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合物系の熱力学的性質の測定

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Academic year: 2021

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(1)

ガスクロ法によるポリエチレングリコールー有機化 合物系の熱力学的性質の測定

川上満泰*・鹿川修~* .江頭 誠 料

Gas Chromatographic Measurement of Thermodynamic Properties  of Polyethylene Glycol-0r~anic Compound Systems 

by 

l¥tIitsuyasu K A  W AKAMI  (Department of Industrial Chemistry) 

Shuichi KAGAWA  (Department of Industrial Chemistry) 

Makoto EGASHIRA 

(Department of  Materials Science and Engineering) 

A gas.liquid chromatographic technique was employed  to  study the  thermodynamic  properties  of  systems of polyethylene glycol  (PEG) and organic compounds. 

Three kinds of  PEG different in molecular weight were  used as  a fixed phase, and the  specific  retention  volumes  of  methanol  and  benzene  were measured in the range  of  30  to  80oC.  Whi1e the  retention volume of benzene scarcely varied with a sample size, that of methanol increased as a sample  size became smaller.  From the specific retention volumes at an infinitesimal sample size, thermodynamic  properties at  the infinite  dilution such as  an activity coeffi.cient based on molality, a Henry' s coefficient  based on molality, and a partial molar excess enthalpy, were calculated. 

In the case of  methanol, as  a molecular weight of  PEG decreased, a partial molar excess enthalpy  decreased, and a Henry's coefficient increased.  Those of  benzene, however, did  not  varied  with  a  molecular weight of PEG. From the value and behaviour of these thermodynamic properties, the effects  of the end O H  group were discussed. 

1.緒

クロマトグラフィーは今日最も重要な分析手段のー っとなっているが,さらに近年その溶離曲線から熱力 学的性質を測定しようとする試みが注目されるように なった.本法は装置および操作が簡単であり,時間も かからないという利点から,固定相一移動相相互作用 の研究手段として期待されている.当研究室ではこれ

*工業化学科 料材料工学科

まで気ー固クロマトグラフィー (GS C)について吸 着等温線,吸着熱等の測定を検討してきたが1)2) 3), 

さらに本法の気‑液クロマトグラフィー (GLC)

の拡張を目的として研究を開始した.本報では,ポリ エチレングリコール (PEG)とメタノールおよびベ ンゼンとの系について測定した結果を述べる.

P E Gは代表的なガスクロマトグラフ用固定相液体 であり,そのガスクロ的性質については古くから多数 の研究がなされている4) しかし, P E Gの熱力学的

(2)

性質をガスクロ法で測定した報告は少ない.高宮ら5)

および渡辺ら6)は数種の有機溶剤について保持容量の 温度変化から溶解熱を測定しているが,その取扱法に 若干問題がある.

 溶質一溶媒間に線型平衡関係が成立する場合,クロ マトグラフィーの理論は比較的簡単であり,そのよう な系の測定は容易である.しかし一般には線型平衡は 成立しない.この場合試料注入量によって保持容量は 変化する.従来の研究ではこの点にあまり考慮が払わ れていない.本研究では試料注入量による保持容量の 変化をしらべ,注入量零への保持容量の外挿値を用い て熱力学的性質の測定を行なった.

 一方,低分子有機溶媒の溶液についてガスクロ法に よるモル分率基準の活量係数,Henry係数:等の熱力学 的性質の測定がEverettやYoungによって研究され た7).彼らは非線型平衡を考慮して保持容量の濃度零 への外挿値を用い,さらに気相の理想気体からの偏僑 を考慮した理論式を提出している.しかし,PEGの

ような分子量に分布をもつポリマーの溶液に対しては モル分率を規定しにくいため,その方法をそのまま適 用することはできない.

 最近,Fritzらはポリマーを溶媒とする重量モル濃 度によって組成を表わすと,ポリマーに分子量分布が あっても溶質の活量係数が求まることを報告した8).

