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漢字の偶発学習に及ぼす形態的情報の効果

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

漢字の偶発学習に及ぼす形態的情報の効果

著者 豊田 弘司

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 47

号 1

ページ 177‑185

発行年 1998‑11‑10

その他のタイトル Effects of Graphemic Informations on Incidental Learning of Kanji

URL http://hdl.handle.net/10105/1494

(2)

奈良教育大学紀要 第47巻 第1号(人文・社会)平成10年

Bull. Nara Univ. Educ, Vol.47, No. 1 (Cult. & Soc), 1998

漢字の偶発学習に及ぼす形態的情報の効果

1Il H 弘 。1 (奈良教育大学心理学教室) (平成10年4月17日受理) キーワード:形態的情報、関係情報、項目特殊情報

わが国における言語文化において漢字の占める割合は 大きく、学校教育においても漢字の学習は重視されてい る学習内容と言えよう。ただし、漢字はひらがなやアル ファベットなどの他の表記形態よりも形態的特徴が顕著 であると言われている(北尾・馬場園, 1980:海保・野 村, 1983)。それ故、漢字表記のもつ形態的情報は他の 表記に比べて明確にとらえやすい。本研究は、この漢字 の特性を利用して、学習に及ぼす形態的情報の効果を検 討する基礎的な研究である。

Huntらの研究(Einstein & Hunt, 1980 ;Hunt,Ausley

& Schultz, 1986; Hunt & Einstein, 1981 ; Hunt & Seta, 1984)は、偶発学習を促す情報の型として関係情報(re‑

lational information)と項目特殊情報(item‑specific information)という枠組みを考えている。前者は記銘 語と他の記銘語のまとまりを憩調する情報であり、後者 は他の記銘語との差異性を強調する情報である。そして、

関係情報は検索過程の中で記銘語のまとまりの輪郭を描 く産出過程に機能し、項目特殊情報はこのまとまりの中 から個々の記銘語にアクセスする弁別過程に機能する。

それ故、この両者が加算的に記憶に貢献することを示し ている。

この関係情報と項目特殊情報の枠組みを、記銘語のも つ形態的情報に適用した研究として、 Hunt & Mitchell (1982)がある。そこでは、アルファベット表記の単語 を記銘語として用い、そのアルファベット表記のもつ形 態的情報が項目特殊情報として弁別過程に機能すること を示している。ただし、この研究には2つの問題点が あった。第1の問題点は、形態的情報の符号化の指標を 設けていないので、形態的情報が確かに符号化されてい ることが疑わしいことである。事実、被験者の内省報告 では、アルファベットの形態的情報である額について言 及した者が少数であることが報告されている。

第2の問題点は、形態的情報における関係情報を設定 していないということである。というのは、彼らはアル ファベット表記の形態的類似性に基づく形態的な関係情

uri

報ではなく、記銘語が属する意味的なカテゴリー情報を 関係情報として用いているのである。すなわち、彼らの 研究では、関係情報は意味的情報、項目特殊情報は形態 的情報を用いているわけである。このように、記銘語の

もつ形態的情報における関係情報が検討されなかったの は、形態的特徴が顕著ではないアルファベットという文 字の特性によると考えられる。それに対して、漢字の場 合は2っの構成単位である部首と部首以外の残りの部分 から成っている。そして、部首が共通している場合はそ の部首が関係情報に対応し、残りの部分が項目特殊情報 に対応する。それ故、他の表記とは異なり、形態的情報 における関係情報と項目特殊情報の効果を比較するには 通した材料である。

そこで、本研究の目的は、 Hunt & Mitchell (1982) の問題点を考慮し、漢字を用いて、 Huntらの主張する 関係情報と項目特殊情報という枠組みが形態的情報にお

いても適用可能か否かを検討することである。

実  験 l

Hunt & Mitchell (1982)の形態的情報の指標がない という第1の問題点に対応するために、本研究では形態 的情報の指標を設けることにした。意味的情報の指標を 設けた豊田(1992a)では、同じ共通連想語をもつ3つ の記銘語(ex.赤い、あざみ、植物)を1つのまとまり

として、これらの記銘語から共通に連想される語(ex.

花)を関係情報、各記銘語から独自に連想される語(ex.

りんご、とげ、動物)を項目特殊情報として対呈示し、

記銘語との連想強度を評定させる方向づけ課題を用いた。

そして、対呈示された語に対するヒット反応をその対呈 示された情報が符号化されていることの指標にしたので ある。

本研究の場合には、形態的情報を検討するわけである から、同じ部首をもつ3つの漢字(以下、 Tと略、 ex.

