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腹腔鏡内視鏡合同手術で胃局所切除を施行した噴門部神経内分泌腫瘍の1例 第76巻01号0047頁

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Academic year: 2021

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変は 7 mm大であった.腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)による胃局所切除の方針とした. 病変の漿膜面に置いたクリップと内視鏡針状メスを人工的に穿孔させた焼灼マーキング を指標に切除線を決定し超音波凝固切開装置で全層切除を行った.内視鏡観察のもと自 動縫合器で胃壁欠損部を閉鎖した.病理組織学的検査で切除断端は陰性であった.術後 透視で噴門の狭窄を認めなかった.噴門部NETに対しLECSの手技を用いることで腫 瘍を遺残なく切除しつつ機能を温存することが可能であった. 索引用語:神経内分泌腫瘍,腹腔鏡内視鏡合同手術,胃局所切除 はじめに  胃神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor;以下 NET)は病変が小さければ内視鏡的切除が検討され るが1),粘膜下以深への浸潤を認めることが多いため 内視鏡的切除で局所的根治が得られず全層切除を要す ることがある2).一方,腹腔鏡下胃局所切除術は病変 が噴門に近ければ残胃の変形や狭窄をきたす可能性が ある3).腹腔鏡内視鏡合同手術(laparoscopy and

en-doscopy cooperative surgery;以下LECS)による胃 局所切除術は全層切除が可能で,かつ,噴門を内視鏡 で観察しながら温存することができる4)5).われわれ は噴門部NETに対してLECSを行い良好な経過をみ ているので報告する. 症  例  患者:73歳,女性.  主訴:特記すべきこと無し.  既往歴:20歳時に急性虫垂炎に対して虫垂切除術. 69歳時に高血圧症.72歳時に本態性血小板血症で抗血 栓療法中.  現病歴: 1 年前に近医での上部消化管内視鏡検査で 噴門部小弯前壁に隆起性病変を指摘され経過観察中で あった.増大傾向があるため行われた生検でNETの 診断にて当院紹介となった.  入院時現症:身長144cm,体重48kg.右下腹部に虫 垂切除時の手術痕を認めた.腹部は平坦・軟で圧痛や 反跳痛を認めなかった.顔面紅潮発作,下痢などのカ ルチノイド症状はなかった.  臨床検査成績:Hb 11.1g/dlと軽度貧血を,血小板 数73.7×104/μlと血小板増多を認めた.生化学,凝固 検査に特記すべき所見を認めなかった.抗Helico-bacter pylori IgG抗体陰性,尿素呼気試験陰性であっ た.また,抗胃壁抗体陰性,抗内因子抗体陰性,ガス トリン149pg/mlと正常であった.  上部消化管造影検査所見:噴門部小弯前壁に腫瘤像 を認めた.  上部消化管内視鏡検査所見:噴門部小弯前壁に 7 mm大の隆起性病変を認めた(Fig. 1).食道裂孔ヘル ニアと萎縮性胃炎を認めた.  胸部腹部造影CT所見:肺転移・肝転移を認めず, 腹腔内リンパ節腫脹を認めなかった.  超音波内視鏡検査所見:第 3 層に境界明瞭な低エコ ー腫瘤を認めた.腫瘤と第 4 層との間の一部でecho-genic spaceが確認できなかった(Fig. 2).  以上から,胃NET(Randi分類Ⅲ型)と診断した. 転移の所見がなく病変が小さいため十分なインフォー ムドコンセントのもと局所切除を行う方針とした.超  2014年 9 月 8 日受付 2014年10月22日採用  〈所属施設住所〉   〒015-8567 由利本荘市岩渕下110