またPattersonらの報告では重量分率によって組成を 表わしている9).このように重量モル濃度あるいは重 量分率を用いて組成を表わすことによりポリマーを固 定相とする場合でもガスクロ法による活量係数の測定 が可能となった.ここでは重量モル濃度基準の活量係 数,Henry係数および部分モル過剰溶解熱を測定し,

それらに対するPEG二二OH基濃度の影響について

検討した.

右辺第二項は移動相における溶質一溶質相互作用を補 正する項である.B11はその相互作用を表わす第ニビ リアル係数,遡は蒸気圧,また嘘はモル容積であ る.B11,か呈,電がわかれば巧を測定してγ1(切 を求めることができる. ここではB11の計算には Berthelot式,パの計算にはAntoin式を用いた.

また醒は膨脹因数を用いる方法より推算した.それ らの値をTable 1に示す.

Table l Second virial coefficients, vapour pres.

    sures and molar volumes of methanol     and benzene at various column tempera・

    tures

methanol benzene

2.理

π 一B・・ρ1 ・1 −B・・ρ1 ・1

(。C)(mZ/ (mm (m〃 (m1/ (mm(mン    mol)  Hg) mol)  mol)  Hg) 皿ol)

56.5   509    549 61.6   493    674 67.3   475     839 77.1   447    1199

42.7    1115   342 43.0   1080   410 43.4    1041   500 44.1    980   691

92.9 93.4 94.1 95.1

 いま室温丁.におけるキャリヤーガス流速が,F,

カラム入口圧がρ ,出口圧がρ。の条件下で溶質のピ ーク保持時間が毎のとき,その溶質のピーク比保持 容量ygは次式で求められる.

%一含{鶴謝一寄喫 (1)

ただしωは固定相液体の重量である.

 GLCにおいて分配等温線が直線の場合,重量モル 濃度基準の活量係数γ1(挽)は比保持容量巧と次の 関係にある10).

hη(舳、藷四一B裂≠ρ1

      (2)

γ1(呪)からは次式により部分モル過剰溶解熱∠∬f が求まる.

  41・γ、(吻一卿    (3)

   4(1/T) 一 R

 またγ1@)とHenry係数H1@)との間には次 のような簡単な式が成立する.

  H1(ZPZ)=2りi γ1(2?Z)       (4)

狙fおよびH1(2η)はいずれも溶媒一溶質相互作 用を表わすパラメーターとして利用できる.

3.実

 ガスクロは柳本G80−TCD型, カラムは内径3 mm,長さ2mの銅パイプを用いた.測定温度は30

〜80QCで,50。C以下は水恒温中中で行なった.キャ リヤーガスはヘリウムを用い,流速は各カラム温度に おいて一定(約20mZ/min)とした.試料注入には 10μZ一マイクロシリンジ(テルモ)を用い,注入量 を変えて保持容量の測定を行なった.正確な注入量は

クロマトグラムのピーク面積から求めた.

 固定相としてUniport Bに固持させたPEG−600.

1000および4000の3種(ガスクロ工業)を用いた.

担持率は抽出法により測定した結果,いずれも約15

%であった.用いたPEGの融解範囲,末端OH

(3)

基濃度cOHおよび平均分子量M。をTable 2に 示す.融解範囲は差動熱量計,またOH基濃度は滴 定法により求めた.平均分子量はOH基濃度から計

算した.

 溶質としてのメタノールとベンゼンは,いずれも市 販品をそのまま使用した.

 担体(Uniport B)だけによるベンゼンの比保持容 量は,PEGを担持させた場合の約1/20にすぎず,

したがってPEGを担持させた場合の比保持容量は,

PEGとの相互作用だけによって決まることを確認し

た.

