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偶発記憶に及ぼす情報の階層性による限定の効果

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

偶発記憶に及ぼす情報の階層性による限定の効果

著者 豊田 弘司

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

50

1

ページ 205‑211

発行年 2001‑10‑15

その他のタイトル Effects of Constraints of Hierarchy of Information on Incidental Memory

URL http://hdl.handle.net/10105/1386

(2)

奈良教育大学紀要 第50巻 第1号(人文・社会)平成13年

Bull. NこIrこ¥ Unit, Educ. Vol. 50, No. 1 (CLill & Soc), 2001

偶発記憶に及ぼす情報の階層性による限定の効果

豊 田 弘 司

奈良教育大学学校教育講座(心理学) (平成13年4月23日受理) キーワード:活性化拡散領域限定仮説,階層性.偶発記憶

1.はじめに

Tulving (1972, 1982 は,記憶を意味記憶(seman‑

tic memory)とエピソード記憶(episodic memory に 区分しているが(太田・小松, 1983㌦ 前者は知識に対 応し.後者は時間や場所との結びつきのある個人的な出 来事の記憶といえよう.前者の意味記憶については.

Collins & Loftus (1975)が,聞達ある概念が互いに結 びついた連想ネットワークを仮定している.また.

Anderson (1974, 1980, 1983)も文の処理に関する類似 した意味記憶構造を仮定している.現在のところ,意味 記憶が上述のような連想ネットワークで構成されている

ことは.おおむね認められている.

さて,従来の研究では,記憶成績の違いは.記憶容量.

符号化の質.方略,メタ記憶などの概念によって説明さ れてきた ただし,一般的な自由再生,手がかり再生及

び再認実験では,被験者が熟知している単語を記銘語と して用いている.被験者がこのような記銘語を覚える場 合には、これらの記銘語に対応する意味記憶内の概念が 活性化する.そして,その活性化水準がリストの中には

ない他の単語に対応する概念の活性化水準よりも高くな 義.このことは,間接プライミングに関する諸研究にお いて.プライム刺激とターゲットが同 であった場侶こ 巌も反応潜時が短いことが示されている事実(吉川, 1987)によって証明されている.

したがって,通常の単語の再生実験においても,被験 者がリスト内にあった単語として認識し.それを再生す る場合には,再生された単語に対応する概念は活性化水 準が高いといえよう.ただし,被験者がこの活性化水準 の高さを手がかりとして,リスト内にあった単語とリス ト内にはなかった単語の区別をしているか否かは疑問で ある.しかし,通常の単語の再生実験において,意味記 憶における活性化水準が再生成績に影響を与えている可

205

能性は十分に考えられよう.これまで.単語の再生実験 の結果と意味記憶とは独立的に考えられてきたが.日並 のような理由から.両者の相互作用を考慮することは必 要であろう.

豊田(1996)は,このような相互作用を考慮して,記 憶実験において単語に対応する概念の活性化水準が記憶 成績を決定するという仮説を提出した.この仮説が活性 化拡散領域限定仮説(The hypothesis of Constraint on the Area of Spreading Activation,略してCASA仮説) であり,次のような内容を含んでいる.

1)記銘語が再生されるか杏かを規定する活性化の閥 値が存ftする. 2)意味記憶内での記銘語の活性化水準 が上述の陶佃を超えると記銘語が再生され,超えないと 再生されない. 3) 「fan効果(Anderson, 1974, 1980月 が示すように,記銘語の活性化は連想ネットワーク上の 関連ある語に拡散するので.記銘語の活性化の程度は時 間とともに低 卜する. 4)記銘語の活性化の拡散は,文 脈による意味的限定によって阻止される. 5)上記の限 定により,記銘語の活性化水準は維持される. 6)文脈 による限定が強ければ強いほど,記銘.語の活性化水準は 高くなり.再生率が高くなる.というものである

(Toyota, 2000).

