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東日本大震災と保険

料率設定の公平性と保険会社の社会的責任について

宮 地 朋 果

■アブストラクト

東日本大震災後,地震リスクに対する消費者の意識・関心が高まり,地震 保険があらためて注目を受けている。しかし,日本において消費者の地震保 険に関する知識・理解度は,まだ十分とは言い難い。

消費者の理解が難しいものの一つに,料率設定に関する公平性の考え方が ある。多くの保険商品において,契約者間の公平性を考慮し,リスク細分化 を進めることは,保険原理の面からは妥当とされる。しかし地震保険に関す る料率設定に関しては,地震保険の持つ社会性・公共性や,日本における自 然災害リスクの特徴,日本人の地震保険観,官民役割分担の在り方など,多 角的な視点から考察していく必要があるだろう。また,地震保険制度の再構 築に際しては,当事者として保険研究者や保険業界のプレゼンスを高めてい くことが,結果的に国民の利益にもつながると考える。

■キーワード

東日本大震災,料率設定,公平性

1.はじめに

地震保険は,私財をまもるために任意加入がなされる私保険である。しか し,公共性・社会性の高さゆえに,国が介入している。地震保険は,そのよ

*平成24年3月10日の日本保険学会関東部会報告による。

/平成24年11月7日原稿受領。

(2)

うな特殊性から,任意の自動車保険などとは異なる性質を有している。

本稿では,地震保険の料率区分のあり方に論点をしぼり,地震リスクをめ ぐる民間保険会社の役割・課題について検討する。検討に際しては,民間保 険における 公平性 を軸に考察する。地震保険に 保険原理 を推し進め ることの是非をいかに考えるかが,本稿における主な問題意識である。保険 原理の考え方を進め,地震保険のリスク細分化をしていくべきか。また,リ スク細分化するならば,何を根拠・基準とするかを検討した 。

2.地震リスクと地震保険加入との相関

損害保険料率算出機構によると,2011年度末の地震保険の世帯加入率は,

全国平均で26.0%(2010年度末は23.7%)である。同じく損害保険料率算出 機構による と,2011年 度 末 の 地 震 保 険 の 付 帯 率 は,全 国 平 均 で53.7%

(2010年度末は48.1%)となっている。付帯率は2003年度以降,9年連続し て増加している(表1)。また世帯加入率,付帯率ともに,2010年度から 2011年度にかけての伸びが,それ以前の年度よりも顕著になっている。これ を,東日本大震災経験後のリスク認知による 逆選択 とみることも可能だ ろう。

1) 同様の問題意識で書かれた論文に,宮地朋果 東日本大震災における保険会 社の役割―リスク区分をめぐる公平性の観点から― ( 経営経理研究 第94号,

2012年)がある。

2) 付帯率 とは,当該年度中に契約された火災保険契約(住宅物件)に地震 保険契約が付帯されている割合を意味する。

(3)

現在,地震保険の基本料率は,建物の構造(木造,非木造)と所在地(全 国をリスクの低い1等地から,最も高い4等地まで分類)により決定される

(表2)。地震発生率や想定される被害額の大きさなどを主な算定基準とする。

(注)1.契約件数は,各年度末の地震保険保有契約件数に基づく。(証券単位) 2.世帯加入率は,年度末の地震保険契約件数を当該年度末の住民基本台帳

に基づく世帯数で除した数値。

3.火災保険への付帯率は,当該年度中に契約された火災保険契約(住宅物 件)に地震保険契約が付帯されている割合。

損害保険料率算出機構資料による。

(出典)日本損害保険協会ホームページより転載

(

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www.sonpo.or.jp

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useful

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insurance

/

jishin

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reference

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)。

表1:地震保険の契約件数・世帯加入率・付帯率の推移

(4)

地震保険の等地と付帯率・世帯加入率には,正の相関が指摘できる。すな わち,地震リスクが高い地域ほど,火災保険への付帯率や世帯加入率が高く なっている。県民性や過去の地震発生頻度など,さまざまな要因が,人びと のリスク認識に影響を及ぼすため,若干の変動は考えられる。しかし総じて,

地震リスクの大きな地域ほど,地震保険に加入する傾向,つまり逆選択がみ られることが,損害保険料率算出機構のデータ等により明らかになっている。

損害保険料率算出機構によると,2011年度末の地震保険の付帯率が,日本 国内で最も高いのは宮城県で81.1%(2010年度末は68.7%)である。前年度 から12.4ポイント増である。対前年度の増加割合が最も大きかった都道府県 は,①福島,②宮城,③岩手の順となっており,これは東日本大震災の被害