読、話、記)を1つのまとまり(トリプレット)として

(3)

178 豊 田 弘 司

とらえ、これらのTに共通する1つの部首(ex.言)を 関係情報、部首以外の残りの部分(ex.売、舌、己)を 項目特殊情報として対呈示し、 Tに対する部首もしくは 部首以外の残りの部分の大きさの程度を評定させるとい う方向づけ課題を用いた。この手続は、 Tを記銘する際 に符号化される関係情報と項冒特殊情報を実験者が設定 したことになる。ただし、対呈示してもこの関係情報や 項目特殊情報が確かに符号化されるとは限らないので、

これらの対呈示された部首もしくは部首以外の残りの部 分に対する再認(ヒット)反応をそれぞれの情報が符号 化されていることの指標とした。すなわち、 Tと対呈示 された部首が再認テストにおいてヒットされた場合には 関係情報が確かに符号化されており、部首以外の残りの 部分がヒットされた場合には項目特殊情報が符号化され ていると考えたのである。したがって、対呈示された部 首もしくは部首以外の残り部分がヒットされたTにつ いてのみ分析の対象とした。

しかし、関係情報が符号化されたとしても、 T間のま とまりが促されない場合には記憶は促進されない。それ 故、関係情報の符号化によってT間のまとまりが増加

したか否かを明らかにする必要がある。そこで、本実験 では、 MCS (Mean Category Size; Ritchey, 1980)を T間のまとまりの指標として用いることにした。もし、

形態的情報においても、意味的情報と同じく、関係情報 が産出過程に機能するならば、 Tに部首(関係情報)杏 対呈示した場合の方が、 Tに残りの部分(項目特殊情 戟)を対呈示した場合よりもT間のまとまりの指標で あるMCSが増すであろう。そして、それに対応して偶 発学習成績を反映するTの正再生率は前者の方が後者 よりも高くなるであろう。この予想を検討するのが実験

1の第1の目的である。

また、豊田(1992a)では、意味的に関連ある記銘語 を連続的に呈示する方が、非連続的に呈示するよりも正 再生率が高いという呈示形式の効果を兄いだしている。

そこで、本実験の第2の目的は、同じ部首を持っTを 連続的に皇示した場合が非連続に呈示した場合よりも正 再生率が高くなるか否かを検討することである。

方   法

実験計画 2(呈示形式;連続呈示、非連続呈示) × 2 (対呈示部位の型;部首、残りの部分)の要因計画であ り、前者は被験者間要因、後者は被験者内要因である。

被験者 専門学校の女子学生44名が実験に参加し た。これらの学生の平均年齢は19歳1か月(18歳4か 月〜24歳10か月)であった。連続呈示群と非連続呈示 群に22名ずつが割り当てられた。

材  料(a)漢字刺激:記銘語として用いるTは、

常用漢字の中から小学生が学ぶ漢字を用いた。 Table lには、 T、対呈示部位及び漢字再認テストで用いられ る追加刺激が示されている(追加刺激の選択基準につい ては後述する)。 3つのTが同じ部首をもつ1つのトリ

プレットを構成し、 10トリプレットあるので、合計30 のTになる。これらのTは、北尾ら(1977)の表におけ るC価(貝体性;具体物を思い出した人数比)の平均が 63.10 (52‑81)であり、 F価(熟知仕;今まで見たり 使ったりした程度に関する7段階評定値)の平均が4.73

(3.8‑5.7)であった。

(b)評定リスト:方向づけ課題としてTに対する対 呈示部位の占める大きさの割合を評定させるのであるが、

そのためのリストが連続呈示群と非連続呈示群に対して 2種類ずっ作成された。どのリストも、上述した10トリ プレット(30T)及びリストの最初と最後のバッファー 2字から成っていた。連続呈示群用のリストでは、同じ トリプレット内の3つのTが連続して配列された。た だし、30のTのうちの半数にあたる15のT(5トリプ レット)については、それに対応する部首が対呈示され、

残りの15のTについては、部首以外の残りの部分が対 呈示された。一方、非連続呈示群のリストでは、同じト

Table 1本研究で用いられた記銘語,対呈示部位及び追加刺激 nil銘語

(T) 読話記

対呈示部位       追加刺激 部 首 残りの部分 形態(G) 意味(S)

士冗壬∪コし

続活紀 本声録

通進迷 神祝福 貧買貨

前 任 米

踊誰送 路行惑

申兄l日田

禅視幅 負置貸 仏賀幸 乏売金

政教敵 打折招

† 班   孝 商

攻数嫡 治育戦

丁 斤 召

灯折指 撃曲客

仕個休 ・ 王 国 木 往何体 暮独憩

f i l ォ

^ 謂

寺立日立目

待清曙 分陽闇

助勉動 攻勅勤 救学静

台古名 合占多 箱新姓

(4)

偶発学習における形態的情報

リブレット内の3つのTの間に他のTが介在するよう に配列された。介在する他のTの数は9字であった。

その他の点については、連続呈示群用のリストと同じで ある。もちろん、 30のTのうちの半数ずっに対して、

部首を対呈示する場合と残りの部分を対呈示する場合を 設けるので、各群用のリストは、 2種類ずつになる。リ

ストの語順については、部首が対呈示される条件と残り の部分が対呈示される条件がリスト内の特定の位置に偏 らないように、同じ条件に対応するトリプレットが3つ 以上続かないように配列した。これらのリストはB6判 の小冊子にされたが、表紙には方向づけ課題の手順が示 されていた。小冊子の各ページの上部には1つのTが 印刷され、その下に対呈示部位(部首もしくは残りの部 分)がTよりもやや小さく示され、さらにその下にT に対する対呈示部位が占める大きさの割合に関する5段 階評定尺度が印刷されていた。