要するに,この仮説は.意味記憶内にある語の活性化 水準が開催を超えるか否かが,その語の再生可能性を規 定すると主張するのである.したがって,記銘語を再生 可能にするためには,記銘語の活性化拡散を防ぐような 文脈を呈示すればよい.そのような文脈の呈示によって.

記銘語の活性化水準を再生可能な閥値以上に維持できる のである.過去の研究においても記銘語の意味を限定す る文脈を呈示することによって記銘語の再生率が高くな ることが数多く報告されている(Battig & Einstein, 1977: Frase & Kammann, 1974; Klein & Saltz. 1976;

Stein. Morris. & Bransford, 1978).したがって,文脈の

(3)

206

豊 什I 弘I‑‑J 呈示により記銘語の活性化拡散を防ぎ,その結果として

記銘語の活性化水準が低下せずに記銘語の再生率が高く なると考えられる.その反対に.このような文脈が呈示 されなければ,活性化の拡散を防ぐことができず.その 活性化領域が拡大して記銘語それ自体の活性化水準が低 下するのである.

さて,このCASA仮説の妥当性の検討は,活性化の拡 散領域を操作するために様々な要因を用いて行われてき た.例えば, Toyota (2000)では,記銘語 ex.ながい) に対する枠組み文の意味的限定性という要因を用いて, 活性化拡散領域を操作した.そして,記銘語を意味的限 定性の強い文(ex.きりんの くびは .)で皇示した 場合が弱い文(ex.この ひも は .)で皇示した場 合よりも再生率が高くなることを示した.これは.意味 的限定性の強い文によって記銘語の活性化拡散が限定さ れ,そのために記銘語の活性化水準が高いまま維持され.

再生可能な閥値以上になる可能性が増加したと考えられ た.また, Toyota (2001)では.記銘語に対する意味 的適合性と統語的適合性の組合せによって限走性を操作 した.その結果,意味的にも統語的にも適合する文が最 も限定性が強く,再生率もその限定性に対応して高くな った.これも,意味的適合性と統語的適合性の両方によ って記銘譜の活性化拡散領域が限定され.その結果.記 銘語の活性化水準の高さが維持されて,再生蝣nr能性が上 昇したと解釈された.このように, CASA仮説の妥当性

は実験的に証明されてきた.

ただし,これまでの研究では. Collins &Loftus (1975) やAnderson (1980)の連想ネットワークモデルに基づ いてCASA仮説の妥当性の検討を行ってきた.しかし.

意味記憶に関するモデルには階層性を仮定するCollins

& Qullian (1969)のモデルもある.このモデルでは, 上位水準(ex.動物),中位水準(ex.鳥)及び下位水準

ex.スズメ)という階層構造が仮定されている.このモ デルに基づいて活性化の拡散を考えると,より上位の水 準に位置する情報に活性化が及ぶほど,記銘語の活性化 がより拡散すると考えられる.このような階層性をもつ 意味記憶のモデルに基づいてCASA仮説の妥当性はこれ

まで検討されてこなかった.

2.実 験 1

2.1.日 的

本研究では,記銘語に対皇示する語の階層性を操作す ることによって活性化拡散領域を操作し, CASA仮説の 妥当性を検討する. Fig.1に示すように,記銘語 (Collinsfe Qullian (1969)では下位水準に位置する譜) よりも上位の水準に位置する語(Collins & Qullian (1969)では中位水準に位置する語;中位語)を呈示す

動物「:r

J7‑

上位水準

Fig. 1中位語を呈示された場合の活性化拡散穎域

ow

h7‑'