4等地 3等地 2等地

千葉県*,東京都,神奈川県,静岡県,愛知県*,三重県*,和歌山 県*,徳島県*,高知県*

茨城県*,埼玉県,山梨県*,大阪府,香川県*,愛媛県*

北海道,青森県,宮城県,新潟県,長野県,岐阜県,滋賀県,京都府,

兵庫県,奈良県,岡山県,広島県,大分県,宮崎県,沖縄県

岩手県,秋田県,山形県,福島県,栃木県,群馬県,富山県,石川県,

福井県,鳥取県,島根県,山口県,福岡県,佐賀県,長崎県,熊本県,

鹿児島県 1等地

*激変緩和措置により,料率が異なる県。

出 典:損 害 保 険 料 率 算 出 機 構 資 料(http://

www.nliro.or.jp

/

disclosure

/

pdf

/

ji shinaramasi.pdf

)より作成。*激変緩和措置により,料率が異なる県。

 

3.13 1.69

4等地

1.88 1.05

3等地

1.27 0.65

2等地

1.00 0.50

1等地

木造 非木造

建物構造別

表2:地震保険の基本料率(2007年10月以降) (保険金額1,000円,保険期間1年につき)

単位:円

(5)

が甚大であった地域と重なっている。宮城県の世帯加入率は43.5%(2010年 度末は33.6%)である。表2によると宮城県は2等地であるが,付帯率・世 帯加入率ともに高い。これは,2008年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地 震の影響によるものと推定される。

2011年度末の地震保険の付帯率が宮城県に次いで高いのは,高知県で79.5

%(2010年度末は75.9%)である。表2によると高知県の等地は,基本料率 が最も高い4等地となっている。ただし,基本料率改定前の等地は2等地と されていたため,地震リスクに人びとがそれほど敏感ではなかったと考えら れ,当時の付帯率は低かった。したがって,2011年度末の地震保険の世帯加 入率は22.4%(2010年度末は21.5%)となっており,付帯率の高さの割には 低い数値と言える。

2011年度末の地震保険の付帯率3位は,愛知県と宮崎県で68.3%である。

愛知県の2011年度末の世帯加入率は37.1%(2010年度末は35.3%)であり,

4等地となっている。宮崎県は表2によると2等地であるが,県東部の7市 町が 東南海・南海地震防災対策推進地域 に指定されている。同地域は,

東南海・南海地震により著しい地震災害が生じる可能性がある。このことに より,付帯率が上がってきていると考えられる。

一方,地震保険の付帯率が全国で最も低いのは長崎県で,36.1%(2010年 度末は31.8%)である。同県の世帯加入率は12.2%(2010年度末は11.0%)

となっており,1等地である。長崎県に次いで付帯率が低いのは佐賀県で,

40.1%(2010年度末は35.8%),世帯加入率は15.7%(2010年度末は14.3%)

となっている。佐賀県も1等地である。都道府県を個別にみると若干の相違 はあるものの,総じてみると,地域ごとの地震リスクと付帯率・世帯加入率 には相関があることが指摘できる。

3.地震保険の料率設定における課題 3‑1 料率設定における不公平

保険における 公平 の概念は不変ではない。むしろ,日々変わっている

(6)

ということが通常である。さらに,保険におけるリスク分類は,いかに細分 化しようとも,あくまでも確率によるという制約が存在する。したがって特 定の個人や団体等に対する正確かつ詳細な予測は不可能である。保険制度は おのずと限界や不合理性を含有すると言える。その代表的な例として, 内 部補助 (cross subsidization)が挙げられる。リスクをどれほど細分化し ても,保険集団の同質性を完全に維持することは不可能であるため,保険料 の負担には不公平が必ず残る。したがって,高リスク者の費用を低リスク者 が負担するという構造が生まれる。これが内部補助である。

内部補助の許容度をみることで,ある程度は,保障・補償を供給する団体 の性格を分類することが可能である。しかし内部補助のあり方は,団体の理 念・方針が先立つのではなく,まずコスト面から決定されるという側面も無 視できないだろう。

