人体彫刻における情感表現
教科・領域教育専攻 芸術系(美術)コース 入 村 友 佳 子
作品の要旨 I 制作の動機
人体からは,その人聞が持つ内なる力,
言い換えればその人らしさが惨み出ている。
これを形に表したいと思い,人体をモチ ーフとした生命感のある具象彫刻の制作を 行いたいと考えた。
E テーマ設定について
学部
3
年次後期から院1
年次6
月まで,あまり激しい動きのない静かなポーズでも って作品にモデルの女性がもっ強さや若々 しさ,みずみずしさを表すように制作を行 ってきた。
制作の中では,肉付けを強く表現するこ とや人体の構造を意識することばかりにと らわれてしまい,人体がフオルムとしては 成立しているものの,作品がもっ雰囲気と
aして硬さのある作品になってしまった。
反省点としてモデ、ノレの女性がもっ内在す る力,内在する流れをないがしろにし,自 分の理想、とする若い生命感を表してしまっ た点に問題があると考えた。そこで,若い 女性のもつ生命感とはどんなものかを改め て考えてみることにした。単に若くハリの ある肉体を表現するだけが作品に強さを与 えるということではなく,はかなさ,弱さ,
危うさ,優しさ,清純さ,健やかさ,素直
指 導 教 員 長 岡 強
さなど様々な要素が入り混じっている感情 が人体に存在することで,作品としての強 さがつくられると考えた。若いモデルや自 分自身にも内在する人体の情感を表現する ことが,私の表現したい生命感のある具象 彫刻ではなし、かという考えに至った。
車 修 了 制 作 に つ い て
(1)
制作意図作品「みつめるJでは,若者が持つ未来 への希望と不安,そして迷いを乗り越え て自分自身の進む道を,明日を生きる力 をもって進んで、いく情感を表現すること にした。
(2) 制作過程
男性像を制作するにあたり,ポーズに おいて,人体の自然なムーブ、マンを活か して男性的な肉体美と将来への心の葛藤 を表現することを念頭においた。
そこで,右脚に重心を置き,左脚は軽 く膝を曲げて少し前に出す。腕は脚とは 前後を逆にして,右腕は肘を曲げて顔の 前にもって行き,左腕は後ろにもってい くといった人体の構造から自然と生まれ るムーブマンを意識したポーズに決定し た。ポーズからも人体の強さだけでなく,
内なる力が自然と伝わる印象の強さに重
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点を置いた。
ポーズ決定後,モデ、ルを使用しデッサ ンを行った。人体のバランス及び,ムー プマンの確認に傾注した。
肉付けに関しては,人体の構築性を意 識することを課題とし,その上に,有機 的形態を感じられる肉付けを目指した。
特に,両脚の肉付けでは,ポイントを明 確に作り,ジョイント部分を大切にし,
力の流れを意識した。リズムよく力が流 れることで,人体全体に若い生命感が表 れるようにした。地山の表面は,緊張感 のある平らな面にし,形は自然な形にす ることで,作品にメリハリをつけた。
テクスチャーは,作品全体の印象を決 めてしまう重要な要素だと考える。強さ を印象づける部分と控えめな印象を与え る部分を作り,作品全体が単調にならな いように心がけた。張りのある部分はヘ ラで均して,凹んで、いる部分はあえてへ ラで凸凹をつけ,またへラで均し,心地 よいテクスチャーにし,表面がリズムよ く流れるようにした。また,
FRP
での成 形後も,やすりをかけるなどして,更なるテクスチャーの変化を試みた。
着色においては,若者が自分の進む道 を葛藤しながら前に進んでいく様子をよ
り表現してみたいと考えた。そこで,色 調は,観る側に過度な印象を与えず,落 ち着いた印象となる「焦げ茶
J
を選んだ。また,
FRP
で成形,修整した表面のテク スチャーが単調にならず,より清新さを 与えるように,凹凸の溝にタノレクや顔料 を落とし込み変化をつけた。W
研究の成果と課題について観ている側に自然と伝わる情感表現を もっ作品を目指したので,制作意図に沿 うポーズで制作することができた。モデ ノレをよく観察することで,人体の構造は 前回の作品「若い女jより深く追究でき た。
しかし,部分と部分のつながりの弱さ や全体と部分の構築性に甘さが残った。
特に,上半身の肉付けに変化が少なく全 体の印象から若さ,ハツラツさに欠け,
やや単調なものになってしまった感がす る。人体の内なる力を情感をもって表現 するためには,生命感のある肉付けが特 に重要である。
また,自らの彫刻観を高めていき,こ れからも人体彫刻における情感表現を追 究していきたい。
修了制作 「みつめるj
182X55X45cm FRP 2011年
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