(C)自由再生テスト用紙:この用紙はB5判の大きさ で、再生した語を記入するための枠が設けられていた。

(d)再認テスト:再認テストは対呈示部位再認テスト と漢字再認テストの両方が用意された。対呈示部位再認 テストは、 Tに対呈示された部位が符号化されているか どうかを確かめるためのものであった。方向づけ課題の 評定リストに対応して2種類用意されたがどちらもA 4判の用紙に2列にわたって40個の部位が印刷され、

それぞれの部位の右側に6段階確信度評定ができるよう に、 1から6までの数字が印刷されていた。この40個 の部位の内訳は、方向づけ課題で対呈示された部位が 20 (部首5、残りの部分15)、及び追加刺激として方向 づけ課題で対呈示されなかった部位が20 (部首5、残 りの部分15)であった。なお、これらの部位はランダ ムに配列された。

漢字再認テストは、方向づけ課題の妥当性を検討する ためのもので、 40字がランダムに、対呈示部位再認テ ストと同じ様式で印刷されていた。漢字の内訳は、 Tが 10字、追加刺激としてTと連想関係はないが、形態的 に類似した漢字10字(以下、 G)、 Tと連想関係がある 漢字10字(以下、 S)、 Tと形態的にも意味的にも無関 連な漢字10字(以下、 C)であった(破、転、肥、的、

版、画、預、深、塩、毒)。用いられたG及びSがTable lの右欄に示されている。 30字のGの内16字は部首が 同じで、残りの14語は部首以外の残りの部分が同じで あった。なお、使用した漢字のうち2字が常用漢字外の 漢字(「嫡」と「曙」)であった。 Sの選択に際しては、

大学生13名による予備調査を行った。そこでは、あら かじめTに対して連想関係の強いと予想される漢字を 2‑3個示して、その中から最も連想関係が強い字を選 んでもらい、被調査者の選択数からSを決定した。な お、 Sについてはすべて常用漢字である。 CはどのT

179

とも形態的な類似性及び連想関係のない常用漢字である が、 C価の平均(63)とSD (7.1)はTのそれらと一致 させられた。漢字再認テストにおいては、それぞれ10 字ずつのT、 G及びSが呈示されるが、呈示された各 Tに対応するGやSは呈示されなかった。すなわち、

1つのトリプレット内に3つのT(Tl、T2、T3)が 存在するが、それぞれに対して、 G (Gl、 G2、 G3)、

S (SI、 S2、 S3)が作成されている。そしてTlが 再認テストに呈示された場合には残りの2つのT (T2、

T3)のうち、 T2に対応するG2が選ばれ、もう一方 のT3に対応するS3が選ばれることになる。したがっ て、Tl、G2及びS3、T2、C3及びSl、T3、Gl 及びS3を組み合わせて、 3種類のリストが作成された。

なお、対呈示部位再認テストが漢字再認テストより先に 実施されるため、対呈示部位再認テストに含まれた部位 が漢字再認テストへ与える影響が考えられた。この点を 考慮してG、S、Cそれぞれの対呈示部位再認テストに含 まれている部位をもっ字数は半数の5字にそろえられた。

(e)挿入課題用紙:方向づけ課題と自由再生テストの 間に挿入課題を行うが、そのための用紙も用意された。

この用紙はB4判の大きさで、有意味な文字列及び無意 味な文字列が印刷されているものであった。

手  続 実験は、被験者の所属する専門学校の一室 で集団的に実施された (a)方向づけ課題:被験者に上 述した小冊子(評定リスト)を配布した。そして、黒板 に小冊子の1ページに対応する見本を呈示しながら、小 冊子の各ページの上部に大きく印刷されている漢字

(T)の中で、下部に小さく印刷されている部分(部首も しくは残りの部分)の占める割合に関する評定について の教示を与え、被験者が教示内容を理解したのを確認し た。その後、被験者は、実験者の合図にしたがって、 10 秒ごとにページをめくり、対呈示された部位の占める割 合の程度を5段階で評定していった。 (b)挿入課題:上 述の挿入課題用紙を配布し、 3分間の挿入課題を行った。

被験者は、上述した用紙に印刷された文字列の中から3 文字以上のひらがなからなる名詞を見っけ出して丸印を つけていった (c)自由再生テスト:上述した自由再生 テスト用紙を配布し、書記自由再生を5分間実施した。

この際、被験者は先に呈示された小冊子に大きく印刷さ れた語(T)及び小さく印刷された部位を、思いだした 順に書くように求められた。 (d)対呈示部位再認テス ト:上述の用紙を配布し、対呈示部位再認テストを5分 間実施した。ここでは、用紙に印刷された各部位に対す る確信度に基づき、 「確かにあった」から「確かにな かった」までの6段階のいずれかに丸印をつけるように 求められた (e)漢字再認テスト:上述の用紙を配布し、

