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Lenalidomide による 悪性神経膠腫細胞株への抗腫瘍効果の検討

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Lenalidomide による

悪性神経膠腫細胞株への抗腫瘍効果の検討

日本大学大学院医学研究科博士課程 外科系脳神経外科学専攻

花島 裕也

修了年 2020 年

指導教員 小林 一太

(2)

Lenalidomide による

悪性神経膠腫細胞株への抗腫瘍効果の検討

日本大学大学院医学研究科博士課程 外科系脳神経外科学専攻

花島 裕也

修了年 2020 年

指導教員 小林 一太

(3)

目次

概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 緒言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 対象と方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29 図・図説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30 引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42 研究業績・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51

(4)

概要

悪性神経膠腫は高度な増殖能と浸潤能を有する悪性の脳腫瘍である。手術、および

temozolomideによる化学療法と放射線治療を組み合わせた集学的治療にも関わらず、いまだ

に予後不良な疾患である。

Lenalidomide thalidomide 誘導体であり、thalidomide の副作用を減らし抗腫瘍効果を 高める目的で開発された薬剤である。血液系の腫瘍に対して予後の改善効果が示され、現在 の臨床現場で多く使用されている。血液腫瘍に対するlenalidomideの抗腫瘍効果を検討した 研究は数多くあるが、悪性神経膠腫に対するlenalidomideの抗腫瘍効果を検討した報告は少 ない。今回我々は、lenalidomide が悪性神経膠腫に対する新規治療薬となる可能性があると 仮説を立て、本研究を計画した。Lenalidomideの悪性神経膠腫に対する治療効果を検証する ために、悪性神経膠腫細胞株への抗腫瘍効果について検討を行った。

6種類の悪性神経膠腫細胞株 (A-172AM-38T98GU-138MGU-251MGYH-13)

用いて、lenalidomide処理による細胞増殖抑制実験を行った。実験はcoulter counterを使用し

て行い、生存細胞の細胞数を計測した。Lenalidomide処理により、全ての悪性神経膠腫細胞 株は濃度依存的な細胞増殖抑制効果を認めた。

悪性神経膠腫細胞に対する lenalidomide の抗腫瘍作用の機序を検討するために、A-172 AM-38を用いてfluorescence-activated cell sorter (FACS)による細胞周期分布解析とapoptosis 誘導解析を行った。また細胞周期停止とapoptosis誘導について評価する目的で、Western blot によるタンパク質の発現解析、real-time quantitative reverse transcriptional polymerase chain

reactionによるRNAの発現解析を行った。

細胞周期分布解析では、A-172AM-38双方の細胞株においてlenalidomide処理によ り細胞周期の停止を意味するG0/G1期の細胞が増加していた。Western blotにおいてp53 リン酸化の増加とp21発現の増加が確認され、RNA発現解析でp53p21の発現が増加して

いた。Lenalidomideは悪性神経膠腫細胞の細胞周期を停止させる効果があることが示唆され

(5)

た。

一方、apoptosis誘導解析では外因系経路であるcleaved Caspase-8の程度はlenalidomide 処理によって変化しなかった。また、内因系経路であるBaxの発現増加、Caspase-9、Caspase- 3 cleavage が確認されたが、最終的な apoptosis の実行を行う cleaved poly [adenosine diphosphate - ribose] polymerase Western blot において確認されなかった。FACS による

apoptosis誘導解析においても、apoptosis誘導は認めなかった。この結果は、血液腫瘍に対す

lenalidomideの抗腫瘍効果のメカニズムと異なっている可能性が示唆された。

悪性神経膠腫細胞株において、lenalidomide は細胞周期を停止させることによる抗腫瘍 効果を持つことが示された。Lenalidomideは悪性神経膠腫に対する新たな治療戦略になり得 ることが示唆された。

(6)

本論文で用いた略語一覧

bFGF basic fibroblast growth factor

DMEM Dulbecco's modified Eagle's medium

DMSO dimethyl sulfoxide

DNA deoxyribonucleic acid

FACS fluorescence-activated cell sorter

FBS fetal bovine serum

FDA food and drug administration

IFN- interferon-

IFN-γ interferon-γ

IRF4 interferon regulatory factor 4

IL-2 interleukin-2

Len lenalidomide

mRNA messenger ribonucleic acid

μM μmol/L

MRI magnetic resonance imaging

OS overall survival

PARP poly [adenosine diphosphate - ribose] polymerase

PFS progression free survival

PI propidium iodide

p-p53 phosphorylated p53

real-time qRT-PCR real-time quantitative reverse transcriptional polymerase chain reaction

TMZ temozolomide

TNF tumor necrosis factor

Ub ubiquitin

(7)

VEGF vascular endothelial growth factor

WHO world health organization

(8)

緒言

脳腫瘍は頭蓋内に発生する腫瘍性病変の総称で、頭蓋内の組織から発生する原発性脳 腫瘍と他の臓器に原発が存在する転移性脳腫瘍に分けられる。World Health Organization