料率設定をめぐる不公平には,垂直的不公平と水平的不公平がある。垂直 的不公平とは 危険度が異なるにもかかわらず,同じ保険料が課されること による不公平 であり,水平的不公平とは 同じ危険度でありながら,異な る保険料が課されることによる不公平 を意味する 。東日本大震災の被災 地では,たとえ同県であっても内陸部と沿岸部の被害状況が大きく異なって いる。しかし,地震保険の料率は都道府県単位であるため,同じ都道府県内 は同じ料率である。したがって,地域ごとの個別リスクは料率に反映されて いない。これは垂直的不公平の例と考えることができる。垂直的不公平は,

政策的な意味合いや,保険会社の経営戦略上,あえて選択される場合もある。

水平的不公平のほうが,垂直的不公平と比して,消費者の視点からみるとよ り影響や問題が大きいという指摘もある。これらの視点から,現在の都道府 県単位の地震保険料率設定について見直しの声もあがっている。

料率分類のあり方を考察するに際し,損害保険料率算出機構が2007年10月 1日に改定した地震保険料率を例示したい。この改定は,政府の地震調査研

3) 堀田一吉 地震リスクと地震保険 保険学雑誌 第600号,pp.275‑276,

2008年。

(7)

究推進本部による地震発生の予測にもとづいた変更であり,改定後は,全国 平均で木造住宅が9%,非木造住宅が5%,保険料が低減した。しかし都道 府県ごとに従前と比較すると,保険料負担が増えた場所と減った場所がある。

たとえば千葉県,愛知県,三重県,和歌山県などは,等地が3等地から4等 地に変更され,保険料負担が増した。この場合,以前は本来負うべきリスク のいくらかを他の自治体に移転していたと考えられる。その逆もまた同様で ある(たとえば福井県は3等地から1等地に変更された)。料率設定には,

このような内部補助が不可避的に存在する。保険制度は,社会環境の変化に 事後的に対応せざるを得ない。したがって,内部補助の程度が許容できない 水準になっても,それが是正されるまでには,ある種のタイムラグが生じる と考えられる。

3‑2 望ましい料率設定と地震保険観

東日本大震災において被害が甚大であった岩手・宮城・福島のうち,岩手 県と福島県は現在,地震保険の基本料率が1等地,宮城県は2等地であり,

リスクが低い と位置づけられている。同様に,兵庫県に阪神・淡路大震 災のような大地震が発生すると想定していた人も,地震発生前にはそれほど 多くなかったと思われる。

地震大国である日本において,地震リスクと無縁の地域はほぼないという のが実情である。また少なくとも現在は,地震発生の詳細を前もって知るこ とは不可能に近い。したがって,地震による被害を抑えるためのリスクコン トロール対策の実施にも限界があるだろう。低リスクであると位置づけられ ていることも,必ずしも安全の保障にはならない。震源地から離れていても,

東日本大震災におけるように,津波や液状化など想定外の被害を受ける場合 もある。これらのことから,日本において地震保険の料率に地域的な差異を 設けることに,どれほどの妥当性や公平性があるかは再考の余地がある。実 際に東日本大震災後,リスクの実態を反映すべく,地震保険の基本料率を見 直すべきであるという意見が出された。

(8)

これらの日本における地震リスクの性格を鑑み,消費者にとって納得感の ある料率設定を行うにはどのようなことが求められるだろうか。民間保険が 基礎におく保険原理の考えを追求すれば,リスク細分化が望ましいという考 えもあるだろう。しかし,損害保険料率算出機構が実施したアンケート調 査 によると,保険料率区分の細分化を求める割合はそれほど多くない。

現在, 非木造 と 木造 の2区分となっている地震保険料の構造区分 について, もっと細分化すべき とする割合は,地震保険加入者では28.7

%,非加入者では28.9%に過ぎない。また, もっと単純でよい はそれぞ れ34.2%と32.6%であり, 今のままでよい も37.2%と38.5%であった。

県単位で地震保険料が分けられる地域区分について, もっと細分化すべ き とする割合は,構造区分についての結果よりも低く,地震保険加入者で は22.8%,非加入者では24.5%であった。 もっと単純でよい はそれぞれ 42.0%と39.4%であり, 今のままでよい も35.2%と36.1%であった。

これらの結果は,人々の地震保険に対する意識のあらわれとも考えられる。

地震保険が持つ公共性・社会性の高さを重視する日本人の地震保険観のよう なものが影響しているのではないだろうか。損害保険料率算出機構が実施し たこの消費者意識調査は,平成21年に調査されたものである。東日本大震災 後の現在の実施であれば,公共性・社会性を望む割合や 相互扶助 への理 解・共感の度合いがさらに高まっていることが予想される。

