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平均=分散平面と資産評価理論の検証

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Academic year: 2021

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(1)

平均=分散平面と資産評価理論の検証

堀 本 三 郎 著

(2)

滋賀大学経済学部研究叢書第

3

9

平均=分散平面と資産評価理論の検証

堀 本 三 郎 著

(3)

リスクとリターンというテーマは,近年の経営財務論においてその中核をなす 理論として構成されてきた。資金繰りの財務管理と決算データを利用しての経営 分析から,資本市場における企業評価と投資決定へと,その内容をシフトさせる エンジンとして役割を果たしてきた。その視点は,現在の企業の財務状況にある のではなく,将来の不確実な利益流列もしくはキャッシュ・フロー,すなわち, まさに将来への企業経営政策に伴って生ずるリスクとリターンを如何ように評価 するかということに焦点を充てたものであった。 そこにおいては,資本市場における投資家行動を基準とした経済学的アプロー チ(不確実性下の経済学)が主流をなし,マーコピッツに始まる平均=分散アプロ ーチによるポートフォリオ理論もその一角を担い,ポートフォリオの幾何学的表 現の容易さもあり,平均=分散平面上における分析は一般的に容認されるものと なった。不確実な収益の分散をリスク尺度とするこうしたアプローチは,企業評 価(株式価格付け)に影響するリスク,また影響しないリスクが存在し,前者につ いては,市場ポートフォリオとの共分散で測られることを明らかにした。 そうした理論的成果を踏まえて. 1960年代中頃から,株式市場に上場されてい る銘柄を対象にした,株式収益率データを用いての資本資産評価理論(CAPM)の 検証が様々な角度から行われ,いくつかのタイプの検証結果が検討されてきた。 また,新たな投資技法としても注目され,リスク尺度となるベータ値の計測は, 学内外において多くの広がりをもたらすこととなった。 1970年代後半,ロールはそうした研究に冷水を浴びせる,いわゆる『ロールの 批判

J

をジャーナルに掲載した。彼の主張は,観測される市場ポートフォリオが すべての危険資産から構成されたものでなければならない,ということであっ た。したがって,株式市場に上場された危険資産からなる代理市場ポートフォリ オでは,単なる数学的関係を検証したものか,リスクとリターンの関係式を測定 したものか判断できない,という主張を重ねた。 本書は,そうした『ロールの批判

J

に対してささやかな抵抗を試みたものであ

(4)

る。とりわけ,危険資産数の増加とともに平均=分散平面上における効率的フロ ンテイアがどのように変化していくかに着目した。そして,漸近的無裁定条件が 成立するとき,タンジェンシー・ポートフォリオのシャープメジャーが収束する ことを確認した。すなわち,危険資産に対する適度な観測により,近似的にリス クとリターンの関係式を測定することが可能となることがわかった。それらの議 論は,第3章から第5章において展開されている。 第6章は,旧来のCAPM検証方法について,そのシナリオを精査したもので ある。近年,条件付CAPMそしてFama& Frenchの3ファクターモデルの計測 が主流であるが,

i

簡単さ

J

にメリットがある無条件CAPMも今後の研究対象と して続いていくものと考えられる。現実データへの説明力を求めてモデルが複雑 化し,新たな推定法が提案されていくのが計量分析の常であるが,骨太の計測を 求めるならば,簡単さと頑健さは大きな魅力であるo 第7章は,漸近的裁定評価理論(APT)を平均=分散平面上で議論するとき,ど のような結論が得られるかについて述べたものである。第2章は,有効フロンテ ィア上のポートフォリオについて,すべての危険資産に対して正の投資比率を有 するポートフォリオが存在するか否かについて,その簡単な判定法を記したもの であるO 本書は,新たに書き上げられたものではなく,既発表もしくはメモを再掲した 形で構成されている。第2章は以前の未発表メモを掘り起こしたものであり,第 3章は,

r

危険資産数N,N+ 1の最小分散ポートフォリオ投資比率.J(彦根論叢第 253・254号)に,例示の部分を加筆したものであり,第4章は, rタンジェンシ ー・ポートフォリオの振舞い

H

彦根論叢第311号),第 5章は,

r

代理市場ポート フォリオの妥当性.J(彦根論叢第332号),第6章は, rCAPMの検証モデルj(南山 経営研究13巻 2号),第 7章は,

r

平均一分散平面上における裁定評価理論j(彦根 論叢第323号)を,ほぽ同じ内容で再掲したものである。 小冊子とは言え,本書の上梓は多くの方々の直接・間接の御教示に負うところ が多い。とりわけ,飯原慶雄先生には,経営財務論に関する多くのことを教え頂 いた。また,南山大学での研究会において,山田珠夫先生,園村道雄先生,沢木 勝茂先生,堀彰三先生,加藤英明先生,吉田稔先生達との議論は懐かしい思いが

(5)

え頂いた伊藤宣生先生,第4章の証明に際しご助言頂いた中野裕治先生そして多 くの部分において支援頂いた村松郁夫先生にも感謝致します。多くの先生方の激 励にもかかわらず,ご期待に沿える内容となっているかについては心許ない部分 も在るやも知れない。その点については御容赦お願い申し上げるとともに今後の 期待と御願い致すものであります。最後に,愚劣な弟子を暖かく見守って頂いた 恩師横山和典先生には,公私ともに感謝の念を申し上げます。 平成

1

6

2

月吉日

(6)

目 次

はしがき 第1章 平均=分散平面上におけるいくつかの特性 I はじめに-H 最小分散フロンテイア...・H ・...

E

タンジェンシー・ポートフォリオ…...・H ・....…・・・・…...・H ・...…・・…

5

第2章 正の投資比率を有する効率的ポートフォリオ I はじめに...・H ・..………・ー………...・H ・...…・・・…・・…・…9

H

正の投資比率を有する条件………...・H ・H ・H ・...・H ・..…...・H ・..……

1

0

E 例示……...・H ・H・H ・...・H・...・H ・...・H ・...・H ・H ・H ・..…...・H・..……15 第3章 危険資産数

n

n+

1の最小分散ポートフォリオ投資比率 I はじめに・…・-…-…...・H・...…・・…...・H ・..………...・H ・....・H ・"'19

E

最小分散ポートフォリオ………...・H・..…...・H・...・H ・...・H・

"

2

0

E 例示…...・H・..……...・H ・..…………...・H ・..…...・H ・...・H・..…………26

N

おわりに………...・H・..…...・H ・..…………...・H・H ・H・..……

2

9

第4章 タンジ工ンシー・ポートフォリオの振舞い I はじめに…...・H ・...・H・H ・H ・...・H ・・・…・・・…....・H・...・H ・・・…'33 E シャープの尺度…...・H・...・H ・...・H ・...・H ・...・H ・...・H ・...・H ・"36 E 危険資産数nと(n

+

1)の効率的フロンティァ・H・H ・...・H ・..……39 1.効率的フロンテイアの幾何学的類型……...・H・...・H ・...・H ・"39 2. タンジ、ェンシー・ポートフォリオのシャープの尺度...・H ・..…41

3

.