(WHO)は、形態学的、細胞学的、分子遺伝学的、免疫組織学的な特徴で原発性脳腫瘍を

Grade ⅠからGrade Ⅳ4段階に分類している。Gradeはそれぞれの疾患予後の指標となっ

ており、予後良好群のGrade Ⅰから予後不良なGrade Ⅳへ段階的に分けられている。神経膠 腫は、神経細胞を支持するGlia細胞から発生するとされる原発性脳腫瘍の総称であり、星 細胞腫系腫瘍、乏突起膠腫系腫瘍、上衣系腫瘍が含まれる。毛様細胞性星細胞腫はGrade

Ⅰ、びまん性星細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫はGrade Ⅱ、退形成性星細胞腫、退形成性乏突

起膠腫、退形成性上衣腫はGrade Ⅲ、膠芽腫は最も悪性度が高いGrade Ⅳに分類される

(1)。Grade ⅢとGrade Ⅳのものが悪性神経膠腫と総称されている。2005年から2008年に

かけて行われた日本脳神経外科学会脳腫瘍全国統計委員会による日本脳腫瘍全国集計調査 報告で日本における原発性脳腫瘍の割合が報告されている (2)。毛様細胞性星細胞腫は 1.3%、びまん性星細胞腫は2.1%、乏突起膠腫は1.5%、上衣腫は0.5%、退形成性星細胞腫

3.3%、退形成性乏突起膠腫は1.4%、退形成性上衣腫は0.5%である。膠芽腫は12.0%と

神経膠腫の中でもっともよく見られる腫瘍である。

悪性神経膠腫に対する標準治療としては、手術による最大限の腫瘍摘出とStupp

regimenに基づいた放射線治療と、temozolomide (TMZ)による化学療法が世界で広く行われ

ている (3, 4)。ここで悪性神経膠腫に対する治療の現況について示す。

外科的な腫瘍摘出の目的は、第1に組織診断の確定であり、第2に腫瘍量の減量であ る。腫瘍の摘出率と生命予後の関係について、複数の論文が報告されている。初発膠芽腫 において、2年生存率が26.5%であるのに対して、magnetic resonance imaging (MRI)のガド リニウムにて造影される病変が全摘出された患者の2年生存率は38.4%であり、造影領域 の全摘出が、有意に生命予後を改善させたとするもの (4)、造影領域の摘出度が98%以上

(9)

の症例で有意差を持って生命予後が改善したとするもの (5)、造影領域の78%以上の摘出 率において摘出の度合いに応じた予後改善効果が得られたとするもの (6)などが報告され ている。すなわち、神経障害を悪化させない可及的な腫瘍摘出が、悪性神経膠腫の治療に おいて重要である。近年、脳の機能を温存しつつ、摘出率を上げるために、術中神経モニ タリング、覚醒下手術、術前のMRIを基にしたNavigation systemや術中MRI5-アミノレ ブリン酸を用いた術中蛍光診断 (7, 8)など、様々な方法が検討されている。しかし、悪性 神経膠腫は正常脳組織に浸潤性に広がるため、脳の機能温存の観点から摘出率を上げるの は限界がある。手術で完全に摘出したように見えても周囲の脳組織に浸潤した腫瘍細胞が 残存している。また、機能温存の観点から重要構造物の周囲に存在する腫瘍の摘出を断念 せざるを得ない場合も多い。これらの残存腫瘍に対して、術後補助療法としての放射線治 療と化学療法について検討がなされてきた。

放射線治療についてはAndersonらが術後の放射線療法の有効性を1978年に報告して

いる (9)。術後放射線療法の有無でランダム化比較試験が行われており、放射線治療未施

行群で1年生存割合が0%であったのに対して、放射線治療群は1年生存割合が19%であ った。照射量に関してはChangらが1983年に報告した第3相ランダム化比較試験があ り、局所照射60 Gy/6~7週群と70 Gy/8~9週群とで比較すると、照射量増加により有害事 象が増加し、かつ生存割合に関して有意な改善は認めなかった (10)。Stuppらは11

照射、1日線量2 Gy、6週間で総線量60 Gyの局所照射を標準治療群として採用した (3,

4)。治療法の進歩に関しては、定位放射線照射の上乗せ効果について検討が行われている が有効性がないことが示されている (11)。正常な脳・神経組織の耐用線量の観点からこれ 以上のエックス線やガンマ線を用いた放射線治療は現状では困難な状態である。そのた め、光感受性物質であるtalaporfin sodiumと半導体レーザーを用いた光線力学的療法 (12, 13)や、交流電場腫瘍治療システムであるNovoTTF-100Aシステム (14-17)などの検討が行 われている。

化学療法については1980年のWalkerらの報告で、放射線療法にnitrosourea系の抗が

(10)

