「SE EA」
考 ( 1 )
一自然環境 の価値評価 と経済 との統合勘定 ‑
種 木 健 次
LastautumnUnitedNationsissuedtheHandbook"System ofthein一 七egratedEnviromentalandEconomicAccounting"(SEEA).Thisisthe deslgnforNewSocialIndicatorofwealthintheageofEarthinsteadof System ofNationalAccounting."TheEarth"hasbeenconfrontingwith ecologlCaldeteriorationforthesakeoftheeconomicgrowthindeveloped countriesand
,
otherhand,
ofthe"growthmania"tendencyindeveloplng countries.SEEAistheresultantreportofthatmanyconscientiouseconomists
,
Statisticiansandscientistsintheworldhavestudiedtheconceptsofthe sustainabledevelopmentandtheconsistentprincipleofeconomyand ecology.Thevaluationofnatureenvironmentsuchasbiota,soil,
water andairisrecognlZedasthefundamentalwealthaswellasman一made productsandassets.Thispaperexaminesthemethodandtheintegratedsystem ofSEEA from anEnvironmentalorEcologlCalEconomicspointofview.
第1
章 は じめ に
世界の経済指標 として現在使われている国民経済計算
(SNA),簡単 にい うと
GNPとい うことになるが,これは人間の働 き労働 だけが価値 を 生み出す行為 であ り,人間の働 き掛 け ( 労働時間) を経済 の価値 に置 き換
‑59(191)‑
えてみているわけである。 この
GNPとい う指標 は, これ まで何 度 も改定 され なが ら現在 に至 っているが,い まだにいろいろな問題 を含 んでいると言 える 。
例 えば,労働以外 の時間,余暇, 自由時間に行 う人間の活動 は十分 に評価 さ れていない。 しか し人は,そうした時間において 自己実現 ない しそのための充 電 をはかる 。 また,女性 の家事労働,ボランテ ィア活動 とい った活動 も 「影 の 労働
」部分で,
GNPには入 っていない。更 に経済活動 に伴 う自然環境 の破壊 , その壊 された 自然の 「 価値
」も含 まれていない。 しか し,破壊 された 自然 を復 旧す る活動 を行 えば,その費用 は
GNPに含 まれている 。 壊 して は修復 ( 生態 学的な意味での再 自然化,修復ではないに して も)す るとい うような, 道路 を 舗装 しては別の管や溝 を配置す るために掘 り返 し再舗装す る とい った 「有効 需 要創 出策
」としては有効 な 日頃見慣れた公共事業方式 は,資源 の浪費 と見 な さ れず,確実に
GNP創 出に寄与するが, これ と同 じコンテキス トで破壊 した環 境 を 「 修復」す る事業 もまた有効需要の面では有効 なのである。
つ ま り, これまでの経済社会,その学問的な視座 は, 自然 を軽視 した視 点か ら構築 された ものであるが,いま環境論的に問われているのは, これか らは 自 然環境の豊か さを物理 的に表示 した り,貨幣の価値 にも計算 してい こ うとす る 方向であ り,それ をかな り指標化 しているのが環境勘定 の基本 的 な考 え方 であ
る
。
環境経済学の研究が始 まったのは,
1970年前後である 。 それ は,学者 の頭 の 中の事で,い くつかの経済モデルが発表 された りした。ついで, 国連 で 「持続 可能な開発」 とい う概念が提唱 された。それによ り,経 済 と環境 とい うこれ ま で合い矛盾 ・対決す る もの と考 えられて きた考 え方が,大 き く転換 して くる こ