漸近的無裁定...・H・...・H ・H ・H ・...・H ・....・H ・...・H ・...…H ・H・...・H ・

"

4

2

N

シミュレーション実験...・H・H ・H ・...・H ・..…...・H ・...・H ・...・H・..…45

(7)

5

章 代 理 市 場 ポ ー ト フ ォ リ オ の 妥 当 性 I はじめに…ー…・・・・・・・……・・・…...・H ・...・...……・・…・・…・・・・…...・H ・..51 II 1ファクターモデル・・・…・…・・………・・・…・・・………・・……・…・・・・…..52

r

n

Kファクターモデル…・・・・…...・H・..…・・…・………...・H・...…..56 W おわりに...・H・...・H ・..……...・H ・..………...・H ・..…...・H・..59 第6宣言 CAPMの検証モデル I はじめに...・H・・H ・...…...・H ・...…・・……・…・・…....61 I I CAPM理論と検証モデル ・・…・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・63 1. CAPM理論…...・H ・...・H・...・H・-…H ・H ・-…...・H・-…63 2.旧来の CAPM検証モデル....・H ・-…H ・H・....・H ・...・H・...・H ・...65 3.株式収益率データと CAPM・....・H・-…H ・H・...…...・H ・-…..67

r

n

CAPMと検証モデルのギャップ … …H・H ・-・・…・・……H ・H ・-…..71 N CAPM検証モデル・・……H ・H ・-…H・H ・..…・…....・H・...・H ・...・H ・-…・74

V

おわりに...・H ・..……...・H ・H ・H・..………...・H・...・H ・...・H ・H ・H ・..…

7

8

第7章 平 均 = 分 散 平 面 上 に お け る 裁 定 評 価 理 論 I はじめに・・………...・H・...…...・H ・…....・H ・-……...・H・...……...81 E 裁定評価理論...・H ・...・H ・..……・…....・H ・…...・H ・...・H ・...・H ・...・H ・.81 皿 漸近的平均=分散平面…・・・…...・H ・...・H ・....・H ・...…...・H ・-…H・H ・.84 W 漸近的有効フロンテイア…...・H ・...・H ・...・H ・...・H ・H ・H ・...・H ・..86 V おわりに...・H ・...・H ・..…・…...・H・..………...・H・...・H ・...・H ・..…..90

(8)

1

章平均=分散平面上における

いくつかの特性

I

はじめに

近年の経営財務理論において,リスクとリターンの分析は最も主要なテーマの ひとつであった。とりわけ、 Markowits[ 4

J

、Tobin[9

J

らの提唱による平均= 分散分析は多くの研究者の注目するところとなり,彼らの研究を受けての, Sharpe [ 8

J

L

i

ntner [ 3

J

, MossIn [ 6 ]らによる資本資産評価理論(Capital Asset Pricing Model : CAPM)は,その後の理論および実証研究の礎とされてきた。 いくつかの間題を含んではいるものの,そうした平均=分散分析も多くの研究 者の共有物となり,テキストブックの多くの紙面を割いてその説明がなされてき た。理解の容易さと平均=分散平面上における直観的叙述の可能性が最大の利点 であった。 平均=分散平面上における数学的展開を試みた論文に,まず, Merton[ 5

J

が 挙げられるであろう。その後,効率的フロンテイアの数学的特性について記した 論文としてかの有名な Roll[7

J

がある。ロールは,資本資産評価理論と同じ形式 のリスクとリターンの線形関係式が,単なる数学的関係式としても導出できるこ とを示した。また,効率的フロンティア(ポートフォリオ)の特性,その他の問題 についても詳述している。いっぽう,和書の文献については,池田[lO

J

において 詳解がなされている。 本章においては,これらの結果を再確認するとともに,本書で用いられるいく つかの特性について記すことにする。

E 最小分散フロンティア

いま ,n 個の危険資産の投資収益率11ベクトルRは,平均μ(nX 1),分散共 分散行列V(nxn)の正規分布に従うものとする。すなわち (1.1) R-N(μ, V)

(9)

を仮定するo n個の危険資産からなる任意のポートフォリオ丸を考える。空売りも認めら れるものとする。各危険資産の投資比率ベクトルをxとするとき J

=x'R

であり,その期待値μpと分散

d

は μρ

=x

μ

σ

j=x'Vx

と表される。 ポートフォリオの期待値水準が与えられるとき,最も分散が最小となるポート フォリオの投資比率xは, l'= (1,1,…,1)とするとき (1.

2

)

m

i

n

{

x

'

V

x

I

x

'

.

μ

=m

x

'

1

=

1

1

の問題を解くことによって得られる。 Vを非特異とするとき,その解

x

*

は (1

.

3

)

x*=V-1

(

μ1)A-1

(

7

)

と与えられる。ここで (P Q ¥ (1.4) A =

'

_

~

I

¥Q S J

P=

μ

'

V

-

1

u

.

Q

=

μ

'

V

-1

1

S = 1

'

V

-1

1

であり, μ と1は 1次独立であるとする。 最小分散ポートフォリオの投資比率が(1.3)式で与えられるとき,そのポート フォリオの標準偏差は (1.5)

ι=./

一一1M

(P-2Qm+Sm')

V PS-Q

ー と計算される。 縦軸にポートフォリオの期待値

m

を,そして横軸に標準偏差

σ

を採るとき, 最小分散ポートフォリオの軌跡を表す 0.5) 式は,

σ m

平面上において図1 のように,双曲線として描かれる。 1 )投資収益率=(期末における危険資産の価格) (期首での危険資産の価格)と定義される。こ こで,期末の価格は正規分布に従う確率変数であるものと仮定される。この定義式から1を引 いた値(正味収益率).それを100倍したパーセント表示で定義されることもある。

(10)

第1章 平均=分散平面上におけるいくつかの特性 3 図 1 m Q

5

r

-

-

-

1

司、‘

d

司‘・‘

-~

(J そして,双曲線の上半分の部分を効率的フロンテイアと呼び,そのフロンティア 上のポートフォリオは効率的ポートフォリオと呼ばれているO また,双曲線の漸 近線は ギ ﹂ 晶 れ 一2 1 す 一 Q 一 理 三 一 S 院 E 丙 一 を / u v 式 + 一

Q-sω

=

ι

m

れ ら で 加 え こ 与 こ ル ﹂ _Sm-QTT-l ,P-Qm (1.6) X .一一一一一τy-lμ+一一一一τy-11 事 PS-Q2' ~ PS-Q' となり ,m =Q/Sのとき (臼1.

7

粍九XX日CM仰MV九 また ,

m

=P/Qのとき (1.8) XQ=

y-lμ も最小分散ポートフォリオであることがわかるO とりわけ, (1.7)式の投資比率

(11)

を有するポートフォリオを大域的最小分散ボートフォリオと呼んで、いる。 そして,任意の最小分散ポートフォリオは(1.7)式と(1.8)式で表される二 つの最小分散ポートフォリオの1次結合として表現されることになる。すなわち x*=yxcMv+(l-y)x" _P-Qm" Sm-Q

r

= PS-Q'-' nc一一;,~,S, 1 -

y

一一ーっ Q ~ PS-Q' であるO (1.5)式は,別な形で (1.9) x*=一-L-11(SV W-Q V11)m +(P V11-Q V W)│ PS 町 =bm+α と表すこともできる。ここで b=一一

τ

(

S

V-1u -

Q

V-11 ) PS-Q' (1.10) a =--L-3(P V11-Q V W) PS-Q である。 αは m=Oのときの最小分散ポートフォリオの投資比率であり,いっぽ う,b'Rは期待収益率1,分散S(PS -Q')の裁定ポートフォリオである。 (1.9) 式は第 2章において利用されるが,投資比率のノルムを計算するときに も利用可能である。危険資産数が増えるとき,十分に分散化されたポートフォリ オという概念も用いられる。その尺度は投資比率のノルムで定義され,それがO に近づくとき,十分に分散化されたポートフォリオと呼ばれる。 (1. 9) 式から明らかなように,最小分散ポートフォリオの投資比率の 2乗和 (投資比率のノルムの2乗)は (1.11) a 一 句D AU 一 & U m のとき,最小値 (1.