ん剤を併用した群で予後が良好な傾向であることが示された (18)。Nitrosourea系の抗がん 剤はアルキル化剤に属し、代表薬剤としてcarmustine、semustine、lomustineがある。悪性 神経膠腫に対して、これらを中心とした化学療法が世界的に使用されてきた。我が国では carmustinesemustinelomustineが未承認薬剤であったため、みなし標準治療として同じ nitrosourea系抗がん剤の1種であるnimustineが使用されてきた (19-21)。その後、Stupp は第2世代のアルキル化剤であるTMZの有用性を報告した (4)TMZは、経口薬として 腸管吸収性に優れ、血液脳関門を通過しやすい特徴を持つ。作用機序としては

deoxyribonucleic acid (DNA)のグアニンの6位の酸素元素をメチル化することによりDNA

損傷を引き起こし、細胞周期の停止及びapoptosisを誘導することにより細胞増殖抑制作用 を示すとされている。TMZにより、全生存期間の延長が得られ、かつ放射線単独治療と比 較して血液毒性が数%増える程度の少ない有害事象率と、経口投与であることによる継続 治療の容易さがあることから、現在、悪性神経膠腫治療のkey drugとして使用されている (4)

上述したような最大限の腫瘍摘出に加え、放射線療法と化学療法による集約的な治療 を行ったとしても、時間の経過とともに再発、再増大を来してしまい、膠芽腫の全生存期 間中央値は14.6ヶ月と報告されている (3, 4)。日本脳腫瘍全国集計調査報告によれば、膠 芽腫の5年生存割合は10.1~16.0%である(2, 22)。膠芽腫を含む悪性神経膠腫は極めて予後 不良な疾患であり、現在、bevacizumabを初めとした腫瘍に関連する変異に着目した分子標 的薬 (23, 24) や、がんペプチドワクチンを使用した免疫療法 (25)、など様々な治療が試み られているが十分な効果が得られていない。世界中で新たな治療法を模索する研究が進行 しているが、過去30年間革新的な治療法は発見されていないのが現状であり、予後不良な 悪性神経膠腫に対する有効な治療方法の確立が望まれる。当施設では以前から、細胞株を 用いた実験で悪性神経膠腫に対する有効な薬剤の検討、その機序、耐性について研究して きた。Yoshinoらが、TMZに耐性のある悪性神経膠腫細胞株に対するinterferon- (IFN-)

有効性 (26)およびIFN-TMZ併用による抗腫瘍効果の相乗作用 (27)、さらにTMZへの

(11)

耐性を獲得している悪性神経膠腫細胞株の遺伝子発現の評価 (28)を報告している。他の薬

剤としてribavirinを用いた悪性神経膠腫細胞株への抗腫瘍効果の検討をOginoらとOchiai

らが行っている (29, 30)。近年では、Yamamuroらが報告した悪性神経膠腫幹細胞の研究 (31, 32)Yoshimuraらの報告したIFN-tumor necrosis factor-related apoptosis-inducing

ligandapoptosisに対する作用の研究(33)などである。このように過去にも多面的な抗腫

瘍効果を持つ薬剤を用いて研究を行っており、本研究では新たにlenalidomideを用いて研 究を行った。

Thalidomideは、化学式はC13H10N2O4、体系名はN- (2, 6-Dioxo-3-piperidinyl) phthalimide の免疫調整薬、抗腫瘍薬として用いられている薬剤である (Figure 1)。非バルビツレート系 で鎮静作用と制吐作用を持ち、旧西ドイツの製薬会社であるGrunenthal社が開発し、1957 に睡眠薬や妊娠悪阻の治療薬として販売された。しかし、thalidomideによるアザラシ肢症の 発生が報告され、重篤な四肢の催奇形性が判明し、重大な薬害事件として1961年に販売が 停止された。その後、1965年に皮膚科医のSheskinが、ハンセン病患者の結節性紅斑に対し

thalidomideを使用することで皮膚病変、発熱、不眠、発汗異常が改善したと報告した (34)

これをきっかけにWHO主導でthalidomideの効果の見直しが行われ、1989年、tumor necrosis factor-α (TNF-α)の阻害作用が発見された。免疫系機能の調整作用や血管新生抑制作用が報告 され、抗腫瘍効果を有することが示唆された (35)。1999 年に多発性骨髄腫への臨床試験が 行われ、Singhal らによって、thalidomideの多発性骨髄腫に対する抗腫瘍効果が報告された (36)。2006年に米国にて、初発多発性骨髄腫に対する治療としてFood and Drug Administration

(FDA)に認可された。日本でも2008年に「サリドマイド製剤安全管理手順」の遵守のもと、

再発または難治性の多発性骨髄腫または、らい性結節性紅斑に対して承認された。

Thalidomide は再度、臨床で使用されるようになり、現在、多発性骨髄腫の治療薬として広

く用いられている (37-40)。このように、既知の薬効や既知の副作用を利用して別の疾患に 対して使用することで新たな薬効を見つけ出し、実用化につなげていこうという drug

repositioning と呼ばれる手法が注目されている。Drug repositioning として臨床応用されてい

(12)

