日本における彫刻シンポジウムの現状 Vo l . 2
鈴 木 徹*1) ・ 井 田 勝 己 *2)
The Present Condition of Japanese Sculpture Symposium (2) Toru Suzuki, Katumi Ida
序
Vol. 1で彫刻シンポジウムの問題点・意 義などについて述べたがVol.2では,写真 を通して,色々なシンポジウムの紹介や比較 的環境と上手くいった作品等を紹介したいと 思う.
サンク卜ベンデル
1971年に始まるサンクトベンデル国際シン ポジウムは, ドイツにおいてベルリンのシン ポジウムに次いで古いシンポジウムである.
コーデ、ィネイターはレオ・コロンブルストで ある.サンクトベンデル市郊外に中世から在 る古代の道,約20kmに作品を設置している.
〔写真①〕制作期間は日本と違って長いもの では1年にも及ぷこともある.ゆっくりとし た時間の流れの中で彫刻家は,その町に住み,
生活をしながらその環境と作品との対話を考 える.日本からは,富樫一・秋山礼巳が参加 している.このシンポジウムの魅力は,個々 の作品を見るよりも作品が設置されている環 境と彫刻の関係性に注目すべきものがある.
時間・空間・人間の営みといったものが彫刻 を媒体として一つの世界を形作っている.こ れは,自治体が作家の完成を尊重して,環境
* 1)すずき とおる 文教大学教育学部
* 幻 い だ か つ み 鳥 取 県 立 境 高 等 学 校
という問題に取り組んだ成果である.
日本においては, 1963年世界近代彫刻日本 シンポジウムが真鶴岬道無海岸で開催された のがその始まりであり, (写真②〕その後 霧ヶ峰シンポジウム(コーディネーター・中 井延也・横沢英一)帯広シンポジウム(コー ディネーター・中井)岩手町シンポジウム (コーデ、ィネーター・斉藤忠誠)等,地方で 開催されるものが多い中で都市型のシンポジ ウムとして八王子シンポジウム(コーディ ネーター・大成浩)が登場する.中井延也
『石の詩~ (写真③〕は,第 1回八王子シン ポジウムの作品で当時としては大作で,東京 芸術大・多摩美術大学で教鞭を取っていたた め,多くの石彫家を世に送り出している.阿 蘇国際シンポジウム(コーデ、ィネーター・本 田 貴 侶 〉 は 環 境 と 彫 刻 」 と り わ け 阿 蘇 山 の大自然をバックに,彫刻を設置するといっ た雄大なシンポジウムであった.中島一雄の
『終りなき風炎~ (写真④〕は,木とステン レスの作品で阿蘇山の鋭い稜線を背景にして 力強いフォルムを作り出している.
播磨新宮石彫シンポジウム(コーディネー ター・牛尾啓三)は,兵庫県で長く続くシン ポジウムで、若手を中心とした作家を紹介して いる.政義昌俊の『波紋~ (写真⑤〕の流線 形の模様おっとりとしておもしろい.
米子彫刻シンポジウム(事務局長・友松康 雄)はVol.1で紹介しましたので何点か作
『教育学部紀要』文教大学教育学部第31集 1997年 鈴 木 徹・井田勝己
品を紹介したい.新谷一郎の『つまみぐい』
〔写真⑥〕の石組みのアーチが力強くてス ケールの大きさをかんじさせる.第3回に招 待された小林亮介の『光の沈殿~ (写真⑦〕
は,石肌の繊細さが快適空間にマッチしてい る.第 4回に招待された田中毅の『磯祭り』
〔写真⑧〕は,彼の持つ特有のユーモアあふれ る世界を出現させている.参考作品〔写真⑫〕
特殊の例として現代彫刻美術館のシンポジ ウムを取り上げたい.これは,美術館のコレ クション収集を目的としたものである.美術 館は,東京都目黒にあるがシンポジウムの会 場を長野県・群馬県等で開催し長野県東部町 に野外美術館としてシンポジウムの作品を展 示している.ここで日を引くのは,入り口に そびえる空充秋の『夢の門~ (写真⑨〕石の 組み合わせのおもしろさとバランス,門とし て使われ方のおもしろさがある.また峯田敏 郎の木彫『シズカ山の音~ (写真⑩
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,写真の 掲載はないが峯田義郎のブロンズ,小林陸一 郎の石とブロンズの組み合わせなど作品の素 材がバラエティーに富んでいる.招待される 作家は,館長である渡辺泰裕氏の個人的交遊 の広さからであろうか幅広い層にわたってい る. (写真⑪J
(写真⑫〕他に石の里フェスティバル石の彫刻国際シ ンポジウムがある.これは国内・外の招待作 家とコンクールで選出された作家とで構成さ れ,作家は石材庖の協力のもとで制作する.