漢字再認テストを5分間実施した。漢字再認テストは3

種類用意されたが、用いた字による影響を考慮し、各評

(5)

180

曽 田 弘 ‖」

定リストに対して3種類のテストが均等になるように配 布した。そして、用紙に印刷された各部位に対して、

「確かにあった」から「確かになかった」までの6段階 のいずれかに丸印をつけるように求めた。

結   果

方向づけ課題として用いられた評定リストの小冊子を チェックしたところ、どの被験者にも評定の記入もれは みられず、逸脱した評定を行った被験者も見あたらな かった。ただし、漢字再認テストにおいて記入もれの あった被験者が1名いたので、その被験者を除き、連続 呈示群22名、非連続呈示群21名のデータが分析に用い られた。

虚再認率 虚再認(追加刺激に対して、誤って「あっ た」とする反応)を調べることによって実験操作として の方向づけ課題の妥当性をチェックすることができる。

すなわち、方向づけ課題において形態的情報が符号化さ れたならば、 Tと形態の類似した漢字であるGに対す る虚再認が統制条件としてのTと無関連なCに対する 虚再認よりも多くなり、意味的情報が符号化されたなら

ばTと意味的に関係のあるSに対する虚再認がCに対 する虚再認よりも多くなるのである(Coltheart, 1977;

Davies & Cubbage, 1976;北尾・馬場園, 1980)。

漢字再認テストで、 G, S及びCに対して6段階評定 の内、 6から4 (「確かにあった」 「あったと思う」 「あっ たかもしれない」)の3つの段階のいずれかが選択され ていた場合を虚再認としてカウントした。 Table 2の上 段には、その平均虚再認率が示されている。虚再認率を 角変換し、 2 (呈示形式) × 3 (虚再認の型)の分散分析 を行ったところ、虚再認の型の主効果(F(2.82)‑ 18.96, P<.01)のみが有意であった。 LSD (leastsignificant difference)による多重比較を行ったところ、 Gに対す る虚再認率がCに対するそれよりも高かったが(p<

.01)、 Sに対する虚再認率とCに対するそれとの間に 有意差はなかった。このことから、形態的情報を符号化 させる方向づけ課題の妥当性が示された。

正再生率 対呈示部位再認テストにおける部首に対す るヒット反応は関係情報の指標、部首以外の残りの部分

Table 2 呈示形式及び追加刺激の型ごとの虚再認率 追加刺激の型

G S C

実験I 連続呈示 非連続呈示

EiiiS Cidas oj ^ inCSl ‑I c¥] OJ

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実験2

.05

(.15)

( )内はSD

に対するヒット反応は項目特殊情報の指標ととらえられ る。対呈示された部位が、 6段階評定の内の6から4 (「確かにあった」〜「あったかもしれない」)の3つの段 階が選択されていた場合をヒットとしてカウントした。

そのヒット率は、連続呈示群では部首が88.18%、残り の部分が72.73%、非連続呈示群では部首が99.05%、残

りの部分が78.46%であった。関係情報が符号化されて いると考えられるTの方が項目特殊情報が符号化され ていると考えられるTよりも多いので、それぞれを対 呈示したすべての正再生率を直接比較することはできな かった。というのは、もし、部首が対呈示されたTの 方が残りの部分が対呈示されたTよりも正再生率が高 かったとしても、それは関係情報が項目特殊情報よりも 効果的であるのか、単に関係情報の方が項目特殊情報よ りも符号化量が多いことによるのかを決定できないから である。したがって、豊田(1992a)と同様、対呈示部 位が再認テストでヒットされたTすなわち対呈示され た関係情報もしくは項目特殊情報が符号化されていると 考えられるTについてのみ正再生率を算出した。平均 正再生率は、 Table 3の最上段に示されている。この正 再生率を角変換して2 (呈示形式) × 2 (対呈示部位の 型)の分散分析を行った。その結果、呈示形式の主効果 (F(1,41)‑ 4.71, p<.05)及び呈示形式×対呈示部位の型 の交互作用(Fo,41)‑4.01, p<.05)が有意であった。

この交互作用について単純効果を分析した後、 LSDに よる多重比較を行った結果、連続呈示群では部首を対呈 示された条件と残りの部分を対呈示された条件間に差は ないが、非連続呈示群では、部首対呈示条件が残りの部 分対呈示条件よりも正再生率が高かった(p<.05)c

MCS 同じトリプレット内のTのまとまりの大きさ の平均を示すMCSを群化量として用いた。この指標で は、同じトリプレット内の3つのTが全く連続して再 生されなかった場合、まとまりの大きさは1となる。ま た、同じトリプレット内の2つのTが連続して再生さ れた場合は2、 3つのTが連続して再生された場合は

3となる。このように、各被験者あたりの条件別のまと まりの大きさの平均を算出した。なお、算出に用いられ た再生されたTは、正再生率同様、再認テストにおい

Table 3 呈示形式と対呈示部位の型ごとの正再生率, MCS及びその相関係数GO (実験1) 呈示形式    連   続     非 連 続 対呈示部位の型 部首 残りの部分 部首 残りの部分