る薬剤として、thalidomideの他に、aspirin、sildenafil、erythromycinminoxidilなどが具体 例として挙げられる。

今回実験に使用したlenalidomidethalidomideの誘導体で、thalidomideの副作用を減 らし抗腫瘍効果を高める目的で開発された薬剤である。化学式はC13H13N3O3で、体系名と しては、3- (7-Amino-3-oxo-1H-isoindol-2-yl) piperidinde-2, 6-dionethalidomide骨格の

phthaloyl ring4位にアミノ基が追加され、カルボニル基の1つが除去されている構造を

している (Figure 1)。分子量は259.26 g/molで低分子薬剤に分類される。Thalidomideが結 節性紅斑や多発性骨髄腫の治療薬として広く使用されるようになってからも、催奇形性の 問題で内服中の集中的なモニタリングが必要であった。催奇形性のリスクのため、内服に 関する制限が強いthalidomideに代わって、より副作用が少なく、同様の臨床的有効性を有 するthalidomide analogの合成が計画された。第1世代の免疫調整薬であるthalidomide骨格 を基盤とし、組成を少しずつ変えた薬剤を合成し、合成された多数の化合物について毒 性、免疫学的機能、抗腫瘍効果の検討が行われた (41)TNF-αの抑制作用に着目した検討 で、amino-phthaloyl置換した第2世代の免疫調整薬がthalidomideに比較して1005万倍の TNF-α抑制作用を持つことが発見され、CC-4047CC-5013が開発された (42, 43)CC-

5013lenalidomideで、米国のCelgene社が開発し、2005年から販売が開始されている。

Lenalidomideは、thalidomideより優れた抗腫瘍効果を示すことがin vitroの試験で判明し、

thalidomideで治療困難な患者に対して使用されてきた (43)。Lenalidomideは、米国におい

2006年に再発または難治性の多発性骨髄腫に、2015年に初発の多発性骨髄腫に対して FDAに認可されている。本邦においても、2015年に抗造血器悪性腫瘍剤として認可さ れ、多発性骨髄腫、5番染色体長腕部欠失を伴う骨髄異形成症候群、再発または難治性の 成人T細胞性白血病性リンパ腫に適応となっている。

Lenalidomideは多面的な抗腫瘍効果を持つことが報告されており、内容は免疫調整作

用、血管新生抑制作用、そして細胞周期の停止効果およびapoptosisの誘導である (44) (Figure 2, 3)。免疫調整作用はInterleukin-2 (IL-2) Interferon-γ (IFN-γ) の誘導による細胞傷

(13)

害性T細胞とNatural killer細胞の活性化であると考えられている (45)。血管新生抑制作用 basic fibroblast growth factor (bFGF)とvascular endothelial growth factor (VEGF)の抑制により 起こると考えられている (45)。細胞周期の停止作用は、多発性骨髄腫の細胞モデルを用い て検討されており、p21タンパク質の発現上昇が関与していると報告している (44)。ま

た、apoptosisの誘導作用についてはQuanらが2011年に報告しており、内因系経路の

Caspase-9と、Caspase-3poly [ADP - ribose] polymerase (PARP)cleaveが確認されている

(46)。これらの細胞周期の停止やapoptosis誘導といった多面的な作用はcereblonという単

一のタンパク質にlenalidomideが結合することで作用することが最近の研究で明らかにな った (47)。そして抗腫瘍効果の発現のためにはcereblonタンパク質の発現が必要であると されている (48)。

Cereblonとは、タンパク質分解系路であるユビキチン・プロテアソーム系のE3ユビキ

チンリガーゼ複合体を形成するタンパク質であり、基質受容体としてのはたらきがある。

Thalidomidelenalidomidecereblonに結合すると、通常では認識されないタンパク質が

ユビキチン化され、プロテアソームにより分解される。ユビキチン化されるタンパク質と しては、リンパ球の転写因子であるIkarosタンパク質やAiolosタンパク質が挙げられる

(49)。Ikarosタンパク質とAiolosタンパク質がユビキチン化され、プロテアソームにより分

解されることで起こる抗腫瘍効果として、2つのメカニズムが報告されている。1つは、正 常細胞に対する効果であり、T細胞においてIL-2の亢進が起こり、免疫担当細胞が活性化 される。腫瘍免疫の活性化による抗腫瘍効果である。もう1つは、Ikarosタンパク質と

Aiolosタンパク質の下流の因子であり、同じくリンパ球の転写因子であるinterferon

regulatory factor (IRF4) 遺伝子の活性を抑制する効果である。IRF4遺伝子は血液腫瘍細胞に

おいてMYCなどのがん遺伝子の発現調整を行い、がん細胞の増殖、生存機能を活性化し

ている (50)。そのため、IRF4遺伝子が抑制されるとがん細胞の増殖抑制が起こる。IRF4

遺伝子の抑制は、p21を活性化させ細胞周期の停止を起こすとされている (Figure 4) (47) 実際に臨床において、thalidomidelenalidomideの血液系の腫瘍に対する治療効果に

(14)

ついて多数報告されている (51)。初発の多発性骨髄腫に対するthalidomideの効果について

Fayersらがメタアナリシスで評価し、以前の標準治療薬であるmelphalanprednisoneを用

いた化学療法での中央生存期間が32.7ヶ月であったのに対して、melphalanprednisone

thalidomideを追加する方法で中央生存期間39.3ヶ月と有意な生命予後の延長効果が示され

(52)