‑‑‑ 上位水準

(盲「、

//A

㌔‑‑r‑‑‑<、

/

L    t、 ‑、

、哀ズ手当ツバメ一

、‑i

ン‑  ‑ \

E ハト、,‑

L‑̲̲    ̲ ‑

7ワシ二

中位水準

下位水準

Fig. 2 下位語を呈示された場合の活性化拡散領域

ると活性化がその中位語に基づくカテゴリーに拡散して しまい,記銘語の活性化水準が低下する.一方.記銘語 と同位の水準に位置する語(Collins & Qullian (1969) では下位水準に位置する語;下位語)を呈示すると記銘 語の活性化拡散領域はFig. 2の国中の太線で示す狭い領 域に限定されるので,記銘語の活性化水準は先の場合よ りも低下しないと考えられる.したがって, CASA仮説 が階層性をもつ意味記憶にもあてはまるならば,記銘語 (下位水準に位置する語)に対して同位の水準である卜 位水準に位置する語(f位語)を対呈示する方が,中位 水準に対応する語(中位語)を対呈示する場合よりも記 銘語からの活性化の拡散が限定されるので記銘語の偶発 自由再生率は高くなるであろう.この予想(実験仮説) を検討するのが,実験1のH的である.

2.2.方 法 2.2.1.実験計画

実験計画は,記銘語に対する対呈示語の型(中位語.

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記憶に及ぼす階層性による限定の効果 Table1 本研究で用いられた語の例

対皇示語の型

‑IJh l',.'・M    、ト.:.

カラス      ツバメ かぶと虫    ぼった

下位語)を被験者両要因とする1要因計画である.

2.2.2.被験者

被験者は,偶発記憶実験の経験のない看護学校の女子 学生31名であり,これらの学生の平均年齢は, 18歳10か 月(範囲18歳3か月‑27歳11か月)であった.

2.2.3.材料

本実験で用いられた.記銘語,対呈示語及び再認テス トで追加刺激として用いる語は小用(1972)の表から選 ばれた1‑6文字からなるよく知られた名詞であった.

記銘語は28語であり,これらの記銘語に対応する対呈示 語として,中位語及び下位語が1つずつ選ばれた.中位 語は,記銘語が含まれるカテゴリー名であり,下位語は 記銘語と同じカテゴリーに含まれる語である.また,再 認テストで用いられる追加刺激は,記銘語と同じカテゴ リーに含まれる下位語以外の譜であった.これらの語は 28個の各カテゴリーから連想頻度のL位9項目に含まれ る語であり,平均連想頻度は, 69.80% 中位語は 81.′17%,下位語は69.94%,追加利激語は57.98%)であ った.なお, Table lには,これらの語の例が示されて いる.

方向づけ課題として,記銘語と対呈示語との連想強度 を5段階で評定させる課題を行わせるのであるが,その ための評定リストが作成された.評定リストは.上述し た記銘語が28語及びリストの最初と最後のバッファ一語 2語から成っていた.記銘譜のうちの半数の14語に対し て中f最吾が対呈示される場合と下位語が対呈示される場 合を設けることになるので,リストは2種壇作成され, 表紙をつけたB 6判の小IIIJ一子にされた.小IIIJ一子の各ペー

ジの上部には1つの記銘語,その下に対にされた語(中 位語もしくは下位語)が記銘語よりもやや小さく示され.

さらにその下に連想の程度に関する5段階評定尺度が印 刷されていた.この小冊子のページ例は, Fig.3に示さ れている.

白山再生テスト用紙はB5判で,上部に氏名を記入す る欄が設けてあり,その トに思いだした順にリストに出 てきた語(記銘語と対呈示語の両方)を筆答するように なっていた.再認テスト用紙は, A4判の大ききで, 70 語が2列にわたって35語ずつ印刷されていた.これらの 語は.評定リストで示された語(標的利敵) 42語が示さ

スズメ

弱‑       ‑強

1 2  こう 」 5

207

Fig.3 小冊子のページ例(実敬‖

れていた.これらの語の内訳は.記銘語が14語,中位語 が14語,下位語が14語であった.その他に追加利敵とし ての各記銘語からの連想語が28語含まれていた.なお.

これらの語はランダムに配列され.各語の右横には.

"確かにあった'から ー確かになかっだ'までの6段階評 定尺度が印刷されていた.

また、方向づけ課題と自由再生テストとの間に挿入課 題を行うが.そのための用紙はB4判で.上半分に平仮 名の有意味な文字列が,下半分に無意味な文字列が印刷 されているものであった.