正再生率  .23   .27  .36   .28

(.14) (.15) (.13) (.13)

MCS    1.11   1.18   1.26

(.18) (.35) (.29) .66    .41   .58 t値    3.93*事   2.01  3.10事事

G i l i Z ] O ^

^ C M

^ H y ‑ t C O ‑

^

( )内はSD   ♪<.01

(6)

偶発学習における形態的情報

て対呈示部位がヒットされたもののみである。その平均 がTable3の中段に示されている。正再生率と同様の分 散分析を行ったところ、呈示形式×対呈示部位の交互作 用(Faォ)‑4.64, p<.05)のみが有意であった。多重 比較の結果、連続呈示群では部首対呈示条件と残りの部 分対呈示条件間に有意な差はなかったが、非連続呈示群 では部首対呈示条件が残りの部分対呈示条件よりも MCSが大きかった(p<.05)c

正再生率とMCSの関係 上述した正再生率(角変換 値)とMCSのピアソンの相関係数(r)及びその係数の 有意性検定(t検定)が、 Table 3に示されている。部首 対呈示条件においてのみ、正再生率とMCSの間に有意

な相関係数が認められた。

考   察

本実験の第1の目的は形態的情報が関係情報として産 出過程に機能し、 T間のまとまりを促し、それが偶発学 習成績の向上をもたらすか否かを検討することであった。

連続呈示群においては、部首対呈示条件が残りの部分対 呈示条件よりもMCSを高めることはなかったが、非連 続呈示群においては部首対呈示条件が残りの部分対呈示 条件よりもMCSを高めた。さらに、両群において部首 対呈示条件においてのみ、正再生率とMCSの相関係数 が有意であった。この結果は、形態的情報による関係情 報であっても、 Huntらの主張する産出過程に機能し、

T間のまとまりを促し、偶発学習に貢献することを示し ている。

本実験の第2の目的は呈示形式の効果を検討すること であったが、興味深いことに豊田(1992a)とは逆に、

部首対呈示条件において非連続呈示群の方が、連続呈示 群より正再生率が高くなった。豊田(1992a)では、意 味的情報について検討し、関係情報として同じトリプ レット内の記銘語からの共通連想語、項目特殊情報とし てその記銘語独自の連想語を用いた。本研究の場合は、

形態的情報を検討したので、関係情報は部首、項目特殊 情報は残りの部分になったわけである。このような用い た材料の違いはあるが、何故、本研究においては非連続 呈示群が連続呈示群よりも偶発学習が促進されたのであ ろうか。これは記銘語を呈示間隔を開けないで集中呈示 するよりも、間隔をおいて分散呈示する方が記憶成績が よいという記憶の分散効果(北尾, 1983)によって説明 できるであろう。すなわち、本実験の関係情報である部 首は同じトリプレットに含まれる3つのTに対して対 呈示されるので、 3回反復呈示されることになる。連続 呈示群では連続して3回呈示されるので、部首は集中呈 示されたことになる。一方、非連続呈示群では間隔をお いて3回呈示されるので、部首は分散呈示されたことに

181

なる。したがって、関係情報としての部首が再生される 可能性は非連続呈示群の方が高くなると考えられる。事 実、上述した対呈示部位再認テストでの部首のヒット率 でも、連続呈示群(88.18%)よりも非連続呈示群(99.05

%)の方が高くなっている。それ故、非連続呈示群にお いて関係情報である部首が検索手がかりとして利用でき る可能性が高かったのである。この検索手がかりとして の利用可能性の違いが正再生率に反映したと考えられる。

一方、豊田(1992a)では、関係情報である共通連想語 のヒット率が連続呈示群では98.46%、非連続呈示群で は98.20%であり、関係情報の利用可能性の違いは認め られなかった。したがって、本研究と豊田(1992a)の 結果の違いには、関係情報の利用可能性が反映している

と考えられる。

実  験 2

実験1では、関係情報である部首対呈示条件において、

正再生率とMCSの相関係数が有意であったことから、

形態的情報が関係情報として産出過程に機能し、 T間の まとまりを促し、それが偶発学習成績を高めるという関 係が示された。しかし、連続呈示群において部首対呈示 条件が正再生率及びMCSを高めないという結果は形態 的情報における関係情報が産出過程に機能していること

に対して疑問を投げかけるものである。そこで、実験2 では、形態的な関係情報が産出過程に機能することを示 す証拠を得るために、関係情報と項目特殊情報の組合せ の効果について検討する。

本研究で扱っている自由再生事態においてTが検索 される場合、そこには、関係情報が機能する産出過程と ともに、項目特殊情報が機能する弁別過程も含まれてい る。それ故、関係情報が産出過程に機能しても、項目特 殊情報が弁別過程に機能しない場合には、 Tの検索は失 敗することになる。したがって、実験1の連続呈示群に おける部首対呈示条件の正再生率が低いことは、上述し たような弁別過程において個々のT‑のアクセスがで きないことによるのかもしれない。もし、そうであるな らば、 Tに対して関係情報だけでなく、項目特殊情報も 対,呈示した場合には、項目特殊情報が弁別過程に機能す ることになるので偶発学習成績が促進されるであろう。