Lenalidomideの効果はそれをさらに上回る報告がなされている。Stadtmauerらは2009

年に初回再発の多発性骨髄腫に対するlenalidomideの有効性を報告しており、lenalidomide

dexamethasone併用によりdexamethasone単剤の治療より生存期間が6.2ヶ月有意に延長

したと報告している (53)。Benboubkerらは2014年にmelphalanprednisonethalidomide を加えたMPT療法とlenalidomidedexamethasone併用によるLd療法とで有効性の差を検 討している (54)。4年生存率がMPT療法では51%であるのに対し、Ld療法では59%と有 意に延長し、さらにProgression free survival (PFS)も有意に4.3ヶ月延長したと報告した。

2018年にはFaconらが多発性骨髄腫に対する第3相試験の最終報告を行っており、追跡期

67ヶ月でMPT療法の全生存期間中央値49.1ヶ月に対しLd療法では59.1ヶ月と10 月の生存期間延長を報告している (55)。これらの臨床試験の報告から、lenalidomideは多 発性骨髄腫や骨髄異形成症候群といった血液腫瘍に対して用いられ、抗腫瘍薬として臨床 の現場で広く使用されている (56-58)。

Gliomaに対するthalidomideの抗腫瘍効果は過去に報告されており、悪性神経膠腫の患

者に対するthalidomideの作用を検討した臨床試験が複数ある。Fineらは39名の再発性の 悪性神経膠腫の患者を対象にthalidomideの効果を検証した第2相試験を報告しており、う 16名 (40.1%)の患者で腫瘍の部分的な縮小もしくは進展の停止が確認され、8名 (4.9%) 1年以上の生存が得られた (59)Giglioらも2012年に39名の再発性の悪性神経膠腫に 対する第2相試験で有効性を報告している。この報告はirinotecanthalidomideの併用に よる治療を行っており、うち21 (54%)の患者で放射線学的に腫瘍への効果が見られ、6 か月無増悪生存割合14 (36%)、全生存期間中央値は62週間であった (60)。これらの有

(15)

効性の報告もあり、Penas-Pradoらは2015年に初発膠芽腫の患者を対象として、TMZ単剤 に対する、TMZthalidomideを併用した化学療法の効果を検討した。第2相無作為化試 験を行っているが、 TMZ単剤での効果と比較してthalidomide併用による無増悪生存期 間、全生存期間ともに延長効果は認めなかった (61)。過去の臨床試験において、

thalidomideによる悪性神経膠腫に対する有用性を示すには至っていない。一方、

lenalidomideによる悪性神経膠腫の治療効果については不明である。

Lenalidomideは血液腫瘍の治療においてthalidomideよりも強い効果があることが臨床

で示唆されており (54)、また、低分子薬剤であり経口吸収性に優れ、中枢神経系のblood

brain barrierを通過でき、中枢神経腫瘍で問題となる腫瘍への薬剤移行も解決できると思わ

れる。そのため、悪性神経膠腫に対するlenalidomideの治療効果が期待される。実際に中 枢神経腫瘍に対するlenalidomideを用いた臨床試験として、第1相試験が2つ報告されて いる。Fineらは2007年に再発性の原発性脳腫瘍に対するlenalidomideの安全性の検討を報 告しており、36人の対象患者のうち、24人のglioblastoma7人のanaplastic gliomaを含ん でいた。安全性の用量は20 mg/m2/日までで確認され、経口で良好なbioavailabilityであ り、抗てんかん薬との相互作用はなかったと報告している (62)2011年にはWarrenらが 小児の再発性の原発性中枢神経腫瘍に対しての第1相試験を報告している。2~21歳までの 51名の患者のうち、 44人がgliomaで、悪性神経膠腫は6人含まれていた。安全性は116

mg/m2/日まで確認された (63)。これらの試験では安全性は許容できる範囲内であると結論

付けられており、報告された副作用はそれぞれ血栓塞栓症と骨髄抑制であった。

臨床の現場においてthalidomideによる悪性神経膠腫に対する治療効果が期待され、臨 床試験が実施された。Thalidomideによる悪性神経膠腫の進行停止や縮小効果が確認された が、残念ながら生存期間の延長については統計学的に有意差が得られなかったため、悪性 神経膠腫に対する抗腫瘍効果は限定的と評価されてしまった。しかし、thalidomide誘導体 で、より強力な抗腫瘍効果が期待できるlenalidomideは、悪性神経膠腫に対する有効性が 示せる可能性があると考え、本実験を計画した。

(16)

今回我々は、lenalidomideが悪性神経膠腫細胞株に対して細胞周期の停止やapoptosis の誘導作用といった直接的な抗腫瘍効果があると仮説をたて、本研究を計画した。

Lenalidomideの悪性神経膠腫に対する治療効果を検証するために、malignant glioma cell line を用いて抗腫瘍効果について検討した。

(17)

対象と方法

細胞株と細胞の培養方法

細胞株は6種類のヒト悪性神経膠腫細胞株、A-172AM-38T98GU-251MGYH-13 (Health Science Research Resources Bank, Osaka, Japan)U-138MG (American Type Culture Collection, VA, USA) を使用した。A-172AM-38T98GYH-13U-138MGGrade Ⅳ ある膠芽腫細胞株、U-251MGGrade Ⅲの星細胞腫細胞株である。

