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偶発記憶に及ぼす符号化情報と検索情報の組合せの 効果

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

偶発記憶に及ぼす符号化情報と検索情報の組合せの 効果

著者 豊田 弘司, 福井 美穂, 小野坂 佳子

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 44

号 1

ページ 239‑247

発行年 1995‑11‑24

その他のタイトル The Effects of Combinations in Encoding and

Retrieval Informations on Incidental Memory

URL http://hdl.handle.net/10105/1638

(2)

奈良教育大学紀要 第44巻 第1号(人文・社会)平成7年 Bull. NaraUniv. Educ, Vol. 44, No. 1 (Cult. &Soc), 1995

偶発記憶に及ぼす符号化情報と検索情報の組合せの効果

豊 田 弘 司 ・ 福 井 美 穂* ・ 小野坂 佳 子**

(奈良教育大学心理学教室) (平成7年4月4日受理)

Huntらの一連の研究(Einstein & Hunt, 1980 ; Hunt, Ausley, & Schultz, 1986 I Hunt & Einstein, 1981 ; Hunt & Elliott, 1980 ; Hunt & Mitchell, 1982 ; Hunt &

Seta, 1984)は、記銘語のまとまりに関する関係情報(relational information)と記銘語の独 自性に関する項目特殊情報(item‑specific information)が、ともに記憶にとって重要であると いう主張を支持する結果をみいだしている。例えば、 Hunt & Seta (1984)は、方向づけ課題 の型(分類課題,快一不快評定課題)と記銘リストに含まれるカテゴリ‑サイズの大きさを操作

して、記憶に及ぼす両情報の効果を検討している。分類課題は記銘語を特定のカテゴリ‑に分類 させるものであり、この課題は関係情報を符号化させるものとされたo一方、快一不快評定課題 は、記銘語の指示する対象が好きか嫌いかに関わる印象を評定させるものであり、項目特殊情報 を符妄封ヒさせるものとして位置づけられた。記銘リストのカテゴリーサイズに関しては、カテゴ リーサイズが大きくなるにつれて関係情報が符号化されやすく、小さくなるにつれて項目特殊情 報が符号化されやすくなると考えられた。もし、彼らの主張するように、関係情報と項目特殊情 報がともに記憶にとって重要であるならば、両情報の加算的効果によって、関係情報が符号化さ れやすいカテゴリーサイズの大きい条件においては項目特殊情報を符号化させる快一不快評定課 題の方が分類課題よりも記憶成績を促進するであろう。一方、項目特殊情報の符号化されやすい カテゴリ‑サイズの小さい条件においては関係情報を符号化させる分類課題の方が快一不快評定 課題よりも記憶成績を促進するであろうと予想された。実験の結果は、この予想と一致しており、

彼らの主張を支持するものであった。この加算的効果が生じる理由として、彼らは、関係情報と 項目特殊情報が機能する検索過程の違いを指摘し、以Fのように説明している。すなわち、検索 にはまず記銘語間のまとまりの活性化を促す産出(generation)過程があり、そこに関係情報が 機能している。次に、記銘語間のまとまりから個々の記銘語を区別する弁別(discrimination) 過程があり、ここに項目特殊情報が機能している。このように、検索には産出と弁別という2つ の過程があり、記銘語の再生においては、産出過程に機能する関係情報と、弁別過程に機能する 項目特殊情報の両方が必要というのである。

しかし、 Huntらの研究においては大きな問題点が2つある。その一つは、方向づけ課題に用 いた侠一不快評定課題である。確かにこの課題は個々の記銘語の独自性に関する情報を符号化す る可能性は高いと考えられるが、どのような情報が符号化されたかは特定できない。さらに、快

‑不快評定は自伝的情報を喚起するとも言われており(Warren, Chattin, Thompson, &

Tomsky, 1983 ; Warren, Hughes, & Tobias, 1985) 、 Tulving (1972, 1982)の提唱した 記憶区分における意味記憶(semantic memory)内の情報ではなく、エピソード記憶(episodic