すなわち、 Huntらの研究が指摘するように、形態的情 報においても関係情報と項目特殊情報の加算的効果が兄 いだせるであろう。この予想を検討するのが、実験2の 目的である。

具体的には、同じTを2回呈示し、その呈示の際に

対呈示する情報を操作することによって情報の組合せの

効果を検討する。ただし、意味的情報に関して関係情報

と項目特殊情報の組合せの効果を検討した先の研究(豊

(7)

182

豊 田 弘 司

田, 1992b, 1993)では、同じTが反復される間隔の長 短によって情報の組合せの効果が異なることを指摘して いる。それ故、本実験においても反復間隔の長い場合と 短い場合を設けて検討することにした。

方   法

実験計画 2 (反復間隔) × 4 (情報の組合せ)の要因 計画であり、両要因ともに被験者内要因である。反復間 隔には長い条件と短い条件が含まれ、情報の組合せには、

以下に詳述する関‑関、関一項、項‑関、項一項という 4つの組合せが含まれていた。

被験者 専門学校の女子学生32名が実験に参加し た。これらの学生の平均年齢は18歳9か月(18歳3か 月〜19歳3か月)であった。

材料及び手続 実験2で用いられた材料は実験1とほ ぼ同じである。ただし、実験2では同じトリプレット内 のTが連続呈示される条件に関心があるので、実験1 での連続呈示群と同じような評定リストの構成を行った。

そして、 Tを反復呈示する際に対呈示される情報によっ て以下の4つの組合せが設定された。 Tの1回目の呈示 の際には関係情報、 2回目には関係情報が対呈示される 条件(関一関)、 1回Rには関係情報、 2回目には項目 特殊情報が対呈示される条件(関一項)、 1回目には項 目特殊情報、 2回目には関係情報が対呈示される条件 (項一関)及び1回目、 2回目ともに項目特殊情報が対 呈示される条件(項一項)である。反復間隔は介在する Tの数によって操作し、 5語(短)と11語(良)という 2つの条件が設定された。したがって、 2(反復間隔) × 4(情報の組合せ)という要因計画に対応して、 8つの条 件が設定されることになる。これらの条件にTablelに 示した2つのトリプレット(政、教、敵;台、古、名) を除く8つのトリプレットを1トリプレットずっ割り当 てた。

このようにして作成された方向づけ課題での評定リス トは、実験1と同様に小冊子にされたが、実験1とは異 なり、 Tを反復呈示するので、ページ数はリストの先頭 と末尾に付加するバッファー語も入れて、合計65ペー

ジになった。また、被験者が同じTが反復されて呈示

されることに対して疑問をもつといけないので、同じ語 が2回呈示される場合がある旨を教示しておいた。その 他の材料及び手続きは実験1と同じである。

結   果

方向づけ課題として用いられた評定リストの小冊子を チェックしたところ、どの被験者にも評定の記入もれは みられなかった。しかし、自由再生テストにおいて部首 しか再生しなかった者が2名、再認テストにおいて記入 もれのあった被験者が2名いたので、これらの被験者を 除いた28名のデータが分析に用いられた。

虚再認率 Table 2の下段には、平均虚再認率が示さ れている。これらの虚再認率を角変換し、虚再認の型を 被験者内要因とする分散分析を行ったところ、虚再認の 型の主効果(F(2,54)‑ 12.94, p<.01)が有意であった。

LSDによる多重比較の結果、 Gに対する虚再認率はC に対する虚再認率よりも高かったが(p<.05)、 Sに対 する虚再認率とCに対するそれとの間に有意差は見ら れなかった。このことから、実験1と同様に、形態的情 報の符号化を方向づける課題の妥当性が明らかになった。

正再生率 実験1と同じく、対呈示部位再認テストに おけるヒット率を算出した。そのヒット率は、関一関条 件では部首のヒット率が96.43%、関一項条件では部首 が100%、残りの部分が88.69%、項一関条件では部首 が98.21%、残りの部分が90.48%、項‑項条件では残り の部分が91.07%であった。実験1と同様、対呈示部位 が再認テストでヒットされたTについてのみ正再生率 を算出した。平均正再生率は、 Table 4の上段に示され ている。この正再生率を角変換して2(反復間隔) × 4 (情報の組合せ)の分散分析を行った。その結果、反復 間隔×情報の組合せの交互作用(F(3.8i)‑ 3.43, p<.05) のみが有意であった。この交互作用についての単純効果 を分析した後、 LSDによる多重比較を行った結果、反 復間隔が長い場合には項一関条件が関一関及び項‑項条 件よりも高く(関一関との間はp<.05;項一項との間 はp<.01)、さらに関一項条件が項‑項条件よりも正 再生率が高かったが(p<.05)、他の条件間には差がな かった。一方、反復間隔の短い場合には、いずれの組合