2.2.4.手続き

実験は偶発記憶手続きを採用し,被験者が所属する看 護学校の一室で集団的に実施された.

2.2.4.1.方向づけ課題

上述の小冊子を配布し,黒板に例を示しながら方向づ け課題の仕方について説明した.被験者が課題の内容を 理解したことを確認した後,被験者は実験者の合図にし たがって10秒ごとにページをめくりながら.記銘語と対 呈示語の連想強度評定を行った.

2.2.4.2.挿入課題

方向づけ課,Raの後言帝人課題を3分間行った.被験者 は士述した挿入課題用紙に印刷されたひらがな文字列か ら3文字以上で構成されている名詞を丸で岡んでいっ た.

2.2.4.3.自由再生テスト

上述の自由再生テスト用紙を配布し,偶発書記自由再 生テストを行った.被験者は,記銘語と対呈示語を思い つく順に書記再生していった.再生時間は5分であった.

2.2.4.4.再認テスト

上述の再認テスト用紙を配布し,再認テストを行った, 被験者は,再認テスト用紙に印刷されている各語につい て6段階の確信度評定を5分間行った.

2.3.結  果

方向づけ課題で用いられた評定小冊子をチェックした ところ,どの被験者にも逸脱した反応が認められなかっ たので,方向づけ課題を適切に行っているといえる.ま

(5)

208

豊 田 弘 古J

Table2 自由再生率.虚再認率及び相関係数(r) 連想強度投階  満目!>.3)  強(4.51 柑呈示語型   中位 下位  中位 下位 自由再生率   .27 .36  .37 .35 虚再認得点  1.15 2.60  1.28 1.ll 廻埋軽挙(r) .23 .25  .16 .22

た,再認テスト終了後,方向づ1ナ課題の際に記銘の意図 を持った者に挙手を求めたが,挙手はなく.全員が記銘 の意図を持たなかったことが確認された.

2.3.1.自由再生率

再認テストにおいて記銘語と対呈示語の両方に対して H確かにあっだ' I.あったと思う'' "あったかもしれない'' の3つの段階に丸をつけた場合をヒットとしてカウント した.そのヒット率は,中位語が82.95% (SD‑.15主 下 位語が84.33% (SD‑.17)であった.また.再認テスト において対呈示語にヒット反応が認められ,自由再生テ

子トにおいて正再生された記鋸吾の自由再生率を算出し た.対呈示語がヒットされるということは,その語が活 性化されているということの指標になる.それ古生.対応 する対呈示語が活性化されている語のみを分析の対象と

したのである.このような分析は,豊田(1992)におい てもJTJいられている.さらに,記銘語と対呈示語の連想 強度評定値が1. 2及び3の場合と4及び5の場合に分 け,それぞれ連想が「弱」と評定された場合及び「強」

と評定された場合として分析した.これは,連想強度に よる活性化拡散の違いがある可能性を調べるためのもの である.

このように算出した平均自由再生率は, Table2に示 されている.この自由再生率を角変換して. 2 (対呈示 語の型) ×2 (連想の強弱)の分散分析を行った.その 結果,対呈示語の型×連想の強弱の交互作用(F、l:帥

‑4.30, p<.05)のみが有意であった.この交互作用につ いで下位検定を行ったところ.連想が「弱」と評定され た場合, 「位語を村里示した方が.中位語を対呈示した 場合よりも記銘語の自由再生率が高かったが(t, ,

‑2.32),連想が「強」と評定された場合では両者の間に 差はなかった(t.。 ‑.48).

2.3.2,虚再認得点

再認テストにおいて,記銘語からの連患語に対する6 段階の確信度評定値を虚再認得点として算出した.ただ

し,被験者によって方向づけ課題における連想強度評定 数が異なるため,それぞれの虚再認得点を評定数で割っ た.このようにして算出した数値が, Table2の第2行

に示されている.この虚再認得点について2 (連想の強 弱) ×2 (対呈示語の型)の分散分析を行ったところ, 連想の強弱の主効果(Fa仙‑16.14, p<.01)と対呈示語 の型の主効果(F。… ‑29.02, pく01)が存意であった.