このように,地震保険において料率区分の細分化を求める割合はそれほど 多くない。しかし,地域区分よりも構造区分に関してのほうが,わずかでは あるが細分化を望む割合が高かったことが注目される。この要因として,居 住地の選択にはかなりの制約が存在するが,建物の構造については個人の選 択や自助努力が及ぶ面も少なくないと人々が想定していることが考えられる。

耐震補強や建築年度に応じて,地震保険の料率区分を優遇するなどの策を民 間保険会社が積極的に取り入れることで,個人による地震リスク対策を促進

4) 損害保険料率算出機構 地震危険に関する消費者意識調査(平成21年調査) , 2009年11月。

(9)

するインセンティブを与えることもできるだろう。

特に首都圏都心部における建物の老朽化の問題は,東日本大震災後,より 現実味を持つようになっている。首都圏のような住宅密集地においては,老 朽化した建物の崩壊等により災害に巻き込まれる,あるいは被害が深刻化す るおそれもある。老朽化した建物への対処は,基本的に自助努力・自己責任 の問題ではあるが,住人の高年齢化もあり,建て替えや修繕に関する公的な 支援策の拡充も必要だろう。また多大な住宅ローンを抱えて被災し,二重ロ ーンに悩まされるという問題も,阪神淡路大震災以降,広く知られる事実で ある。現在,免震構造のマンションが注目・人気を集めているが,建物の耐 震性に基づく料率区分の細分化であれば,消費者の理解も得られやすいと思 われる。財務省の地震保険制度を見直す作業部会(座長・佐藤主光一橋大学 教授)においても,建造物の耐震性に応じた割引制度の拡充を進め,耐震性 の高い建物の割引率を引き上げる方針が決定している。

リスクに応じた保険料を課すという保険原理の考え方を進めれば,日本に おける地震保険もリスク細分化していくことが望ましいと考えられる。しか し,消費者意識調査結果をみると,一概にリスク細分化が消費者に受け入れ られるとは言い難い。日本の狭い国土や自然災害リスクの複雑さを考慮する と,地域別料率区分の設定自体の難しさも課題となるだろう。先に述べた作 業部会においても,当初は都道府県により4区分に分かれる現在の等地を2

〜3区分に減らすべきとの意見があった。しかし,東日本大震災や南海トラ フ地震の震源モデルの査定の遅れから,2012年末までにまとめる提言では保 険料率や損害区分などの具体的な内容が決定されず,引き続き検討されるこ とになった。

4.地震リスクにおける保険会社の役割

近い将来,大規模な首都直下地震が発生する確率はきわめて高く,富士山 の噴火などの危険もあるとされる。しかし,その発生時期・程度までは正確 にわからない。地震保険や住宅の耐震補強など,私的な備えの重要性はきわ

(10)

めて高いが,やはり限界がある。どこまでが個人の責任か,個人が護られる べき水準をいかに設定するかといった議論が早急になされる必要がある。ま た,地震リスクへの対処法に関して,官民役割分担の視点も取り入れ,考察 することが求められる。たとえば,自助努力である地震保険等への加入推進 とともに,公的支援である被災者生活再建支援制度の拡充も期待されるかも しれない。

地震保険のあり方,給付額,運営方法についても,異なる利害関係者から 意見を集め,検討する必要がある。昨今,日本では地震に関して多くのシン ポジウム等が開催され,研究成果などをマスコミが取り上げることが珍しく なくなっている。しかしその多くが,地震発生予知など地球物理学や,耐震 構造など建築工学についてのものである。損害保険会社をはじめとする団体 も,新聞・雑誌・テレビなどの媒体を通じ,地震リスク・地震保険の啓発活 動を行っており,日本保険学会等でも地震に関する大会報告・シンポジウム がなされている。これらは,一定の意味と成果をあげているものと考えられ る。しかし今後,保険会社や保険研究者等は,地震リスクへの対処法,特に 地震保険の運営において,プレゼンスやリーダーシップをより高めていく必 要があるだろう。

電通総研が2012年2月24日から3月1日にかけて行った 震災後二年目に 向けての生活者の意識・行動変化 に関する調査結果 によると,震災を契 機に,今後の購入が期待される商品・サービスの9位に 地震保険,防犯サ ービスなど が入っている。上位5アイテムは,1位 燃費効率の良いエコ カー ,2位 耐震・免震構造の住宅 ,3位 太陽光発電パネル,家庭用燃 料電池 ,4位 ガイガーカウンター(放射線測定器) ,5位 墓地,仏壇 である。これは,全国47都道府県の20〜69歳男女個人(学生除く)2,000名 を対象にした調査である。インターネットによる調査であるため,回答者の 属性に若干のバイアスがあることは否めない。しかし,国勢調査の性,年代