香川県の牟礼町・庵治町という石の町ならで はのシンポジウムであるが,シンポジウムの 新しい在り方を提示している.作家の人選は 本間正義・三木多聞・乾由明・富山秀男・弦 田平八郎らである.第2回に招待された湯村 光 WLANDSCAPE!I.(写真⑬〕と高田典男 WMESSAGE OF ETERNITY.!I (写真
⑭〕のそれぞれの石の組み合わせのバリエー ションのおもしろさに注目させられる.第3 回に招待された寺田武弘『遺跡一億万年の底 から~ (写真⑬〕は,インスタレーション的
な作品で海の広大な空間に対峠するかのよう に大きな構成の作品にしている.小林陸一郎 の『旅人の碑~ (写真⑬〕は,古代の遺跡をイ メージさせる作品である.参考作品〔写真⑫〕
大理石彫刻家シンポジウム(コーデ、ィネー ター・城田孝一郎)は,長野県佐久市で開催 され地元産の大理石で制作している.第2回 に招待された石川浩の『風画渉~ (写真⑪〕は,
広い高原に風のフォルムを浮き立たせている.
同じく地元産の石,北木石で制作する笠岡 石彫シンポジウム(コーデ、ィネーター・五十 嵐晴夫)は,招待作家とコンクール選出の作 家の構成で開催され,選考委員は,三木多聞 .乾由明・小倉忠夫・藤田慎一郎らである.
作品は,広大な笠岡湾干拓地の広場に設置さ れている. (写真⑬
J
(写真⑬〕終わりに
大まかな形で幾つかのシンポジウムを紹介 しましたが現在日本で開催されているシンポ ジウムは,かなりの数に上るとみられます.
多くは,石彫を中心としたものですが近年で は他の素材も取り入れた形のものも増えてい く傾向に有ります.又サンクトベンデルの様 に環境と彫刻の在り方を積極的に考えていく 方向に進みつつあるようです.
参考文献
・米子彫刻シンポジウム報告書,図録1994年
・第 2,第 3回 かさおか石彫シンポジウム 図録1994年
‑第10回記念, 94播磨新宮石彫シンポジウ ム図録1994年
‑第2回 大理石彫刻家シンポジウム図録 1990年
‑第2回 石 の さ と フ ェ ス テ ィ バ ル 石 の 彫 刻シンポジウム図録1991年
・第3回 石 の さ と フ ェ ス テ ィ バ ル 石 の 彫 刻シンポジウム図録1994年
‑阿蘇国際彫刻jシンポジウム図録1984年
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サ ン ク ト ・ ヴ ェ ン デ ル の 「 彫 刻 の 道 」 国 際 彫 刻 シ ン ポ ジ ウ ム で の 彫 刻 設 置 地 点 を 表 す 地 図 ( 企 が 彫 刻 設 置 地 点 )
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『 教 育 学 部 紀 要 』 文 教 大 学 教 育 学 部 第31集 1997年 鈴 木 徹 ・ 井 田 勝 己
写 真2 世 界 近 代 彫 刻 日 本 シ ン ポ ジ ウ ム (真鶴のシンポジウム)
制 作 中 の 毛 利 武 士 郎 「祭殿」
写 真4 阿 蘇 国 際 彫 刻 シ ン ポ ジ ウ ム 1984年 中 嶋 一 雄 「終りなき風炎」
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写 真3 第1回 八 王 子 シ ン ポ ジ ウ ム 1976年 中 井 延 也 「石の音」
写 真5 ' 87第3回 石 彫 シ ン ポ ジ ウ ムin