また,対呈示語の型×連想の強弱の交互作用(F

‑22.04. p<.01)が有意であったので下位検定を行った.

その結果,連想が「弱」と評定された場合には下位語を 村里示する方が中位語を村里示する場合よりも虚再認得 点が高かったが(tm.0.‑6.90), 「強」と評定された場合

には両者の間に差はなかった.

2.3.3.自由再生率と虚再認得点の相関分析

自由再生率(角変換値)と虚再認得点との相関係数 (r)がTable2の第3行に示されている.下位語が対早 示され,連想が「強」と評定された場合にのみ負の相関 係数が得られたが.その他には負の相関係数はなかった.

2.4.考察

実験1の目的は, CASA仮説の妥当性を偶発記憶に及 ぼす階層水準による活性化拡散領域限定の効果によって 証明することであった.そして,記銘語に対し.下位語

を対呈示する方が,中位語を対呈示するよりも自由再生 率が商いという実験仮説を設定した.

Fig.1に示すように、記銘語に対して中位語を対早示 した場合には中位語(「鳥」)から他のカテゴリーメンバ ーの語にも活性化が拡散する.それ故.記銘語からの活 性化拡散領域は○で囲んだ領域にまで大きくなる.1一方,

卜位語を対呈示した場合にはFig.2に示すように.記銘 語と対呈示語を含む○で囲まれた卜位水準内の領域に活 性化が限定される.それ故.前者よりも後者において記 銘語の活性化水準が高いまま維持され,その結果,記銘 語の検索される可能性が高いと予想された.

実験の結果は,連想強度が「強」と評定された場合に は2つの条件問に再生率の差はなかったが. 「弱」と評 定された場合には,下位語を対呈示する場合の方が中位 語を対呈示する場合よりも再生辛が高かった.したがっ て実験仮説は記銘語と対呈示語の間の連想が「弱」と評 定された場合にのみ支持されたのである.

記銘語と対呈示語の間の連想が「弱」と評定された場 合には,対呈示語の他に記銘譜との連想関係が強い語が 存在する.それ故.もし対呈示語がなければ活性化はそ の語‑拡散する.しかし.対呈示語が存在することで対 呈示語の方‑活性化が拡散したと考えられる.さらに, 対呈示語が中位語の場合には,そこからかなり活性化が 拡散する可能性が高くなるのに対し,卜位語では.他の 語との連想的なネットワークが中位語ほど多くないので 活性化の拡散が少なく.記銘語の活性化水準が維持され

たために記憶成績が良くなったのであろう.

一方,連想が「強」と評定された場合には,対呈示語 よりも記銘語との連想関係が強い語が存在する可能性は 少ない.それ故,記銘語と対呈示語が1つのまとまりと して活性化してしまい,他の語への拡散が少なかったと 考えられる.それ故,下位語を対呈示した場合でも中位 語を対呈示した場合でも,活性化水準には差がなく.再

(6)

記憶に及ぼす階層性による限定の効果 生率も等しかったのであろう.

ただし.中位語を吋呈示した場合の方が他の語への活 性化の拡散が及ぶ可能性が高いのであるから,虚再認得 点は増加するはずである.しかし,実験結果は,連想が

「弱」と評定された場合において,下位語を対呈示され る方が中位語を対呈示されるよりも虚再認得点が高くな っている.また,活性化拡散領域の大きさを反映する虚 再認得点と.記銘譜の活性化水準の高さを反映する自由 再生率の間には負の相関関係が認められるはずである が,この間係も認められていない.この原因は, 1つに は手続の問題であることが考えられる.本実験では,初 めに記銘語と対呈示語を自由再生テストにおいて再生さ せたので、この記銘語と対呈示語の検索時に活性化が生 じる.その後,再認テストにおいて記銘語,対呈示語, 記銘語からの連想語(追加刺激)について.確信度評定 をさせたが,ここで,さらに活性化が生じ,加えて対呈 示語からの連想語が呈示されるので.対呈示語以外の連 想語に対して虚再認される可能性が増加したと考えられ る.