Table 4 反復間隔と情報の組合せごとの止再生率, MCS及びその相関係数(r) (実験2) 反復間隔       長      短

情報の組合せ  閲‑関   関一項   項‑関   項‑項   閲‑関   関一項   項一関   項一項 正再生率    .39    .47    .61    .29    .42    .48    .36    .42

(.39)   (.34)   (.34)   (.32)   (.33)   (.40)   (.39)   (.36)

MCS      .96     1.00     1.18     .64     1.04     1.04     .71    .82

(1.04)   (.77)   (.77)  (.78)         (.92)   (.94)  (.77) .80     .71     .85     .90     .72     .80     .65 t値    10.93*    8.52*事    7.21'    9.72*事   1 1.82*    7.30榊    8.46事    6.74**

( )内はSD   ♪<.01

(8)

偶発学習における形態的情報

せ条件間にも有意差はなかった。

MCS 実験1と同じく、 MCSを算出した。その平均 がTable 4の下段に示されている。正再生率と同様の 分散分析を行ったところ、反復間隔×情報の組合せの交 互作用のみ有意な傾向があった(F(3.8i)‑ 2.34> p<.10)。

この交互作用について単純効果を分析した後、 LSDに よる多重比較を行ったところ、反復間隔の長い場合には 項一関条件が項一項条件よりもMCSが有意に高かった が(p<.05)、その他の条件間に差はなかった。一方、

反復間隔の短い場合には、どの条件問にも差はなかった。

正再生率とMCSの関係 実験1と同じく、正再生率 (角変換値)とMCSのピアソン相関係数(r)及びその 係数の有意性検定(t検定)が、 Table 4の下段に示さ れている。どの条件においても正再生率とMCSの間に 有意な相関係数が認められている。

考   察

実験2の目的は、 Huntらの一連の研究が示唆するよ うに、形態的情報における関係情報と項目特殊情報の加 算的効果が記銘語として漢字を用いた場合においても認 められるか否かを検討することであった。結果は、反復 間隔が長い場合に関係情報と項目特殊情報の両方が符号 化される関一項条件と項一関条件が、一方の情報しか符 号化されない条件(関一関、項一項)よりも偶発学習成 績の良いことが示された。すなわち、関係情報と項目特 殊情報の加算的効果が示され、 Huntらの産出から弁別 へという検索過程の主張を支持するものといえよう。そ して、実験1の連続呈示群における部首呈示条件で正再 生率が低かったのは、関係情報は産出過程に機能してい

たが、項目特殊情報が弁別過程に機能していないことに よるものと考えられた。

ただし、関一項条件と関一関の間の差は有意な値には 至らなかった。この結果は、次のように解釈できる。す なわち、項一関条件では関係情報が後で呈示されるので、

関係情報が活性化した状態である可能性が高い。それ故、

被験者は産出過程に機能する関係情報を利用しやすく、

それ故、続く弁別過程に移行しやすい0 ‑方、関一項条 件では先に関係情報が呈示されているので、関係情報の 活性化水準が低下しており、被験者にとってその情報の 利用可能性は先の条件よりも低下していると考えられる。

それ故、関係情報が産出過程に十分に機能しない可能性 があったのであろう。意味的情報における関係情報と項 目特殊情報の組合せを検討した豊田(1992b)において も、項一関条件の方が関一項条件よりも正再生率が高く なっている。したがって、関係情報と項目特殊情報の検 索過程に対応した呈示順も記銘語の検索を規定する一つ の要因ととらえることができるであろう。

183

一方、反復間隔の短い場合には、どの条件間にも正再 生率の差がなく、関係情報と項目特殊情報の加算的効果 は見られなかった。この結果は、関係情報と項目特殊情 報の組合せを検討した研究(豊田, 1992b, 1993)にお いて反復間隔の短い場合には加算的効果は認められてい ないという結果と一致している。したがって、形態的情 報を用いた場合でも、反復間隔の長短が関係情報と項目 特殊情報の加算的効果の出現に影響することが迫証され たといえよう。ただし、反復間隔の短い場合に加算的効 果が認められないことについては、現時点では明らかで ない。反復間隔が短い場合には同じTがすぐに呈示さ れるので、被験者は先に呈示された場合に比べて注意が 低下しやすい。それ故、 2回目に対呈示される情報の効 果が低下しているのかもしれない。

さて、上述したように、 Huntらの一連の研究には記 銘語に対して符号化された情報を特定できないという問 題点があった。そして、この間題を克服して検討したの が本研究であり、確かに関係情報と項目特殊情報の加算 的効果が認められたのである。しかし、意味的情報にお ける関係情報と項目特殊情報を特定し、関係情報と項目 特殊情報の加算的効果を検討した先の研究(豊田, 1992 b)では、関係情報と項目特殊情報の両方が符号化され る条件(関一項、項一関)は項目特殊情報のみが符号化 される条件(項一項条件)よりも再生率が高かったが、