培養は 75 cm2 フラスコ (Iwaki, Chiba, Japan) を用いて、5%仔牛血清 (FBS, Life technologies, NY, USA)を 添 加 し た Dulbecco's modified Eagle's medium (DMEM; Nissui Pharmaceutical, Tokyo, Japan)で、37°C、5%CO295%以上の湿度に調整された恒温器内に入れ て行った。

薬剤

Lenalidomide (Celgene Corporation, NJ, USA)を使用した。Lenalidomide100%dimethyl

sulfoxide (DMSO)に溶解し、実験使用時に培養液で希釈した。DMSOcontrolとして使用し

た。

細胞増殖抑制実験

6 種類の悪性神経膠腫細胞株に対する、lenalidomide 処理による細胞増殖抑制効果を評 価した。24穴プレートに1 x 104個の細胞を撒き、24時間培養後、lenalidomide (0、0.1、1.0、

10、100 μmol/L)を含む新鮮培地に交換し、72時間培養した後にZ1 Coulter Counter® (Beckman

Coulter, CA, USA)を用いて細胞数を測定した。各測定は4回以上施行した。

細胞周期分布解析

Lenalidomide 処理による悪性神経膠腫細胞株への細胞周期の分布の変化について評価

(18)

を行った。fluorescence-activated cell sorter (FACS)を用いてA-172AM-38の各細胞株におけ

propidium iodide (PI)の染色性を測定した。実験方法のプロトコルおよび解析は Ochiai

の方法に則って行った (64)。

75 cm2フラスコに1 x 106個の細胞を撒き、24時間培養後に10 μMlenalidomideを含 む新鮮培地に交換し、その後08244872時間で細胞を回収し、trypsin処理した後に 70% ethanolで固定し氷冷した。0.5%RNase A (Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)5 μL 30分処理を行い、1 μg/mLPI (Miltenyi Biotec, CA, USA)10 μLで染色を行った。PIは核 染色試薬の1つで70% ethanolによる膜透過処理により細胞のDNA2重らせん構造にイ ンターカレートし、蛍光を発する物質である。この蛍光強度の差で、すなわちDNA量の差 で、その細胞がどのphaseであるかを推測することができる。細胞のDNA量はG0G1期で 最も少なく、G2期とM期ではその2倍になる。S期ではDNAの複製の程度によりG1期と G2期の中間の値のDNA量を持つ。それぞれのDNA量を有する細胞がどれだけ存在するか 細胞数を計測することで、細胞周期分布を評価することができる。

FACS-Calibur flow cytometer (Becton Dickinson, NJ, USA)を用いて610 nm (FL3)の波長の 蛍光強度を計測し、作成されたDNAのヒストグラムをFlowJo software (BioLegend, CA, USA) で解析した。

Apoptosis細胞の検出

悪性神経膠腫細胞株における lenalidomide apoptosis 誘導に対する効果を評価するた め、A-172AM-38を用いてFACSannexin VPIの染色性を二重染色で測定した (65)。

細胞膜の極性を利用したannexin Vと、細胞膜構造が破壊されるとDNA2重らせん構造 にインターカレートするPIの蛍光強度の程度から早期apoptosis細胞と後期 apoptosis細胞 の割合を解析した。早期 apoptosis 細胞では、細胞構造を保ったまま細胞膜の極性が変化し

annexin Vが結合する。後期apoptosis細胞では、annexin Vが結合した上に、さらに細胞膜構

造が破壊され、PIが細胞内に入りDNAに結合する。細胞群は、annexin VおよびPIの双方

(19)

ともに蛍光値の低い正常細胞群、annexin Vの蛍光値が高く、PIは低い早期apoptosis細胞群、

annexin VおよびPI双方に蛍光値が高い後期apoptosis細胞群に分類される。

6穴プレートに1 x 106個の細胞を撒き、24時間培養後にlenalidomide 10 μMを含む新鮮 培地に交換し72時間後に細胞を採取した。Binding buffer (Wako, Osaka, Japan)100 μLで撹拌 し、annexin V Alexa Fluor 488 conjugate (Life technologies, NY, USA)5 μLおよびPI 10 μLを添 加した。10分室温で処理した後にbinding buffer 400 μLを添加し、サンプルの全量を500 μL とした。蛍光強度の測定はFACS–Caliber flow cytometer (Becton Dickinson, NJ, USA)を用いて 行い、510 nm (FL1)と610 nm (FL3)の蛍光強度をFlowjo software (BioLegend, CA, USA)を用い て解析した。

タンパク質の発現解析

細胞周期に関連するp53、リン酸化p53 (p-p53)、p21と、apoptosis誘導に関連するBax、

Caspase 3Caspase 8Caspase 9PARPのタンパク質発現をWestern blot解析により評価し た。75 cm2フラスコに細胞を撒き24時間培養後にlenalidomide 10 μM処理を行った。80% 殖飽和まで培養後、細胞を採取した。Protease inhibitors Complet Mini EDTA-free (Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)を含むRIPA buffer (Wako Pure Chemical, Tokyo, Japan)で氷冷 下に細胞を溶解しタンパク質を抽出した。4℃、15,000 rpm30分間遠心し、上清を採取し た。タンパク質濃度はPierce BCA protein assay reagent (Thermo Scientific, IL, USA)を用いて測 定した。タンパク質量を 100 μg に調整し、sodium dodecyl sulphate polyacrylamide gel electrophoresis (SDS-PAGE)を行った。Gel12% SDS-PAGE Mini (TEFCO, Tokyo, Japanを使 用した。Bio-Rad transblot (Bio-Rad Laboratories, NJ, USA)を用い gel 中のタンパク質を nitrocellulose (Bio-Rad Laboratories, NJ, USA)に転写し、ブロッキング緩衝液 (1%スキムミ