* 現所属は、 (秩)近鉄不動産

H現所属は、社会福祉法人 水仙福祉会 淡路こども園

239

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240 豊 Ffl 弘 司・福 井 美 穂・小野坂 佳 子

memory)内の情報が符号化されている可能性が考えられる。そのため、関係情報と項目特殊情 報の加算的効果が意味記憶内での加算的効果なのか、意味記憶とエピソード記憶に渡る加算的効 果なのかが明確でない。もう一一一つの問題点は、以ドに示すものである。すなわち、 Huntらの研 究では、関係情報と項目特殊情報の加算的効果を上述した検索過程によって解釈しているが、符 号化時に与えられた関係情報や項目特殊情報がそのまま保持されて検索時に機能するという保証 はない。上述したような2つの検索過程で解釈するとすれば、検索時に関係情報や項目特殊情報 に対応する手がかりを与えるという手がかり再生の手続きが適切であると考えられる。確かに、

Hunt & Seta (1984)では自由再生の後に手がかり再生を行っているが、そこで与えられた手 がかりは関係情報(カテゴリー名)のみであり、項目特殊情報は与えられていない。というのは、

項目特殊情報を符号化させる方向づけ課題が快一不快評定であったために、項目特殊情報を特定 できないという問題があるからである。もし、 Huntらが主張するように産出過程から弁別過程 へと検索が進んでいくのであれば、手がかりとして産出過程に機能する関係情報を与えた方が、

項目特殊情報を与えた場合よりも記憶成績は良くなるであろうと予想される。しかし、 Hunt &

Seta (1984)の用いた手続きではその比較ができなかったのである。そこで、本研究では、 L述 した第1の問題点を考慮して、方向づけ課題として意味記憶内の情報のIfjから関係情報と項目特 殊情報を選び、記銘語と対望示させるという手続きを用いた。また、第2の問題点を考慮して、

手がかり再生において関係情報と項目特殊情報を手がかりとする条件を設けたのである。

したがって、本研究では符号化時と検索時のそれぞれにおいて意味記憶内の関係情報と項目特 殊情報が与えられる条件を設け、それらの組合せの効果を検討することになる。すなわち、符号 化時(方向づけ課題)において関係情報が与えられ、検索時(手がかり再生)においても手がか りとして関係情報が与えられる条件(関係一関係条件) 、符号化時に関係情報が与えられ、検索 時に項目特殊情報が与えられる条件(関係‑特殊条件) 、符号化時に項目特殊情報が与えられ、

検索時に関係情報が与えられる条件(特殊一関係条件) 、符号化時に項目特殊情報が与えられ、

検索時にも項目特殊情報が与えられる条件(特殊一特殊条件)という4つの組合せを設定した。

もし、 Huntらが述べるように、符号化情報と検索情報の間においても、関係情報と項目特殊情 報との加算的効果が生じるならば、符号化時とは別の情報が検索手がかりとして与‑えられる条件 (関係一特殊条件、特殊一関係条件)の方が、同じ情報が与えられる条件(関係‑関係条件、特 殊‑特殊条件)よりも、手がかり再生率が高いはずである。また、項目の再生は、関係情報の活 性化の広がりによってもたらされる項目特殊情報の活性化によって導かれるという主張(Hunt

& Seta, 1984)からすれば、符号化時と検索時で別の情報が与えられる2つの条件の比較にお いては、以下のような予想が成り立つ。すなわち、先行する産出過程に機能する関係情報を検索 情報として与えられる条件(特殊一関係条件)の方が、後続する弁別過程に機能する項目特殊情 報を検索情報として与えられる条件(関係一特殊条件)よりも手がかり再生率が高くなるであろ う。したがって、 Huntらの主張からすれば、手がかり再牛では、特殊一関係>関係一特殊>関 係一関係‑特殊一特殊という関係になることが予想される。

