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一 二 ― ―

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(1)

序 か 、 表 か

〉 古 事 記

《 巻 首 文 の 性 格 を 巡 つ て ―

高 森 明 勅

は じ め に

問 題 の 所 在

〉古 事記

《の 巻首

、本 文 が始 まる 前 に、 通常

、序 文と か

、序 と呼 ばれ る 一文 が置 か れて ゐる

(略 し て記 序と も)

。だ が

、果 たし て これ が正 し く序 文( 序) で ある のか

、 どう か。 遺憾 乍 ら、 この 点は 未 だ決 着 を見 ない まま 経 過し 来つ て ゐ るの では あ るま い か。 夙く この 問 題に 着 目さ れた 先 学の 一人 に、 岡 田正 之氏 が をら れ る。 氏は 次の や うに 指摘 さ れて ゐた

。 即ち

〇安 萬侶 の 作り し古 事 記の 序は

…… 序 と云 ふも

、 その 體は 表な り

、卽 ち古 事記 を 上れ る表 なり

。 蓋し 宋 の裴 松之 の

〉 上三 國志 注 表《

、唐 の長 孫 無忌 の〉 上五 經 正義 表《 に 倣ひ たる も のな るべ し

〈と

。 或は 山田 孝 雄氏 も

、か う述 べ てを られ る。

〇今 の本 に 序文 とは 出 てゐ るが 實は 之 は上 表文 で ある

。こ れは 古 事記 の撰 述 と同 時に 奉 られ

、之 を讀 め ばす べて の も のが わか る 様に 要旨 を 明ら かに して 添 へて 奉つ た もの で後 に誰 か が序 とつ けた も ので あ らう

。こ れを 序文 と 云ふ の 一

(2)

は 俗稱 であ つ て、 上 表で ある こ とは 明白 であ る

〈と

〉古 事記

《 の序 文と 云は れて 来た もの は

、じ つは 上表 文( 表

))

だ つた ので はな いか

。か うし た 異見 が、 かな り以 前 から 提示 さ れて ゐ たの であ る

。 では

、こ の 問題 に対 す る近 年の 見解 は

、ど うで あ らう か。 試み に

、手 近な 注 釈書 の中 か ら若 干の 解説 を取 り 上げ て み る。 一 諸 注 釈 書 の 見解 尾 崎暢 殃氏

〉 古事 記 全講

《の 見 方は

、か う だ。

〇 古事 記奏 上 の上 表 文で ある 序 文〈

〇 序文

。四 六 文に よ る、 堂々 た る漢 文の 上表 文

(天 皇に 申 告す る 文) で書 いて あ る〈 倉野 憲司 氏

〉古 事 記全 注釈

《)

の意 見。

〇文 選を 見 ると

、こ の 表の 類と 序の 類 は文 章表 現 を異 にし てゐ て

、両 者を はつ き り区 別す るこ と が出 来 るが

、わ が 国 にお いて は

、尐 し後 の 例で はあ るけ れ ども

、名 は 序で も实 は表 と 殆ど かは ら ない もの が 幾つ か見 出さ れ る。 即ち 日 本 後紀 序( 藤 原緒 嗣)

、続 日本 後 紀序

(藤 原良 房)

、文 徳天 皇 实録 序( 藤原 基 経)

、令 義解 序( 清原 夏 野) など がそ れで あ る。 この や うに 平安 朝 では 序と 表が 非 常に 接近 し てゐ るが

、こ の やう な空 気 は夙 く奈 良 朝の 初め 頃か ら あつ たの で は ある まい か

。古 事記 の 序が 实は 表で あ るの に序 に 転用 され てゐ る のも

、さ う した 空気 が あ つた か らの やう に 思は れ る

〈 西郷 信綱 氏

〉古 事 記注 釈

《。

315

(3)

〇こ れは 序 とい うよ り

、す でに 指摘 さ れて いる よ うに 唐の 進五 経 正義 表あ た りを 下敷 に し、 六朝 ぶり の 文辞 を以 て 綴 られ た儀 式 的な 上 表文 であ る

〈 西宮 一民 氏

、新 潮 日本 古典 集 成〉 古事 記

《。

〇太 安萬 侶 が元 明 天皇 に言 上 した 上表 文〈

〇安 萬侶 は

…… 上 表文 の形 式 をも つ〉 序《 を もの した

〈 日本 思想 大 系〉 古 事記

〇い わゆ る 記序 は序 で なく

、最 初か ら 表と して 書 かれ たと 考え ね ばら ぬ。 それ を 序と よぶ のは

、 今日 に 伝わ る写 本 に

〉序 并《

(卜 部 系諸 本で は

〉并 序《

)と され てい る から に過 ぎ ない

。 以 上の 事实 を 認め ると

、 最初 は本 文と は 別に 添え ら れて いた 表が

、 いつ ごろ か ら本 文の 巻 頭に 序と して 并 せ写 され る よ うに なっ た かが 問題 と なる

。そ れは 五 国史 にお け る表 から 序へ の 転化 を思 え ば、 九世 紀 以後 とい うこ と にな ろう

。 国 史の みで な く詩 文集 も 参考 にす ると

…… 弘仁 五 年( 八一 四) 撰 とい う凌 雲 集、 同九 年 撰と いう 文華 秀 麗集

、そ し て 天長 四年

( 八二 七) 撰 の経 国集 のそ れ ぞれ の序 は

、い ずれ も勅 撰 であ るだ け に後 紀以 後 の四 国史 の序 に 似て

、前 世 紀 まで の表 に 代わ る役 割 を果 して いる

。 やは り記 の 表が 序と して 上 巻に 并さ れ たの は九 世 紀以 後、 恐ら く 九世 紀の 始 め では ない か

〈( 青木 和夫 氏 執筆 補注

、序 1

〇こ の序 文 は、 元来 本 文と は別 に添 え られ てい た もの が、 序と し て上 巻に 付 され た時 に

……

〉序 并《 の 二文 字が 加 え られ たも の で、 序文 は上 表 文と して 正 格漢 文で ある が

、〉 序 并《 の用 字は 序文 の 文体 と は別 で、 付加 の折 の 注記 とし て 和風 の語 序 に従 った も ので あろ う。 底 本( 真福 寺 本) では

〉序 并

《の 二字 は 小字 で書 か れて いる

。こ れ も序 文の 本 文 とは 異な る こと を 示す 古形 態 を伝 えた もの で あろ う〈

(小 林芳 規 氏執 筆訓 読 補注

、序

〇 序并

〈) 山口 佳紀 氏

・神 野 志隆 光氏

、 新編 日本 古典 文 学全 集〉 古 事記

《)

(4)

10

〇〉 序《 と ある が、 实 際は 上表 文 の形 式 であ る。 これ を めぐ って 偽 作説 もあ っ たが

、疑 う 根拠 に乏 し く、 そ のま ま信 じ てよ い〈

11

中村 啓信 氏

、角 川 ソフ ィア 文 庫〉 古事 記《

〇内 容は

〉 古事 記

《の 成立 に つい て天 皇に 奏 上す る上 表 文。 そ の上 表文 を序 文 とし て転 用 した もの

〇序 文は

〉 古事 記

《成 立時 の 上表 文で あっ た もの を、 上 巻の 首に 置 いて 転用 し たこ とに 起 源す ると み られ る〈 一先 づ、 こ のく ら ゐに とど め よう

