1993 年に初めて報告されて以来いくつかの報告がある15)16).林ら17)は PTHrP 産生胃癌 11 例の 本邦報告例を集計しており,発見時すでに進行している症例がほとんどで,Stage は 11 例中 9 例が IV で あった.病理組織型は por が 10 例,muc が 1 例であった.治療は対症療法,化学療法,手術が行われた が,その予後は極めて不良で Stage IIIb の 1 例以外,治療が開始した後も腫瘍は急速に進行しており,手術 を行った 2 例も早期に死亡している.また,腫瘍進行による HHM による症状で積極的治療を介入できな くなることも PTHrP 産生胃癌の予後を不良にしている要因と思われる18). G-CSFと PTHrP を同時に産生する悪性腫瘍の報告は肺癌19),食道癌20),腎盂癌21),胆囊癌22),肝内胆管 癌23),膵癌24)などで散見され,いずれの癌種においても進行が速く治療に抵抗性で予後不良であった.1950 年から 2019 年の期間において PubMed で「gastric cancer」,「G-CSF」,「PTHrP」を,1964 年から 2019 年の 期間において医学中央雑誌で「胃癌」,「G-CSF」,「PTHrP」をキーワードに検索したところ,G-CSF と PTHrPの両因子を産生する胃癌の報告は 1 例も認めなかった.
G-CSFおよび PTHrP を産生する腫瘍細胞は相互の関連が指摘されており,K-ras codon12 の変異を有し ているとの報告もある25)26).本症例でも K-ras codon12 の変異を認めた.K-ras 遺伝子変異の頻度は癌種や 人種により異なっている27)28).K-ras 遺伝子変異は癌遺伝子の一つであり,変異によりいくつかの下流シグ ナル伝達経路の活性化が生じ,腫瘍増殖,転移の形成,血管新生などに影響している.腫瘍の PTHrP の産 生が K-ras 遺伝子変異により誘導されているという報告もある29)30).また,異常な RAS のシグナル伝達が G-CSF産生を導いているという報告もある31)32).つまり一つの遺伝子変異がその下流で G-CSF 過剰発現, PTHrP過剰発現を誘導している可能性を意味し,腫瘍の増殖,進展,転移に関連したシグナルを誘導し予
後不良に関連している可能性があると思われる.シグナル伝達の程度により白血球増多や高カルシウム血 症などの臨床症状を出現させない程度の G-CSF や PTHrP を産生する腫瘍の存在が推測される.本症例は G-CSF産生胃癌,PTHrP 産生胃癌というより,G-CSF 高産生胃癌,PTHrP 高産生胃癌と呼ぶべきかも知れ ない. G-CSFと PTHrP 産生胃癌を経験した.自験例では術前両因子が上昇しており切除後低下した.免疫組織 染色も陽性であり,両因子の産生腫瘍であることが証明された.胃癌において同時に証明した報告はなく, 本症例が最初であると考えられる. 本論文の要旨は第 45 回京都医学会(2019 年 10 月,京都)にて発表した. 利益相反:なし
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Gastric Cancer Producing Granulocyte Colony-Stimulating Factor
and Parathyroid Hormone-Related Protein
Takumi Shimomatsuya
1), Kyoichi Hashimoto
1), Gou Takeuchi
1), Goshi Matsuki
1),
Ryouhei Aoyama
1), Takehisa Matsuyama
1), Junsuke Hinami
1), Yoshihiro Kubota
1)and
Osamu Nakai
1)1) Department of Surgery, Uji-Tokushukai Medical Center
A gastric tumor producing granulocyte colony-stimulating factor (G-CSF) is a rare and aggressive tumor, and a tumor producing parathyroid hormone-related protein (PTHrP) is also rare. Here, we report the first case of gastric cancer with production of GCSF and PTHrP. A 72-year-old woman was referred to our hospital because of leukocytosis and a chest abnormal shadow. A chest CT scan demonstrated a right lung tumor and a bronchoscopic biopsy showed adenocarcinoma. Primary lung adenocarcinoma was diagnosed by immunohistochemistry. Gastric endoscopy revealed a type 2 tumor at the gastric fornix. Endoscopic biopsy showed poorly differentiated adenocarcinoma. Staging laparoscopy revealed a tumor on the surface of the liver and needle biopsy led to diagnosis of liver metastasis from gastric cancer. The patient was started on S-1 and oxaliplatin (SOX). She visited the hospital because of general malaise and appetite loss in the course of chemotherapy. Laboratory data showed severe leukocytosis and hypercalcemia. The serum G-CSF level was high (493.3 pg/dl, normal <39 pg/dl) and the serum PTHrP level was also high (13.7 pmol/l, normal <1.2 pm/l). The patient underwent proximal gastrectomy accompanied by D2 lymphadenectomy combined with partial resection of the lateral segment of the liver because of direct invasion. The serum PTHrP and G-CSF levels normalized after surgery. Immunohistochemical examination of the gastric cancer tissue showed focal staining for G-CSF and PTHrP in the cytoplasm. This is the first published case of gastric cancer producing G-CSF and PTH.
Key Words: gastric cancer, granulocyte colony-stimulating factor, parathyroid hormone-related protein
[Jpn J Gastroenterol Surg. 2021;54(3):173-183] Reprint requests: Takumi Shimomatsuya Department of Surgery, Uji-Tokushukai Medical Center
145 Ishibashi, Makishima-cho, Uji, 611-0041 JAPAN
Accepted: September 16, 2020
© 2021 The Japanese Society of Gastroenterological Surgery
日本消化器外科学会雑誌.2021;54(3):173-183
G-CSFおよび PTHrP 産生胃癌