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自己生成された原因情報と結果情報が偶発記憶に及 ぼす効果

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

自己生成された原因情報と結果情報が偶発記憶に及 ぼす効果

著者 豊田 弘司, 中田 琴恵

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 46

号 1

ページ 253‑262

発行年 1997‑11‑10

その他のタイトル Effects of the Self‑generated Causal and

Outcome Informations on Incidental Memory

URL http://hdl.handle.net/10105/1549

(2)

I,モ良教育入学組要 第46巻 第1‑''}蝣(人文・社会) ;[':成9年 Bull. NaraL† Educ, Vol.46, No.1 (Cult. & Soc.), 1997

自己生成された原因情報と結果情報が偶発記憶に及ぼす効果

豊 田 弘 司 (奈良教育大学心理学教室)

中 田 琴 恵 (舞鶴市立池内小学校) (平成9年4月4日受理)

Bradshow&Anderson (1982)は、歴史上の有名な人物に関する記述文(ターゲット文)に 対して、ターゲット文の示す内容の原因となる文(原国文)を対呈示する群、結果となる文(結 果文)を対呈示する群、無関連な文(無間達文)を対呈示する群、ターゲット文のみを単独で呈 示する群を設定し、ターゲット文の意図記憶成績を比較した。その結果、原因文を対皇示した場 合と結果文を対呈示した場合が最も成績が良く、ターゲット文のみを単独皇示した場合がそれに 続き、最も成績が悪かったのが無間達文を対呈示する場合であった。記銘情報に意味的な関連性 の強い情報が付加されることによって、記憶成績が促進されることは多くの研究で兄いだされて いるが(Stein, Morris, &Bransford, 1978;豊田, 1984, 1992)、この研究でも、ターゲット文 に意味的関連のある原酬膏報や結果情報を対呈示する条件が、無関連な情報を対呈示する場合よ

りも記憶成績が良くなるという結果が確かめられた。この研究で注目すべきは、原因文を対呈示 する条件よりも、結果文を対呈示する条件の方がいくぶん成績が良かったという結果であるo L かし、この結果については、彼らは、結果情報が原因情報よりもターゲット文との関連性が強い ことによる可能性を示唆しているだけである。

そこで、豊田・中田(1996)は、上述した原因情報と結果情報の効果を再度比較した。という のは、原因文も結果文もターゲット文に関連している情報であるが、原因文はターゲット文より も時間系列上で先行し、結果文はターゲット文の後に続くという明確な違いがあるからである。

それ故、もし、この両者の有効性に違いがあれば、情報の有効性を考慮する際の視点として、新 たに時間系列という要因を加えることになるからである。

さらに、彼らはBradshow & Anderson (1982)の方法論上の2つの点を修正した。 Bradshow

&Anderson (1982)では、ターゲット文として用いたのが、歴史上の有名な人物のエピソード に関するものであり、原因文も結果文も被験者が推測するのが難しいものであり、被験者自身が 原因や結果としてこれらの文を符号化できていたかは疑問であった。それ故、ターゲット文を日 常的な事象に関する内容に変えた。また、 Bradshow & Anderson (1982)では、意図記憶手続

きを用いていたので、被験者独自の記憶方略が記憶成績に反映される可能性が高い。それ故、記 憶方略の個人差が反映されにくい偶発記憶手続を用いた。

このようにして、ターゲット文に対呈示する原因文と結果文が偶発記憶に及ぼす効果を検討し たが、原因文を対呈示する条件と結果文を対呈示する条件の間に記憶成績の差は兄いだされな かった。これは、実験者が皇示した原因文と結果文が被験者自身が考える原因や結果の内容と一 致していない可能性が反映されていると考えられる。 Pressley, McDaniel, Ternure, Wood, &

Ahmad (1987)は、被験者自身にターゲット文の示す内容に関する質問についての答を生成さ せる場合と、実験者がその答に対応する文を対呈示する場合とでは、前者が後者よりも記憶成績

253

(3)

31

豊 川 弘   'I' ‖ 琴'!'.