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音波内視鏡検査所見から内視鏡的切除では腫瘍の局所 根治が困難と考えられ,病変が噴門部に位置している ことからLECSによる胃局所切除を行うこととした.  手術所見・手術手技:臍部にopen法で12mmポート を挿入した.右側腹部臍高に12mmポート,左側腹部 臍高に 5 mmポート,右肋骨弓下に12mmポート,左 肋骨弓下に 5 mmポートを挿入した.腹腔内を観察す ると胃漿膜に異常を認めなかった.  小網を処理し,噴門から小弯の胃壁を露出した.内 視鏡を挿入し病変の部位を確認,内視鏡担当医の誘導・ 指示に従って病変の漿膜面にクリップを置いた(Fig. 3a).次に,腫瘍の周囲 4 箇所で内視鏡針状メスを通 電し人工的に穿孔させ,焼灼マーキングを施行した (Fig. 3b,c).穿孔部の 1 箇所を拡げ,腹腔側から超 音波凝固切開装置を挿入し胃全層を切離した.切除線 はクリップと焼灼マーキングの位置を繰り返し確認し 決定した(Fig. 3d).  胃壁切離縁に支持糸をかけた後,内視鏡で噴門が縫 い込まれることなく全周性に温存されていることを確 認しつつ,胃の長軸に対して垂直となるように自動縫 合器を 3 回用いて胃壁欠損部を閉鎖した(Fig. 3e). 閉鎖後に内視鏡で確認すると閉鎖ラインと噴門との距 離が保たれていた(Fig. 3f).内視鏡で送気しても空 気の漏出がないことを確認,ドレーンを留置し手術を 終了した.  病理組織学的診断:病変は摘出標本の中央に位置し ており,径 6 mmであった(Fig. 4a).腫瘍は小型で 均一な細胞からなり索状構造を呈していた(Fig. 4b).深達度SM2 でly0,v0 で水平,垂直切離断端陰 性であった.神経内分泌細胞マーカーであるChromo-granin AとSynaptophysinが陽性であった.Ki-67指 数は 1 %以下でNET Grade 1 の診断であった.  術後経過:術後 3 日目に経口摂取を開始し15日目に 退院した.術後の上部消化管造影検査では噴門に狭窄 はなく通過障害も認めなかった(Fig. 5). 考  察  消化管に発生するNETは概念が不明瞭なカルチノ イドと呼ばれてきた.しかし,NETの悪性度の多様 性が認識されるようになり2000年のWHO病理組織学 的分類が分化度を基軸とした分類に改められたこと で,カルチノイドの名称がなくなった6).最新の2010 年版では,腫瘍細胞の増殖動態を反映するKi-67指数 Fig. 1 上部消化管内視鏡検査所見:噴門部小弯前壁に 7 mm大の隆起性病変(矢印)を認めた. Fig. 2 超音波内視鏡検査所見:第 3 層に境界明瞭な 低エコー腫瘤を認めた.腫瘤と第 4 層との間の一 部でechogenic spaceが確認できなかった.

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または細胞分裂数のみから構成される簡便な分類方法 によりNET Grade 1 (以下NET G1),NET Grade 2 (以下NET G2),neuroendocrine carcinoma(以下 NEC)などに分類された7)  胃NETはRandiら8)の分類が広く用いられ,A型胃 炎に伴う高ガストリン血症により生じるⅠ型,多発性 内分泌腺腫症に合併するⅡ型,ガストリンとは無関係 に散発性に発生するⅢ型に分けられる.Ⅰ型・Ⅱ型は 小病変が多発し悪性度が低く転移が少ないため1),内 視鏡的切除の適応となり,内視鏡的切除困難例におい て胃切除術が考慮される6).Ⅲ型は腫瘍径が大きい状 態で発見され,転移頻度が高く,Ki-67指数も高いこ とが多いとされ9),リンパ節郭清を伴う胃切除術が推 奨されてきた6)10).海崎ら11)は胃NETの臨床病理学的 検討においてⅢ型の 6 症例中,Ki-67指数が高い 1 例 は腫瘍径が大きくリンパ節転移も認められたが, Fig. 3 手術所見:a)病変の漿膜面にクリップを置いた.b)内視鏡針状メスで焼灼マーキング を施行した.c)焼灼マーキング部粘膜面.d)焼灼マーキングとクリップを確認しつつ胃全 層切除を施行した.e)胃壁欠損部を自動縫合器で閉鎖した.f)閉鎖ラインと噴門との距離 が保たれていた. a b c d e f

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Ki-67指数が低い 5 例は腫瘍径も小さくリンパ節転移 を伴わなかったことから,Ⅲ型にも悪性度が低い症例 が存在することを示しており治療法の選択にも活かす 必要性があるとしている.赤松ら2)は多施設集計した 30症例のⅢ型胃NETの臨床病理学的検討において, 大きさが 5 mm以下の症例では転移例はなく,大きさ 10mm以下の症例は11mm以上の症例と比較し有意に 転 移 率 が 低 く,NET G1 な い しNET G2 の 症 例 は NECの症例と比較し有意に転移率が低かったことか ら,Ⅲ型胃NETの内視鏡治療の適応を10mm以下で, かつ,NET G1 ないしNET G2 の病変に限るべきで あるとしている.また,深達度に関してMP症例では MないしSM症例と比較し有意に転移率が高く,全層 切除を行わない限り局所根治が得られないため内視鏡 治療の適応外としている.本症例はⅢ型の胃NETで あったが,転移の所見がなく病変が小さかったため, 術後の病理組織学的検査でNECや深達度がMPとの 診断であればリンパ節郭清を伴う胃切除術を追加する こととし,十分なインフォームドコンセントのもとで 病変の局所切除を行う方針とした.術前の深達度診断 により内視鏡的切除では病変の局所根治が困難と判断 し外科的に局所切除を行った.病理組織学的検査の結 果で腫瘍径 6 mm,深達度がSM,Ki67指数 1 %以下 でNET G1 であり悪性度が低い症例と考えられたが, Fig. 4 病理組織学的所見  a)病変(矢印)は摘出標本の中央に位置していた.  b)腫瘍は小型で均一な細胞からなり索状構造を呈していた. a b Fig. 5 術後上部消化管造影検査所見:噴門に狭窄はなく通過障害も認めなかった.