とになった。
こうした変化の兆 しが見 られたのは
1980年代 になってか らであるが,他方で, 資源管理つ ま り地下資源の枯渇の懸念か ら,
80年代半ばに 「自然資源勘定」 と い う考え方が
UNEPと世界銀行が組織 した共同作業班 にお いて取 りま とめ ら れ, 自然資源 と環境の分野 における物質的 ・貨幣的計算の可否 が検 討 され, エ
‑60(192)‑
コロジー的に調整 され持続可能 な収入 と生産物のオール タナテ イブなマ クロ指 標 を開発するテーマが着手 されることになった
(Ahmad,
EISerafy,
Lutz,
1989)。 共同作業班では合意が得 られ,環境勘定 を国民勘定体系 であ る
SNA(国連 ,
1968)と結 び付 け,進行 しつつあるSNAの改訂 に環境勘 定 のあ る側 面 を含 ませ るために,十分 な進展が達成 された。 さらに 「自然環境」 資 産全体 を も考 え て,経済 と環境の両方 を経済学 に取 り入れ ようとい う1
970年代の 「 マテリアル ・ バ ランスモデル」 といった前 々か らの動 きが,1
989年か ら
92年 の地球 サ ミッ ト
にかけて,一挙 に活発化 して きたのである 。
環境論的研究関心 と持続可能な社会 ・経済の発展の議論が 国際社 会 にお いて 増大 し,特 に環境 と開発に関する世界委員会
(WorldCommissiononEnvironm‑entandDevelopment
,
1987)の報告 によってその研究は促 された。環境論 的 な主張 と持続可能な発展 は, こうして1
992年
6月にリオ ・デ ジ ヤネイロでの国連 環境 開発会議‑の基本的なテーマ となって行 ったのである 。
こうしてこの新 しい発展概念 を明確 に し,その評価 と手法 の方法論 を発展 さ せ るための必要が強調 されて きている
。 SNAの現行改訂案 (国連,1990)も,環境 ・資源勘定の様々な概念,定義,分類及び作表が どの ように
SNAに結 び付 け られ,統合 された環境 ・経済勘定の基本枠組み にどの ように組 み入 れ られ ることが出来るかを検討す るために大 きな契機 を与 えてい る 。 しか しなが ら, 多 くの異 なった短期 ・中期 ・長期 の社会経済分析 に役立 つ完成 した経 済勘 定体 系 を根本的に変 えるとい うのは早計であるとの認識 も共通 していた。
従 って国連統計委員会 は,その第2
6回会議で,環境及 び 自然資源勘定 の概 念 と方法が,統合 された環境 ・経済勘定のための
SNAサ テ ライ ト体系 においてさらに練 りあげ られることを要請 した。国民計算のサテライ ト体系 は, コア を なす
SNA体系 に負担 をかけ過 ぎることな く柔軟 なや り方で, 国民計算 の分析 的キャパ シティを社会的経済的な関心の選択的な範域 に拡 張す る こ とを見 出 し たのである 。
国連統計局 と世界銀行 は, このためにメキシコとパ プア ・ニ ューギニ アでパ
‑ 61(193)‑
イロッ ト研究 を行 った。あ らゆる環境 的項 目が,経済的及 び経 済 的/環境 的集 合 として比較で きるために,勘定枠組みの内的論理 と両立す るや り方 で, これ
までの国民経済計算体系 に対 し適用す ることもなされた。
1990
年 に は,
SEEA (System oftheintegratedEnvironmentaland EconomicAccounting)とい う 「経済 と環境 を統合 した コ ンセ プ ト」 が あ る程 度 まとめ られて提案 された。国連統計局 によ り,それは1
992年
10月 に, 更 に体 系づ けられ (ヴァージ ョンア ップ
:Ⅴ版) ,各国政府の検討 に委 ね られ る こ と になった。 これによ り
21世紀 にかけて長い時間をかけて
,GNPを眠 りこませ て,
SEEAを世界の社会指標 として統一 してい こうとす る もので, その基本的な足がか りである 。 当面の段階は 「 サテライ ト勘定
」,つ ま り
GNP( 経 済 勘定)本体 に付録的に環境勘定体系 を付 けてい くものである