のよいことを示している。したがって、被験者自身に原因文や結果文を生成させることによって、

それぞれの情報の効果の違いが明確に現れる可能性は高いといえよう。

そこで、本研究の第1の「川勺は、ターゲット文に対する原因もしくは結果をたずねる質問(原 因質問、結果質問)に答えさせる手続きを用いて、偶発記憶に及ぼす原因情報と結果情報の効果

を検討することである。さらに、本研究では、先の研究(豊田・中田, 1996)と同じく、原因文 と結果文のターゲット文に対する適切性(ターゲット文の示す内容に対して原因もしくは結果と して認められる程度)の効果を検討することにした。それは、被験者自身が̲/I三成した情報であっ ても、それが原因や結果として適切でない場合には、ターゲット文の記憶成績を高める可能性は 少ないと考えるからである。そこで、本研究の第2の目的は、生成された原因文もしくは結果文 を、被験者自身の評定値に基づいて適切な文と不適切な文を分けてもらい、偶発記憶に及ぼす生 成された原因情報と結果情報の適切性の効果を検討することである。

実  験 1

日 的

ターゲット文に対する質問の型(原因質問、結果質問)を被験者内要因として、偶発記憶に及 ぼす生成された原酬膏報と結果情報の効果を検討するo

方 法

実験計画 質問の型(原因質問、結果質問)を被験者内要因とするI要因計画が用いられた。

被験者 被験者は大学生16名(男子7名女子9名)であり、平均年齢は20歳4か月(18歳6か 月〜25歳1か月)であった。

材 料 a)ターゲット文 ターゲット文は、豊BB・^田(1996)と'It二く、小柳ら(1960) の日本語3音節名詞の熟知価表から熟知度の高い3音節名詞(4.00‑4.99)と、賀集ら(1958) の3音節動詞の連想価表から使用頻度の高い動詞 2.75‑13.49)が選ばれ、意味の通るように 組み合わせた。 3音節名詞は主語あるいはF川勺語として使用され、動詞はすべて過去形に統‑一一さ れたo これらのターゲット文の例、及び被験者が答えた原因及び結果文の例が表1に示されてい る(,

b)生成リスト 方l"Jづけ課題では、ターゲット文に対する原因質問もしくは結果質問に対す る答を生成させるのであるが、そのための生成リストが作成された。,このリストはターゲット文 20文および分析に入れないバッファ一文10文から構成された。リストは、同じ質問の型が続けて 呈示されないようにという制限のもとで、原因質問、結果質問という順に呈示されるリスト及び 結果質問、原因質問の順に呈示されるリストの2種類が作成された。各リストは、要因計画に対 応して、原因質問に対応する10文、結果質問に対応する10文、そしてリストの最初と最後に5文 ずつ配置したバッファ一文10文から成っていたU これらのリストはB6判の小冊子にされ、中

表1本研究で川いられたターゲット文と質間に対して,'li成された適切な答の例

クーゲソト文      質n]^'!      生成されたJcI事の例 薬をもらいました。,    岨大1     病気になったからです。

結果      元気になりましたi,、

(4)

自己生成情報が偶発記憶に及ぼす効果 255

冊子の各ページの上部にはターゲット文が大きく印刷され、その下に原因質問(「どのようなこ とが原因でしょうか」)もしくは結果質問(「その結果どうなったでしょうか。」)が、ターゲット 文よりもやや小さく印刷され、さらにその下には、質問に対する答を記入できる空欄を設けた。

C)自由再生テスト用紙 豊田・中田(1996)とl行Jじく、方向づけ課題終了後、書記自由再生 テストを行うが、そのための自由再生テスト用紙が用意された。この用紙はA4判であり、上部 に氏名を記入する欄を設けた。

d)手がかり再生テスト用紙 豊田・中田(1996)と同様に、自由再生テスト後に実施する手 がかり再生テストのための用紙が用意された。この用紙はA4判の大きさでターゲット文30文す べてが横書きで1文ずつ印刷されていた。各文は主語、目的語、述部のいずれかしか書かれてお らず、後の部分は、被験者が再生された残りの文を記入するための空棉(  )に置き換えた。

手 続 実験は、偶発学習実験の手続を用いて被験者の所属する大学の一室で個別的に実施さ 'mm

l)方向づけ課題 上述した小冊子の表紙に記載された課題に関する記述を読み上げ、 1ペー ジに1文ずつ印刷されている記述文(ターゲット文)に関する質問に対する答を空欄に記入する ように教示を与えた。被験者が課題の仕方を理解したことを確認した後、被験者は、実験者の合 図に従って1ページにつき40秒間で質問に対する答を記入していった。