。 全体 とし て

〇上 表文

〈 説が 稍優 勢の 観 はあ るも の の、 日本 思想 大 系本 を除 き

、も う一 つ 曖昧 で、 歯切 れ が悪 い印 象 が ある

。思 想 大系 本 も、 注釈 書 とし ての 制約 か ら、 残念 乍 ら論 拠 の提 示は 十分

、 出来 てゐ な い。 新潮 日本 古 典集 成 本の 説明 は

、こ のテ ーマ が抱 へる 厄 介さ をよ く 示し てゐ る

。一 方で

、〇 上 表文

〈と 言ひ 切 つて ゐる か と思 へば

、 別の 個 所で は〇 上 表文 の形 式を も つ〉 序《

〈と する の だ。 かか る立 場 が存 在 する 以上

、新 編日 本古 典文 学 全集 本の

〇〉 序

《と あ るが

、实 際は 上表 文 の形 式〈 と いふ 説 明だ けで は

、踏 み込 み が足 らな い と云 はざ るを 得 ない だら う

。〇 上表 文の 形式

〈を も つ〇 序

〈の 可能 性が 主 張さ れて ゐる 以 上、 そ の形 式通 り

、上 表 文と 判定 す るの か否 かま で

、言 及す る 必要 が ある から だ。

〇転 用

〈説 は

、傾 聴す べ きも のの やう に 思は れる 一 方、 真 意を 測り 難い と ころ も ある

。全 注 釈本 の説 き方 で は、

〇夙 く 奈良 朝の 初 め頃 から

〈 序と 表を 混同 す るご とき

〇 空気 があ つた

〈 らし いの で、 す でに その 頃( と いふ こ とは

〉古 事 記

《成 立の 当 初か

、そ の 直後 あた り) に は、 巻首 文 は〇 实は 表で あ るの に序 に 転用 され て ゐ〈 たと の考 へ に導 かれ る で あら う。 とこ ろが

、当 時 から

〇序 と表 が非 常に 接 近し てゐ

〈た ので あれ ば、 表を 序に 転用 す るや うな 手間 は 省い て、

〉 日本 後紀

《序 な どの や うに

、始 め から

〇表

〈的 な 序を 書け ば、 そ れで 用が 済 む話 では な いの か。

〉日 本後 紀

《序 他が い かに 表的 な 表現 を伴 つ てゐ たに せよ

、 殆ど 末尾 が

〇云 爾〈 とか

〇 謹序

〈で 結ば れ てゐ る やう に、 それ ら は紛 れも な

313

(5)

く 序で ある

。 とこ ろが

〉 古事 記《 巻 首文 だけ は純 然 たる

〇上 表 文の 形式

〈で 書 かれ てゐ る。 だ から

〇 序に 転用

〈と い ふ説 明の 仕 方 も出 てく る 訳だ

。と い ふこ とは

、該 文 が書 かれ た 当時 は、 逆に

、 まだ 序と 表 の区 別を 曖 昧に すべ きで は ない とい ふ 雰 囲気 があ つ た、 と 見な けれ ば なら ない

。 もし

〇転 用〈 説 が成 り 立つ とす れ ば、 そ れは 序 と表 が〇 接近

〈し

、序 が 表に

〇 代わ る役 割 を果

〈た すや うに な る〇 九 世 紀以 後、 恐 らく 九 世紀 の始 め

〈頃 では ない か

。 角川 ソフ ィ ア文 庫本 の

〇転 用〈 がそ の 頃の 年代 を 想定 して ゐる の であ れば

、 一つ の蓋 然 性の ある 見方 と も云 ひ得 る で あら う。 かく て日 本 思想 大系 本 の立 場が

、最 も 説得 力を 持 つか のや うで あ る。 が、 先 述の 通り 必 ずし も、 十全 な 論証 を伴 つ て ゐな いた め に、 研 究者 の見 解 にな ほ 一致 を見 て ゐな いの が

、实 情 であ らう

。〉 記《 の巻 首 文が 序か 表 かは

、な ほ 未解 決 のテ ーマ と せざ る を得 ない

。 そこ で次 に

、こ の テー マを 巡 る目 下の 研究 状 況の 指標 と して

、二 つ の学 説を 俎 上に 載せ

、 些か 吟味 し てみ よう

(

12)

一つ は、 巻 首文 を 上表 文と 見 る西 條勉 氏の 見 解。 もう 一 つは

、 西條 説を 否定 し、 序 文と 位 置付 ける 矢 嶋泉 氏の 意

(

13)

見 だ。 二 西 條 説 の 検討 まづ 西條 説 を紹 介 しよ う。 尠 しく 長い 引用 に 渉る が御 容 赦戴 きた い

〇表 は一 般 には

、臣 下 が自 己の 見解 を 主張 して 天 子を 悟ら せる た めの 陳情 書 であ る。 書 物を 進上 する 表 は特 殊な ケ 五

(6)

ー スと いえ る が、 その ば あい でも 自己 の 見解 は主 張 され てい るで あ ろう

。む ろ ん書 物の 進 上で ある から 編 纂経 緯な ど が 述べ られ る のは 当然 で ある

。序 との 区 別は 天皇 に 奏さ れる か否 か のち がい で

、こ れが 表 の機 能的 な实 態 であ ろう

。 謙 卑表 現を と る書 式 はそ の機 能 と一 体で ある

。 一方

、序 は 本文 の ため の文 章 であ り、 それ が 機能 的な 实 態な の で、 謙卑 表現 を とる こと は ない はず で ある

。…

… 以上 のこ と から

、序 と 表は 一般 には 区 別さ れる け れど も、 勅撰 の 書物

、、

、、 に、 か ぎっ て 近似 する こと が わか る

。す なわ ち そ の序 は天 子 に奏 する の で表 に接 近し

、 その 表は 編 纂の 経緯 を述 べ るの で序 に 接近 する の であ る。

…… 書 式の 面か ら い えば

、序 の 書式 は々 発 語~ 云爾 〆が 基 本で

、謙 卑 表現 はな い。 表 は文 の首 尾 に謙 卑表 現 をと るこ とは 言 うま でも な い が、 年月 と 署名 も公 式 文書 とし て肝 心 の要 素で あ ろう から

、そ の 書式 は々 臣 某言

~謙 卑 表現

・年 月署 名〆 の かた ち が 基本 と考 え られ る

。…

〉凌 雲集

《 では

〉序

《 と明 記さ れな が ら、 文中 に

〉従 五位 下左 馬 頭兼 内蔵 頭 美濃 守臣 小 野朝 臣岑 守上

《 とい う正 式 の 署名 があ る

。他 の二 集 も同 様だ が、 こ れは 奏上 文 書の 形式 であ っ て一 般の 序と は 異な る。 以下 の 勅撰 詩 集と 国史 に お いて は〉 謹 序《 とし な がら 年月 著名 が 記さ れ、 表 の書 式も 兼ね て いる