。しか し,他 方 で は,
GNPの改訂 (グリー ン化 )を一層進めて行 くもの と言 えるであろう。
こうした国際的な動 きを うけて 日本 で は1
992( 平成
4)年度 か ら, 環境庁 (国立環境研究所 ) ・経済企画庁 ( 経済研究所 ) ・農林省 ( 森林総合研究所など) が 「 研究 プロジェク ト」 を設けた。1
993年度 に入 って さ らに建設省 の建 設政策 研究セ ンターの研究ス タッフもそれに参加す ることにな り,小 生 の処 に も新春 早 々の
1月2
0日,ア ドバ イスを求め られた ( 研究協力)。 中央省庁 の この研 究 プロジェク トは,平成
5年度 には基本資料 の収集 にあた り,平成
6年度 にモ デ ル的数値例 を作 ることになっている。
1 62 (194)
‑
経済勘定 (現行 「新SNA(国民経済計算体系 )
」)
:呼称GNP研 究 ( 平成
5,6年度 )
経済勘定 (改訂 )に付 としてサテ ライ ト勘定 として 「環境勘定」をつける
I
SEEAとい う経済勘 定 ・環境勘定の統合 した体系 へ とテイク ・オ フ しようとい うのである。
それは, 「自然資源勘定」 とか 「SNA」の ような既 存 の デ ー タ体系 に取 っ て替 わろ うとす るつ もりではな く,それ らの可能 な要素で あ る限 り 「包括 的 な デー タ体系 を樹 立す ること」 を意 図す るが,環境 の (経 済 的 な計算 ) を志 す の で はな く,あ くまで も 「経済が (環境 勘 定体系 の一 部 ) と して扱 われ るべ き」
こ とになる とされている。 自然 と人間の間の均衡 を 「生態学 的響 き」で定義 し, その不均衡 を是正 し,人間 とそれ以外 の生き物 の要求 との 間の最 適均 衡 へ と向 か うべ きである とい うコンセ プ トなのである。それ故 に, そ の統合 され た勘 定 の枠組 み は,人間の需要 を自然環境 の定常 的な状態 とつ り合 わ させ る持蔵 可 能 な開発 の方策 を支持すべ きである とい う視点 を支持 している。
この ように,現行SNA(国民経済計算体系 ) とい う 「豊 か さ」指標 が21世 紀 にかけて根本的に改訂 されて,SEEAとい う総合勘 定 に な る こ とが確 定 さ れている
。
自然 に資産評価 をどの ように与 えて,環境評価 を行 うべ きか をめ ぐ る計算方式の修得 と,その コンセ プ トにつ い て の学 問 的定 立 が急 が れ て い る。 この稿 は, こうした理論 的なフ レーム ワークの検証 を, 国連統 計局 が ま とめ たSEEAマ トリクス最新版 を提示 したハ ン ドブ ックを基 に, 自然 環境 と経 済 の 間の相互 関連 を措 くSNAサテ ライ ト体系 の再考 を行 いなが ら,SEEAの概
‑63(195)‑
念 的な基礎 を整理検討す る。
ハ ン ドブ ックは
,SEEAに包括性 を もたせ る とす る。 もちろんの こ とで , 環境 と経済の相互関係 を記述す るための可能性のすべ て を採 用 す る こ とを意 味
しない。個別的な国の特別の環境 的 ・経済的問題が,計算 に取 入 れ るべ き主 要 な分野の選択 を決定 しなければな らない し,デー タ取得 性 とデ ー タ基礎 の一 層 の改善の可能性が
,SEEA概念 の採用 を制約す る とい う面があるか らであ る。
こうした限定 は,互いに独 立的に使い得 る建築 ブロ ックの多様 性 を構 成 すべ き である
(vanTuinen,1986の提言 を参照 ) として, 次 の よ うな構 図 を与 えてい る (
HANDBOOK,(4.136))0
A
現行
SNAの区分けないしは完成
‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ 一 一 ‑ 一 一 一 十 十一 一 1 ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ 1 ・ 人工自然資産
:i 非人工自然 う 欝 ̀ 市 脚 量 目 苧市場評価
,原材料のフロ
ーと資産勘定 土地利用, エコ システム勘定