ルク含有0.05% PBS) を用いて1時間、15 V、室温でブロッキングを行った。その後一次抗

体を添加したブロッキング緩衝液で、nitrocellulose膜を24時間、4ºCで処理した。処理後、

Tween含有PBS (PBS-T)で洗浄し、二次抗体を添加したブロッキング緩衝液で1時間処理し

(20)

た。Nitrocellulose膜をECL Prime Western Blotting Detection Reagent (1: 1000) (GE Healthcare, Buckinghamshire, UK)で処理した後、LAS-4000 (GE Healthcare, Buckinghamshire, UK)、Image J (National Institutes of Health, MD, USA)でバンドを解析した。一次抗体、二次抗体として使用 した抗体を以下に示す。

一次抗体

Antibody name Species Dilution Industries, state, country Anti-cereblon antibody rabbit

polyclonal

1: 1000 Proteintech IL, USA Anti-p53 antibody mouse

monoclonal

1: 500 Santa Cruz Biotechnology Oregon, USA Anti-p-p53 antibody mouse

monoclonal

1: 500 Santa Cruz Biotechnology Oregon, USA Anti-p21 antibody mouse

monoclonal

1: 500 Santa Cruz Biotechnology Oregon, USA Anti-Bcl-2-associated

x protein (Bax) antibody

mouse monoclonal

1: 500 Santa Cruz Biotechnology Oregon, USA Anti-Caspase-9 antibody mouse

monoclonal

1: 1000 Cell Signaling Technology MA, USA

Anti-Caspase-3 antibody mouse monoclonal

1: 500 Santa Cruz Biotechnology Oregon, USA Anti-Caspase-8 antibody mouse

monoclonal

1: 1000 Cell Signaling Technology MA, USA

Anti-β-actin antibody mouse monoclonal

1: 2000 Wako Pure Chemical Industries, LTD.

Tokyo, Japan

(21)

Anti-cleaved PARP antibody

rabbit polyclonal

1: 500 Cell Signaling Technology MA, USA

二次抗体

Antibody name Industries, state, country Conjugated anti-mouse IgG peroxidase Sigma-Aldrich, MO, USA Conjugated anti-rabbit IgG peroxidase Cell Signaling Technology, MA, USA

Real-time quantitative reverse transcriptional-PCRを用いた関連遺伝子のmRNA発現解析

25 cm2フラスコに細胞を撒き、24時間培養後にlenalidomide 10 μM処理を行った。処理

3時間経過後にRNeasy Mini Kit (Quiagen, CA, USA)を用いて1 x 106個の細胞からtotal RNA の抽出を行った。抽出したRNA濃度はNano-drop (Thermo Fisher, IL, USA)を用いて測定され た。 Real-time quantitative reverse transcriptional-PCR (real-time qRT-PCR)反応は、SYBR® Green Realtime PCR Master Mix (TOYOBO, Osaka, Japan)を用いて、Step-one realtime PCR system (Applied Biosystems, CA, USA)で行った。

Real-time qRT-PCR反応溶液は2 μLforward及びreverseプライマー (10 pmol)、1 μL 50 mM Mn(OAc)2、10 μLSYBR® Green Realtime PCR Master Mix (TOYOBO, Osaka, Japan)、

0.8 μgRNA及びRNase-free waterを含む総容量20 μLとした。

PCR条件は、1st stageとして95℃ 30秒、61℃ 20分、95℃ 1分の後、2nd stageとして 95℃ 15秒、55℃ 15秒、74℃ 45秒を45サイクル、3rd stageとして95℃ 15秒、60℃ 1分、

95℃ 15秒とした。Messenger ribonucleic acid (mRNA)の発現量は、Livakらの相対的2-ΔΔ法で 求めた相対値で示した。発現量の標準化のためにglyceraldehyde-3-phosphatase dehydrogenase

(GADPH)を用いた。

プライマーはEurofins Genomics (Eurofins Scientific, Tokyo, Japan)によって合成された。各 遺伝子のプライマー配列を以下に示す。

(22)

Gene Primer

GAPDH forward; 5’-CAG AAC ATC ATC CCT GCC TCT-3’

reverse; 5’-GCT TGA CAA AGT GGT CGT TGA G-3’

p53 forward; 5’-GGC CCA CTT CAC CGT ACT AA-3’

reverse; 5’-GTG GTT TCA AGG CCA GAT GT-3’

p21 forward; 5’-TGG AGA CTC TCA GGG TCG AAA-3’

reverse; 5’-GGC GTT TGG AGT GGT AGA AAT C-3’