。…

… 序と 表の 融 合と みて よい で あろ う。 こ の よう なか た ちは

〉 新撰 姓氏 録

《以 前の もの に みら れな い

。 そこ で古 事 記の 表 に注 目し て みる と、 何と い って も〉 并序

《が 異 例で あ る。 さら に〉 云 爾《

〉 謹序

《と い った 序 の要 素 がま った く みら れ ず、 しか も 謙卑 表現 と年 月 著名 が完 璧 であ る

。…

〉并

《と ある の は、 もと もと 別 個に 存在 して い た文 書を

〉 序《 とし て 并わ せた

、、 措、 置 とし か 考え られ な い。 一方

、 そ れは 表の 書 式で 書 かれ てい る ので

〉并 序

《の 言い 方は

、序 が表 の機 能を 兼 ねる よ うに なっ た頃 の もの と考 え られ る。

… その 時期 は

…… 勅撰 詩 集が 編纂 され る 弘仁 のあ た りと する のが 妥 当で あろ う

。折 しも 弘 仁三 年に は日 本 紀の 講書 が

311

(7)

あ り…

…そ こ で古 事記 が 参照 され たの で

、ひ ょっ と して その とき に 上表 文を

〉序

《 とし て 併合 した 写本 が 作ら れた の か もし れな い

。弘 仁 講書 の博 士 は安 萬侶 と同 族 の多 人長 で ある か ら、 その 可能 性 はつ よい と 思う

。と も あれ

、真 福寺

(

14)

本 の形 態は 原 本の 状 態を 伝え る もの では ない

。安 萬侶 は表 と して 書い たの で

、か れ はそ の 文書 を上 表し た はず であ る

( 傍点 ママ

、 以下 同

) 右の ポイ ン トは 五点

① 元来

、序 と 表は

〇 書式

〈〇 機能

〈双 方に お いて 明確 な 区別 があ る

② 但し

、〇 勅撰 の 書物 にか ぎ って

〈両 者は

〇 近似

〈〇 接近

〈す る

(

15)

③ さう した

〇 接近

〈 は〉 凌雲 集

《以 降の こと で

、〉 新撰 姓氏 録《 よ り前 には 見 られ ない

〉記

《の 巻 首文 は

、書 式に お いて は序 では あ り得 ず、 表 とし て

〇完 璧〈 であ る

⑤〇 并 序〈 との

〇異 例

〈の 表記 に注 目す る と、 まず 巻首 文 が〇 別個 に存 在 して いた 文 書を

〉序

《と して 并わ せ た措 置〈 を 想像 出来

、 かつ

〇表 の 書式 で書 かれ て いる

〈も の を序 と扱 ふの は

〇弘 仁あ た り〈 で、 多 人長 が博 士を 務 めた 弘仁 三 年 の日 本紀 講 書の 際

、〇 上表 文を

〉序

《と し て併 合し た 写本 が作 ら れた

〈可 能性 が ある

以上 で ある

。 もと もと 上 表文 説 の根 拠は

、巻 首 文の

〇 書式

〈に ある

。そ の 点に つ いて 云へ ば〇 完 璧〈 に上 表文 とい ふこ と にな る。 とこ ろが

、 これ に対 し

、序 と表 の〇 接 近〈 が指 摘 され て来 た。 先 にも 見た ご とく

〇上 表 文の 形式

〈の 序 もあ り得 る と の意 見だ

。 これ に対 し

、〇 接近

〈の 年代 を限 定す る こと に力 を注 い だの が西 條 氏だ つた

。そ れ は〇 弘仁 あた り〈 以 降で あ り、

〉新 撰 姓氏 録《 以 前に は 両者 の〇 融 合〈 はあ り得 な い、 と。 一方

、序 文 説の 根 拠は 写本 に

〇并 序〈

(ま たは

〇序 并

〈) と明 記 して ゐる こと だ つた

(8)

西條 氏は こ れも 批 判さ れた

。〇 并〈 を伴 ふの は〇 異例

〈で

、む しろ 巻首 文 が〇 別個 に( 表と して

)存 在 して いた

〈こ と を示 す、 と

。 だが

、こ の 点に つい て 余り 力点 を置 か れる のは 如 何で あら う。 と 云ふ のは

、 夙に 全註 釈 本に

〇并 序〈 に つき

、次 の や うな 指摘 が ある か らだ

〇〉 文 選《 を見 ると

、〉 甘泉 賦

《、

〉漢 高帝 歌

《、

〉 秋風 辞

《、

〉石 闕銘

《、

〉楊 仲武 誄

《、

〉弔

屈原

《、

〉 雑体 詩

《な ど のや う に悉

く〉 并 序《 で ある

。わ が国 にお い ても

。万 葉 集を 見 ると

、〉 令

惑情

歌一 首

序《

〉 思子 等歌 一 首

序《

、〉 梅 花歌 三十 二 首

《(

)、

〉 七言 晩春 三 日遊 覧一 首

序《

)の や うに すべ て〉

(

16)

で ある が、

〉并

《 の字 だけ 小 さく 記し てゐ る 伝本 が多 い

〈( 校異

) 但し

、〇 并〈 を異 例視 する の はと も かく

、写 本に

〇序 并〈 と〇 并序

〈の 両様 の例 が 見ら れる こ とは

、十 分、 問題 とす る に足 るで あ らう

。何 と なら ば、 原文 に 既に さう し た表 記が あつ た とす れば

、勿 論

〇并 序〈 とあ つ たは ずで あ る。 に も 拘は らず

、 たつ た二 字 の書 き写 しに

〇 序并

〈と い つた 顛倒 が起 こ るの は、 余程 珍 しい の では ある まい か

。し かも 最 古 の写 本、 真 福寺 を始 め、 道 果本

・道 祥本

・春 瑜 本に

〇序 并〈 とあ るこ と は軽 視出 来 ない

。〇 并序

〈と ある 最古 の 兼永

17

本 に比 べ、 百 五十 年 程も 古く 遡 るか らだ

。〇 并序

〈よ り 前に

〇序 并

〈が あつ たと す れば

、そ れ は当 に

〇異 例〈 と云 は ね ばな らぬ

。 太安 萬侶 が そん な誤 つた 書 き様 をし た とは 考へ 難い か ら、 後人 の追 記 と考 へ る以 外な いで あ らう

。さ う す ると

、序 文 説は そ の根 拠を 失 ふこ とに なる

。 だが

、結 論 を急 ぐま い

。西 條説 を批 判 して 序文 説 を擁 護さ れた 矢 嶋氏 の見 解 はど のや うな もの か

。次 に それ を取 り 上 げよ う。

309

(9)

三 矢 嶋 説 の 検討 ま たし ても 長 めの 引 用に なる の をお 断り する

〇第 一に

、序 文 が本 来〉 上 表文

《で あ った とす ると

、〉 古事 記

《本 体と は 別に 提出 され た こと にな る が、 現在 の 様態 は 上巻 冒頭 に 置か れ てお り、 形 態の うえ では 本 文に 対す る

〉序

《 と捉 える しか な いこ とで あ る。

…… 真福 寺本 の

〉序 并《 は 確か に不 自然 だ が、 真福 寺 本系 統以 外の 卜 部系 諸写 本 には

〉并 序

《と あっ て、 实際 に はど ち ら が本 来の 姿 であ るか は にわ かに 判断 し がた い問 題 であ る。 ちな み に、 今日

、 真福 寺本 の

〉序 并《 は伝 写 間に 生じ た 誤 写と 見て

、 卜部 系 諸本 によ っ て〉 并序

《と 校 訂す るの が 一般 的で あ る。 第二 に…

… 序文 には 本 文の 記述 の理 解 を支 える 筆 録方 針と 施注 方 針と が記 述 され てい て

…… それ は現 在 の書 籍で い え ば凡 例の 機 能を 果 たし てい る 点で ある

(西 宮 一民

〉古 事 記の 研究

《)