の貨幣データ
利用
J; 源の利用 ( メイン1 テナ 1 . 日 メインテナ ンス評価) 壬 iンス評価)
‑ ‑ ‑ I ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ + +‑ ‑ I ‑ I ‑ ‑ ‑ ‑ ‑
C:
環境着用の追加帰属
景観,エコシ ステムの悪化 ( メインテナ ンス評価)
に係わる活動 の貨幣データ
しての環境利
;; 環境の反響 用 : ⊆( 報酬価)
(HANDBOO
K.表
4.10SEEA補完のための建築材料)
SEEA
概念 は,恒常性 の条件 に一致 し,伝統 的な勘 定計 算 と密接 に連 結 し ているその特殊 な体系 に とって適合 した建築材料 を選択 す る こ とを各 国が 可 能 とす るように包括 的たろ うと している点 に特徴 がある
(ibid.,(4.138))。 デ ー
ー
64 (196)‑夕基礎 は,将来に
SEEAの よ り完全 な版 を達成す るとい う観 点で,
SEEAのそ もそ もの建築材料 を補完す ることと平行 して改善 させ る必要が あ る とい う ことで,限定的なのである。
第2
章 国連 「 SEEA ハン ドブッ9J の構図
そのハ ン ドブ ック最新版 は,近年 に議論 されて きた様 々 な考 えを可能 な限 り 反映 させ ること,異 なった学説の統合
(Synthesis)を見 出す とい うことにおい て,近年の理論研究の総括書で もあるとも言 える
。その視座 は 「過去 に示 され たアプローチの一通 りの分析 は,それ らが互いに排斥的で な く,補完 的であ る とい うこと 」 , 「 現在一般的アプローチ を欠いている理 由は,対 立 した考 え と い うよ りむ しろ,異 なったアプローチの間の連結 を見失 ってい る と見 るべ きで ある」 とい う処 にある 。 故 に,ハ ン ドブ ックの概念的な提言 が示 そ うと してい るのは, 自然環境 と経済 とのカテゴリーの 「 比較で きないデ ー タセ ッ ト」 を打 ち立て ようとす るのではな く,包括的であ り両立的であ り得 る 自然環境 と経済 の間の相互関連性の像 を示す ことであ り,環境 ・経済関連 の実効 的 な分析 が異 なった部分が比較 しうる概念 に従 って,相互が密接 に結 び付 いたデー タ体系 を 必要 としていることを証明 しようとい うことである
。「自然資源勘定 とか
SNAの ような既存 のデータ体系 に取 って替 わろ うとす るつ もりはな く,それ らの可能な要素である限 り包括 的 なデー タ体系 を樹 立す ることを意図 している
」(ibid.,
(1.3))。「 環境 と経済 の間の相互 関連性 を記 述す ることが緊急 に必要 なのは,国民経 済計算体系 を無効 とす るこ とで な く, 分離す ることによって伝統的国民計算 と密接 に結 び付 くべ き特別 のデー タ体系 へ と導 くべ きこと 」 である 。 このアプローチは, コア体系 と して使 われ る伝 統 的国民計算 と,サテライ ト体系 (ない しサテライ ト勘定)の性格をもつ特別デー タ枠組み とい うい二つの体系 を必要 とす る
(Hamer,
1986;Lemaire,
1987;Reich
,
Stahmereta1 . ,
1988;Stahmer,
1991;Teillet,
1988) (ibid.,
(1.89))。まず,そのサテライ ト体系 の コンセプ トか ら検討 してみ る
。 SEEAの 自然
‑65(197)‑
資産勘定の出発点は,現在作業 中のSNA概念の改訂後, 人間によって生産 さ れない自然資産をも含 むことになろうSNAの非価格 的資産勘定であ る, とさ れている
(ibid.,
(1.96))。コ ア 体 系
国 民 計 算 体 系
(SNA)経済活動の 記 述
サ テ ライ ト体系
国民 l l
:t l環境の経済 計算の分離
( 環境関係)
A環境 ・経済 相互 関連性 物質的デー
タ
B的利用の付 加的評価
C SNA
の生 産境域拡張
DsNA
の伝統的概念 概念的拡張 と修正 表1. 5との相応 ハ ン ドブ ックの章
A :
( 6)
A :2章
B :(