2)自由再生テスト 方向づけ課題終!後、上述の自由再生テスト用紙を渡し、書記自由再生 テストを10分間実施した。被験者は、小冊子に印刷されていた大きな文字で印刷されているター ゲット文を再生するように求められた。

3)手がかり再生テスト 自由再生テスト終了後、上述した手がかり再生テスト用紙を配布し、

書記手がかり再生テストを5分間実施した。被験者は、用紙に印刷された空欄に適切な言葉を記 入してターゲット文を完成するように求められた。

4)適切性評定 手がかり再生終了後、方向づけ課題で用いた小冊子を再配布し、各ページに おいて被験者自身が記入した答が、原因もしくは結果として適切であった程度を評定してもらっ た。評定段階は5段階であり、 「もっともらしい」を5、 「もっともらしくない」を1として評定 するように教示した。被験者は各答に対して該当する数字を記入していった。この適切性評定は 被験者ペースで行われたが、 5分間以上を要する被験者はいなかった。

LiJT^Kiii

方向づけ課題において用いられた小冊子をチェックしたところ、質問に対する答の記入もれも、

5段階の適切性評定の記入もれもみられなかった。

本研究の第2の目的が、適切性の効果を検討することなので、適切性評定の評定段階における 5もしくは4を適切、 3、 2もしくは1を不適切とし、被験者によって生成された答を適切及び 不適切に分類した。その結果、原因質問においては、 10文中、適切と評定された答が6.88、不適 切と評定された答が3.12であり、結果質問においては、 10文中、適切と評定された答が4.81、不

適切と評定された答が5.19であった。なお、本研究では、記銘情報としてターゲット文を用いて いるので、再生された文がターゲット文としての意味を保持している場合は正再生とみなした。

具体的には、あらかじめ類似した語をリストアップし、そのリストにある場合を正再生としてカ ウントしたO この採点法は、豊田・中田(1996)と同様である。

自由再生 表2の上欄には、自由再生テストにおける質問型及び適切性ごとの平均正再生率が

(5)

256 豊 田 弘 司・中 田 琴 恵

表2 質問型及び適切性ごとの平均正再生率(実験1) 質問型         原 因       結 果 適切性      適切    不適切      適切     不適切 自由再生     .5K.22)  .24(.31)   .45(.23)  .44C.24) 手がかり再生   .76(.23)  ,78(.27)   .75(.25)  .79(.19)

( )内は、 SD

示されている。この正再生率を角変換して、 2 (質問型) ×2 (適切性)の分散分析を行ったと ころ、質問型の主効果(F=1.84)は有意でなかったが、適切性の主効果(F (1,15)=7.07, p<.05) 及び両者の交互作用(F (1,15)=6.42, p<.05)が有意であった。この交互作用について下位検 定を行ったところ、原因質問では適切な答を生成した場合が不適切な答を生成する場合よりも再 生率が高かったが(t (15)‑3.67, p<.01)、結果質問では適切な答を生成した場合と不適切な答 を生成した場合の自由再生率の差は有意ではなかった(t‑.38)。また、適切な答を生成した場合 には原因質問と結果質問の間に有意差はないが(t=1.00)、不適切な答を生成した場合には、結 果質問の方が原因質問よりも自由再生率が高かった(t (15)=3.33, p<.01)。

手がかり再生 表2の下欄には、手がかり再生テストにおける質問型及び適切性ごとの平均正 再生率が示されている。この正再生率を角変換して、 2 (質問型) ×2 (適切性)の分散分析を 行ったところ、質問型の主効果(F=.Ol)、適切性の主効果(F=.55)及び両者の交互作用(F=.ll) のいずれも有意でなかった。

考 察

本研究の第1の目的は、質問によって生成された原因情報と結果情報が偶発記憶に及ぼす効果 を比較することであった。 Bradshow&Anderson (1982)や豊田・中田(1996)では、原因情 報と結果情報を実験者が呈示するという方法を用いたが、自由再生、手がかり再生ともに原国情 報と結果情報の間にターゲット文の記憶成績の差を兄いだすことはできなかった。本実験では、

質問によって原因情報と結果情報を生成させる手続きを用いた結果、情報が適切であった場合に は、結果質問をした場合の方が原因質問をした場合よりも自由再生率が高かった。これは、