1

2

)

をとる。

(12)

第1章 平均=分散平面上におけるいくつかの特性 5 (1.6) 式の両辺に左側から V を掛ければ Vx.=~~-Q 一一←一一一目+一一一一一μ P-Qm 1 ホ PS-Q'I" • PS-Q' となり ,m宇Q/Sのとき (1. 13) Qm-P 4 • PS-Q' w r μ =一一一一- . Sm-Q -一一一一一一町x ~ Sm-Q'四 * =甲1+A VX* を得る。ここで ,cov(R, x'ホR)

=

VX*で、あるから (1.14)μ 甲+Acov(Ri, R*) という,いわゆる期待収益率に関する線形関係式を得ることができるO ここで, R*は最小分散ポートフォリオの収益率であるO 資産評価理論の関係式は ,R*を市場ポートフォリオの収益率である RMで置き 換えれば得られることになる。(1.14) 式は,線形関係式が市場ポートフォリオ との共分散をリスク尺度にしたときのみ得られるのではなく,最小分散ポートフ ォリオとの共分散との聞でも成立することを述べたものである。 Best & Grauer [ 1 ]においては, (1.13) 式を分散共分散行列 V と投資比率が 与えられるとき,ある甲と Aに対応して,その投資比率を有するポートフォリ オが最少分散ポートフォリオになるように期待収益率ベクトルを計算するために 利用している。本書においても,様々なシミュレーションを行うに際して,この 関係式をしばしば利用する。

E

タンジェンシー・ポートフォリオ

無危険資産が存在するとき,効率的ボートフォリオは無危険利子率とタンジェ ンシー・ポートフォリオ2lの1次結合によって表されることになる。以下では, 最小分散フロンティアの上半分のフロンテイア(効率的フロンティア)上のタンジ ェンシー・ポートフォリオを対象にして議論を展開する。したがって,無危険資 2 )平均=標準偏差平面上において.y軸上の無危険利子率から最小分散フロンテイアに接線を 描くとき,その接点上のポートフォリオをタンジェンシー・ポートフォリオと呼ぶ。接点ポー トフォリオとも呼ばれる。

(13)

産の利子率

J

もは,大域的最小分散ポートフォリオの期待収益率Q/Sより小さい ものとする。 図 2 μ ポートフォリオ σ タンジェンシー・ポートフォリオの投資比率XTonは, (1. 13) 式において, 甲=あとし 1'XT開=1を利用すれば, XTall 1 .,'''IVT-I[.._D-'(μ-Rrl) .,¥

V

】(μ

-R

.

.

r

1)

P-RrQ (1. 15) μ町 一 「 刷 Q-RrS ð;'__=~- ZR-

, +R;S Tan (Q-RrS)' と与えられる。 (1.15) 式より,タンジェンシー・ポートフオリオのシャープの尺度。加は (1.16)

九=年二

E

!

=jP-ZRrQ+附 U百

n

.

となるO

(14)

第I章 平均=分散平面上におけるいくつかの特性 7 興味ある関係式が報告された。任意のポートフォリオ九の期待収益率を的とす ると, (1.13)式より μρ=}る+ACov

(

R

p,

R

Ta.) が成立する。同様に μT酬=烏+.1σ

であるから,ポートフォリオpとタンジェンシー・ポートフォリオのシャープ の尺度の比は (1.24)

(ザ)/(可子

)

=

U

ω

u

t

RHn))

cov (Rp, RTa.) =p となり,両ポートフォリオの相関係数pに等しくなることが知れる。その値が 1に近づくにつれ,ポートフォリオpはタンジェンシー・ポートフォリオの近 傍に存在することが保証されることになる。

参 考 文 献

[ 1 ] Bes杭t,M.& R.Graue,r巴 19鮒8,5正 served Market Va1ue Weights, " Jouma1 of Finance, 40, 85-103.

[ 2 ] Kandel, S.& R.Stambaugh, 1987,勺nCorrelations and Inferences about

Mean -Variance E血ciency," Joumal of Financial Economics, 18, 61-90.

[ 3 ] lintner, .,]1965, "1b.e Va1uation ofRisky Assets and the Selection of悶sky Investments in Stock Portfolios and Capi句1Budgets, " Review of Econom-ics and Statistics, 47,13-37. [4] Markowits, H.M, 1952,“PorぱolioSelection, " Joumal of Finance, 7,77-91. [ 5 ] Merton, R., 1972“,An Ana1ytic Derivation of出eE血cientPortfolio Frontier, " Joumal of Financial and Quantitative Ana1ysis, 7, 1851-1872. [ 6 ] Mossin, J., 1966,“Equilibrium in a Capital Asset Market, " E氾onometrica, 35, 768-783

(15)

[ 7

J

Roll, R., 1977,“A Critique of the Asset Pricing Theory's Tests: Part 1, " Journal of Financial Economics, 4,129-176. [ 8 ] Sharpe, w., 1964,“Capital Asset Prices: A Theory of Market Equilibrium under Conditions of Risk, " Journal of Finance, 19,425-442. [ 9

J

Tobin,].,1958,“Liquidity Preference as Behavior Toward Risk, " Review of Economic Studies, 67, 65-86. [10J 池田 昌幸, 2000,金融経済学の基礎,朝倉書庖

(16)

2

章 正 の 投 資 比 率 を 有 す る

効率的ポートフォリオ率

I はじめに

9 資産収益率の平均ベクトルと分散共分散行列が与えられるとき、平均一標準偏 差平面上において最小分散ポートフォリオもしくは効率的(有効)ポートフォリオ を計算することが可能となる。 その際,実証分析家にとって興味あることのひとつは,正の投資比率を有する 効率的ポートフォリオはどのような条件のもとでその存在を確認することができ るのであろうかということであった。何故なら,資本資産評価理論はすべての危 険資産の総価値額に対する各危険資産の価値額を投資比率とする市場ポーフォリ オが効率的ポートフォリオであることを予定しているからである。少なくとも正 の投資比率を有する効率的ポートフォリオが存在すか否かについては,大きな関 心事であった。 当初,その投資比率が期待収益率ベクトルに依存しない大域的最小分散ポート フォリオの投資比率について.Roll [ 3

J

.

Rudd [ 5 ]そしてRoll& Ross[ 4 ]にお いて議論された。しかし,そこでの議論は分散共分散行列における条件であり, 期待収益率ベクトルを含んだ形の一般的結論にまでは至らなかった。そして, Green[ 2 ]において初めて,最小分散フロンティア上のポートフォリオで各資産 への投資比率がすべて正となるための必要十分条件が導出された。それは,期待 収益がOであり,かつ,すべての資産との相関が非負となる裁定ポートフォリオ が存在しない,という条件であった。この条件は,分散共分散行列の逆行列を必

*

筆者は1991年9月から約1年間カナダのSimonFraser UniversityのGrauer教授の下で勉 学する機会を与えられた。その際,本章の内容を英文にしたため持参した。本章の題目の問題 について,教授が関心を持っていたことは彼の論文内容から読み取れた。教授に本章の論文を 見て頂いたところ,彼から,ワーキングペーパーを手渡された。それが.Best& Grued 1

J

であった。

(17)

要としないという意味において魅力的なものであったが,そうした裁定ポートフ ォリオの非存在を証明することは,ある特殊なケースを除いて事実上不可能なこ とであった。 その後.Best& Gruer[ 1 ]は,危険許容度をパラメータとし,その値に着目す ることにより,正の投資比率を有する条件を導出した。本章におけるわれわれの アプローチはほとんど彼らと同ーのものであるが,より直裁的にその条件を導出 する。 われわれのアプローチは分散共分散行列の逆行列の計算を必要とするものであ るが,正の投資比率を有する最小分散ポートフォリオの存在もしくは非存在を容 易に確認することが可能となる。 E節において,正の投資比率を確認するための条件を導出する。そして,皿節 において,東京証券取引所第

1

部上場企業のうちの代表的企業

1

0

杜の投資収益率 データを用いて,正の投資比率を有する効率的ポートフォリオの有無を確認す る。

E

正の投資比率を有する条件

n個の危険資産が存在する。その収益率ベクトルRは平均μ,分散共分散行 列Vの多変量正規分布に従うものとする。いま,ポートフォリオの投資比率ベ クトルをxで表すとき,ポートフォリオの期待値水準 m に対応する最小分散ポ ートフォリオの投資比率は

(

2

.

1)

m

i

n

{

x

'

V

x

I

x

'

p.

=m. x

'

l

=

1

1

の問題を解くことにより得られる。第1章において導出されているように,その 投資比率f は (2.2)

x*=

I

(

S

V

-

1

p. -

QV-1

l

)

m

+

(

P

V

-1

l

-Q

V

-

1

p.)