ただし,再認テストを先に実施すると,再認テストで 呈示きれた語が記銘語の検索手がかr)となり,その影響 が後続の自由再生テストに反映されるわけであるから.

被験者をわけて検討する以外に方法はないといえる.

3.実 験 2

3.1.日 的

実験1では,下位水準に位置する記銘語に対して同じ 下位水準に対応する下ft:語を対呈示する場合とIl」位水準 に位置する中位語を村里示する場合の偶発自由再生率を 比較した. CASA仮説からは.記銘語からの活性化拡散 が限定される前者の場合が後者の場合よりも偶発白山再 生率が高いと予想された.しかし.記銘語と対呈示語の 連想が「弱」と評定される場合には中位語を対呈示した 場合よりも下位語を対呈示した場合の方が再生率は高か ったが,連想が「強」と評定された場合には両条件間に 差はなかった.したがって. CASA仮説からの予想が一 部支持きれたにとどまった.

そこには,実験1の方法論上の問題点が反映されてい る.すなわち,実験者の設定した対̲呈示語が被験者の知 識構造に 一致していない可能性が考えられるのである.

事実,実験1では方向づけ課題における連想強度評定値 の分散が大きかった.このことは,対呈示語と記銘語と の連想強度に変動があるということである.

そこで,これらの問題点をクリアするために実験2が 計画された.具体的には,被験者自身に記銘語から連想 される語を1つ書いてもらい,その語が中位語に対応す

スズメ

( )

209

Fig.4 小冊子のページ例(実験2)

る場合と下位語に対応する場合を分けて分析することに した.

もし, CASA仮説が妥当であるならば,下位語を連想 した場合の方が中位語を連想した場合よりも活性化の拡 散が限定されるので,再生率は高くなるであろう.この 実験仮説を検討するのが実験2の目的である.

3.2.方 法 3.2.1.被験者

被験者は,偶発記憶実験の経験のない大学生女子20名 であり,平均年齢は20歳5か月(範囲18歳10か月〜22歳5 か月)であった.

3.2.2.材 料

記銘譜として用いられた語は.実験1と同じであった.

方向づけ課題として用いられた小冊子の各ページには, 記銘語が大きな文字で印刷され,その下に括弧が設けら れていた. Fig.4には,小冊子のページの例が示されて いる.なお,自由再生用紙及び挿入課題用紙については, 実験1と同様のものが同意された.

3.2.3.手続き

実験は偶発記憶手続きを採用し,被験者が所属する大 学の一室で集団的に実施された.

3.2.3.1.方向づけ課題

被験者に上述の評定リストを配布し.方向づけ課題の 什方について教示を与えた.教示の内宵は,小冊子に印 刷されている語から連想する語を記入すること,ただし, その連想語は名詞に限るということである.ここで連想 する語を名詞に限定したのは,中位譜と下位語に対応す る語は名詞であり,できるだけ分析の対象となる語の数 を増やすためである.被験者全員が教示の内容を理解し たことを確認した後、被験者は各ページにつき10秒のペ ースで連想語を記入していった.

3.2.3.2.挿入課題

実験lと同じように,挿入課題を3分間行った.

3.2.3.3.自由再生テスト

実験1と同じく白山再生欄紙を配布し.偶発書記自由 再生テストを5分間行った.被験者は,小冊子に印刷さ

(7)

210

Table3 連想語の型ごとの平均自由再生率 連想語型    中位  7位 その他

平均    .50  .71 .43

SD

.27  .27   .01

蝣,'蝣I!│ 弘I'J

れた語(記銘語)と連想語の両方をできるだけ多く用紙 に記入していった.

3.3.結 果

実験1と同じく,被験者が方向づけ課題を適切に行っ ていること,全員が記銘の意図を持たなかったことが確 認された.被験者が方向づけ課題において連想した語を 中位語,下位語.その他の語に分類したところ.中位語

は5.95,下位語は2.91,その他の語は18.45であった.