一方、上述したHuntらの主張は異なり、いくつかの研究(Dong, 1972 ; Masson, 1979

Ozier, 1978)では、符号化時の文脈と検索時の文脈が‑一致している場合の方が一致していない

場合よりも手がかり再生率が高いという結果を報PIしている。これらの結果は、記憶は符射ヒ時

の情報(記憶痕跡)と検索手がかりとの交互作用であって、特定の符号化情報や検索情報が有効

であるとはいえないと主張する符号化特定性仮説(Tulving & Thomson, 1973)を支持するも

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偶発記憶に及ぼす情報の組合せの効果

241

のである。例えば、 Ozier(1978)は、符号化時において記銘語の頭文字に注目させる条件(頭文 字符‑%¥ヒ条件)と記銘語が属するカテゴリーを想起させる条件(カテゴリー符号化条件) 、検索 時において検索情報として頭文字が与えられる条件とカテゴリ一名が与えられる条件を設け、各 組合せ条件ごとの手がかり再生率を比較している。実験の結果、符号化時の文脈と検索時の文脈 が一致している条件の方が一致していない条件よりも手がかり再生率が高いということが示され た。すなわち、頭文字符号化条件においては、検索情報として頭文字が与えられた条件がカテゴ リ‑名を与えられた条件よりも手がかり再生率が高かったが、カテゴリ‑符号化条件においては、

検索情報としてカテゴリー名を与えられた条件が頭文字を与えられた条件よりも手がかり再生率 が高かったのである。

もし、符号化特定性仮説が主張するように、符号化情報と検索情報の一致度が記憶を決定する のであれば、本研究では、符号化情報と検索情報が一致する2つの条件(関係一関係条件、特殊 一特殊条件)が、符号化情報と検索情報が一致しない条件(関係一特殊条件、特殊一関係条件) よりも手がかり再生率が高くなるはずである。すなわち、関係一関係‑特殊一特殊>特殊一関係

‑関係一特殊という関係が予想されるのである。

本研究の目的は、 Huntらの主張からの予想(特殊一関係>関係一特殊>関係一関係‑特殊‑

特殊)と符号化特定性仮説からの予想(関係一朗係‑特殊一特殊>特殊一関係‑関係一特殊)か ら、偶発記憶に及ぼす符号化情報と検索情報の組合せの効果を検討することである。

方  法

実験計画 実験計画は2 × 2の要国計画であった。第1の要因は記銘語が呈示される際の情報 (符号化情報)の型であり、関係情報条件と項目特殊情報条件を含んでいた。第2の要因は、手 がかり再生テスト時に望示される情報(検索情報)の型であり、符号化時と同様に、関係情報条 件と項目特殊情報条件が設けられた。両要困ともに被験者内要因であった。

被験者 被験者は、この種の実験を経験していない大学生20名(男子10名、女子10名)であっ た。これらの学生の平均年齢は、 20歳4か月(範囲18歳6か月〜20歳βか月)であった。

材 料 本研究で用いられた記銘語、対呈示語

(符号化情報)及び手がかり語(検索情報)の例 表1本研究で用いられた記銘語と対呈示語 が表1に示されている。記銘語は小川(1972)の   (手がかり語)の例

基準表の10カテゴI) ‑からそれぞれ選ばれた連想 頻度の上位3項目であった。 10個のカテゴリーは、

四つ足動物、家具、果物、楽器、文房具、野菜、

乗り物、国名、スポーツ、烏であり、上位3項目 の平均連想頻度は、 82.23% (56.76%‑97.64%) であった。対呈示語としては、各記銘語に対して 関係情報となる語と項目特殊情報となる語が設け られた。関係情報は上述した10個のカテゴリー名、

対星示語もしくは手がかり語 記銘語   関係情報  項目特殊情報

自転車 飛行機

TE +:

乗り物

サイクリソグ スチュワーデス

満員

項目特殊情報は、予備調査(豊田, 1994)に

よって明らかになった2‑7文字の特殊連想語(連想頻度は10%以上)を用いた。ただし、バッ

ファ‑となる2つのトリプレットについては、一万には関係情報のみが、もラ‑一方には項目特殊

情報のみが設けられた。また、分析の対象(ターゲット)となる残り8トリプレット(24語)に

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2‑i:〜 豊 田 弘 司・福 井 美 穂・小野坂 佳 子