I

PS-Q'

=bm+

α と与えられる。ここで (2.3)

b=

一,

PS

-Q"_. 1

~, (SV-ltL -QV-ll)

~

(18)

第2章 正の投資比率を有する効率的ポートフォリオ 11

a= 一」一一三 (SV~11

-

QV~l.tt)

PS-Q であり,効率的フロンティア定数については (2.4) P = μ 'V~lμ , Q= μ 'V~ll , S

=

1 'V-1l である。 (2.2) 式から知れるように,最小分散ポートフォリオの投資比率はポートフオ リオの期待値水準mの1次関数となる。各要素の関係においては (2.5) Xi*

=

bim + ai, i

=

1, 2,… ,n と表される。 図 1 m 図1にあるように,いま,横軸に

m

,縦軸にXj*を採れば, (2.5) 式の各iにつ ては,平面上に直線として描くことができる。 (2.3) 式より ,J'b= 0,であるから, (2.5) 式における biのうち,少なくと も1つは異符号である。すなわち,一般的には図 1における各直線の傾きがいく つかは正であり,いくつかは負になる。そして,縦にかかれた破線とそれらの直 線の交点がその期待値水準での最小分散ポートフォリオの投資比率を表してい るO このことから,投資比率がすべて正の状況がどのようにして図

1

に描かれる かは容易に判断される。すなわち,図 2における太線の部分に対応する期待値を 有する最小分散ポートフォリオの投資比率はすべて正となる。

(19)

本 x 図 2 m いま .b,宇

0

11を仮定し .

(

2

.

5

)

式 に お い て が =

0

となる mを

m

,と表すことに しよう。そして .b,> 0となる iの集合を 1. bj

>

0となるjの集合を

f

とする。 そして (2.6) m+ = max{m,.

ε

J} (2.7) m-= min{m,; jεj} とするとき,以下の命題1が得られる。 〔命題1

J

b,宇 Oの仮定の下で,正の投資比率を有する最小分散ポートフォリオが存在す るための必要十分条件は (2.8) m->m+ であるo 1) b,= 0のとき,資産iへの投資比率はmに関係なく一定値をとる。

(20)

第2章 正の投資比率を有する効率的ポートフォリオ 13 正の投資比率を有する最小分散ポートフォリオの存在を確認するためには,

(

2

.

3

)

式で表される bおよびαを計算し,つぎに, (2.5) 式における投資比率が Oと なる m;を求め, (2.8)式の成否を確認すればよいことになる。 図2に戻り,正の投資比率が与えられる期待値水準の両端である m+とm の 点に注目してみよう。二つの最小分散ポートフォリオについて,その点を通る直 線式に該当する資産の投資比率はOであり,その他の資産の投資比率はすべて正 からなっているポートフォリオであることが確認される。したがって,該当する 資産が除かれた

(

n-

1)個の危険資産からなる最小分散フロンテイアにおいて も,すべて正の投資比率を有する最小分散ポートフォリオが存在することにな る。以上をまとめれば,命題2が得られるO 〔命題2) n個の危険資産からなるすべて正の投資比率を有する最小分散ポートフォリオ が存在するとき,ある資産が除かれた(n-1)個の危険資産からなる最小分散フ ロンテイアにおいても,すべて正の投資比率を有する最小分散ポートフォリオの 存在を可能とするある資産が必ず存在する。 b;> 0の場合,b;<0の場合においてm;の採る値について場合分けが可能なの で,それについて記しておこう。いま ,V-1.u V-11の第i要素をそれぞれ, T}i, rP,.で表記すれば,b;宇 Oに対して Q甲;-P<t; Q 早,一(QS)φ,h . PS

m;=

s:ぁ -

Q

=

T;

S ぁ一 (QS)

<

T

;

'

.

, h

.

=

-

-

Q

-

.

-

>

1 と表される。 いま ,Q>Oを仮定する。このとき わ 0∞ め >

(~)<Þ;

であるから,仇が負 0,正により ,miの値の範囲に以下の 3つのパターンが 考えられる。すなわち

(21)

x 事

(

i

)

r

t

o

>

0 二~mó<sQ

1

/

m

m

x*

(

)

i

i

r

t

o

=

0 二~mó= 皇

S

/

I

m, m x 事

(

i

i

i

)

o

<

0 二~mó> 否Q

....-m である。いっぽう b

o

<

0 ∞恥<(~)仇

のとき,同様にして x*

(

i

v

)

ム>0

斗 m,

>li

Q ¥ ¥ F m x*

(

v

)

o

=

0 二~mó= 皇

S m,l ¥ ¥ m

(

v

i

)

<0

キm

<3

m と場合分けされる。

(22)

第2章 正の投資比率を有する効率的ポートフォリオ 15 例えば.(2.6) 式及び (2.7) 式において定義されている m+及び、m がそれぞ れ(i )及び、(iv)であるときは,大域的最小分散ポートフォリオの投資比率はすべ て正となる。この点については.Roll & Ross[ 3 ]そしてRudd[4 ]において議論 されてきた。それ以上に関心があるケースは .m+及び、mが(iii)と(iv)の組み合 わせになり,正の投資比率を粛す場合である。今後,このケースにおいていかな る情報が内在されているかについて研究を進めていく必要がある。 以下においては,これまでの議論をなぞらえながら,実際の月次収益率データ を用いた場合の適用例について検討していくことにしたい。

E

例 示

東証1部上場企業のうち取引の大きい代表的企業10社について.1986年 1月か ら1991年12月までの 6年間72ヶ月の月次収益率データを用いて,最小分散ポート フォリオの投資比率を計算し

n

節での議論を確認することにした。 サンプルとして利用した10社は,清水建設,キリンビール,新日本製鉄,

NEC.

松下電器産業,トヨタ自動車,伊藤忠商事,イトーヨーカ堂,三菱銀 行,東京電力である。収益率データは%で表示されている。 平均収益率と分散共分散行列については,次頁に掲載されている。ここで, 守=V-1

.

a

.

ゆ=V-11とすれば 0.0299 0.0067 清水建設 0.0001 0.0010 キリンビール 0.0044 0.0043 新日本製鉄 -O. 0155 -0.0038

NEC

η =

I

-0.0143 -0.0008 松下電気産業 (2.9) ,ゆ= 0.0460 0.0152 トヨタ自動車 0.0018 0.0018 伊藤忠商事 0.0451 0.0201 イトーヨーカ堂 0.0151 0.0015 三菱銀行 -0.0039 一0.0012 東京電力

(23)

平均収益率と分散共分散行列 │平均 │キリン松下電器! トヨタ

イトー

i

収益率 清水建設[ビール│新日本製鉄 NEC 産業

自動車│伊藤忠商事ヨーカ堂│三菱銀行│東京電力│ ト ー 十一一一一一一一一一一一一ト一一一一一一十一 :3.841 清水建設 124.92: 29.86: 70.59: -0.29: -15.24: -9.45: 63.49 -5.92: 27.03: 63.83: :2.438 キリンビール 29.86: 89.98: 30.64: 7.37: 17.82: 1. 95 : 34.39 25.37: 40.27: 35.09: ートーー一----j---ーートー + トーー 十 ト -t ---I 12 .919 新日本製鉄 70.59 30.64 142.23 0.98 -4.97 -8.32 58.75 -5.57 57.97 56.43 :1. 124 NEC -0.29: 7.37: 0.98: 129.42: 92.67: 82.96: 28.94 11. 68: 6.05: 5.92: 10 .986 松下電気産業 一 15.24 17.82 -4.97 92.67104.97 78.17 14.62 15.22 3.97 -8.51 : 1. 510 トヨタ自動車 -9. 45: 1. 95: -8.32: 32.96: 78. 17 : 89.40 : 12.50 4.95: -8.69: -1. 94 : 12.730 伊藤忠商事 63.49 34.39 58.75 28.94 14.62 12.50 96.90 2.79 37.99 56.27 :2.172 イトーヨーカ堂 一 5.92: 25.37: -5. 57: 11. 68: 15.22: 4.95 : 2.79 49.65: 23.87: 16.73: 13.443 三菱銀行 27.03 40.27 57.97 6.05 3.97 -8.69 37.99 23.87 128.71 42.55 ト 4 ト十ト 十 :3.083 東京電力 63.83: 35.09: 56.43: 5.92: -8.51: -1. 94 : 56.27 16.73: 42.55: 133.65 :

σ

(24)

第2章 正の投資比率を有する効率的ポートフォリオ 17 となり,さらに miをベクトル表記すれば 0.2991 一0.5748 1. 9216 0.0511 0.1466 2.8667 0.1334 0.4189 3.1409

o

.