統計解析

全ての実験は、3 回以上繰り返し行った。結果は、平均値 ± 標準誤差として表示し、

信頼区間はp < 0.05もしくはp < 0.01をもって有意差とした。解析は統計ソフトSPSS (version 21.0: International Business Machines Corporation, NY, USA)を使用した。2群間のデータの比較 にはStudent’s t-検定を用いた。

(23)

結果

Lenalidomide処理による悪性神経膠腫細胞株のviabilityの評価

悪性神経膠腫細胞株に対するlenalidomideの抗腫瘍効果を評価するために6種類の悪性 神経膠腫細胞株 (A-172AM-38T98GU-138MGU-251MGYH-13)0.1110100 μMの各濃度のlenalidomideを含む培養液で72時間培養し細胞数を計測した。Lenalidomide 6種類の悪性神経膠腫細胞株のなかで、A-172、AM-38、YH-13において濃度依存的にcell viabilityを低下させた (Figure 5)。また、その効果は10 μM100 μMで処理した場合に顕著 であった。4回の測定で算出された細胞数の50%阻害濃度は、A-17284.1 µM、AM-38 22.9 µM、T98G49.6 µM、U-138MG138.6 µM、U-251MG95.0 µM、であった。

A-172AM-38におけるlenalidomideの細胞周期への効果

Lenalidomideが悪性神経膠腫細胞株に対して細胞周期に与える影響を評価するため、細

胞周期停止の指標であるp53p-p53、そしてp21の発現についてWestern blot解析とreal-time

qRT-PCRを用いたmRNA解析、またFACSによる細胞周期分布解析を行った。

Western blot解析では、A-172においてlenalidomide処理後4時間をピークにしてp-p53 タンパク質は処理後24時間まで、p21タンパク質は処理後8時間まで発現増加が見られた。

一方、p53タンパク質の発現は処理直後から処理後24 時間まで一定で変化が見られなかっ た。AM-38においてはlenalidomide処理後、p53タンパク質は8時間まで一定であったが、

処理後 24時間で増加を示した。p-p53タンパク質の発現は処理後8時間で増加があり、処 理後 24 時間で処理直後と同程度の発現に戻っていた。p-p53タンパク質の発現増加の後の 処理から24時間の時点でp21タンパク質は発現増加が見られた (Figure 6A)

mRNAの発現はreal-time qRT-PCRを用いて調査し、lenalidomide処理後3時間で抽出し た群とDMSOで処理したcontrol群では、A-172AM-38双方の細胞株においてp53p21 の発現が有意に上昇していることが確認された (Figure 6B)A-172AM-38どちらの細胞株

(24)

でも、control群に比較してlenalidomide処理群でp53p212倍以上多く発現していた。

FACS による細胞周期分布解析は PI 染色を用いて細胞毎の DNA 量を表した flow cytometryで判別した。A-172AM-38G0/G1期の細胞の割合をFigure 7のグラフに示し た。10 µMlenalidomide処理群と、lenalidomide処理に用いたものと同濃度のDMSOで処

理したcontrol群に分けた。横軸に薬剤処理後からの時間を08244872時間で示し、

縦軸にG0/G1期の細胞の割合を示した。値は実験を3回行った平均値をグラフに示し、解析 した。双方の細胞株で薬剤処理後8時間まではG0/G1期を呈している細胞の割合は差がなか った。A-172において、処理後24時間のcontrol群でG0/G1期の細胞の割合が50.7%であっ たのに対し、lenalidomide処理群で54.5%と有意にG0/G1期を呈する細胞が増加していた (*

p<0.05)。AM-38において、処理後24時間のcontrol群で46.1%であったG0/G1期の細胞の割 合は、lenalidomide 処理群で 56.5%であり、こちらも有意に増加していた (* p<0.05)。また AM-38では処理後72時間の時点でも有意差を認めた。Control群で54.1%であったG0/G1 の細胞の割合はlenalidomide処理群で58.4%であった (** p<0.01)。同濃度のDMSOで処理 したcontrol群と比較し、lenalidomide処理群では、A-172AM-38の双方においてG0/G1 にある細胞の割合が有意に増加していた (Figure 7)

Cereblonの発現評価

Lenalidomide処理による細胞周期停止の内容を評価する目的でlenalidomideの標的タン

パク質とされているcereblonタンパク質の発現をWestern blot解析で評価した。6つのglioma 細胞株全てにおいてcereblonタンパク質の発現が認められた (Figure 8)。Controlとしてのβ-

actinタンパク質の発現は一定に調整されていたが、cereblonタンパク質の発現の程度は細胞

株によって差を認めた。Cereblonタンパク質の発現量と、細胞増殖抑制実験によって得られ

cell viabilityの程度について比較したが、視察する限り、cereblonの発現の程度と細胞増殖

抑制の程度との関連はないと思われた。

Figure 1. Thalidomide と lenalidomide の構造式
Figure 2.  細胞周期の制御と apoptosis 誘導の内因系経路および血液系腫瘍における lenalidomide の作用機序
Figure 3. Apoptosis 誘導の外因系経路
Figure 4. Lenalidomide の作用機序
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参照

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