Bradshow & Anderson (1982)において、結果情報を呈示する場合の方が原因情報を呈示する 場合よりも幾分再生率が高かったことと一致している。 Bradshow & Anderson (1982)の実験 で用いられたターゲット文は歴史上の人物に関する内容であったので、それらの文に対する原因 情報と結果情報は被験者自身にとって知識構造にないものであった可能性が高い。それ故、原因 情報と結果情報ともに本研究での不適切情報に近いものであったと考えられよう。

質問によって生成された結果情報は、それが不適切な場合であっても、ターゲット文に対して 時間系列上後に続くので、ターゲット文と結果情報の自然な時間系列を形成する。 I‑一一万、原因情 報の場合は、ターゲット文に対して時間系列上先にくる情報であるので、ターゲット文から原因 情報という時間系列上を逆行することになる。それ故、結果情報の場合は、生成された情報が不 適切であっても検索のために有効に機能し、原因情報の場合にはそれが不適切である場合にはそ の有効性が低下するのかもしれない。

しかし、実験1では、質問の型(原因、結果)を被験者内要因として計画していた。そのため

(6)

自己生成情報が偶発記憶に及ぼす効果 257

に、被験者はあるターゲット文では原因質問がなされ、別のターゲット文では結果質問がなされ ることになる。このような事態では、被験者が原因質問と結果質問を明確に区別して適切な情報 を生成しにくいと考えられる。すなわち、質問の型を被験者内要因としたために、被験者に原因 と結果の混乱を引き起こし、そのために自由再生率及び手がかり再生率における両質問間の差が 消失した可能性がある。この方法論上の問題点を考慮し、実験2では、質問の型を被験者間要因 として再検討することにした。

本研究の第2の目的は、生成された原剛膏報及び結果情報における適切性の効果を検討するこ とであった。手がかり再生においては適切性の効果は認められなかったが、自由再生において原 因質問に対する答を生成した場合に適切性の効果が兄いだされた。この結果は、適切な情報を生 成する場合の方が、不適切な情報を生成する場合よりも正再生率が高いことを示した過去の研究

(Stein, Morris & Bransford, 1978 ; Stein & Bransford, 1979)と一致している。それ故、適切 な情報が生成された場合においても、ターゲット文の意味理解を促す援助が与えられたと解釈で

きよう(Stein, Morris, & Bransford, 1978)。

原酬苗報と結果情報を呈示する手続きを用いた豊田・中田(1996)では、手がかり再生におい て原因情報、結果情報ともに適切性の効果が兄いだされたのに、本実験では自由再生における原 因情報についてのみその効果が認められている。豊田・中田(1996)において自由再生における 適切性の効果が見られなかったことの理由としては、全体の正再生率が低く、床効果のために適 切性の効果が検出されにくかったことがあげられた。同じように考えると、本実験では手がかり 再生において、逆に、天井効果のために適切と不適切の差が兄いだされにくかったといえよう。

そこで、実験2では、天井効果の可能性を除くために、挿入課題を用いて再生までの時間を遅ら せる二工夫をした。さらに、分析の対象となる原因質問と結果質問に割り当てられるターゲット文 の数を増すために、質問の型を被験者間要因とし、生成された原因情報及び結果情報における適 切性の効果を再検討する。,

実  験  2

日 的

実験1では、質問の型を被験者内要因としたことの問題点が指摘された。それ故、実験2では、

原因質問群及び結果質問群を設け、新たにターゲット文から被験者自身に自由に連想した文を生 成してもらう連想質問群を設けることにした。というのは、ターゲット文に対して原因情報や結 果情報を生成することが記憶成績を促進するのは、 ]勘二ターゲット文に対しで情報を生成したこ

とが反映するのか、それともターゲット文に対して生成された情報が原因や結果であったことに よるのかを区別するためである。

方 法

実験計画 質問の型(原因質問、結果質問、連想質問)を被験者間要因とする1要因計画が用 いられた。

被験者 被験者は大学生45名(男子19名、女子26名)であり、平均年齢は21歳11か月(18歳1 か月〜24歳8か月)であった。これらの被験者は、男女の比率と平均年齢がほぼ等しくなるよう

に、各質問群に15名ずつが割り当てられた。

材 料 ターゲット文は実験1と同じものを用いた0 本実験では質問の型を被験者聞要因とす

(7)