対する検索情報としては、各語に対応する2種の対呈示語(関係情報としてのカテゴリー名、項 目特殊情報としての特殊連想語)が用いられた。

方向づけ課題に用いるリスト(評定リスト)として、 1つのトリプレットに属する記銘語が続 けて星示される連続望示リストと、間隔をおいて呈示される非連続呈示リストが作成された。な お、非連続星示リストにおける1つのトリプレットに属する記銘語の呈示間隔(介在語数)は、

7語であった。これら2種類の評定リストはそれぞれ、 L述した2つの符号化情韓の型の条件を 含んでいた。記銘語に対してカテゴリ‑名が対望示される関係情報条件と、特殊連想語が対望示 される項目特殊情報条件である。これら2条件のそれぞれに4トリプレット(12語)ずつが割り 当てられた。なお、初頭・新近位置効果を除くために、リストの最初と最後に上述したバッファ‑

トリプレットが1つずつとさらにバッファー語が1語ずつつけ加えられた。これらのリストは、

B 6判の用紙に記銘語と対呈示語がそれぞれ1語ずつ印刷され、表紙をつけた32ページの小冊f・

にされた。小冊子の各ページの上部に記銘語が大きく印刷され、その下に対呈示語がやや小さく 印刷された。さらに、その下に連想強度を評定するための1 (弱く連想される) ‑5 (強く連想 される)までの数字が印刷されていた。

方向づけ課題と自由再生テストの間に行う挿入課題用紙は、句読点を含まないひらがなの文字 列が印刷されているB4判のものであった。自由再生テスト用紙はB 5判で、被験者が思い出し た語(記銘語及び対皇示語)を記入する欄と、記入する方向を示す矢印が印刷されていた。手が かり再生テスト用紙はB 5判であり、左側に検索情報、その右側に思い出した記銘語を記入する 欄が印刷されていた。手がかり再生テストでは、実験計画に対応して以下に示す4条件が設けら れ、ターゲットとなる8トリプレットのうち2トリプレットずつが各条件に割り当てられた。符 号化時に関係情報が対望示された記銘語(4トリプレット)に対して、符号化時と同じ関係情報 が手がかりとして与えられる関係‑関係条件(2トリプレット)と、符弓イヒ時には呈示されなかっ た項目特殊情報が手がかりとして与えられる関係一特殊条件(2トリプレット) 、符号化時に項

目特殊情報が対望示された記銘語(4トリプレット)に対して、同じ項目特殊情報が手がかりと して与えられる特殊一特殊条件(2トリプレット)と、関係情報が5L・えられる特殊一関係条件

(2トリプレj卜)である。

手 続 実験は被験者の所属する大学の一室において、偶発記憶の手続きを用いて個別に実施 された。 a)方向づけ課題 被験者にL述した評定リストの小冊子を星示して、方向づけ課題と して行う記銘語と対星示語の連想の強さに関する評定の仕方に関する教示を与えた。被験者が評 定の仕方を理解したのを確認した後、被験者は実験者の合図に従って10秒ごとにページをめくり、

連想の強さを評定していった。 b)挿入課題 方向づけ課題終!後、被験者は上述の挿入課題用

紙を手渡され、 3文字以上の名詞を丸で園んでいくという挿入課題を3分間行った。 C)自由再

生テスト 挿入課題終了後、被験者は自由再生テスト用紙と筆記用具としてのマジックを手渡さ

れ、書記自由再生テストを5分間行った。 d)手がかり再生テスト 被験者の前に手がかり再生

テスト用紙を裏向きに置き、手がかり再生の教示を与えた。教示の主な内容は、用紙の左側に印

刷されている単語(手がかり語)を用いて小冊子の中にあった単語(記銘語)を思い出すという

ものであった。この教示の後、用紙を表向きにし、書記手がかり再生テストを5分間行った。

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偶発記憶に及ぼす情報の組合せの効果

結  果

LMこ1

方向づけ課題における評定値をチェックしたが、逸脱した者は認められなかった。また、実験 終f後に、記銘の意図を持ったか否かを口頭で確認したが、全ての被験者が記銘の意図を持たな かったと答えた。