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膜筋層切開を行うことで胃食道接合部や胃幽門部近傍 の病変に対しても過不足のない局所切除が可能な術式 である5).本症例は病変が噴門部に局在しており,従 来の腹腔鏡下胃局所切除術では噴門の巻き込みによる 狭窄が懸念されたため,LECSによる胃局所切除を選 択した.噴門が確実に温存されていることを内視鏡で 確認しつつ胃壁切除と閉鎖縫合を行うことができた.  一方,病変の占居部位によっては内視鏡のアプロー チが難しいためにESD手技が困難なことがある17) ESD手技による病変の全周粘膜下切開以外で切除線 を定める方法として,山崎らは十二指腸腫瘍に対して 内視鏡針状メスによる焼灼マーキングを施行し,腹腔 側からマーキングに沿って全層切除する方法を報告し ている.われわれは山崎らの方法を参考として病変の 漿膜面のクリッピング後に病変周囲に焼灼マーキング を置いた.切除線を決定する際にはクリップと焼灼マ ーキングを腹腔側から繰り返し確認することにより必 要十分な切除を行うことが可能であった.胃病変に対 するLECSによる局所切除において漿膜面のクリッピ ングと針状メスによる焼灼マーキングも切除線決定の 際に有用であると考えられた. 結  語  噴門部のNETに対してLECSの手技を用いること で,腫瘍を遺残なく切除しつつ機能を温存することが 可能であった. 謝  辞  稿を終えるにあたり,本症例をご紹介頂き,超音波 内視鏡検査を施行して頂きました猪股医院の猪股正秋 先生,ならびに術中内視鏡操作をご担当頂きました当 院消化器センターの小松工芽先生に深く感謝申し上げ ます.

roscopic and endoscopic cooperative surgery for gastrointestinal stromal tumor dissection. Surg Endosc 2008 ; 22 : 1729-1735

 5) 比企直樹,布部創也,大橋 学他:胃粘膜下腫瘍 に対するLaparoscopy and Endoscopy Coopera-tive Surgery(LECS). 日 外 会 誌 2014;115: 102-104  6) 膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイド ライン作成委員会:膵・消化管神経内分泌腫瘍 (NET)診療ガイドライン.第 1 版.2013,(Accessed January 9, 2015, at http://jnets.umin.jp/pdf/ guidline001.pdf)

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 9) 岩下明徳,高山成吉,尾石樹泰他:胃カルチノイ ドの臨床病理学的検索―特にTypeⅠ(A型胃炎 に合併)とTypeⅢ(sporadic)のリンパ節転移 率について.胃と腸 2000;35:1365-1380 10) Akerström G, Hellman P : Surgery on

neuroen-docrine tumors. Best Pract Res Clin Endocrinol Metab 2007 ; 21 : 87-109

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adenocarci-noma : a prospective cohort study. Ann Surg 2013 ; 257 : 1039-1046 16) 松原 毅,平原典幸,矢野誠司他:腹腔鏡・内視 鏡合同胃局所切除術を施行した管内発育型噴門近 傍胃GISTの 1 例.日臨外会誌 2013;74:3045 -3050 17) 豊永高史,吉村 兼,万位真理子他:胃ESD困 難例の対処法.消内視鏡 2009;21:873-878  

LAPAROSCOPY AND ENDOSCOPY COOPERATIVE SURGERY FOR NEUROENDOCRINE TUMOR RESECTION IN THE GASTRIC CARDIA―CASE REPORT―

 

Takeshi KATO, Takashi SAITOH, Satoshi SHIBATA and Katsuhiko SUZUKI Gastroenterological Center, Honjo Daiichi Hospital

 

  The patient was a 73-year-old woman in whom an elevated lesion in the gastric cardia was pointed out 1 year prior. Biopsy of the lesion showed that it had increased in size and revealed a neuroendocrine tumor (NET). Upper gastrointestinal endoscopy showed that the lesion was 7 mm in diameter. The pa-tient underwent laparoscopy and endoscopy cooperative surgery (LECS) for lesion resection. We used a clip laparoscopically at the serosal site of the lesion and made artificial perforations endoscopically with the needle knife around the lesion. The cut line was determined by the position of the clip and perforations. All layers of the gastric wall were laparoscopically dissected using an ultrasonically activated device. The incision line was closed using a laparoscopic stapling device under endoscopic observation to protect the esophagogastric junction. Surgical margins were negative on histopathological examination. Postoperative fluoroscopy showed no stenosis in the stomach. Here we report our experience with successful coopera-tive laparoscopy and endoscopy surgery for NET resection in the gastric cardia.

Key words: neuroendocrine tumor,laparoscopy and endoscopy cooperative surgery, partial resection of the stomach

参照

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