2f>8 豊 田 弘 nj ・ 中 間 琴 恵

るので原因質問群、結果質問群及び連想質問群に対応する生成リストの3種類が作成された。こ れらの1)ストは、ターゲット文26文及びバッファ一文4文(リストの最初と最後に2文ずつ)か ら構成されており、 B6判の小冊子にされた。原因質問群用小冊子は、ターゲット文の配列を考 慮して2種類つくられたが、各ページの上部にターゲット文、ほぼ中央に「どのようなことが原 因でしょうか」という質問、そしてその下に答を記入する空欄が設けてあった。結果質問群用小 冊子も2種類つくられ、質問が結果質問(「その結果、どうなったでしょうか」)に代えられてい る以外は、原因質問群用小冊子と同じであった。また、連想質問群用小冊子も2種類作成され、

質問が連想質問(「どのような文を連想しますか」)に代えられている以外は、上記2群用の小冊 子とl司じであった。自由再生テスト用紙及び手がかり再生用紙は、実験1と同じものを用いた。

本実験では挿入課題を行うことにし、そのための用紙は、 B4判の大ききで、句読点を含まない ひらがな文字列が印刷されているものであった。

手 続 本実験は被験者の所属する大学の一室で個別的に行われた。

1)方向づけ課題 群によって配布される小冊子が異なる以外は、実験1と同じ手続きであっ た。各群の被験者は、実験者の合図にしたがい、質問に対する答を各ページの空欄に1ページに つき40秒のペースで記入していった。

2)挿入課題 方向づけ課題終!後、被験者にはすぐに上述した挿入課題用紙が渡され、用紙 に印刷されたひらがな文字列の中から、 3文字以上で構成されている名詞を九で囲んでいくとい う作業を3分間行った。

3)自由再生テスト 実験1と同じように、書記自由再生テストを10分間実施した。

4)手がかり再生テスト 実験1と同じく、書記手がかり再生テストを5分間実施した。

5)適切性評定 実験1と同じ手続きを用いて、生成された答の適切性に関する5段階評定を 行った。評定は被験者ペースで行われたが、実験1と同様、 5分間以上を要する被験者はいなかっ た。

結 果

方向づ1ナ課題において用いられた小冊子をチェックしたところ、質問に対する答の記入もれも、

5段階の適切性評定の記入もれもみられなかった。適切性評定の評定段階における5もしくは4 を適切、 3、 2もしくは1を不適切とし、被験者によって生成された答を適切及び不適切に分類 した。その結果、原因質問群においては、 26文中、適切と評定された答が13.93、不適切と評定 された答が12.07、結果質問群においては適切と評定された答が11.i 、不適切と評定された答が 14.20、連想質問群においては、適切と評定された答が10.40、不適切と評定された答が15.60であっ た。

自由再生 表3の上欄には、白山再生テストにおける質問の型(秤)及び適切性ごとの平均正 再生率が示されているO なお、 iE再生の採点法は、実験1とHじである。この正再生率を角変換 して、質問の型を被験者間要因、適切性を被験者内要因とする2要因混合分散分析を行ったとこ ろ,質問の型の主効果(F‑.47)、適切性の主効果(F‑2.36)、及び質問の型×適切性の交互作用

(F=.21)のいずれも有意ではなかった。

手がかり再生 表3の下欄には、手がかり再生テストにおける質問の型(群)及び適切性ごと の平均正再生率が示されているO このiE再生率を角変換して、質問の型を被験者間要因、適切性 を被験者内要因とする2要因混合分散分析を行ったところ、質問の型の主効果(F=.10)、適切

(8)

自己生成情報が偶発記憶に及ぼす効果

表3 質問型及び適切性ごとの平均正再生率(実験2)

259

質問m      原 因         結 果         連 想 適切性    適切   不適切    適切   不適切    適切   不適切 自wm生   .45(.19)  .47(.17) .48(.20)  .52(.17) .4K.22)  .48C17) 手がかり酔‡三 .77(.21)  .78(.15) .81(.14)  .79(.16) .79(.18)  .72(.18)

( )内は、 SD

性の主効果(F=1.36)及び両者の交互作用(F=.72)はいずれも有意でなかった。

ir^Ka

実験2では、質問の型を被験者間要因として、本研究の第1の目的である生成された偶発記憶 に及ぼす原酬膏報と結果情報の効果を比較した。しかし、実験1と同様に、全体として自由再生、