Table 2 Properties of PEG used

3

3

ε2

9

PEG   c     Mn       ヨ

    (mmol/9)

melt. range   (。C)

600 1000 4000

2.98 1.31 0.56

670 1500 3600

一3    16 39    51 43  −  60

PEG−600

ζ

4.結果と考察

 4.1保持容量の温度変化

 Fig.1,2にそれぞれメタノールおよびベンゼンに ついて比保持容量とカラム温度との関係を示す.ただ し比保持容量としては注入量零への外挿値,いわゆる 無限希釈における比保持容量γ。。を用いている (後        σ

述).PEG−1000と4000の場合,不連続部分が認

3

PEG−600

 1 2.7         3.0         3,3         3.6

        1031Tc(OK一1)

Fig.2 The temperature dependence of spe・

    cific retention volume of benzene

6

E

)2

9

1

 1  /

r国〆

 2.7         3.0         3.3         3.6         1031 丁と (。K−1)

Fig.1 The temperature dependence of spe.

    cific retention volume of methano1

められる.これはTable 2 の融解範囲に一致する.

したがって不連続部分を境として高温側でGLC,

低温側でGSCとなっていることがわかる. PEG

−600では測定範囲でGLCである.高温側,低温       

側いずれの領域でも,log TZ 対1/T,のプロット       

はよい直線性を示している,その勾配より溶解熱ある いは吸着熱が求まるが,これについては別報で報告す る.本馬ではGLCについて以下の検討を行なっ

た..

 4.2 比保持容量に対する試料注入量の影響 Fig.3に比保持容量に対する試料注入量の影響の一 例を示す.ベンゼンでは巧はほとんど変化しないが,

メタノールでは注入量が小さくなるほど砺が大きく なる傾向がみられる. (低温のGSCになるとこの 傾向はさらに著しくなる.)またメタノールのピーク は,ややテーリング気味の非対称性を示した.これら のことはメタノールの分配等温線が直線でないことを

示す.

 4.3部分モル過剰溶解熱に対する試料注入量の影     響

 分配等温線が非直線の場合,(2),(3)式は厳密には 成立しない.注入量を変えた場合.(2),(3)式から求ま

る∠∬ぞがどのように変化するかを調べてみた.注 入量一定における一連の比保持容:量より活量係数を求 め,(3)式に従ってlnγ1(切対1/7「。を抽いた.一

(4)

例をFig.4に示す.一応直線とみなすことができる ので,各直線の勾配より各注入量における部分モル過 剰溶解熱を求めた.試料注入量による部分モル過剰溶 解熱の変化をFig.5に示す.明らかに部分モル過剰 溶解熱も試料注入量によって変化している.したがっ

E

9

9

L90  吋』㌔し__{ト

PEG−4000 − methanol at 61.6 0C

PEG−4000   benzene at 77.1 0C

 1.80

   0      0。02         0.04

        sample size(川)

Fig.3 An example of the change of specific     retention volume with sample size

て溶媒一溶質相互作用についての熱力学的考察には無 限希釈における値を用いるべきである.

 試料注入量による影響は,ベンゼンよりメタノール において著しい.これは後でも述べるようにメタノー ル自身の分子内会合およびPEGとの水素結合といρ た複雑な分子間相互作用に原因があると思われる.

 4.4 無限希釈における熱力学的物性値

 Fig.3において注入量零への外挿により無限希釈 比保持容量を求め,これより無限希釈における活量係 数γ○。(呪),Henry係数H1@),部分モル過剰溶解   1

熱4πぞ○○を求めた。Fig.6およびFig.7にそれ ぞれ部分モル過剰溶解熱(吸熱が正)およびHenry 係数を末端OH基濃度に対してプロットした結果を 示す.これらの図から明らかなようにメタノールでは 部分モル過剰溶解熱およびHenry係数は,いずれも 末端OH基濃度の増大とともに減少している.