1X3) A+
B+
C :4章
C&D :( 5)
A+B+C+D :5 章
(HANDBOOK
,表
1.5SEEAのための
SNAサ テライ ト体系 )
環境統計研究 開発枠組み
(FDES)環境 と社会 一人口統 計学的 ・経済的活動 の記述
SNAか ら分離 される表のSEEAのA
部分 は,生産 ・産 出部分 ( 投入 ・産 出表へのデータ基礎 )で,投入 ・産出枠組みは,それが経済活動‑ の投入 と し て 自然環境か らの自然資源のフロー,そ して 自然環境へ戻 る望 まざる産 出 と し ての生産 ・消費活動の廃物のフローを含むことにより容易 に拡張 され る部分 で ある 。 環境 ・経済の関連の分析 には最適の経済 フレームワークであ る ( 参照 :
Beutel,
1983;Cumberlang,
1971;Cumberlang,
Stram,1974;Forsund,
Strom, 1972;Franz,
1988,
1989,;
Hettelingeta1 . ,
1985;Isard&others,
1968;Isard,
1969;Isardeta1 . ,
1972;Leontief,
1970,
1973;Leontief,
Ford,
1971;Lehbert,
1972;Rose,
Miernyk,
1989,par5.5;Schafer,
Stahmer,
1989)。 SNAか ら分離 される部分で,環境悪化除去,悪化 した自然環境修復 のための環境保全活動
‑66 (198)‑
並 びに悪化 した環境 によって生 じた影響 ( 損害)費用 ( 健康 支 出, モ ノの腐 食 費用 )が含 まれている
。SEEA
の第
2の部分 ( 表
1.5:partB)は,物質的 タームでの 自然環境 と経 済の間の相互関連性 を含 んでいる 。 自然資源勘定,物質/ エ ネルギー均衡 ,及 び投入 ・産出の構成部分である。
SEEA
の第
3の部分 ( 表
1.5:partC)では, 自然資産の経済的利用 の帰属 費用 を測定することで,次の ようなアプローチが扱 われている 。
(1)SNA
における非価格資産勘定の概念 に従 った市場評価
(2)
最低 限は自然資産の現在の水準 を持続 させ るために必要 な費用 を測定 しよ うと試みる評価
(3)
とくに自然環境の 「 消費サービス」の価値 を測定す るため に適用 で きる報 酬 の評価
SEEA
の第
4の部分 ( 表
1.5:partD)は,
SNAの生産境域 の拡張 に よっ て得 られる付加的な情報 を含 む。 こうした拡張 は, 自然環境 ‑ の家 計活動 の効 果 と悪化 した 自然の福祉 的側面の理解がその詳細 な分析 に必要 とす る家計活動 の場合 に,特 に適用 されている 。 さらに, 「 環境サービス」 の生 産 として 自然 環境 の経済関数 を扱 う結果が議論 されている 。
統合 された環境 ・経済勘定体系では,経済活動 を記す るためのデー タ体系 と しての伝統的な国民計算体系 、環境勘定体系,そ して環境 と経済 の間の相互 関 連 を記述で きるすべての貨幣 ・物質 フローを含 む必要があ る 。 こ う した理念型 概念 は現在 まだ実現 で きてい ない ( 参照 :例 えば
Richter,
1991;Tappeiner,
1992;Friend,
Rapport,
1989;Ward,
1990)。 その主な理 由は, 自然環境 を記 す るための包括的データ体系が見つか らない ことである 。 現存の環境 ・経済デー タ体系の完全 な統合 は,それ故 に今 の時点では不可能である
(ibid.,
(1.75))。次 に,
SEEAのバージ ョンア ップにおけるコンセプ ト展 開の推移 を示 して お く 。
‑ 67 (199)‑
SNA
か ら環境 に関 して分離
物質 ・貨幣勘定 の結合
帰属環境 費用 版 ( 辛)Ⅲ
(A+B)
版 Ⅳ. 1 ;市場
(A+B+C)蔓評価
版
Ⅳ. 2;
(A+B+C) ;T
‑‑‑ ‑ I ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ +
i メ インテナン
! ス評価
版
V. 2 (A+B+C+D)版
Ⅳ. 3 (A+B+C)版 V.