1423 0.2612 1. 8361 0.2736 0.6454 2.3590 (2.10) b=1 , α= ,

m=

0.2026 一0.1520

o

.

7503 -O. 0554 0.1735 3.1351 0.0805 0.6435 7.9934 0.2548 -0.5846 2.2942 -0.0202 0.0221 1. 0908 と計算される。 このとき, (2.6) 式および (2.7) 式より (2.11) m+

=

2. 2942, m-

=

1. 0908 となる。したがって, (2.8) 式は満足されないことになり,正の投資比率を有す る最小分散ポートフォリオは存在しないことになる。

U

おわりに

危険資産の平均収益率と分散共分散行列が与えられるとき,それらの危険資産 から構成される効率的ポートフォリオにおいて,すべて正の投資比率となるポー トフォリオが存在するのであろうか。それはどのようにして確認することができ るのであろうかという問題について議論してきた。そして,命題1にある (2.8) 式が満足されるか否かを確認することにより,その問題の解決が得られることを 提示した。 月次収益率データを利用しての投資比率の計算については,時系列データのサン プル数という制約条件があり,すべての危険資産(銘柄)を同時に取り扱うことは できない。そのような状況にあるなかでも,筆者の様々な経験から言えること は,すべての投資比率が正となる効率的ポートフォリオもしくはそれに近いポー

(25)

トフォリオを実際のデータから見出すことは容易ではない,ということである。 このことは,資産運用という側に立っとき,効率的ポートフォリオの作成にお いて,多数の銘柄の空売りを含むという問題に絶えず直面することを意味する。 30から50銘柄からなる資産運用を考えるとき,本章において議論された計算方式 とりわけ (2.5)式を利用すれば,資産運用者の要求期待水準に応じて,空売り がより少なくなる資産の組み合わせ見出すことは可能である。

参 考 文 献

[ 1 ] Best, M. J, and Grauer, R. R.“Positive Weighted Minimum-variance Port -folios叩dthe Struc知reof Asset Expected Returns," Joumal of Financial and QuantitativeAna1ysis, 4,1992,513-537. [ 2 ] Green, R. C.“Positively Weighted Portfolios on the Minimum -Variance Frontier, " Joumal of Finance, 41, 1986, 1051-1068. [ 3 ] Roll, R.“A Critique of the Asset Pricing Theory's Tests; P訂t1 : On

Past and Potential Testability of出eτbeory

,"

Jouma1 of Financia1

Econom-ics, 4,1977,129-176.

[ 4 ] Roll, R., and S. A Ross.“Comments on Qualita甘veResults for Investment

Proportions, " Joumal of Financial Economics, 5, 1977, 265-268.

[5] Rudd, A “A Note on Qualitative Results for Investment Proportions, " Jour

(26)

19

3

章 危 険 資 産 数

n

,n

+

1

最小分散ポートフォリオ投資比率*

I

はじめに

いま ,(n

+

1)個の危険資産があるものとしよう。その(n

+

1 )個の危険資産の みからなる最小分散ボートフォリオを考える。期待収益率が与えられたときの最 小分散ポートフォリオ Kへの投資比率を

I

x

xFf

,・.XII*,XIよ,

1

と記す。このと き,資産1から資産 nまでの投資比率

I

x

,*/ ~ x;*, x,*! ~ x,人… , x.*/~x;*1から 構成されるポートフォリオLは,n個の危険資産についての最小分散ポートフォ リオとなっているのであろうか。もしくは,それが成立するための条件は何であ ろうか。これが本章の課題である。 結論から述べれば,一般的条件のもとでは,さきに記したn個の危険資産か らなるポートフォリオ Lはパ危険資産数nからなる)最小分散フロンテイア上に 位置しないことになるO ポートフォリオLが最小分散ポートフォリオであるた めには,資産n+ 1と資産iCi=l,2,… , n)の共分散がすべてOであるか,も しくは,その共分散と資産iの期待値の聞に線形関係が存在する,という条件が 必要となる。 資本資産評価理論 (CAPM)が教えるところによれば,資産市場に存在する危険 資産の総価値額に対する各資産の価値額を投資比率とする市場ポートフオリオ は,平均的投資家にとって最適投資ポートフォリオとなる。そして,その市場ポ ートフォリオと各危険資産の共分散(もしくはベータ値)がリスクとして測定され るとき,われわれは,リスクとリターンの線形関係式を,すなわち,ハイ・リス クに対してハイ・リターン,ロー・リスクにはロー・リターンという関係が観測

*

本稿は,経営財務研究学会の報告に基づくものである。その際コメント頂いた佐藤周氏 (和歌山大学)に厚く感謝致します。当然ながら,未だ残存せる誤謬はすべて筆者の責任に帰す るものであります。

(27)

されることを予定した。これまで

.CAPM

関係式の仮説を検証するため,多く の実証分析が試みられてきた。そして理論と異なり,リスクの指標となるベータ 値とリターンの関係はあまり強くないことが確認されてきた。 いっぽう,ロールは批判論文Ro1[ l3 ]において,データの入手が容易な株式市 場のみから構成される市場ポートフォリオは,ヒューマン・キャピタル,住宅, 土地,骨董等の危険資産を含んでいないため,真の市場ポートフォリオとは成り 得ないことを主張した。また,真の市場ポートフォリオを観測することは事実上 不可能で、あり,

CAPM

の検証をすることは不可能である,と力説した。 すべての資産についてのリターンとリスクを計測することは不可能で、ある。し かし,われわれは株式市場に上場されている企業の資産価値を観測することは可 能である。もし,それらの資産価値が,実証分析者にとって観測不能な資産の影 響をも含んだ形で価格付けされているならば,それらの観測可能な資産部分集合 から何某かの意味ある測定結果を得ることができないで、あろうか。このような問 題意識の下で,資産数が増えるときの最小分散ポートフォリオの特性について解 析的分析を試みた。 そしてその結論として,観測不能な資産の影響を含んでいる価格付けがなされ ているとき,観測可能な部分集合からなる資産価値の相対値を投資比率とするポ ートフォリオはその集合からつくられる最小分散フロンティア上に位置しないこ とが確認された。いっぽう,そのポートフォリオが最小分散フロンテイア上に位 置するためには,観測不能な資産市場からの影響がない分断化された市場である ことがひとつの十分条件になることが示された。また,その他の条件についても 検討がなされる。

E

最小分散ポートフォリオ

まず,記号の表記から始めることにしようoKa

n

d

e

l

[

1

J

.

S

h

a

n

k

e

n

[

4

]と同じ く(n+ 1 )個の危険資産を考える。そして ,n + 1次の投資収益率ベクトル R を (3.1) R =

[R~:l

1

, R;= (Rl, R" 丸) さらに,その期待収益率,そして投資比率のn+l次元ベクトルをつぎのように

(28)

第3章 危険資産数n.n + 1の最小分散ポートフォリオ投資比率 21 表記する。

(3.2)μ=1μ. 1

.μμ10μh

…,

μ

.

)

lμ,,+1 } r (1 -T/)zl (3.3) x=1 ¥ i

'

'

'

-

1

.

z=(z]. z

. ….

z.) i 早 J そして .n + 1次の分散共分散行列を ヲ σf σ12・・・・・・σM

v=

[

U σ.

f

+

l

1 ワ σ21σ,{...σ2• •.• • • •

•••

(3.4) 仇1σ.2……σ; ザ =(σ1,,+,I σ2n+ ¥,…, σ",11+ 1),の =COV (Ri. Rj) で表す。 ここで,つぎのような仮定をすることにしよう。 (A.l)無危険資産は存在しない。 (A.2)空売り(shortsales)は無制限で=あり,資産は無限分割可能である。 (A.3)分散共分散行列

v

.

は正値定符号行列であり

.v

もまた同様で、ある。 (A.