播 磨 新 宮
政 義 国 俊 「石紋」
日 本 に お け る 彫 刻 シ ン ポ ジ
写 真6 第1回 米 子 彫 刻 シ ン ポ ジ ウ ム 1988年
新 谷 一 郎 「つまみぐい」
写 真7 第3回 米 子 彫 刻 シ ン ポ ジ ウ ム 1992年
小 林亮介 「光 の 沈 殿」
写 真8 第 4回 米 子 彫 刻シ ン ポ ジ ウム 1994年
田 中 毅 「磯祭」
『 教 育 学 部 紀 要 』 文 教 大 学 教 育 学 部 第31集 1997年 鈴 木 徹 ・ 井 田 勝 己
写真9 第4回 現 代 彫 刻 美 術 館 、 野 外 ビ エ ン ナ ー レ ・ シ ン ポ ジ ウ ム 草 津 高 原 1995年 ま と
写真 11 第 1回 現代彫刻美術館野外彫刻ビエンナーレ・
シンポジウムあさま彫刻展 1988年 前 田 耕 成 r EXISTENCE‑大地の具」
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空 充 秋 「夢の自門」
写真 12 第3回 現代彫刻美術館野外彫刻ビ エンナーレ・草意静可山展 1992年 菅原二郎 i NSIDE‑OUT‑WG‑G J
日 本 に お け る 彫 刻 シ ン ポ ジ ウ ム の 現 状 Vol. 2
写 真10 第4回 現 代 彫 刻 美 術 館 野 外 彫 刻 ビ エ ン ナ ー レ ・ シ ン ポ ジ ウ ム 草 津 高 原 展 1995年
峯 田 敏 郎 「記念撮影ーシズカ山の音一」
写 真 15 第3田 石 の さ と フ ェ ス テ ィ パ ル 石 の 彫 刻 国 際 シ ン ポ ジ ウ ム 1994年
寺 田 武 弘 「遺石・一億万年の海の底から」
『 教 育 学 部 紀 要 』 文 教 大 学 教 育 学 部 第31集 1997年 鈴 木 徹 ・ 井 田 勝 己
写 真13 第2回 石 の さ と フ ヱ ス テ ィ バ ル 石 の 彫 刻 国 際 シ ン ポ ジ ウム 1991年
湯 村 光 fLANDSCAPEJ
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小 林 陸 一 郎 「旅人の碑」
写 真14 第2回 石 の さ と フ ェ ス テ ィ バ ル 石 の 彫 刻 国 際 シ ン ポ ジ ウ ム 1991年 高岡典夫 fMESSAGE OF ETERNITYJ
日 本 に お け る 彫 刻 シ ン ポ ジ ウ ム の 現 状 Vol. 2
写 真17 大 理 石 彫 刻 家 シ ン ポ ジ ウ ム 1993年
石川 浩 「風が渡る」
写 真19 笠 岡 石 彫 シ ン ポ ジ ウ ム 1993年 坂 井 達 省
「山j可'93J
写真 18 笠 岡 石 彫 シ ン ポ ジ ウ ム 1993年 五 十 嵐 晴 夫
「 組 曲 海 の 石 物 語 」
『教育学部紀 要』 文 教 大 学 教 育 学 部 第31集 1997年 鈴 木 徹 ・ 井 田 勝 己
写 真 20 第 3回 石 の さ と フ ェ ス テ ィ パ ル 、 石 の 彫 刻 国 際 シ ン ポ ジ ウ ム 1994年
鈴 木 武 石 衛 門 「海に向かつて」
写 真21 第3回 米 子 彫 刻 シ ン ポ ジ ウ ム 1992年 井 田 勝 己 「 化 石 の 街 地 3J
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