1 (A+B+C+D)メインテナ ンス評価
版
V. 4; 処分サービス
(A+B+C+D)匡 地の 一一‑‑‑I‑‑‑‑I‑‑‑‑+ 生産サービス
版
V.6 (A+B+C+D)拡張 した 投入 ・産出表
市場評価
+報酬評価
生産境域 の拡張 家計生産
版
V. 3(A+B+C+D)
市場評価
+報酬評価 環境 サー ビス
版
V. 5‡消費サー ビス
(A+B+C+D)i
環境保全サ ー ビスの 外部化
投入 ・産出の適用
(HANDBOOK,表1.6VERSIONSOF THE SEEA)
一 68 (200)‑
しか し不可能であって も,なん らかの アナ ロジー的評価 はで きる 。 例 えば, 生産範囲を家計生産活動 に拡張 して,帰属環境費用の次 の
3つ の評価 法 と関連
して考察す る ( 版
V.1,
V.2,お よび
V.3)の ことはで きる 。 つ ま り,その 環境サー ビスは,
(a)経済的廃物の捨 て場 としての 自然環境 の利用 を記す る処分 サービス,
(b)土地 ・景観 ・エ コシステムの生産的サー ビスの場合 ( 以上 :版
V.4
の部分)そ して
(C)家計への消費サービスの場合 ( 版
V.5)に,生産 として取 り扱 うのである 。 しか し内部的な環境保全活動の 「 外部化
」( 版
V.6)は,版
Ⅳ.2
の概念 (メインテナ ンス評価 )に基づいて記述 されるとし,生産境域の拡 張
(D)は,帰属環境費用 ,す なわ ち
partA+B+C+Dを伴 った
SEEAの
Ⅴ( 章の)版の評価 と結 び付 けて更 に考察 されるとされている
(ibid.,
(1.105))。こうしたモデル化 における
SEEAの適用のための概 念 的基礎 を図示 したの が次の図
1.4である 。
自然環境 ‑‑ ‑‑‑‑ 一一‑‑ 一一一一一‑‑‑ 一一一1‑‑‑‑‑> 経 済 物質的記述 ; 自然環境 ・経済
( 空間的定位 ) ( 1
日間の物質 フロー
非経済的評価
;付加的な非市場 ( 4) 書 評 価
経済内の 物質 フロー
国民計算の 分 化
物 質 デ ー タ
貨 幣 デ ー
タ<‑ 一一一‑‑‑‑‑‑‑ 1一一一 一 一一一 一 一一一一‑‑‑ ‑一 一 一‑
( 1) :環境統計体系 ( 1) 十 ( 2) :自然資源勘定 と環境
( 狭義) ( 広義の統計)
( 2) :経済勘定体系 (SNA) ( 2) +( 3): 物質/エ ネルギー均衡 ( 2) +( 3) +( 5) +( 6) +( 1) の一部 :サテライ ト ( 5) +( 6) :拡張的経済勘定体系
統合 された環境 ・経済勘定
(SEEA)(HANDBOOK
,図
1.4DATA SOURCESFOR INTEGRATED ENVIRONMENTAL AND ECONOMIC ACCOUNTING)SEEA
ハ ン ドブックは,
(1.5)で次の ように自然環境 と経済の統合 の視座 を提示 しているが, これは妥当である
。「もし, 自然 の一般 的 な意味合 いで 自 然環境 を定義す るとすれば,経済は自然の一部であると言 え よう
。」人類 は動
‑69(201)‑
物や植物 と同様 に生命組織 で,その経済やその他の活動 は しばしば動物の似通っ た活動 と比較 される 。
生態学的な視点か らは,人間 と他の生物 との間には絶対 的 な差別 はな く, あ るのはむ しろ暫定的な ものである。人類 は自らが 自然 の一部 であ る こ とを受 け 入れるべ きで, 自然の均衡 を撹乱 しない方法で行動すべ きであ る 。 その知力 は 他の生命組織の環境 に影響 しない ような生活条件 を創造 す るの に使 われ るべ き である 。 人類 はその生活 を,外 的な
(abiotic)な物質環境 との相互作用 にお いて,人間の活動 と同様 に他 の生物活動 によって規定 され るエ コシス テムの一部 として受 け入れるべ きである
。生態学的視点に従 えば,統合 された環境 ・経 済 勘定 は環境の経済的な計算ではな く,経済が環境勘定体系 の一部 と して扱 われ
るべ きであるのだ。
生態学的視点 に従 うと,環境 を経済 目的のための最適利用へ と向か うので な く,人間 とそれ以外の生 き物の要求 との間の最適均衡へ と向か うべ きであ る。
「 我々は, 自然環境への人間の経済活動の影響 をモニ ター し, 自然環境 をそれが 経済活動 によって作用 されるか ぎり把握 しなければな らない 」
(ibid.,(
1.5))。