関係情報のみが符号化される条件(関‑関条件)との間 に差は兄いだしていない。そこでは、自由再生事態であ るから産出過程から弁別過程へと検索が進むので、まず、

産出過程がうまく働かなければならない。それ故、産出 過程に機能する関係情報が重要であり、それが検索の成 功をほぼ決定してしまうと考察された。しかし、その後 の研究(豊田, 1993)では、項目特殊情報を符号化させ る操作として、記銘語から恩い出される過去の出来事の 鮮明度を評定させる手続きを用いると、関係情報のみが 符号化される条件よりも再生率が高くなるという加算的 効果が得られている。それ故、本実験の結果と併せて考 えると、方向づけ課題による符号化される項目特殊情報 の違いが、加算的効果の出現に影響しているといえよう。

最後に、どの条件においても正再生率とMCSの相関

係数が有意であった。このことは、 T間のまとまりの輪

郭を描く産出過程がTの検索に貢献していることを示

している。しかし、項目特殊情報しか対呈示されていな

い項一項条件において正再生率とMCSの相関係数が高

いことはどのように解釈できるのであろうか。実験2の

場合、同じトリプレット内の3つのTが反復呈示され

る。しかも連続呈示されるわけである。それ故、部首を

対呈示しなくても、 3つのTの間の関係情報が符号化

されやすかったと考えられる。特に、反復間隔が短いと

同じ部首をもったTを短時間に6回見ることになるの

(9)

184

豊 田 弘 司

でより一層関係情報である部首に気づきやすいと考えら れる。項一項条件において、反復間隔の短い条件(.82) のMCSは、長い条件(.64)よりもいくぶん高くなって いる。これは上述の可能性を示す1つの傍証となるであ ろう。

要約と今後の課題

本研究の実験1の目的は、記銘語として漢字を用い、

符号化される形態的情報を特定した上で、 Huntらの主 張する関係情報と項目特殊情報の枠組みが形態的情報に ついても適用可能か否かを検討することであった。その 結果、部首を対呈示した場合には、正再生率と群化量の 指標であるMCSとの相関が有意であり、形態的情報で あっても関係情報として産出過程に機能する可能性が示 唆された。実験2では産出過程に機能する関係情報と弁 別過程に機能する項目特殊情報との組合せを検討した。

その結果、関係情報と項目特殊情報の加算的効果が認め られた。

これまでの偶発学習を検討した研究においては、処理 水撃説(Craik & Lockhart, 1972)の提唱以来、意味 的情報が重視され、形態的情報はあまり注目されていな かった。しかし、漢字の場合は形態的特徴が顕著であり、

意味的情報に関する処理と同じ効果のあることが指摘さ れている(北尾・馬場園, 1980;海保・野村, 1983), 本研究においても、漢字の形態的情報の符号化が偶発学 習に貢献するという可能性が示されたわけである。

学校の教授場面においては、漢字の学習指導に関して は様々な工夫がなされている。例えば、児童に同じ部首 をもつ漢字を列挙させる方法などは、本研究で扱った関 係情報を符号化させる手続きと非常によく似ているとい えよう。しかし、本研究から示唆されることは部首など の関係情報だけでなく、残りの部分に関する項目特殊情 報を符号化させることでより一層学習が促進されるとい うことである。本研究は被験者がすでに知っている漢字 を用いた基礎的な実験ではあるが、未知の漢字の学習に おいても関係情報と項目特殊情報という枠組みを通用で きる可能性があるかもしれない。さらに、いったん学習 した漢字を定着させるためには、関係情報で漢字同士の 関連性を示し、項目特殊情報によってそれぞれの独自性 を示すことが必要な場合もあるであろう。今後の研究に おいては、未知の漢字を用い、関係情報と項目特殊情報 の漢字学習への適用可能性が検討されるべきであろう。

(付 記)

本研究の材料の作成及びデータの収集に関しては、

住江真君と大門ひろ子さん(平成7年度奈良教育大 学心理学専攻卒業)の協力を得た。記して感謝の意

を表します。

白蝣HE識

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豊田弘司1993 偶発記憶に及ぼす精微化の組合せの効果 日

本心理学会第57回大会発表論文集, 421.

(10)

185

Effects of Graphemic Informations on Incidental Learning of Kanji

Hiroshi TOYOTA

{Department of Psychology, Nara University of Education, Nara, 630 ‑ 8528, Japan) (Received April 17 1998)

The present study investigated the effects of graphemic relational information and item‑specific informa‑

tions on incidental learning of Kanji characters. Three Kanji targets of each triplet have a common graph‑

emic part as relational information. Subjects were presented with the Kanji character and with one part of it and asked to rate the proportion that the part of it occupy to the whole Kanji character on a five‑point scale foト lowed by a free recall test. Correlation between the recall performances of targets presented with a common part and mean category size as an index of clustering was significant in Experiment 1. This result showed that the graphemic relational information of Kanji character had an effect on the generation process in retriev‑

al.

The combined effects of relational and item‑specific informations were examined in Experiment 2. Recall performance of targets presented with both relational and item‑specific informations was higher than those with relational or item‑specific information only. This result showed the additive effect of the graphemic relational and item‑specific information on incidental learning.

Key Words : graphemic information, relational information, item‑specific information

参照

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