。…

… 第三 に…

… 勅撰 書 の場 合、 序 と表 の表 現が 接 近す る例 が ある こ とで ある

。…

… 天皇 に献 上 され る書 籍 の序 が上 表文 の 表現

・書 式 に接 近す るの は 自然 であ る から

……

〉 古事 記《 序文 が

〉上 表文

《 で なけ れば な らな い 理由 を書 式

・機 能面 から 帰 納す るこ と はで き ない はず であ る

。 西條 は〉 凌 雲集

《よ り 前に は序 表の 混 同例 がな い こと を根 拠の 一 つに 挙げ る が…

…い ず れも

…… 西條 論 の見 通し を 支 える 根拠 と はな ら ない ので あ る〈 一つ 一つ 検 討し て みよ う。 まづ

〇第 一

〈。

〇現 在の 様態 は

…… 本文 に対 す る〉 序《 と 捉え る しか ない

〈と 言 ふの であ る

。 これ は、 些 か不 思議 な 反論 では ある ま いか

。写 本 の〇 現在 の様 態

〈が 原本 の 原型 を忠 实 にと どめ てゐ る 場合 も、 無 論 あり 得る で あら う。 だ が一 方で

、大 き な変 更を 蒙 つて ゐる 可能 性 も、 決し て尠 な くは ない ので あ る。 従 つて

、両 方 九

(10)

の 可能 性を 睨 み乍 ら

、出 来る 限 り原 型の 復原 に 努め

、そ れ をも とに 判 断す る慎 重さ が 欠か せ ない はず だ

。 例へ ば〉 新 撰姓 氏録

《 の場 合も

、上 表 文が その 巻 首に 据ゑ られ て ゐる

。だ が

、そ れが 元 は別 個の 文書 で あつ たの は 更 めて 云ふ を 俟た な い。 それ で も序 文と 紛れ な いの は、

〇上 新撰 姓 氏録 表〈 と明 記 され てゐ る のと

、 別に 独立 の〇 序

〈 が 備は つて ゐ るか らに 他 なら ない

(但 し 菊亭 本・ 柳 原本 等の 建武 系 本に は存 す るも のの

、 延良 本・ 御巫 本 等の 延文 系 本 には 欠い て ゐる

。田 中氏 前出

〃 15

〄参 照)

。も し序 を欠 く延 文 系本 のみ が 伝は り、

〇 上新 撰 姓氏 録 表〈 が 書か れ てゐ な けれ ば( 延良 本・ 御巫 本 には

〇上

〈の 字な し)

、一 体、 どう 判断 さ れる のか

。書 式 とし ては

〇完 璧

〈に 上表 文の 形式 を 整へ てゐ て も、

〇現 在の 様 態〈 によ つて 序 文と 見做 され る ので あら うか

( 尤も

、〉 日本 紀 略《 弘仁 五年 六 月一 日条 に

奉 勅

撰 姓 氏録

、至

是而 成

。上 表 曰云 々〈 と ある の など も勘 案す れ ば、 書 式と の一 致 は無 視し 難く

、や はり 上表 文 と判 定さ れ るで あ らう

)。

( 18

〉延 喜 式《 の 場合 は どう か。 九 条家 本・ 一 条家 本 など は上 表 文を 欠く

。元 は 表は 別 紙ゆ ゑ、 こ れが 本来 の 姿で あ る。 だ が他 の諸 本 には 巻 首に それ を 収め

、し かも 冒頭 の〇 上延 喜 格式 表〈 の〇 上〈

〇 表〈 を欠 き

、末 尾の

〇等 上表

〈を 脱す

( 19

る もの もあ る

。か う なる と〇 現 在の 様態

〈と し ては 殆ど 序 に近 い と見 られ なく も ない であ ら う。 それ で も紛 れな いの は

、や はり 別 に序 が 存す る為 で ある

〇 現在 の様 態

〈が

〇冒 頭 に置 かれ て〈 ゐ る点 では

、〉 新撰 姓 氏録

《・

〉 延喜 式

《の 上 表文 も〉 古事 記

《と 同様 であ つ て、 こ の事 实の み から 直 ちに 序文 で ある こと を主 張 する のは

、 稍無 理 があ らう

。 又、

〇序 并〈 か〇 并序

〈か の 問題 につ い て、 氏は

〇实 際に は どち らが 本 来の 姿で あ るか はに わ かに 判断 し がた い〈

〇〉 并 序

《と 校訂 す るの が一 般 的〈 とさ れ る。 だが 先述 のご と く、

〇并 序〈 はも と〇 序 并〈 と あつ たの を転 写 の間 に改 め たと 考 へら れる の で、 太安 萬 侶が 巻首 文を 書 き上 げた 時 点で は、 存在 し なか つた はず で ある

。つ まり

〇 序并

〈 も〇 并序

〈 も ない のが

〇 本来 の 姿〈 だつ た であ らう

(实 は 後述 のご と く、 氏自 身

、一 方で か うし た可 能 性も 想定 さ れて ゐる

)。

一〇

307

(11)

〇第 二〈 は

〇凡 例の 機 能を 果た して い る〈 から 序 文で あら うと す る。 だが

、 序を 伴は な い表 がさ うし た

〇機 能〈 も 求 めら れる の は当 然で あ つて

、こ のこ と が巻 首文 を 上表 文に あら ず とす る根 拠に な り得 な いの は、 自明 で はあ るま い か

。現 に、 氏も 認め られ て ゐる やう に、

〉続 日本 紀《 の延 暦一 三 年の 上表 文 には さう した 性 格が 看取 さ れる の であ るか ら

、何 をか 云 はん や

、で ある

〇第 三〈 は

、序 と 表の

〇接 近

〈が

〉古 事記

《 の頃 まで 遡 つて 存在 し てゐ た可 能性 が ある と 云ふ ので あ る。 氏は まづ

、〉 古 事記

《と 同 様、

〇上 表文 の形 式を お そう 序文 の 例は 实は 相 当数 に上 る〈 と して

、〉 凌雲 集《

〉文 華秀 麗 集

《〉 日本 後紀

《〉 経 国集

《〉 令集 解

《〉 続 日本 後紀

《〉 文徳 天 皇实 録《

〉 日本 三 代实 録

《の 八点 を挙 げた

。だ が

、こ の中

〉 凌雲 集《

〉経 国集

《を 除 く六 点 は、 全て

〇茲 序〈

〇謹 序〈 とい ふ序 文 であ るこ と を明 示す る 文言 を含 む。 更に

〉凌 雲

( 20

〉 経国

《二 集 の場 合も

、〇 誠惶 誠 恐、 頓首 頓首

〈と い ふ上 表 文に つき も のの 定型 的表 現 は見 ら れな い。 凡そ

〉 記《 の巻 首 文と 同列 に 論ず る こと を得 な いの は、 明白 で あろ う。 繰り 返す が

、〉 記《 巻首 文の 場合

、序 的要 素は 皆無 で あつ て、 且 つ上 表文 と して は 完璧 の形 式 を備 へて ゐる

。如 上の 諸 例と は、 事 情が 全 く異 なつ て ゐる と云 ふ他 な いで あら う

。 次に

〉凌 雲集

《よ り前 の〇 序 表の 混同 例

〈と して

、〉 続日 本紀

《と

〉歌 経標 式《 を挙 げ てを られ る

。だ が果 たし て如 何 か。

〉続 日本 紀

《の 両 上表 文は 註

( 14

)で 見た や うに

、冒 頭・ 末 尾の 省 略を 認む べ きで あら う から

、簡 単に

〇 混同 例〈 な どと は云 ひ 難い で あら う。

〉歌 経標 式

《の 巻首 文 は序

・表 いづ れ の標 記も 持 たな い。 しか し

、書 式か ら 見る 限り

、 明ら かに 上表 文 とす べき で あ る( 西條 氏 もこ れ を表 とさ れ た)