手がかり再生ともに原因質問群と結果質問群の間には差が認められなかった。さらに、実験1で は、不適切な答が生成された場合に結果質問が原因質問よりも自由再生率が高かったが、そのよ うな違いも実験2では兄いだせなかった。このように、質問型を被験者間要凶とした場合には、

ターゲット文に対して生成される原因情報と結果情報の効果には差のないことが示されたのであ る。豊田・中田(1996)によれば、原因情報は記銘情報であるターゲット文に先行し、結果情戟 はターゲット文に続くという時間系列上の明確な違いがあるので、この両情報の有効性に差があ ると予想した。しかし、彼らの研究及び本研究においてもその差が認められなかった。

もし、両情報間に違いがあるとしても、原因情報も結果情報も、ターゲット文に対して被験者 が自分の意味記憶ないしエピソード記憶(Tulving, 1972)に基づいて生成した情報である。そ れ故、その意味的関連性もしくはエビソディックな関連性がターゲット文に付加される情報の有 効性の多くを規定してしまい、時間系列上の違いがその有効性を規定する程度は少なかったので あろう。本実験で新たに設けた連想質問群との問に記憶成績の差が認められなかったことは、上 記の[‑,摘EJr生を示唆するものといえよう。連想質問群の生成する答もターゲット文に意味的もしく はエビソディック的に関連がある情報であると考えられる。それ故、この連想質問群と記憶成績 の差が認められなかったことは、原因情報や結果情報が記憶成績を促進するのではなく、被験者 の意味記憶やエビソディック記憶に基づく情報によって、記憶成績が促進されることが示唆され たのであるo

ターゲット文の内容に関するWhy質問の答を被験者自身に生成させる一連の研究(Pressly, etal., 1987; Pressley. etal., 1988I Martin& Pressley, 1991 では、実験者がWhy質問に 対する答を対呈示するよりも、被験者自身にその答を生成させた方が記憶成績の良いことを示し、

その理由として、被験者自身が生成した答の方が実験者が呈示した情報よりも被験者自身の知識 構造に一致しているという解釈を行っている。したがって、被験者に自分自身の知識構造に基づ く原因情報や結果情報を生成させることによって、原因情報と結果情報の効果の違いが記憶成績 に反映されるくらいに増幅されることを期待した。しかし、実験1及び2ともに原酬膏報と結果 情報の明確な違いは兄いだせなかったのである。

本研究の第2の目的である適切性の効果に関しては、実験1では自由再生において適切性の効 果が認められたのに対し、実験2ではその効果が認められなかった。この結果は、以下のように

(9)

260 豊 田 弘 司・中 田 琴 恵

考えることができよう。原因質問と結果質問の両方の質問を処理しなければならない実験1の被 験者とは異なり、実験2の場合には、原因質問群及び結果質問群ともに1種類の質問に対する答 を生成すればよかった。それ故、生成される答がより適切な内容になる可能性が高く、被験者自 身に不適切と評定された答であっても、実験1の被験者によって生成された不適切な答より適切 な内容になっていたのであろう。また、原因情報と結果情報を実験者が呈示する手続きを用いた 豊田・中田(1996)では、対呈示文型(原因文、結果文)の要因を被験者間要因にした場合に適 切文と不適切文の差が明確に現れている。しかし、原因情報と結果情報を生成させる本研究の場 合には、反対に質問型を被験者間要因とした場合に適切性の効果は消失してしまった。これも、

被験者自身の生成した情報は被験者の知識構造に基づくものであるので、被験者が不適切と評定 した場合でも、この情報のもつ有効性は消えないのであろう。

手がかり再生において適切性の効果が認められなかったことも、注目すべき結果である。豊ffl 中田(1996)では、対呈示文型を被験者内要因にした場合でも、被験者間要因にした場合でも‑I 貰して手がかり再生においては、適切性の効果が兄いだされた。 Huntらの一連の研究(Einstein