5) 株式会社電通ニュースリリース(2012年3月7日)

(

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www.dentsu.co.jp

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news

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release

/2012/

pdf

/2012022‑0307

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)

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別人口構成比に基づき割付されており,生活者の地震保険への関心・注目度 の向上がうかがえる結果となっている。実際に東日本大震災後,地震保険加 入率の増加が顕著となっているが,この傾向は少なくとも今しばらくは続く ものと思われる。人々の関心が高いうちに,地震保険に関する正しい知識・

情報の提供,加入促進の努力をすることが損害保険会社,団体に求められる。

また,無形財である保険の効用が具現化する保険金支払における迅速性が 今後,ますます期待される。損害保険各社は現在,首都直下地震や南海トラ フ地震に備え,支払業務の人員拡充とともに保険金請求関連書類を電子化す ることにより,保険金支払業務の効率化を図っている。しかし支払の迅速性 が求められる一方で,保険金支払には正確性・適正性も欠かせない。保険料 の値上がりを防ぎ,地震保険の普及率 を上げるためにも,不正請求などモ ラルハザード問題への対応が同時に求められるだろう。

5.むすびにかえて

地震保険をめぐってはその目的・成り立ちなど,消費者が十分に理解して いないことも少なくない。地震被害によってすべてを失わないための有効な リスク処理方法として,地震保険を利用するメリットを消費者に地道に情報 提供していくこと,地震リスクに関するよりよい商品提供のための努力 が 保険会社には,求められる。その一方で,地震保険の望ましい料率設定や補 償を検討するうえでは,私保険としての地震保険の性格や効用,限界につい て周知徹底させることが不可避である。地震保険を民間が提供することの是 非を含め,地震保険のあり方について広く民意を問う時期にきていると思わ

6) 企業物件に関してのものであるが,スイス再保険会社の試算によると,経済 規模に照らした日本の地震保険の普及率は世界で最も低い水準であるとされる

(日経速報ニュースアーカイブ2012年3月15日)。

7) たとえば,日本震災パートナーズの

Resta

(リスタ) のように,地震保 険や共済団体の保障と重ねて加入できる商品開発や,地震保険では対象となら ないリスクへの対応など,保険会社に潜在的に期待されるニーズは大きいと考 えられる。

(12)

れる。また,地震保険の理解度や地震リスクへの対応力を高めるために,情 報提供・消費者教育を進めていく責任を保険研究者は担っている。

地震保険は,その公共性・社会性ゆえに国が介入する保険である。一方で,

現行の地震保険はあくまでも私保険であり,被災者が自力で生活再建するた めの備えを提供するものである。私財を守るために任意加入する地震保険に,

過度の所得再分配機能を持たせることへの不公平感も指摘されている。した がって,適正かつ妥当な負担と給付のバランスについて,慎重に検討し定期 的に修正していく機会が必要だろう。

東日本大震災によりはからずも明らかになった地震保険の効用であるが,

時間の経過につれて,様々なことや思いが風化する危険性もある。地震リス クや地震被害を忘れない,忘れさせないための努力を続けることも保険会社,

保険研究者の使命であると考える。

参考 献

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遠藤薫編著 大震災後の社会学 講談社現代新書,2011年。

岡田太志 保険問題の諸相 千倉書房,2006年。

織田彰久 世界の自然災害保険から見た日本の地震保険制度

ESRI Discussion Paper Series No.178,2007年。  

財団法人損害保険事業総合研究所研究部 諸外国における保険制度の官民役割の 実態について ,2009年。

佐川果奈英 ニュージーランドの地震保険 損保総研レポート 第98号,2012年。

塩澤誠一郎 住宅耐震化の促進に向けて 都道府県耐震改修促進計画の比較を基 ニッセイ基礎研

REPORT Vol.143,2009年。

損害保険料率算出機構 地震危険に関する消費者意識調査 ,2009年。

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(13)

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冨永紅 共済の特徴と役割 損害保険研究 第73巻第4号,2012年。

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堀田一吉 保険理論と保険政策―原理と機能― 東洋経済新報社,2003年。

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牧紀男 災害の住宅誌―人々の移動とすまい 鹿島出版会,2011年。

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