。 とこ ろが 矢 嶋氏 は、 こ れを

〇混 同例

〈 と見 たい や うで ある

。根 拠 は二 点。 一 つは

、同 書 の跋 文も 上表 文 的表 現を 伴 一一

306

(12)

ふ と氏 が見 て ゐる こ と。 だか ら〇 巻首 文 を単 に書 式 や言 辞の 面か ら〉 上 表文

《と 決 めつ けて しま う

〈の は〇 危う

〈い

、 と 云ふ ので あ る。 も う一 つは

、 巻首 文に は同 書 の主 題と 主 題設 定 の理 由が 述べ られ て ゐて

、〇 機能 面 から いえ ば

〉序

《 以 外の 何も の でも な い〈 と。 だが

、跋 文 に〇 謹言

〈 など の謙 卑表 現 が見 える の は、 天皇 の〇 制

〈を 奉つ て刪 定 した もの を献 上 する 為 に必 要な 措 辞 だつ たの で あつ て

、こ れを 上 表文 の書 式を 完 備し た巻 首 文と 等 し並 みに 扱ふ 訳 には いか な いで あら う

。 又、 序を 伴 はな い場 合

、既 述の やう に 表中 に凡 例 的、 序的 内容 を も包 含す る に至 るの は 理の 当然 であ つて

、 その こ と を以 て〇 機 能面 か らい えば

〉 序《

〈と し、 上表 文で あ るこ と迄 疑 問視 する のは

、 早計 で あら う。 なほ 氏は

、〉 歌 経標 式《 巻 首文 に 序・ 表 の標 記が ない の は〉 古事 記

《に 元 々そ れが 無く

、そ れに 倣つ たの か も知 れな い

、と の〇 憶 測〈 を 述べ てを ら れる

〇(

〉記

《の 巻 首文 を上 表文 と 見た 場合

)本 来あ った はず の〉 上 古事 記表

《〉 進 古事 記表

《と い った 表 題は ど う処 理さ れ たの かが 問 題と な る。

〉歌 経標 式

《の 巻 首文 のあ りよ う を前 提と す れば

、む し ろ( 藤 原) 浜 成が 参 考と した

〉 古事 記《 上 巻に は〉 上 巻《 との み あっ て〉 并序

《 の記 述が な かっ た可 能性 も ある ので はな い だろ うか

。…

〉古 事 記《 序文 は

〉 進五 経正 義 表《

…… を 下敷 きに して 作 文さ れて い る。 それ は元 明

(天 皇) に 献上 する た めに 必要 な措 置で あ った と 理 解さ れる が

、そ の結 果、 序文 は著 しく 上 表文 的な 様相 を帯 びる こと に なる

。漢 籍に 無縁 な人 物で あ れば とも かく

〉 表《 を下 敷 きに して 作 成し た序 文に

〉 序《 と標 記 する こと に、 安 万侶 は躊 躇 しな かっ ただ ろう か

。そ れも 表 的序 の 伝 統が いま だ 形成 さ れて いな い 時期 にで ある

〈 と。 右の 一文 で

、矢 嶋 氏が 限り 無 く上 表文 説に 近 づい てを ら れる の を、 御自 身は ど れだ け気 付 いて をら れ ただ らう か。

〇表 的序 の 伝統 がい ま だ形 成さ れて い ない 時期 に

〈〇 元明

(天 皇) に献 上 する た めに 必要 な措 置

〈と して

〇〉 表《 を 下 敷き にし て 作成 した

〈〇 著 しく 上表 文的 な 様相 を帯 び〈 た 文章

。そ れに 対 して 安萬 侶 本人 も〇

〉序

《と 標 記す るこ と

一二

305

(13)

…… 躊躇 し

〈た だ らう と云 ふ のだ

。そ れを 猶 も序 文と 断 定出 来 る根 拠は どこ に ある のだ ら うか

。 抑も

〇表 的 序の 伝統 が いま だ形 成さ れ てい ない 時 期に

〈天 皇の

〇 詔〈 を承 つて 撰 録し た典 籍を 献 上す る のに

、上 表 文 を欠 くと い ふ無 礼 が赦 され た ので あろ うか

。 安萬 侶が 漢 籍の 各 種序 文で はな く

、〇 進 五経 正 義表

〈〇 進律 疏 議表

〈の

( 21

二 つの 上表 文 を主 な 模範 とし た のは

、彼 が書 か うと して ゐ たの が 当に 上表 文だ つた 為 と考 へ るの が、 最 も素 直で あら う

。従 つて

、 元の 標記 に は〇 上( 進) 古 事記 表〈 な どと あつ たは ず で、 それ が本 文 と并 せら れて

〇 序〈 に 転用 され る 際 には 当然

、 削ら れる こ とと なつ た。 そ の時

、代 は りに

〇序 并〈 と 書き 入れ られ

、 後に は

〇并 序〈 と訂 し た写 本も 作 ら れる に至 る

。か う 考へ れば

、〇 標題 はど う 処理 され た のか

〈も 特 に〇 問題

〈に は なら な いで あら う

。 以上 で、 舌 足ら ず乍 ら 矢嶋 説の 検討 を 取り 敢へ ず 終へ るこ とと し たい

。や は り序 文説 の 維持 は相 当、 困 難で あつ た と 云ひ 得る で あら う

。 四 上 表 文 説 の補 強 材 料 これ まで の 検討 に よつ て、

〉記

《の 巻首 文は 元来

、序 文で は なく 上表 文だ つた と 考へ 得 るこ とが

、ほ ぼ明 ら かに なつ た であ らう

。 以下

、 さう した 見 方を 補強 する 一

、二 の点 に 簡単 に 触れ てお くと と する

。 その 一は

、〉 日 本書 紀《 に は当 然、 上表 文 を伴 つた で あら う、 と いふ こと

。 六国 史を 通 観す る と、

〉続 日本 紀《 は 前述 の通 り 表を 備へ る もの の、 序 は無 く、 以 下の 四 国史 は逆 に〇 表

〈的 な 序の み を持 つ。

〉日 本 書紀

《は 現 在、 表・ 序と も 欠け てゐ る

。だ がそ の 完成 につ い ては

、〉 続紀

《養 老 四年 五月 癸酉 条 に、 先

是、 一 品舎 人親 王奉

勅修

日本 紀

。至

是功 成奏 上。 紀 卅巻

、系 図 一巻

一三

(14)