評定値 符号化情報としての関係情報と項目特殊情報の間に記銘語との連想強度において差が ないことを確認するために、記銘語と符引ヒ情報の連想強度に関する平均評定値を算出した。そ の結果、連続リストにおける関係情報条件は3.81、項目特殊情報条件では3.33、非連続リストに おける関係情報条件は3.69、項目特殊情報条件では3.06であった。この平均評定値について、 2 (リスト) ×2 (符号化情報の型)の分散分析を行ったが、リストの主効果(F‑.63)、符号化 情報の型の主効果(F‑1.03)及び両者の交互作用(F‑.02)はいずれも有意でなかった。した がって、符号化情報としての関係情報と項目特殊情報の問に記銘語との連想強度において差がな いことが確認された。

手がかり再生率 表2には、手がかり再生テス トにおける正再生率が示されている。この手がか り再生率を角変換し、 2 (リスト) ×2 (符号化 情報の型) × 2 (検索情報の型)の分散分析を行っ

表2 符号化情報と検索情報の組合せごとの 手がかり再生率

符号化情報 た結果、符号化情報の型の主効果(Fa‑‑4.03, ')スト 検索情報  関 係 項目特殊 pく.05)及び符号化情報の型×検索情報の型の交

関係    .93    .85 互作用(F(1′54)‑26.38, pく.01)が有意であった。連続項'p〜蒜殊 .58  .93

この交互作用について下位検定を行ったところ、

符号化情報と検索情報が一一致する2つの条件(関 非連続 係一関係、特殊一特殊)が、一致しない2つの条

関係    .83    .68 項目特殊   .60    .92 件(関係一特殊、特殊一関係)よりも手がかり再生率が高かった(関係一関係と関係一特殊の間 はt(5,)‑6.10, pく.oi ;関係一関係と特殊一関係の間はt{54>‑3.18, pく.oi ;特殊‑特殊と関係‑特 殊の間はt<54,‑7.12, pく.oi ;特殊‑特殊と特殊‑関係の間はt(54)‑4.15, Pく・01)。また、一致す る関係一関係条件と特殊一特殊条件間には差はなかったが(t‑1.02) 、一致しない特殊一関係 条件と関係‑特殊条件の比較においては、前者が後者よりも手がかり再生率が高かった(tea

‑2.97, pく.01)。

自由再生率 表3には、自由再生テストにおける正再生率が示されている。この正再生率を角 変換し、 2 (リスト) ×2 (符号化情報の型)の

分散分析を行った。その結果、符号化情報の型の  表3 符号化情報の型ごとの自由再生率 主効果(Fu,18,‑20.79, pく.001)が有意であり、

符号化時に関係情報を与えられた条件の方が、項 目特殊情報を与えられた条件よりも自由再生テス トにおける再生率が高かった。

考  察

本研究の目的は、意味記憶内の関係情報と項目

符号化情報

リスト    関 係  項目特殊

連 続    .65    .39

非連続    . 63    .37

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244 豊 田 弘 司・福 井 美 穂・小野坂 任 子

特殊情報を用いて、符号化情報と検索情報の組合せの効果について検討することであった。実験 の結果については2つの予想がたてられた。その1つは、産出過程に機能する関係情報と弁別過 程に機能する項目特殊情報の加算的効果が生じるとする、 Huntら(Einstein & Hunt, 1980 ; Hunt, Ausley, & Schultz, 1986 ; Hunt & Einstein, 1981 ; Hunt & Elliott, 1980 I Hunt & Mitchell, 1982 ; Hunt & Seta, 1984)の1:̲張に基づくもので、特殊‑関係>関係一 特殊>関係一関係‑特殊‑特殊という予想であった。もう1つは、記憶は符mヒ時と検索時の文 脈の一致度によって決定されるとする符号化特定性仮説(Tulving & Thomson, 1973)に基づ

くもので、関係一関係‑特殊一特殊>特殊一関係‑関係‑特殊という予想であった。

手がかり再生率では、関係一関係‑特殊一特殊>特殊一関係>関係一特殊という関係が明らか になり、符号化時と検索時の文脈が 一致する条件が、 ‑一致しない条件よりも記憶成績の良いこと が示された。この結果は、符号化特定性仮説を支持するものである。すなわち、記憶は、符号化 時の文脈と検索時の文脈の一致の程度に依存しているということが追証されたのである。しかし、