 4.5熱力学的物性値に対するPEG末端OH基

    濃度の影響

 PEGはエーテル基とOH基とをもつ強い極1生溶 媒であり,溶質分子との相互作用だけでなく分子内で の水素結合も考えられる.一方,メタノールは電子供 与性と電子受容性の両方の性質をもち,末端OH基

一1.O

一1.1

ε

8 一1.2

一1・茎

Fig.4

      ●〜

.8       2.9       3,0

       103/Tc(OK−1)

The effect of sample size on lnγ1

(m)vs.1/Tc plots.(the system of PEG−4000 and methano1)

1.0

3

腔F

く1

0

sample size(μZ)

0.5   0.05   0.005    0

●   ①   ●   ○

一〇,5

\\

\幾

\  \\\

、     \

\《  \  ぽ        

 0\ト \\

緊◎

kこき、 ←

       ここ\

      、

        、      ミこ、

        ヘ        ヘ  ヘへ

         \\ご、

      \、    、        、△、、

0

Fig.5

    0.2      0.4      0.6

    samp[e size(川)

The effect of sample size on partial molar excess enthalpy

PEG−600 −1000 −4000 benzene

methanol

(5)

ともエーテル基とも水素結合を形成することができる.

したがってPEGとメタノールの分子間力は複雑で ある. しかし部分モル過剰溶解熱やHenry係数が OH基濃度の増大とともに減少することから,末端 OH基との相互作用が支配的であることが示唆される.

またメタノールの部分モル過剰溶解熱が一般にベンゼ ンに比べて大きな値となっているのは,メタノールの 自己会合が切断される効果の方が,溶媒との水素結合

形成の効果よりも大きいためと理解される.

 一方,ベンゼンについては弱い電子供与性という性 質をもっているが,末端OH基濃度との間に明確な 傾向はみられず,水素結合の影響は考えられない.す なわち, PEG末端OH基が溶媒一溶質相互作用 に及ぼす影響は,極性物質であるメタノールではある 程度認められるが,無極性物質のベンゼンでは認めら れないといえる.

(1.O

ε

8 巳一

1:=0、5

O

△、06thanol   、、、

         、、「聾._

  0      0.2         0.4         0.6

    Concentration of end OH group     of PEG   (mmo119)

Fig.6 The effect of the concentration of     end OH group of PEG on partial     molar excess enthalpy

α4

o

ξα3

0.2

h△、⑭ethanol   、、、、

    、、、

benzene \\2

  0         0.2        0.4        0、6

    Concentration of end OH group     of PEG   (mmol l g)

Fig.7 The effect of the concentration of     end OH group of PEG on Hellry/s     coefficient at 67.3。C

5.結   言

 ガスクロ法によりPEG一メタノール,ベンゼン系 について熱力学的物性値を測定し,次の結果を得た.

1)試料注入量により比保持容量は変化した.注入量 の影響はベンゼンよりもメタノールについての方が大 きい.したがって熱力学的物性値の測定には注入量零 の保持容量を用いるべきである.

2) PだG−600,1000,4000一メタノール,ベソゼ ソ系について注入量零の保持容:量を用い,無限希釈に おける重量モル濃度基準の活量係数,Henry係数,

部分モル過剰溶解熱を求めた.

3)部分モル過剰溶解熱およびHenry係数は,メタ ノールではPEG分子量の増大とともに増大し,一 方ベンゼンではPEG分子量の影響はほとんどみら れなかった.これらの挙動はPEG末端OH基と溶 質との相互作用の観点から理解できた.

文   献

1)鹿川,藤田,中森,長崎大学工学部研究報告,第  2号,81(1971).

2) S.Kagawa, K. Fujita, K. Tada,1. Naka−

 mori,.4παZ. C乃θ彿.,44,1540(1972)

3)鹿川,多田,中森,長崎大学工学部研究報告,第  3号,76(1972).

4)山尾,分析化学,16,926(1965).

5)高宮,小島,村井,劇化,62,1371(1959).

6)渡辺,磯村,泊,工化,70,1311(1967).

7) C.L. Young,α診zo窺α ogr. Rθτ,,10,129  (1968)

8) D.F. Fritz, E。 sz. Kovats,∠4ηα」. Ch吻.,

 45, 1175 (1973)

9) D.Patterson, Y. B. Tewari, H. P. Schrei・

 ber, J. E. Guillet, 漁。名。解01θoπ」θ5, 4,356  (1971)

10)D.H. Everett, Trαπ5. Fαrα6」αッ30c.,61,

 1637 (1965)

参照

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