イギリスにおける本人無能力時の任意代理権存続に 関する二つの先例 : ドゥルー対ナン事件(Drew v.
Nunn (1879) 4 Q.B.D.661)とヨング対トインビー事 件 (Yonge v. Toynbee [1910] 1 K. B. 215) (上)
著者 志村 武
雑誌名 静岡大学法政研究
巻 2
号 1
ページ 189‑209
発行年 1997‑08‑30
出版者 静岡大学人文学部
URL http://doi.org/10.14945/00008809
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︹控訴 判院 決︺ の前 半部 分 実︵事 と当 事者 間 の訴 答手 続 の部 分︶ の︑ 文全 訳 で あ る︒ ヨン グ対 イト ンビ ー事 件 の後 半部 分
︵判決 部分
︶ の全 文訳 と︑ こ0 二 つの 判決 の検 討 に つい ては 今︑ 後 の研 課究 題 とし た い︒ ド
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︺決 法 政研 究 二巻 一号 一︵ 九九 七 年
︶
本 件 は︑ 被 告 が精 神 障 害 房含 営 C であ たっ 間 に商︑ 人 よに っ て被 告 の妻 にそ の注 文 応に じ て供 給 さ たれ 商 品 の代 金 を 回復 よし う とし 提て 起 され た訴 訟 であ る︒ 以 下 の事 実 が メ ラ ー裁 判 官 面の 前 に お いて な さ れ た事 実 審 理 で証 明 さ れ たも の あで る︒ 被 告 の妻 は 八一 七 二年 に原 告 と取 引 を 始 め た︒ 被 告 は妻 が くい つか 商 品 を 注文 した 時 にそ 場の に いて
︑ そ 代の 金 支の 払 も し て いる ︒ 一八 七 三年 に被 告 は病 気 にな り︑ そ の年 の十 一月 に被 告 代は 理 人 鴨→ 二︶ に自 分 の全 収 入 を 妻 に払 う よ う
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ま 精で 神 病 院 に収 容 さ れ た︒ 被 告 が精 神 病 院 に いた 間 に︑ か 八一 九
﹁イギ リ スに おけ る本 人無 能 力時
の任 代意 権理 存続
に関 す る二
つの 先例
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れ の妻 は 原告 に商 品 を注 文 し︑ 原 告 は妻 に付 け で商 品 供を 給 し た︒ 原 告 被は 告 精が 神 障 害 であ り︑ 精神 病 院 に監 禁 され て たい こと を 知 らな か たっ
︒ また 原︑ 告 は被 告 の収 入 が妻 に支 払 われ て たい と うい こ もと 知 ら な か たっ 被︒ 告 は︑ 一八 七 七 年 四月 に理 性 の作 用を 回 復 し︑ そ の六 月 に︑ 妻 に与 え て いた かも し れな い自 分 の代 理 人 とし て行 動 し た り︑ 自 分 の信 用を 担 保 と し たり す るあ ら ゆ る権 限 を撤 回し た︒ メ ラー 裁 判官 は︑ 被 告 が精 神 病院 収に 容 さ れ て いた 間 の被 告 の妻 の収 入 が 彼女 が 生 活 す る のに 十 分 であ たっ かど う か に つき 陪 審 に尋 ね る のを 拒 否 し
︑ もし 被 告 の妻 が行 たっ こと が 被 告 が 妻 と 一緒 に生 活 し て いた 間 に取 ら れ て いた 方 法 従に っ たも ので あ たっ なら ば
︑ 原 告 勝は 訴 す る資 格 が あ る と陪 審 に 説 示 し た︒ 陪審 は原 告 勝 訴 の評 決 を下 たし
︒ 被 告 は再 審 理 を 女 王座 部 に申 し立 てた が
︑ そ の申 立 拒は 否 さ れ た︒ 当裁 判 所 へ控 訴 が な さ れ た結 果︑ 説 示 の誤 りを 根 拠 再に 審 理 を 求 め る仮 命令 が 認 めら れ た︒ 一八 七 八年 十 一月 二十 二日
︒ 原 告側 のウ リィ ス勅 選弁 護 士 が︑
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・ビ l oレ イ ン弁 護 士 とと も に︶ 訴 訟原 因 を開 示 し た︒ メ ラ ー裁 判 官 の説 示 は正 当 であ たっ
︒ 信 用 与を
える 者が 精神 障害 が介 在し たこ とを 知 らな いの なら ば︑ 精神 障害 にな る人 の信 用を 担保 に入 れる 権限 は精 神障 害 によ てっ 撤回 され な いの であ る︒ 被告 は︑ 被告 の妻 が被 告 の代 理人 と てし 行動 す る権 限を 有し てい ると 原告 が推 定す る資 格を 有 す るょ う に︑ 自分 身自 で行 動 たし ので あ たっ
︒ たし が てっ ラ︑ イア ン対 サム ス事 件