4

)

n個の危険資産のうち,少なくとも

2

つの資産の期待値は異なってい る。 (A.5)甲ヰ 1 (A.1)• (A.2)については説明の必要はないであろうO われわれの関心が, 差し当たり危険資産のみからなる最小分散ポートフォリオにあることを確認して おけばよいであろう。 (A.3)の前者の仮定に加えて,後者の部分が成立するための必要十分条件は (3.5) .1=σ

;

+

1

-v

'V.-]

v

>

0 である。 (A.4)については,期待収益率ベクトルμ"とすべての要素が1からなるn次 元ベクトルム

(29)

(

3

.

6

)

1

;

= (1, 1,…,1) の1次独立を仮定したものであり,このとき n+1次元ベクトルμ と1につい ても 1次独立が保障されることになる。最後に, (A.5) は本章の問題設定の性 格から要求されるものであるO I節のはじめにの部分で提起した問題を解くためには,まず,(n+ 1 )個の危 険資産からなる最小分散ポートフォリオの投資比率

x'= [

(1

~~')z']

を求め,つぎに ,

n

個の危険資産への投資比率

z

'

から構成されるポートフォリ オの期待収益率mL(

=

z .'JL.) と同じ期待値水準に対応する n個の危険資産から なる最小分散ポートフォリオの投資比率

x

:

を求めt

x:=z.

となるための条件を 検討すればよいことになる。 上記にしたがい ,n + 1次元ベクトル f から求めることにしよう。(n+ 1 )個 の危険資産に関する期待収益率μ と分散共分散行列 Vが与えられるとき,任意 の期待収益率m に対応する最小分散ポートフォリオKの投資比率fは (3.7) 凶njx'VxI x'μ= m, x'l =11 により与えられる11。すなわち, (A.3) , (A.4) のもとでは, (3.7) 式を満足す る解x'はユニークであり,われわれは

(

3

.

8

)

x'=V-

1 (μ1)A1[

7

]

をf与る21。ここで

fP

Ql (3.9) A= I'~

:

I

l Q S J P=μ'V-1JL,

Q

=μ'V-1l, S

=

l'V-1l であり ,

A

は正値定符号行列であることが確かめられる。 そして,つぎに 7J',

z

'

を求めるために, (3.8) 式を分割行列の形で 1) x' 1 = ( 1一平),'1.+早 が 任 意 の qについて成立するためには, ,'1.=1を必要とする。 2 )詳細については, Merton [ 2 J, Roll [ 3 ]を参照されたい。

(30)

第3章 危険資産数n,n + 1の最小分散ポートフオリオ投資比率 23 (3.10) [

(1ゴ)z*]=[~ ょJ112171; 引 1

[

7

]

と表す。分割行列の逆行列 V.-1

V.-'vV 'V.-1

v'V.-'

-

j

r

l

U I d を利用すれば P=州 一l w

j

(

μ

;V.-'v一μ

μn

仙仲んド 川n+叶 +11川 ))) ( 臼3.1日1) Q = μ叫

;

v

;抗レ,

-

1

1

.

+

一(pμ .

;

κ

v

-

-

1

切U一μ仙n肘山+什+1)(J

;

v

抗;レ

1

-

切U一1υ) =q

+~kl

1 d S = 1'

V

.

-

11.

寸(町

v-1)2=s

l' A -1ー [s+l/Ll -q

川│

一 一

目 PS

-

Q

'

l

-q-k

P

+k

冶)

となり,これらを (3.10)式に代入し,整理すれば.7)*とz*はそれぞれ

(

3

.

1

2

)

(3. 13)

f=tvji(lq-M

一(JP

kq)│=td

z

V

.

-

1 [ { [ S

仏-[

q

-{[ q

小-[イ

]

1

.}

-

5

V

]

M =作

Q

'

)

-

5

.

T = (tqーお

)m

一 ( いq) となる九したがって,n個の危険資産への投資比率がz*であるポートフォリオ Lの期待収益率 mLは ( 臼3.1ι14) mL

戸=土

=

い(

p

μ

s

一q

2

)m+

(

一h拘q)川

(

1

m

一肘h)一

1

μ叫;況

r

抗r杭一寸1 i凹 l'r- Ll'.r Ll ~..n-J となる。 3) M = 0となるのは .PS =Q'=T/ムしたがって (3.12) 式より~. = 1のときであり.(A.5) により.(3.13)式の表現が許されることになる。

(31)

いっぽう. (3.14) 式から計算される期待収益率

m

に対応するn個の危険資 産からなる最小分散ポートフォリオの投資比率を

x

:

とすれば (3. 15)

x

:

=抗-j弘 山,

1

-

[~L]

=

ま戸川

231

A,=

[~ ~].

PS-

ρ o

であり.(3.14)式を代入すれば

s

m

L

-

q

=

品川){

[

s 仏 -[q+~]}-~(s 一川日]

一山=引い

{

-

[

q

+

+

[

P

ρ

+

4

5

]

f

?

(

ト一1判 叫qり州

ρ

判)

[~七;

:

]

]

V,-1

[

{

s

+ [

~

μ

]

-

[

q

}

m

となり. (3.13) 式. (3.16) 式より .1,をn次の単位行列とすれば (3.17) z仁 川

=

-

l

l

r

l

L

-

(

μ

l,)A.-1 [

;~

]

を得る。 (3.17)式において

.T

宇 Oであるならば,

x*=z*

となるためには,すなわち ポートフォリオ Lがn個の危険資産からなる最小分散ポートフォリオとなるの は (3.18)

1.)A.-1 [

;~

] V.-1

}

v

= 0

(32)

第3章 危険資産数日, n + 1の最小分散ポートフォリオ投資比率 25 が成立する場合に限られることになる。ここで, (3. 18)式の係数行列

!

1.)A.-'[

;~

1

v

.

-

1 }は階数

n-2

内 等 行 列 で あ り

(

3

.

1

8

)

;A.O)解 として (i) v=O (ii) v =gμ.+hl. が与えられる九ただし, ( ii)の(g,h)の組み合わせについては, (3.5)式より (3.19)σ

;

+

(g2p +2hgq +h2s)

>

0 を満足せねばならない。 他方,T= 0のとき,それは (3.12)式および (3.13)式から lo -ko (3.20) m =三 一 」 主 lq-ks のとき生ずることが知れる。このとき ,n + 1番目の危険資産への投資比率は O であり,この点において(n

+

1 )個の危険資産からなる最小分散フロンテイアと n個の危険資産からなるそれとが接すること(intersection)になる。 (3.20)式における分母が Oであり,分子についても Oとなるとき ,

m

の値に 依存せず,T= 0となる。このとき ,(n

+

1 )個と n個の二つの最小分散フロン テイアが重なること(spanning)になる51 以上の分析において,もっとも興味あるある結果は,解(i )のn+l番目の危 険資産とn個の危険資産の共分散ベクトルUがOのとき,観測可能なn個の危 険資産を用いての実証分析が意味のある作業となることであった。セグメント化 された市場であるならば,そのお互いの市場の共分散を0と考えても差し支えな いであろう。実証分析者と同様投資家もすべての観測に際して高コスト(もしく はほとんど不可能)であるならば,セグメント化された市場での投資行動とその 観測も無下に否定されるものではないかも知れない。 解(ii)の解釈について考えてみよう。共分散が期待収益率ベクトルと1ベクト ルで表現されるということは ,

n

個の危険資産からなる最小分散ポートフォリオ 4 )べき等行列,そして解(ii)については付録を参照されたい。 5) Roll[3]のフートノート 32においても,このケースが述べられている。

(33)

を考えればよいことになる。幸いなるかな,最小分散ポートフォリオと各資産の 共分散は,期待収益率ベクトルと1ベクトルの一次結合として表現されることを 確認済みである。すなわち,任意の最小分散ポートフォリオの収益率を為市と し,

n

+ 1番目の危険資産の収益率が (3.21) R.+l=R/ +ε と表されるものとする。ここで, e はn個の各資産との共分散が0であるO この とき (3.22) cov(R.. R河川)=cov(R., R/) =gμ

.