符p3化情報と検索情報が・致しない2つの条件間に生じた特殊‑関係>関係‑特殊という組合せ の効果の違いについては、符号化特定性仮説が1:.張する符%‑{ヒ情報と検索情報のI一致度のみによっ て説明することはできなかった。

一・万、 Huntらが主張するような符号化情緒と検索情報の間における関係情報と項目特殊情経 の加算的効果は認められなかった。しかし、符号化特定性仮説によって説明することのできなかっ た符号化情報と検索情報が一致しない2つの条件間に生じた組合せの効果の違い(特殊一関係>

関係‑特殊)は、項目の再生は、関係情報の活性化の広がりに伴って生じる項目特殊情報の活性 化によって導かれるというHuntらの検索モデルを支持するものである。すなわち、特殊lXJ係 条件においては、検索情報として与えられた関係情報が検索過程において先行する産出過程に機 能し、記銘語のまとまりが活性化される。そして、関係情報の活性化の広がりが、符号化時に与 えられた項目特殊情報を活性化し、まとまりの中から個々の項目を区別する弁別過程に機能した といえよう。それに対して、関係一特殊条件においては、先行する産出過程に機能する関係情報 が与えられないため、産出過程におけるまとまりの活性化が十分でなかった。そのため、それよ り後の弁別過程に機能する項目特殊情報が与・えられても産出過程が不十分で、項目の再生が十分 に促進されなかったと考えられよう。

このように、本研究の結果は符号化特定性仮説とHuntらの主張のそれぞれを部分的に支持す るものであった。したがって、両者を用いて以下のように説明できるだろう。項目の再生におい ては、検索時に符号化情報と一致する検索情報を与え、記憶痕跡に対してより直接的にアクセス することが有効である。また、 Hunt& Seta (1984)が述べるように、検索を項目の特徴のま とまりの活性化から個々の項目の特徴の活性化‑という、手がかりの範囲を徐々に小さくしてい く過程とみなすならば、符号化情報と検索情報とが 一致しているような検索範囲がかなり限定さ れる場合には、すでにある程度検索が達成されているために、産出から弁別へという2段階の検 索過程は存在しないのかもしれない。一方、符号化情報と検索情報が一致しない場合や、自由再 生テストのようにある程度広い範囲からの検索を要求される事態においては、 Huntらの主張す る産出から弁別‑という検索過程が働き、この検索過程にそって機能する情報を符号化すること が有効であると考えられる。

上述したように、記憶成績は符号化情報と検索情報の ‑致の程度だけでなく、符弓イヒ情報の型

によっても決定されるということは、 Fisher & Craik (1977)においても指摘されている。彼

(8)

偶発記憶に及ぼす情報の組合せの効果 245

らは意図言Ll憶手続きを用い、符号化情報もしくは検索情報として意味的情報と音韻的情報を与え る実験を行って両者の組合せが手がかり再生に及ぼす効果を検討している。その結果、手がかり 再生率全体としては、符号化情報の主効果が認められ、意味的情報が音韻的情報よりも手がかり 再生率が高かったが、符tl

Tj化情報と検索情報の一致度が高いほど再生成績が良いということも明

らかになった。彼らは、これらの結果から、符号化時の処理の深さと符引ヒ時の文脈が検索時に どの程度回復されるかということの両方によって、記憶成績が決定されると述べている。つまり、

記憶に関する事象を理解するためには、符号化時に深い処理をすればするほど記憶成績が良くな るという処理水準説(Craik&Lockhart,1972)と符号化特定性仮説(Tulving&Thomson,

1973)との両方が必要だというのである。言いかえれば、符号化情報の型及び符引ヒ時と検索時 の文脈のI一致度の両要田を考慮することの必要性が示されたわけである。

このように、Fisher&Craik(1977)は、符引ヒ情報の型として処理水準説での異なる水準

に対応する意味的情報と音韻的情報を取りl二げ、全体としては意味的情報が音韻的情報よりも効 果的であり、その効果は符号化時と検索時の文脈の1‑‑致度によって異なることを明らかにした。