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︺か ら導 かれ る原 則 の適 用範 囲内 にあ るジ リョ ー リ対 ーズ 事件 oC
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︶民 己 は本 件 適に 用さ れな い︒ 精神 障害 者 53 Le は︑ 契約 の相 手方 が かれ が精 神障 害 であ るこ とを 知 らな か たっ な らば 自︑ 締ら 結し た合 理的 な契 約 に基 づ いて 責任 負を う︒ ブ ラウ ン対 ジ ョッ ド レル 事件 8︹ω ヨB
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︑ クバ スタ ー対 ーポ ツ マス 伯の 爵事 件
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︺を 参照 本︒ 件 にお いて は︑ 原告 被は 告が 精神 障害 あで ると うい こと を知 らな か たっ ので あり し︑ たが てっ 本︑ 件 はデ イ 対ン カー クウ ーォ ル子 爵
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∞9 鮨 R 3 に お てい パ トッ ソ 裁ン 判官 が依 拠 し た原 則 の適 用範 囲 内 には な い︒ エク イ テ にィ お いて さえ 精︑ 神障 害 者 締の 結 たし 契 約 は︑ そ れ が公 正 でそ の者 の疾 患 に つい て通 知 がな され ず に締 結 さ れ た も ので あ る かぎ り︑ 取 り消 す こ とは でき な いと され た の であ る︒ ニー ル対 モー リ ー事 件
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︺ 参 照
︒ 精 神 障 害 者 代は 理 人 を 任 命 きで な いと いわ れ て いる が︑ この 法理 は 定一 の制 限 に服 する と考 える べき であ る︒ ス テ ドッ 対 ソー ント 事ン 件 8︹9
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は︑ 金銭 を受 取け たっ 時点 で︑ 被告 は自 分 の本 人 であ ると 主張 たし 者が 精神 害障 であ るこ とを 知 てっ いた ちに が い な いと うい 事例 に関 す る事 件 であ たっ
︒ ター バッ ク対 ビ ス ファ ム事 件
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︶ 巴 に お いて
︑ パー ク財 務府 判裁 所裁 判官 は
﹁精神 障害 者 代は 理人 を任 命 るす 能 力が な い﹂ と述 べた が︑ この 傍論 は︑ 精神 障害 が介 在 たし 後 には 精神 障害 者 代は 理人 任を 命 きで な い︑ と い う こと を単 指に 摘 よし う とす る意 図 をも てっ たい にす ぎ な か たっ ので ある リ︒ ード 対 ンガ ード 事件
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・︶8 8 では 夫︑ は自 分が 精神 害障 であ 政法 研究 二巻 一号
︵一 九九 七年
︶
る間 に妻 に提 供 さ たれ 生 活 必 需 品 に つい て責 任 を負 う と 判 示 さ れ て いる
︒ し か し︑ こ 判の 例 は夫 と妻 と の間 に存 す る関 係 に基 づ いて 下 さ れ たも ので あ り︑ 本 件 にと てっ 重は 要 では な い︑ と いう こ と が 原 告 の た
・ めに 認 め ら れ う る︒ し か し︑ リ チ ーャ ド ソ ン対 ド ゥ
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︺ では
︑ 本 件 同と 様 の法 理 に基 づ いて
︑ 精 神障 害 の夫 は妻 を自 ら の代 理 人 であ ると し て原 告 に表 示 し て いな いの で責 任 を負 わ な い︑ 判と 示 さ れ た︒ デ イブ イド ソ 対ン ウ ドッ 事件
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︺ にお いて は︑ 夫 が精 神 障 害 の間 に妻 に前 貸 し さ れ︑ 妻 の必 要経 費 の支 払 にあ てら たれ 金銭 対に し て︑ 遺 言者 遺の 産 不に 利 証な 明 認が めら れ た のだ たっ
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﹇プ ラ ムウ ルェ 控 訴院 裁 判官
︒ デ イブ ィド ソ 対ン ウ ッド 事件