と ある

。〇 勅〈 を奉 つ て正 史を 完 成さ せ、 それ を 天皇 に〇 奏 上〈 した ので あ る。 表的 序 の無 い段 階で

、上 表 文を 欠 いて ゐ たと は、 到 底、 考 へる こと が 出来 ない であ ら う。 一方

、序 文 は無 かつ た と思 はれ る。 も しそ れが あ つた なら

、本 文 とは 別紙 に認 め られ る 上表 文と は違 ひ

、本 文と 一 体 ゆゑ

( 殊に

〉 書紀

《の やう な正 史の 場合

)序 文だ けが 全く 伝 はら ない と いふ 事態 は

、凡 そ 想定 し難 いか ら だ。 且 つ、 他 の五 国史 に 表・ 序 共備 へる 例 は無 い。 かく て、

〉紀

《 と〉 続紀

《 には 表だ けが あ つて

、序 は無 く

、〉 日本 後紀

《以 降

、表 的序 の みを 備へ る形 へ と推 移し た と 考へ るこ と が出 来 よう

。 この こと は

、〉 記《 の 巻首 文の 性 格を 考へ る 際に も、 一 定の 示唆 を 与へ てく れ るは ずだ

。即 ち

、そ の 書式 お よび

〇序 并

〈の 非 本来 性 と相 俟 つて

、時 代の 趨勢 の点 か らも

、上 表 文の み を備 へて ゐ たと 考 へる のが 妥 当で はあ るま い か― と。 その 二。 こ ちら は

、真 福寺 本 に認 めら れる 奇 妙な 書き 様 につ い て。

( 22

よく 知ら れ てゐ る やう に、 同本 では 巻首 文の 末 尾と 本文 の 冒頭 と が、 改 丁も 改行 す らも なく

、そ の儘 繋が つ てゐ る。 新 潮日 本古 典 集成 本 には

〇こ の 形式 だと

、〉 序《 だ けを 省 略し てす ぐ〉 本文

《に 入る こと は 防げ る であ ろう

。そ う した 配 慮が あつ た であ ろ うこ とが 十 分推 測で きる

〈 と述 べる も のの

、 まさ かさ うし た

〇配 慮〈 が あつ たと は 考へ にく い。 ここ で注 意 すべ きな の は、 もし 巻首 文 が当 初か ら 序文 だつ た場 合

、転 写の 間に か かる 書き 様が 生 まれ る 可能 性は

、 か なり 低か つ たと 見 なけ れば な らな いこ とだ

。 書き 写す 者 の態 度に よ つて

、一 行当 た りの 字数

、 一面 当た りの 行 数に 多尐 の変 化 は生 じ ても

、序 文の 後

、改 丁又 は 改 行な どし て 書き 始め ら れた 本文 を、 そ の儘

、一 字 の余 白も 空け な いで 書き 続 ける とい ふ 事態 は、 普通

、 先づ あり 得 な いこ とで は ある ま いか

。 何故

、こ の やう な こと が起 こ つた のか

一 四

303

(15)

蓮田 善明 氏 は真 福 寺本 の書 写 態度 につ いて

、以 下の ごと く述 べ てを られ る。 即 ち、

〇書 寫 後僅 か に二 校を 經 たに 止ま つ てゐ るけ れ ども

、原 本 に對 比す ると い ふ點 では 可 成り 忠實 綿密 で あつ たと 言つ て よく

、そ の點 に 就い て は可 なり 信 憑 して よい

。 但し

、 信憑 して よ いと いふ こと は 決し て書 寫 面の 結 果と して では な く、 書寫 の 態度 に就 い て言 ふの であ

( 23

( 24

〈と

。も し これ を 信じ てよ け れば

、先 の書 き 様は その 底 本以 前に 遡 るこ とに なら う

。 いつ の時 点か は もと よ り特 定し 難 いも のの

、 別紙 に書 かれ て ゐた 巻 首文 を本 文 の前 に据 ゑ た際

、巻 首文 末 尾の

〇正 五 位上 勲五 等 太朝 臣安 萬 侶〈 と本 文冒 頭 の〇 天地 初 発之 時〈 が隣 の 行に 相接 し て書 写さ れ

、転 写の 間に 一 行当 たり の 字 数が 変化 す るな ど のこ とが あ つて

、〇 臣安 萬 侶〈 が次 行 に送 り込 ま れて 了ひ

、今 見る やう な形 態 が生 じた の では ある ま いか

。し か も改 行冒 頭 は〇 臣安 萬侶

〈 で、 一見

、 不合 理を 感じ さ せな い形 で あつ たこ とも

、か う した 書 き様 が訂 正 も され ず受 け 継が れる 一 因と なつ たの か も知 れな い

(前 行末 尾も

〇 正五 位上 勲五 等 太朝

〈 で何 とな く看 過 され たも の か

)。 蓮田 氏が 指 摘さ れた

〇 読む

〈よ り〇 書 写〈

〇所 蔵〈 に重 き を置 く風 が 以前 から あつ て、 さ うし た事 情が 作 用し て ゐ たと 見る こ とも 出 来よ う。 無論

、さ う であ つて も

、元 々、 序文 と して 本文 と の区 別を 立て て 巻首 に収 め てを れば

、 かう した

、形 態 は生 まれ に く かつ たは ず では ある ま いか

。真 福寺 本 以外 の諸 本 に同 様の ケー ス はな く、 そ れな りの 注 意が 払は れつ つ 書き 写さ れ て ゐる ので あ れば

、 序文 と本 文 が混 在す る事 態 には なり に くい で あら う。 さう する とこ れ も巻 首 文は 本来

、 別紙 に書 か れた 上表 文で あ つた との 見 通し を補 強 する

、 一材 料た り得 る ので はあ る まい か。 も とよ り 強力 な支 証 とす るに は及 ば ない が、 参 考に 備 へる こと は許 さ れる であ ら う。 一

302

(16)

を は り に

巻 首 文 の 意 義 上述 によ つ て、

〉古 事記

《 巻首 文の 性格 は 本来

、序 文で は なく

、上 表文 で あつ たこ と が、 ほぼ 理解 し 得た であ ら う。 そ れが 本文 の 前に 収め ら れ、

〇序 并( 并序

)〈 の表 記 を伴 ひ、 序 文に

〇転 用

〈に せら れる に 至つ たも のと 推考 し 得る

。 そ の時 期に つ いて は

、〇 恐 らく は 九世 紀の 始め

〈( 日本 思想 大 系本

)と か、

〇 弘仁 の あた り…

… 弘仁 三年 には 日 本紀 の講 書 があ り…

… ひょ っ とす ると そ のと き〈

(西 條氏

)な ど の見 方 が示 され てゐ る

。無 論、 確 証を 欠く 臆測 で はあ る もの の、 こ れを 否定 す る反 証 が現 れる ま で、 一応

、こ れ を目 安に し てよ いの で はあ るま いか

。 では

、巻 首 文が 序文 で なく 上表 文で あ つた とす れ ば、 該文 の意 義 につ いて

、ど の やう な 見直 しが 求め ら れる こと に な るの か。 こ の点 に つい ては

、 夙に 以下 のご と き指 摘が あ つた のを 想 起す べき であ ら う。 即 ち

〇こ の上 奏 の文 を正 し く解 釋す る時 に 古事 記の 本 質が 明ら かに な るで あら う と思 ふも の であ る。 何と な れば これ は 上 表で ある

。 當代 の帝 徳 を頌 する 辭令 な どは 別で あ るが

、そ の事 業 の本 旨を 上奏 す るに

、 かり そめ にも 虛僞 や 誇張 が あ つて はな ら ない の であ る〈

(山 田氏

〉古 事 記序 文講 義

《前 出)