これ までの人間中心主義的な視点か ら見れば, 自然環境 は特 に人 間の経 済活 動の コンテキス トにおいて人間によって搾取 されるべ きであ る。 「自然環境 は それが人間に便益 をもた らす限 り計算 に入れ られるべ きである 」 。 「自然 のエ コシステムは,人間がそれ をレクリエーシ ョン目的や 自然 の産物 の採取 のため に利用す る場合 にのみ価値 を もっ こととされる 。 もともとの経 済 的視 点 か らみ れば, 自然のサー ビスが無償であるか有償であるか,他 の生 き物 が絶滅 され る か どうかは関心がない ことで, 自然環境 は,人間にはある可変的な もの (
funct ion)で,勘定体系 はこうした可変的な関数が十分 に充 されているか どうか を観察す る仕事であるわけである 。 もし,サー ビスの質が低下す るな らば, その関 数 をその ままに保つ ようにする措置が考慮 されなければならない 」
(ibid., ( 1
.6))。
この近年,生態学的視点 と人間中心主義的視点 との統合 (
synthesis)が求 め られるのは,経済 目的のための 自然 の搾取 に限界が来た こ とで, あ る環境 的関
‑70(202)
‑
数の過度の利用が他の タイプの利用での大 きな不益 と関係 してい る場 合, それ は従来の経済的定理 に矛盾 して,非生産的 とい うことになって きた。 「 例 えば, 経済の廃棄物のための環境の廃物処分関数は, きれいな空気 や水 へ の需要 と競 合す る。 自然の搾取 は人類が 自分 自身の生活条件 を妨害す る水準 に到達 してい る。 自然環境の経済的利用 は乱用であると,かな りの大 きさまでにあらわになっ た。それ故 に,人間の生活が環境の総合的な一部であ り,他 の生 き物 の権利 と 自然の均衡 の法則 に受け入れる場合 にだけ生 き長 らえうるの だ と言 うこ とを考 慮 しなが ら,エ ゴ的な観点か らであって も自らの行動 を問 うこ とは必要 に思 わ れる
」(ibid.,
(1.7))。
持続可能性
(sustainability)の概念が ここで も,重要 なキーワー ドをな して いることが分かる 。 いま求め られているのは,人間 と自然 の双方 の需要 のため に環境 を保全す るとい う 「 長期 的な概念」であ り,持続可 能性 の概 念 は 「人間 の 目的のために自然環境 を持続的に利用す ることに限定すべ きで はな く, 自然 の均衡 とい う広い概念 をも含 むべ きである 。 す なわ ち,環境 の利用 (の関数 )
とは手 をつけないままに保全すべ きとい うだけではな く, 人 間のあか らさまな 利用 に賦 されていない場合で も,環境 それ 自体で もあるとい うこ と 。 長期 的 に は,手 をつけない環境が人類 にとって十分 な生活条件 に必須 となる 」
(ibid., ( 1. 8)) 。 ここには持続可能性の最 も明快で確 かな定義が あ る
。い ま我 々が考察
しようとす る環境 ・経済勘定の統合 された体系のデザインは, こ う した視 角 に 支 え られていることを明確 に押 さえておかねばな らない (
Peskin1991a,
1991b参照) 。 国民経済計算
(SNA)の問題 は,その経済的視 点か ら来 る限界 であ る と言 うよりも,その経済的側面の包括的記述 自体 に欠陥が あ る面が強い 。 故 に,ハ ン ドブ ックは,他方での
GNPのグリー ン化 を支持 してい る 。 国民経 済 経済では,経済的評価 は標準的に市場価値 に限定 されていて,非市場財 の利用 は,それが実際の費用 に結 びついている限 り計算 に入れ られ る ( 例 えば,一般 政府の非市場的サービス)
(ibid.,( 1. 1 0)) 。 「 経済 目的のための 自然環境 の利 用」 は,そ うした利用が標準 的に売買 されてお らず, 自然資源 の枯渇 は,搬 出
‑ 71(203)‑
費用 によってかろうじて記録 されるだけで ( 例 えば,近辺 か らの飲 用水 の枯渇 は遠方か らの取水 に伴 うダム建設や配水管設置の費用 と して水 道料 金 の騰貴 と なる), 自然の富の減少 によ り生 じる将来に残 される生 産期 間 と世代 に とって の喪失の ことは計算 に入れ られてはいない。今 回改訂 される国民計算体系では, フローの計算だけでな く,資産の細か な記述 を含 む と予 定 されてい る (国連 ,