︹∪くこのo・メJざo︐ 日∪︒﹁∽・卜o釧︺ωNr︒﹁6︾しヽo8 は︑ 現在 当 裁判 所 係に 属 中 の本 件 には 関 係 な い︒ すな わ ち︑ デ イ ブ イド ソ 対ン ウ ッド 事 件 は単 に生 活必 需 品 に関 す る責 任 に つい て の事 件 あで り︑ コ モン
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︑ クエ イ テ 上ィ は︑ 生 必活 需 品 使に われ るた め に妻 前に 貸 し さ たれ 金 銭 に つい て︑ 夫 返は 済義 務 を 負 う と され た ので あ る
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ジ ンェ ナ ー対 モリ ス事 件 目︹お
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︵Qじ ω8︺ 参照
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被告 の弁 護士 は︑ スト ウリ の代 理法
︵第七 版︶ の第 十 八章 四 八 一条 3ざ 崚 oF 硬許 メ︼o ト
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に依 拠 しよ うと する かも しれ な いが
︑ そこ に付 され た註 引で 用さ れ てい る権 威的 典籍 は︑ 本文 規で 定 され た法 理 に疑 いを 投げ か け てい るよ う に思 われ る︒権 威的 典籍 チは ティ ー の契 約法
︵第 十版
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の第 二 章 一三 二頁 に収 集 され てお り︑ それ は精 神 障害 者 が善 意 で o●3
ジ 識0 こ自 分と 取引 たし 相手 方 との 間 で締 結し た契 約 に つき 責任 を負 う こと をは きっ りと 示し てい る︒ マン ビ ー対 ス コッ ト事 件
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︐ 3 Чメ 8∽ F 日聟 e じ では 心︑ 神喪 失者 含R oc は家 の管 理人 とし ての 自 分 に提 供 され た生 活必 需 品 につ いて 責任 を負 う︑ と裁 判官 のう ち二 人が 判示 たし
︒ 被告 側 のホ ーン
・ペ イ ン弁 護士 メ︒ ラー 裁判 官 陪は 審 に誤 っ た説 示を 与 えた 証︒ 明さ たれ 事実 によ れば 原︑ 告 は勝 訴 の評 決を 受 るけ 資格 を有 し てい な か たっ ので るあ 一︒ 般的 な準 則 よに れば 精︑ 神障 害者 契は 約を 締結 す るこ とが きで な い︒ 精 神障 害者 は生 活必 需品 に つい て責 任を 負う こと があ るが 本︑
件 では 提供 され た商 品が 被 告 の妻 にと てっ 生活 必需 品で あ っ たと 認は 定 され てい な い︒ 精神 障害 者 婚は 姻 に つき 契約 を締 結す るこ とが でき な い︒ ブ ラウ ニン グ対 リー 事ン 件 8︹国 ヨ甲 い品 メ 8リ
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︼・o おふ 8 参照 精︒ 神障 害者 は 自分 に負 担を 課す るこ と あの るい かな る契 約 よに てっ も拘 束 され えな いの であ る︒ ハワ ード 対デ グッ ービ 事件
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︐ 8じ 参照
︒ 精神 害障 者 代は 理人 を任 命 する こと がで きな い︒ ステ ドッ 対 ーソ ント 事ン 件 8︹9 メ0 哺F Rュ Fo ω 鮨
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︑ ター バッ ク対 ビ スフ ムァ 事件
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︒N誅
︐ P パー ク財 務府 裁判 所裁 判官 の判 示部 分︒︺
参照
︒ スト ウリ の代 理法 の第 章二 六条 o囀︹誓
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︒ 3は 心︑ 神喪 失者
︵︻一︼o お︶と 精神 障害 者
︵︻E け︼oo は全 く 代理 人を 任命 す る こと が でき な いこ とを 端的 規に 定 し て い る︒ 自ら の事 務 を管 理す るこ とが きで ず︑ 自ら の行 為 の結 果 判を 断 きで な い者 は︑ 生活 必需 品以 外 の商 品 に関 する 契約 に つい て責 任あ りと され るべ きで はな い︒ 本人 死亡 の時 点 で︑ 代 理人 の代 理権 消は 滅す る︒ たし が てっ 妻︑ は夫 の死 後 そ の 遺 産 を 拘 束 す る こ と は でき な い︒ ブ イレ ズ 対 リフ ー事 件