〇普 通の 序 文で あれ ば

、時 に依 ると 事 實を 曲げ た り、 飾つ たり し て、 體の 宜い こ とを 書き ます が

、是 は 元來 は勅 命 に 依つ て撰 録 して

、そ れ が出 來上 つた に 依つ て、 其 の出 來上 りま し たと いふ 御報 告 を申 上げ ると 云 ふや うな こ とが 主 眼 なの であ り ます

。隨 つて 陛下 の 視聽 を汚 し奉 つ て、 有 名無 實 の事 柄、 或は 唯體 裁の 宜 いこ とと か 云ふ やう な こと を、 文 章を 飾つ て 申上 げ る譯 のも の では ない ので あ りま す〈

(山 田氏

〉 古事 記概 説《 前 出)

〇 もと もと 詔 は作 製や 書 写の 途中 で 誤り を犯 す と処 罰さ れ る( 職 制律 24

)。 上表 文の 中 で誤 って も 同様 であ る( 同

26

)。 安 万侶 は文 中で も〉 詔《 の 部分 には 細心 の注 意 を払 って 敷文 講句 した 筈で あ る〈

( 日本 思想 大 系本

、補 注序

13

、 青木 氏 執筆

)と

一 六

301

(17)

以て

、上 表 文で あ るこ とが ほ ぼ確 認さ れ得 た 該文 の重 要 さは

、察 す るに 余り ある で あら う

。 註

( 1)

〉 日本 漢 文學 史《 増訂 版( 平成 八 年、 吉川 弘文 館刊

)。 初出 は 昭和 四年

。こ れ以 前、 吉 岡徳 明〉 古事 記伝 略《

(明 治 一六 年刊

) に〇 今謂 らく

、 此序 文は

、多 く 孔頴 達( 長孫 無 忌の 誤り

) が、 五経 正 義上 表の 文に 拠 れた りと 思ゆ れ ば、 序と は 云ど も表 文な り

〈と の言 及が あ つた と云 ふ( 倉 野憲 司 氏〉 古事 記全 注 釈《 第一 巻・ 序 文篇

、昭 和四 八 年、 三省 堂 刊)

。〇 上五 経正 義表

〈 は〇 進…

…〈 と も。

( 2)

〉古 事記 序 文講 義《

(昭 和一

〇年

、 京文 堂刊

)。 同氏

〉 古事 記概 説《

( 昭和 一五 年、 中 央公 論社 刊) に も〇 序文 に 斯 んな

〉臣 安 萬侶 誠惶 誠恐 頓 首頓 首《 と書 く 譯は ない

。元 來 是は 上表 文 であ りま す

。古 事記 の撰 録 を仰 せ付 けら れ たに 付い て

、そ れが 出 來上 つた か らそ れを 奉る 時 の表

、 もつ と詳 し く言 へば 進書 表 であ りま す

〈と

( 3) 表( 上表 文) につ い ては

、例 へ ば次 のご と き説 明が

、簡 に して 要 を得 てゐ る であ らう

。〇 皇 族や 臣下 から す べて 天 皇・ 太 上天 皇に 上る 文 書〈

(〉 国史 大辞 典

《第 一一 巻

、飯 倉晴 武 氏執 筆

)、

〇 太政 官 を経 ず、 直 接中 務 省に 提出 し、 中 務卿 が天 皇 に奏 進す る建 前 であ った が、 实 際に は太 政官 を 経由 し てな され たら し い。 我が 公式 令 には その 書式 は 定め られ て いな いが

、後 漢の 蔡 邕の

〉独 断《 に は、

〉表

《の 書式 につ いて

、〉 臣某 言《 と書 き出 し

、〉 臣 某、 誠惶 誠 恐、 頓首 頓首

、死 罪死 罪《 と結 び、 左方 の下 附 を〉 某 官、 臣某 甲、 上《 と記 すと ある

〈( 虎尾 俊哉 氏編

、訳 註日 本 史料

〉延 喜 式《 上、 平 成一 二年

、 集英 社刊

、 補注

〇上 表

・目 録・ 序

〈虎 尾氏 執筆

( 4) 昭和 四 一年

、 加藤 中道 館 刊。

( 5) 倉野 氏 前出

( 1)

一七

(18)

( 6) 第一 巻

、昭 和 五〇 年、 平 凡社 刊。

( 7) 昭和 五 四年

、新 潮社 刊

。西 宮氏

〉日 本上 代 の文 章と 表 記《

( 昭和 四五 年

、風 間書 房 刊) には

〇表 と序 と 甄別 でき る のは

、懷 風 藻( 天平 勝宝 三 年) 序と

(新 撰

)姓 氏録 表 と序 の二 つ に過 ぎな い。

…純 粋な 表や 序 は僅 かに 二例 に 過ぎ ず、 他 は何 れも

〃表 的 序〄 と〃 序的 表

〄の 如き 歪 曲さ れた 姿 をも つも ので あ ると 言へ る。

…歌 經標 式・ 續 日本 紀以 降 に歪 曲さ れた 序 や表 とい ふも の が普 通に 見ら れ るわ け であ るか ら、 そ れ以 前に 古事 記 の序 文が 歪曲 さ れた 姿で 存 在し ても 一向 に 差支 へな い〈 と ある

。同 氏〉 古 事記 の研 究

《( 平成 五年

、お う ふう 刊) も、

〇安 萬侶 は

〉序

《を 記 す場 合、

〉上 表文

《 の形 式を 襲つ た

〈と 序文 説 に立 つ。

( 8) 昭和 五 七年

、 岩波 書店 刊

( 9) 平成 九 年、 小 学館 刊。

( 10

)偽 作説 を巡 つて は 拙稿

〇記 序 偽書 説の 批 判的 検討

― 近時 の三 浦 佑之 氏〉 偽 造《 説を 中 心に

〈(

〉 麗澤 大 学紀 要

《 八 四巻

、〉 季刊

邪馬 台国

《 一〇 四号 に再 録

)な ど参 照

( 11

)平 成二 一年

、角 川 学芸 出版 刊

( 12

)西 條勉 氏〉 古事 記 の文 字法

《( 平成 一

〇年

、笠 間 書院 刊) 第 四章

〇偽 書 説後 の上 表文

〈。

( 13

)矢 嶋 泉氏

〉 古事 記 の歴 史意 識

《( 平 成二

〇年

、吉 川弘 文館

)〇

〉 古事 記

《序 文 をめ ぐ る諸 問題

― 偽書 説 を読 む( そ の 三)

〈。

( 14

)西 條氏 は 同論 中、

〉古 事 記《 か ら〉 延 喜式

《に 至る 序・ 表 の〇 書 式〈

〇 機能

〈〇 名 称〈

〇成 立

〈〇 文頭

〈〇 文 末〈 の 一 覧表 を作 つて を られ る。 但 し日 本 思想 大系 本

(前 出 青木 氏補 注 序1

)に

〉類 聚国 史《 収 載の

〉 続日 本紀

《 延暦 一 三年

・一 六 年両 度の 表に つい て〇 恐ら く冒 頭に

〉臣

…… 等言

《、 末 尾に 年月 日と 名が あっ たの を省 略 して

〈ゐ る と指 摘し てを り

、ほ ぼ首 肯 すべ き見 解 であ らう

一八

299

(19)