I‑I‑万、本研究では、符射ヒ情報の型として同じ意味水準に対応する関係情報と項目特殊情報を取 りしげ、全体としては項目特殊情報が関係情報よりも効果的であり、その効果が符号化時と検索 時の文脈の・致度によって異なることを明らかにしたのである。したがって、本研究の結果は、

Fisher&Craik(1977)で主張された符号化情報の型と符号化特定性仮説の両方を考慮する必 要性を・般化したものといえよう。

要約

本研究の目的は、意味記憶内の関係情報と項目特殊情報とを用いて、符号化情報と検索情報の 組合せの効果について検討することであった。被験者は大学生20名であり、偶発手続きによる個 別実験を行った。方向づけ課題では評定リストを用い、記銘語と対呈示語(符号化情報)の連想 強度を5段階で評定させた。この評定リストには、記銘語に対する関係情報が対望示される条件 と、記銘語に対する項目特殊情報が対望示される条件とが含まれており、1ページに記銘語と対 さま示語がそれぞれ1語ずつと、記銘語と対呈示語の連想強度を評定するための尺度が印刷されて いた。方向づけ課題の後、挿入課題を行い、自由再生テスト、手がかり再生テストを行った。手 がかり再生テストにおける手がかり(検索情報)としても、関係情報と項目特殊情報が用いられ、

符P,・化時に関係情報が与えられた条件に対する検索情報として関係情報が与えられる条件(関係 一関係)と項目特殊情報が与えられる条件(関係一特殊)、符号化時に項目特殊情報が与えられ た条件に対する検索情報として関係情報が与えられる条件(特殊一関係)と項目特殊情報が与え られる条件(特殊一特殊)という4つの条件が設定された。

手がかり再生率には特殊一特殊‑関係‑関係>特殊‑関係>関係一特殊という関係が示された。

符号化情報と検索情報が‑1一致している場合が一致しない場合よりも記憶成績が良いことは、符号 化特定性仮説(Tulving&Thomson,1973)を支持した。しかし、特殊‑関係>関係一特殊と

いう結果は、関係情報が機能する産出過程から項目特殊情報が機能する弁別過程‑というHunt

らの検索モデルを支持するものであった。

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246

豊 間 弘 司・福 井 美 穂・小野坂 佳 子

引用文献

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(10)

247

The Effects of Combinations in Encoding

and Retrieval Informations on Incidental Memory

Hiroshi Toyota, Miho Fukui and Yoshiko Onosaka (Department of Psychology, Nam University of Education, Nam 630 , Japan)

(Recieved April 4, 1995)

The present study was carried out to investigate the effects of four types of encoding‑retrieval combinations on incidental cued recall. Both encoding and retrieval informations were manipulated by presenting the target with relational or item‑specific associates and by presenting relational or item‑specific associates as a cues. The experiment involved the rating of association between each target and its associate

(relational or item‑specific) as an orienting task in incidental paradigm.

The subjects were given the orienting task and then the free recall and the cued recall tests. The associates of targets (relational or item‑specific) were used as cues in the cued recall test. All the targets were divided into four categories in terms of encoding‑retrieval combinations : the Relational and Relational information (RR) , the Relational and Item‑specific information (RI) , the Item‑specific and Relational information (IR) and Item‑specific and Item‑specific information (II).

The cued recall performance of targets were highest in RR and II categories

followed by IR categories, and lowest in RI category (RR ‑ II ) IR ) RI). The

highest performance of the categories in which the same type of information was used

as a retieval cues (RR and II) indicated that the matching of the encoding and the

retrieval contexts was critical in memory‑ This result supported the encoding‑specificity

principle (Tulving & Thomson, 1973). However, item‑specific encoding followed by a

relational cue led to a better cued recall than did relational encoding followed by an

item‑specific cue. This result supported the two process retrieval model presented by

Hunt s studies (Hunt et al., 1986 etc.) that the generation process preceded the

discrimination process. It was concluded that the encoding‑specificity principle and

the two process retrieval model were both neccessary for an adequate description of

these results.

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