+

h

l

.

を満足するgおよびhが存在することになる。すなわち,解(ii )が満たされる ことになる。 (3.21)式はn

+

1番目の危険資産のシステマティック・リスクはn個の危険 資産によって記述され,n

+

1番目の危険資産はリダンダントな資産を意味する のであろうか。次節における例示を用いて検討することにしよう。 E 例示 危険資産に関する期待収益率ベクトルおよび分散共分散行列が以下のように与 えられた場合について計算してみよう。 2 2 1 2 1 2.2 1 4 3 2 (3. 23) μ = I 1,

v

=

3.2 2 3 5 3 4 1 2 3 6 である。このとき.n=3,n=4に対する分散共分散の逆行列および効率的フ ロンテイア定数については,それぞれ小数点4桁目を 4捨 5入したとき 0.85 0.074 -O. 407 0.037 0.074 0.463 -0.296 -O. 019 (3.24) V-1 = -0.407 -0.296 0.630 -0.148 0.037 -0.019 -0.148 0.241

(34)

第3章 危険資産数n,n + 1の最小分散ポートフォリオ投資比率 27

P

= 3. 687

Q

= 1. 333

S = O. 667 0.846 0.077 -O. 385 (3.25) 民j=

I

0.077 0.462 -O. 308 ¥ -O. 385 -O. 308 O. 538

p

= 2.554, q = 1. 092, s = 0.615 と与えられる。そして,期待収益率mに対応する効率的フロンテイア上のポー トフォリオの投資比率f は -0.392 0.392 0.294 1. 618 0.922 -0.528 1. 813 -1.118 X3*= -0.366 m+ 1. 024 -0.422 0.894 1. 837 一0.294

(

3

.

26) x * =

1 1 m

+ と表される。 たとえば,m = 3のときの効率的ポートフォリオの投資比率は (3.27)x*' = (0.411 0.039 0.059 0.461) と計算される。危険資産1から 3までの相対的投資比率を有するポートフォリオ の期待値はmL=2.145となり,このときzとx,*は, (3.26) 式を用いて z'= (0.818 0.073

o

.

109) (3. 28) x3* = (0.679 0.239 0.081) と与えられる。すなわち,投資比率zを有するポートフォリオは効率的フロンテ イア上に位置しないことが確認される。 第4番目の危険資産への投資比率がOになるとき,すなわち (3.26) 式におい て,m = 0.4220.294のとき,二つのフロンティアは接することとなる。 分散共分散行列が解(i )を満たすとき,いまの例では 2 nU A U A u c u q L q J R u n U 1 4 A せ っ d n U 9 “ 唱 i η L A υ 2.2 (3.29)μ= I 1 , V= 3.2 4

(35)

と表されるとき,期待値水準mに対応する効率的ポートフォリオの投資比率は I _ O. 459 ¥ (1. 721、 -O. 265

I I

O. 890 (3.30) x*= 1 1 m + O. 493 I I -1. 305 、0.231) ¥ -O. 306 となる。さきと同様に,たとえばm=3に対応する効率的ポートフォリオの投 資比率は (3.31)x*' = (0.344 0.096 0.173 0.386) さらに (3. 32) mL = 2. 37 となり,この期待値水準に対応する三つの危険資産からなる効率的ポートフォリ オの投資比率は (3.33) x*;= (0.56 0.157 0.282) と計算される。当然ながら r 0.344 0.096 0.173

1

(3.34) z'= 1一一一一一 一一一一一一 一一一十一一1=

l

1 -0.386 1 -

O

.

386 1 -

O

.

386J となる。 解(ii)に該当する場合として.(3.23)式における収益率の期待値ベクトルが 1.2¥ (2 1 2 1‘ 2.2

I

I

1 4 3 2 (3. 35)μ= 1 1.

v=

3.2I I 2 3 5 3 、 4) ¥ 1 2 3 6 ) と表されるものとする。 g=1. h =0. 2. とすれば.(3.22)式を満足する。さら に. (3. 25) 式の逆行列を用いれば (3. 36)ρ =2.086. q =0. 662. s =0. 615 となり.g

ヤ+

2 hgq+h's=2.375であり. (3.19) 式を満たすことが知れるO (3.35) 式のように危険資産の収益率に関する期待値ベクトルと共分散行列が 与えられるとき 4個の危険資産からなる期待値水準mに対応する効率的ポー

(36)

第3章 危 険 資 産 数n.n + 1の最小分散ポートフォリオ投資比率 29 トフォリオの投資比率は -O. 373

(1. 330 -0.111

I I

0.481 (3. 36) x

*

=

1 1 m

+

0.303

I I

-

0.737 O.180} ¥ -0.074 ) そして ,n = 3の場合の期待値水準

m

に対応する効率的ポートフオリオの投資 比率は ( -O.455 ¥ (1. 364 (3.37) x,*=

I

一0.091

I

mL

+

I

0.473 ¥ O. 545 I ¥ -O. 836 となる。たとえば,m= 3のときの投資比率は (3.38)

x

.

'

=

(0.212 0.149 0.171 0.467) と計算され,このとき (3.39) イ =(0.399 0.280 0.321), mL = 2. 122 となる。この期待値水準に対応する効率的ポートフォリオの投資比率は, (3.37)式より (3.40) x行=(0.399 0.280 0.321) と計算され,x,*=zとなることが確かめられる。 当然ながら,これら二つの投資比率ベクトルの等号が任意のm に対応して成 立することは言うまでもない。 (n+ 1)番目の危険資産が (3.21)式に従うとき,効率的フロンテイアにおけ るその投資比率は小さいものと予想されるが, (3.31)式において確認されるよ うに必ずしもその予想が適当でないことが知れる。

U おわりに

資産の数が増えるとき,最小分散フロンティアがどのような特性を有するかに ついては, Kandel[ 1 ]およびShanken[4 ]において試みられた。われわれは, (n+ 1)個の危険資産から構成される最小分散ポートフォリオと,その部分集合

(37)

であるn個の危険資産からなる最小分散ポートフォリオの投資比率の比較に焦 点を絞ってみた。そして,そこでは ,

n

+ 1番目の危険資産と n個の危険資産の 共分散Uがキーポイントとなることが示された。 観測不能な危険資産が存在するとしても,観測可能な危険資産とその共分散が Oと判断されるとき,観測可能な危険資産のデータによる実証分析は,いわゆる 「ロールの批判」を免れることになるであろう。本章においては,観測不能な危険 資産をn+l番目の危険資産として束ねて議論してきたが,ブロック単位の共分 散行列がO行列である,というステートメントで置き換えれば,複数の観測不能 な危険資産を対象とするときも,本章の議論はそのまま成立する。 本来,共分散がOでないときでも,部分的観測から全体を推量る何某かを予想 して分析を進めてきたが,本章の結果においては,共分散が0以外のとき,観測 可能な部分集合から何某かを語る理論的支援を得ることが困難であることが確認 された。 分断化された市場という結論に満足できないとき,別の形のアプローチでロー ルの批判に挑戦していかねばならない。

付録

べき等行列であることについては,

(

3

.

1

8

)

式において D

=1. 一弘ム)A.-l[;~

1

V

.

-

1 とすれば

[

;~

1

V.-1 仇 1.)=A. であるから D D =1.-(μ.1.)A.-1 [ ; :

1

V.-1 = D により確かめられる。そして,べき等行列の性質により,その階数は 刷 俳 か(D)

= 川)-tr{/.-(μ 1n)A.-l[;~

1

V.-1 }

(38)

第3章 危険資産数n.n + 1の最小分散ポートフォリオ投資比率 31 、 ‘ 1 1 1 1 1 1 l‘ , ﹃ 1 1 1 1 1 f a ' )

a μ ( v h q r “ ' ' n F n 一

μ

1

m

g a バ1 1 ‘ 一 一 m l

A-E

. (

r

y

t

-一

n n 一 一 一 一 である。 ここで ,

x

:

z

ホに関して,二つの制約条件があることを確認せねばならな い。すなわち x:1.=z*1.= 1

(x.*-zホ)'1.= 0 x:μ,,=z傘μn (x.*-z*)'μ館=0 であるから,この二つの制約条件から,ベき等行列Dに右からμ"もしくは1. をかけるとOになることがわかる。 したがって ,v =仇 ,v

=

1.は (3.18)式を満足するものであり,行列D の 階数はn-

2

,ι と

1

.