&Hunt, 1980; Hunt&Einstein, 1981 ; Hunt&Seta, 1984; Hunt, et al., 1986)によれば、

記銘情報の検索は、複数の関連ある情報のまとまりへアクセスする産出過程と、そのまとまりの 中の個々の記銘情報へアクセスする弁別過程の2段階から成っている。そして、手がかり再生の 場合は、ターゲット文の一部が手がかりとして呈示されるので、まとまり(本実験の場合は、ター ゲット文と生成された答)へのアクセスを促す援助が与えられる事態である。適切文の場合には、

記銘文と対呈示文が意味的な適合性をもっているので、記銘文と対呈示文がまとまりとしてアク セスされ、そのまとまりの中にある記銘文の残りの情報も検索されやすい。それに対して、不適 切文の方は、記銘文と対呈示文が意味的に不適合であるのでまとまりとしてアクセスされにくく、

記銘文の残りの情報も検索されにくいのである。しかし、本実験の場合は、被験者が質問に対し て答を生成する手続きを用いているので、ターゲット文と被験者自身が生成した答の意味的適合 性が不適切と評定された場合でも意味的な適合性もしくはエビソディックな適合性が高かったと 考えられる。それ故、適切、不適切に関わりなく、ターゲット文と生成された答のまとまりの中

にあるターゲット文の残りの情報も検索されやすかったのであろう。

要     約

本研究の第1の目的は、偶発記憶に及ぼす生成された原因情報と結果情報の効果を検討するこ とであり、実験操作としては原因質問と結果質問を設定した。第2の目的は両情報における適切 性の効果(適切文を生成する場合が不適切文を生成する場合よりも記憶成績が良いという現象)

を検討することであり、被験者が生成した原因文及び結果文を適切文と不適切文に分けて分析し た。

実験1は、質問型(原因質問、結果質問)を被験者内要因として検討され、被験者は大学生で あった。偶発記憶手続きを用いた個別実験の結果、自由再生において、適切な文を生成した場合 に結果質問が原因質問よりも自由再生率が高かった。また、全体として、適切な文を生成した場 合が不適切な文を生成した場合より自由再生率が高くなF上 適切性の効果が認められた。しかし、

手がかり再生においては質問による再生率の違いも、適切性の効果も認められなかった。

実験2では、質問型を被験者間要因とし、原因質問群、結果質問群とともに、新たに連想質問

(10)

自己生成情報が偶発記憶に及ぼす効果 261

群を設定した。実験1と同様の個別実験を行った結果、自由再生、手がかり再生ともに質問によ る違い及び適切性の効果は兄いだされなかった。したがって、生成された原因情報と結果情報が 記憶に及ぼす効果には違いがないことが示された。連想質問群との差がなかったことから、原因 情報や結果情報が記憶成績を促進するのではなく、被験者の意味記憶及びエピソード記憶に基づ

く情報が記憶成績を促進することが示唆された。

引 用 文 献

Bradshow, G. L., & Anderson, J. R. 1982 Elaborative encoding as an explanation of levels of processing.Journal of Verbal Lemming & Verbal Behavior, 21, 165‑174.

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Effects of the Self‑generated Causal and Outcome Informations on Incidental Memory

Hiroshi ToYOT八

(Departn 一it of Ps;lrhology, Nam Ui川,eγsity of Educ、ation, Nara 630, Japan)

and Kotoe N八KATA

(Ikeuchi Element叩School, Maizuru 624, Japan) (Received April 4. 1997)

Two experiments were carried out to investigate the effects of the self‑generated causa一 and

outcome sentences and the precise and imprecise sentences on incidental memory. Subjects were asked to answer the questions about each target followed by free and cued recall tests. One word in each target sentence lvas used as a cue in cued recall.

In the first experiment the type of self‑generated sentences was treated as the within‑subjects factor. The self‑generated outcome sentences led to better free recall than the causal sentences when the sentences were judged as the precise ones. Although there was no performance differ‑

ence between the precise and the imprecise sentences in free recall, the better performance was observed for the precise sentence in cued recall.

In the second experiment the type of self‑generated sentences was treated as the between‑sub‑

jects factor. The causal, the outcome and the associative information groups were provided.

There was no performance difference among these groups in both free and cued recall tests. The performance difference between the precise and the imprecise sentences also was not observed in both recall tests.

The findings obtained in both experiments were interpreted as showing that there was no dif‑

ference in effectiveness between the self‑generated causal and the self‑generated outcome informa‑

tions and that the precision of the self一generated informations was not critical in incidental mem‑

ory.

参照

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