( 15

)通 常

、〉 凌 雲集

《の 成立 が弘 仁 五年

( 八一 四

)と 考へ られ てゐ る のに 対し

、〉 新撰 姓氏 録《 の方 はそ の 翌弘 仁六 年 の完 成と 見 られ てゐ る。 そこ で西 條氏 もさ うし た理 解に 立ち つつ

、一 覧表 では

〇ほ ぼ年 代順 に並 べ たが

、〉 新 撰 姓氏 録《 と

〉凌 雲集

《は 入れ かえ てあ る〈

。 その 理由 につ いて

、序 と表 の〇 接近

〈が

〇そ のあ たり に 一線 があ り そう に思 われ る から だ〈 と 言ふ

。 だが

、 さう し た恣 意的 な 操作 は、 む しろ

〇 一線

〈 につ いて の 疑念 を抱 か しめ る やり 方で はあ る まい か。

〉 姓氏 録

《撰 述 を巡 つ ては

、〇 日 本紀 略に 謂 ふと ころ の 弘仁 五年 六 月一 日上 表 とは 第一 回 の撰 述で あり

、ま た現 行序 文 は、 や や後 補 訂正 の跡 が 見ら れる が、 元来 第一 回 上表 の際 に記 され た もの

…現 行 上表 文の 撰述 期 日に つい て は、 普通 の刊 本に 記す と ころ の弘 仁 六年 七月 二十 日 が至 当

〈と さ れて ゐ る( 田 中卓 氏

〉新 撰姓 氏 録の 研究

《平 成八 年、 国書 刊行 会刊

)。 か うし た経 緯を 踏ま へれ ば、 その 序は もと より

、 表も 五年 起 草上 表の 形式 を 基本 的に 踏 襲し たで あ らう こと は 容易 く想 像 し得 る。 とす れば

、尠 くと も表

・ 序の 扱 ひに つい て は

、〉 新撰 姓氏 録《 を〉 凌雲 集《 の前 に 置く こと に一 定の 妥当 性を 認め 得る であ らう

。よ つて 西條 氏 の操 作は 結 果的 には 支持 出 来る

。が

、 その 文献 上 の根 拠を 明 示さ れる べ きで あつ た らう

( 16

) 小野 田光 雄氏

、 神道 大系

〉古 事記

《( 昭和 五二 年、 神道 大 系編 纂会 刊) にも

〇并 序〈 の 校異 に〇 中国

・朝 鮮・ 上 代 日本 の諸 文献 の、 序を 并戴 す るも のは すべ て〉 并序

《を 用 い、

〉序 并《 の 例は 見な い〈 と ある

。〇 并序

〈〇 序 并

〈の 語順 の問 題 乍ら

、〇 并〈 を 付す 例が

〇異 例

〈で ない と の立 場が 前 提と なつ てゐ る

( 17

)も と〇 并序

〈と ある の を、 態々

〇序 并

〈と 書き 改 める 可能 性 は限 り無 く低 い であ らう

。逆 に〇 序 并〈 とあ れ ば、 多 尐 漢文 の素 養の ある 者な ら〇 并 序〈 と訂 すの が普 通で はな い か。 現在 の校 訂者 の多 くが さ うし てゐ るや うに

。 現 行の 校訂 本で は〇 并序

〈と す るの が通 例で ある

(神 道 大系 本前 出〃 16

〄。 西 宮氏

〉古 事記

《 修訂 版、 平成 一二 年

、 おう ふう 刊等

)。 だ が、 それ は該 表記 が 安萬 侶の 手に なる もの で、 従 つて 正格 漢文 とし て の語 順で 書か れて ゐ たこ とを 前提 と して

、内 外 の類 例 も参 照し

、兼 永 本等 の表 記 に従 つて ゐ る迄 のこ とで あ る。 前 出の 思想 大 系本 一九

(20)

訓 読 補注 の以 下の ごと き指 摘も 顧 慮さ れて 然る べき であ らう

。 即ち

、〇 正格 漢 文と して は〉 并 序《 の語 順が 正し い

。し かし 古 事記 の伊 勢 系本 がす べ て〉 序并

《と 書 くの は 古形 を 止め たと 見る 余 地が ある

…… 付加 の 折の 注記 と して 和風 の語 序 に従 った も ので あ ろう

〈と

( 18

)新 訂 増補 国史 大系

〉延 喜式

《前 篇〔 普 及版

〕( 昭和 五六 年、 吉川 弘文 館刊

)〇 上 延喜 格 式表

〈鼇 頭 に〇 條本 九本 貞 本不 載此 上表

〈 とあ る

( 19

) 雲州 本所 引 貞享 本に

〇上

〈〇 表〈 を欠 き( 日本 古典 全集

〉 延喜 式《 第一

、昭 和二 年、 日 本古 典全 集刊 行會 刊)

、 土 御門 本( 訳注 日 本史 料

〉延 喜式

《 上前 出〃 3〄

)・ 伴信 友書 入 本所 引京 本

(前 出日 本古 典 全集 本

)に

〇等 上 表〈 を 欠く

( 20

)〉 新撰 姓 氏録

《の 上 表文 にも この 謙 卑表 現が 見 えて ゐな い もの の、

〇謹 詣闕 奉進

……

〈と あ り、 もと より

〇謹 序〈 な どの 序的 表現 は 含ま な い。

( 21

)勿 論、 序文 の類 も 部分 的に は 参考 にし て ゐる

。全 註 釈本 参 照。

( 22

)〉 国宝 真福 寺 本 古事 記( 全 三帖

)《

(昭 和 二〇 年、 立命 館大 学 刊)

、〉 国宝

福眞 本 古 事記

《( 昭 和五 三年

、桜 楓 社刊

)等

( 23

)〉 古 事記 學抄

《( 昭和 一八 年

、子 文書 房刊

)。 他に 次の や うな 評言 も 見え てゐ る。

〇眞 福寺 本成 立 の内 面 的動 機と 経 過と が、 果 して 古事 記 内容 への 欲 求が どの 程度 迄 に進 んだ も ので あつ た か、 換言 す れば

〉 讀む

《こ と に强 い目 的 と成 果と が見 出 され た のか

、或 は もつ と單 純に 殆 ど〉 書寫

《 し〉 所藏

《 しよ うと す るに と ヾま るも の であ つた か

。私 は後 者の 方 が事 實 であ ると 考 へざ るを 得な い

( 24

) 真福 寺本 の底 本 を巡 つて は、 古賀 精一 氏に 次 のご とき 言及 があ る。

〇吉 田定 房の 所望 で

(大 中臣

)親 忠本 を借 請 けて 書寫 した と いふ 無 名氏 の古 事 記は

、實 は能 信

(或 は 他の 一子

) が、 父

(度 会) 家 行の 命に よつ て 書寫 した

297

(21)

も ので

、そ の 一本 が類 聚神 祇 本源 に 引用 され

、の ち に能 信に よ つて 眞福 寺 に齎 され て、 現 存眞 福寺 本 古事 記 の書 本 と なつ たの では ある まい か

〈(

〇 眞福 寺本 古事 記攷

〈〉 国 語国 文

《一 三巻 五号

、昭 和一 八年

) と。 但し

、真 福寺 の 開山

、能 信を 家行 の 子と する 説 は正 しく な い( 西田 長男 氏〇 在伊 勢古 鈔本 と 在尾 帳 古鈔 本と の関 係 に就 て〈

〉神 道 史の 研究

《第 二

、昭 和 三二 年、 理 想社 刊)

二一

(22)

295

参照

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