は1次独立で、あることにより,条件(ii)を得る。

参考文献

[ 1 ] Kande!, S., 1984“,On the Exclusion of Assets from Tests of the Mean Vari. ance E伍ciencyof the Market Portfolio,"

J

o

u

r

n

a

l

0

1

F

i

n

a

n

c

e

, 39, 63-75.

[ 2 ] Merton, R., 1972,“An Ana1ytic Derivation of出eE血cientPorぜulioFron

-tier,"

J

o

u

r

n

a

l

0

1

F

i

n

a

n

c

i

a

l

a

n

d

Q

u

a

n

t

i

t

a

t

i

v

e

A

n

a

l

y

s

i

s

, 7, 1851司1872. [ 3 ] Roll,R., 1977,“A Critique of theAsset Pricing百leory'sTests: Part 1,"

J

o

u

r

n

a

l

0

1

F

i

n

a

n

c

i

a

l

Ec

o

n

o

m

i

c

s

, 4, 129 -176. [ 4 ] Shanken, ].1986“,On Exclusion of Assets仕omTests of the Mean Variance E血ciencyof the Market Poぽulio:An Extension,"

J

o

u

r

n

a

l

0

1

F

i

n

a

n

c

e

, 41, 331-337.

(39)

4章

タンジェンシー・

ポートフォリオの振舞い*

一 一

i

R

o

l

l

の 批 判 」 を 克 服 で き る か 一 一

I はじめに

現在の株価は,その企業の価値(将来の成果に対する割引価値として計算され るものと考えられる)を正しく評価しているものであろうか。これまで,絶えず 問い掛けられてきた疑問であった。それに対するひとつの解答が,

1

9

6

0

年代中 頃, Sharpe[13], Untner[ 8], Mossin[10]らによる資本資産評価理論 (CapitalAs -set Pricing Model : CAPM)において与えられた。それは,危険資産市場において 取引されているすべての資産について,将来の成果に対する期待値と標準偏差が 市場参加者であるすべての投資家によって共有されるならば,均衡市場において は各株式の期待収益率が (4.1) E (R;) =烏 +s;LE(RM) 烏j と表現される,ことを述べたものであった。ここで ,R;, R" RMは,それぞれ第 i株式の(予想)収益率,無危険資産収益率そして市場ポートフォリオの(予想)収 益率であり,またβ,は市場ポートフォリオの上への第i株式の回帰係数である。 彼らは,各株式のリスク・プレミアムの相違が当該株式の収益率と市場ポート フォリオの収益率の共分散のみに依存するものであることを明らかにした。市場 ポートフォリオというキーワードを見出し,その精神を基に,それ以後数多くの 実証分析がなされてきた。幸いにも,株式データは潤沢で、あった。あてはまりの 度合いは,他のミクロ実証分析と同じく,決して良いものではなかったが,・ベー タ値を知る者が市場を征する'とばかりの勢いであった。そうした分析が定着し だした頃,冷水を浴びせかけた論文

(Ro

ll[ll])が出現した。いわゆる,

r

ロー *本稿は.1992年 5月に武蔵大学にて行われた日本証券学会における報告rCAPMとAPTの検 証」に.加筆修正を加え,東洋大学にて行われた日本経営財務研究学会において,本主主の題目 にて報告した。その際コメント頂いた斉藤 進氏(上智大学)に厚く感謝致します。

(40)

34 平均=分散平面と資産評価理論の検証 ルの批判」であった九 ロールの批判の骨子は, (4.1)式における市場ポートフォリオは株式だけでは なく,不動産,骨董,金,銀,宝石,人間資産等を含むあらゆる危険資産から構 成されねばならない,との主張であった。それまでの実証分析においては,一部 分の株式から構成される(代理的)市場ボートフォリオが採用されていた。そのよ うな状況下では,採用された代理変数としての市場ポートフォリオmが効率的 フロンテイア上に位置するならば,リスクとリターンの線形関係式は常に成立す ることであり,それは,真の市場ポートフォリオmに関する (4.1)式について 何らの記述もしていない,というものであった。 すなわち,図1にあるように,採用された代理市場ポートフォリオmが効率 的フロンテイア上にあるとしても,真の市場ポートフオリオMは効率的ポート フォリオから離れている場合も有りうる。いっぽう,図2のごとく,真の市場ポ ートフォリオは効率的フロンティア上にあるにもかかわらず,採用された代理市 場ポートフォリオmは効率的ポートフォリオからかけ離れているかもしれな い。ともかく,検証されるべきことは,真の市場ポートフォリオMが効率的ポ ートフォリオであるという命題についてであり,真の市場ポートフォリオMが 観測可能でない限り, CAPMに関する実証分析は意味をなさないことになる。 実際上,われわれはそこまでのデータを手にすることは無理である。したがっ て, CAPMは理論的には検証可能であるが,事実上不可能である。これが,ロ ールの結論であった。 その後,証券界に近いジャーナルにおいては,

r

ベータは死んだか

?

J

という特 集が組まれたほどであった。学会ジャーナルにおいてもCAPMからAPT(裁定 評価理論)へと関心が移って行った。 (4.1)式で表現される CAPMのメリットは,何よりその『簡単さ

J

にあっ た。その導出過程はともかく,均衡式は誰にでも理解可能なものであった。市場 モデルと混同きれながら,多くの研究者や証券マンの支持を得たとしても不思議 ではなかった。ところが,よく言われるように,証券市場に万能薬はないのであ 2 )ロールの批判を論じた和書の参考文献として,榊原[14J.若杉[17Jを参照されたい。

(41)

図 1 図 2 期待収益率 標準偏差 る。その効力にいくつかの疑問が提示されているときの爆弾論文である。瞬く聞 に

CAPM

実証分析はその効力を失うと共に,

CAPM

信奉者はその理論を神棚に 杷り上げるより方法がなかった。ベータは死んだのである九 しかし悲観的になる必要はない,というのが本稿の目的である。計量分析者 がすべての危険資産を観測可能でない限り,その

CAPM

実証分析は意味を持た ないというのがロールの批判であった。筆者の主張は,

r

すべての危険資産を観 測する必要はない。もし資産市場において

CAPM

が成立しているならば,部分 的観測からでも充分近似可能な実証分析を行うことが可能で、あるj,というもの である。すなわち,図2に示されている状況は,ある一定の条件下では,有り得 ないことを示すことができる。その論拠を提示することが本稿の課題であるO E節においては,平均=標準偏差平面上におけるタンジ『エンシー・ポートフォ リオのシャープの尺度を採り上げ,数値実験によりその資産数の増加に伴う変化 について対称的な二つの例を紹介する。

E

節においては,資産数が増加するとき 効率的フロンティアがどのように変わっていくか,そして,われわれの関心であ るタンジ、エンシー・ポートフォリオがどのような動きをするかについてが数式の 展開を伴って検討されるO これらの議論を通じて,

i

斬近的無裁定条件が成立する ならば,資産数の増加とともに,タンジェンシー・ポートフォリオが平均=標準 偏差上のある点に収束していくことが示される。そして ,

N

節においては,シミ 3 )実証分析の大御所であるFama& French[ 2, 3

J

はベータの死にだめ押しを行っている。

図 1 図 2 期待収益率 標準偏差 る。その効力にいくつかの疑問が提示されているときの爆弾論文である。瞬く聞 に CAPM 実証分析はその効力を失うと共に, CAPM 信奉者はその理論を神棚に 杷り上げるより方法がなかった。ベータは死んだのである九 しかし悲観的になる必要はない,というのが本稿の目的である。計量分析者 がすべての危険資産を観測可能でない限り,その CAPM 実証分析は意味を持た ないというのがロールの批判であった。筆者の主張は, r すべての危険資産を観 測する必要はない。もし資産市場にお

参照

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