被験者が,方向づけ課題の際に記入した連想語を上述 した3種類に分類し,それぞれの連想語の型に対応する 自由再生率を算出した. Table3には,この平均自由再 生率が示されている.この自由再生率を角変換して分散 分析を行ったところ,連想語の型(中位,下位,その他) の主効果(F(ユJH】‑9.28, p<.01)が有意であった.卜位検 定を行ったところ.卜位語を連想した万が.中位語を連 想した場合やその他の語を連想した場合よりも自由再生 率が高かった(p<‑01上

3.4.考 察

実験2の結果は,下位語を連想した場合の方が中位語 を連想した場合よりも偶発自由再生率が高く,実験仮説 を支持するものであった.

記銘語に対して中位語を自由連想した場合.その中位 カテゴリーに属する他の事物や事象に活性化が拡がり, 記銘語の活性化水準が低下する.そのため再生可能な活 性化の閥値に到達せず,再生率が低下したと考えられる.

‑;/,下位語を連想した場合,記銘語と同じ階層の水準 内で記銘語と連想語が結びついているため,この両者以 外に活性化は拡散せず,その結果,記銘語の活性化水準 は高いまま維持されたと考えられる.実験1と異なり.

自由連想を方向づけ課題として用いたことで,被験者白 身の知識構造内にある下位語を記銘語に結びつけること ができ,その結果, CASA仮説を明確に支持する結果を 得ることができたといえよう.

ただし,実験1では.記銘語からの連想語に対する虚 再認を活性化拡散の指標としたが,本実験では自由再生 テストのみを行い.このような指標は設けなかった.こ れは,実験1において自由再生テストの後に再認テスト を行ったために,自由再生された語からの活性化が拡が った可能性が考えられたためである.しかし, CASA仮 説の妥当性を検証するには活性化拡散の指標が不可欠で あり,今後の課題として自由連想課題を用いた場合の適 切な活性化拡散の指標を設ける必要があるといえよう.

4.引用文献

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(8)

記憶に及ぼす階層性による限JIEの効果

211

Effects of Constraints of Hierarchy of Information on Incidental Memory

Hiroshi TOYOTA

(Department of Psychology. Nai・a Univers毎of Edlication, Nara 630‑8528, Japan)

(Received April 23, 2001)

The present study investigated the validity of the hypothesis of Constraints on an Area of Spreading Activation

(CASA hypothesis) which was proposed by Toyota (1996). In contrast to the modビ suggested by Collins & Loftus

(1970), the model of Collins & Qullian (1968) has a memory structure with 3 hierarchical levels: the highest level

{e.g‑.こinimal); a middle level (e.g., bird): and the lowest level (e.g., canary). If the category lとibel at the middle level

(e.│ , bird) of a target word (e.g., sparrow) was provided or generated, activation of the target word would spread to

a large area and many items (e.gM swallow, pigeon, eagle) included in the category at thビmiddle level. As a result of

the spreading activation, during any delay the level of activation of the target word would decline rapidly. However,

if an item at the same (lower) level (e.g., swallow) was provided or generated,とictivatioil of the target word would

spread to a smaller area of a few items that were in the sub‑category. The level of activation of the target word would then not decline rapidly. The CASA hypothesis predicts that recall of target words is higher when examples of the target words are provided than when the category labels are provided. Two experiments were carried out to investigate this prediction. In Experiment 1, category labels or examples were provided by the experimenter, whereas in Experiment 2 they were generated by each subject (self‑generated). The results of Experiment 1 partial‑

ly agreed with the prediction, and the results of Experiment 2 entirely agreed with the prediction. These results were interpreted as supporting the validity of the CASA hypothesis in the model of semantic memory of Collins &

Qullian (1968) in addition to the model of Collins & Loftus (1970).

Key Words: the hypothesis of constraints on area of spreading activation, hiビrarchy言ncidental memory

参照

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