1992)。 資産 には,土地 とか下層土 といった 自然環境の部分 を既 に含 めてい る が, しか しこの増補 は,価値概念の拡張 を伴 わない。ハ ン ドブ ックは, この改 訂で も避け られない 「デー タの誤解」 を指摘 している。
「 例 えば熱帯森林 は,熱帯材 の市場価格が高い故 に市場価値 を有 す るに違 い ない とかの誤解である 。 非市場的な価値 を持 ちうるこれ らの森林 の他 の関数 は 登録 されていない。そ うした他の関数の中には,土着民 の生活 ス タイル に結 び ついた住処 としての森の利用,地球 的 な気候 の均衡 にお ける森 の重要 な役 割 , 生態学的視点か ら熱帯雨林が非常 に多様 な動物や植物 に とっての 自然 の生息地 をつ くるに重要なエ コシステムの一つであることな どがある
(ibid.,
(1.13))。自 然
‑I‑‑‑‑+‑‑‑‑‑‑‑+〜
生 物 学 i 土地( エコシl 的 資 産 ;矩 ム付き)ど
‑一一一一一十一一一一一‑一十一 経 済 的 盲 経 済 的 i
生 産
:利用
t開
餐 産
水
蜜 I‑ I I + ‑
II‑I
土 産 仙 発
野 生 i 未耕作 ; 未開発
.::MLI. : ':.i:" 三 :I:'Z . :I
I ‑ I‑ ‑ + ‑ II I ・
場 値
市
価場
値市
価市
場価 値 ( 検認 リ
ザ ーブ)
大 気
(HANDBOOK
,表
1.1MAN‑MADE AND NATURAL ASSETS)ハ ン ドブ ックは,経済 と自然環境 の定義 にある幾つか の ア プローチ を資産勘 定の面か ら整理 している
(ibid.,
(1.24))。‑72(204)
‑
その他 の生物 (動物 ,植生 ) とそれ らの 自然環境 (エ コシス テ ム な ど) の勘 定 を行 うことに特別の配慮が な され るべ きで,人間によって コ ン トロール され る家畜や牛 な どの動物 の他 に,野生動物が含 まれるべ きで , 農業 の成 育植 物 と 林業 と同様 に,野生 の植物や樹 木が計算 に入れ られねばならない (ibid.,
(
1.25))。 資産 は,人間が造 った資産 (man‑madeassets)ない し人間が造 った資本 (man一 madecapital)の他 に, 自然資産 (naturalassets)ない し自然 資 本 (natural capital)と呼 ばれ る もの も含 む。その 自然資産の重要 な部分 は,生 物 学 的資 産 (経済的 に生産 され, また 自然 に生産 され),そのエ コシステム を伴 った土地 と 水 ,底土 (下層土資産 ),そ して大気があ る。 下層土資産 が含 まれ るの は, そ の採掘が経済生産の重要 な資産投入 を提供 し,景観 に直接 影響 を与 え, 当該 地 域 のエ コシステムに作用す るか らである。さらに下層土資産の枯渇度合 は経済活動 の限界要 因で もあ り, 自然 環境 に排 出 され る廃棄物 の容量 を間接 的 に決 め るか らである。 こうした 自然 ( 「自然 の 資産」)の概念 に相当す る定義 は, シスモ ンデ イを引 き合 い に出す まで もな く, 現代 で もフランスの経済統計学 に よって主張 され た (Corniere,1986;INSEE, 1986;Weber,1983) (ibid.,(1.26))。 改訂 国民 経 済計 算 体 系 (SNA)で は, その存在 が人 間労働 に依存す るようなすべ ての 自然成育産物 (家 畜 ・作 物 ・材 木林 の樹 木 ・農園 と果樹 ・養殖魚 な ど)を生産の カテ ゴ リー に含 め る こ とが予 定 されてい るだけである (ibid.,(1.28))。しか し殆 どあ らゆるタイ プの 自然 資 産 (生物学 的資産 ・土地 ・底土資産 ・水 )は市場価値 を持 つ こ とが 出来 る。 と 言 うのは,市場評価 は 自然資産‑ の経済的制御 の程度 (投 下 労働 量 ) には必 ず しも直接依存 しない ことが,枯渇 に伴 う希少価値 の成立 に よって 明 らか に なっ てい るか らである。 す なわち,市場価値 は,海洋の魚 に対 す る と同様 に, 原生 の森林 に も付 けることが 出来,標準 的 にすべ ての制御 され/利 用 され る 自然 資 産 は市場価値 を もち,他方制御 され ない/利用 されない 自然 資 産 は市場 で価 値 付 け をされ るよ うにな って い る (ibid.,(1.30)
参照 :
OECD,1989の3章 ; pearce,Markandya,Barbier,1989の3章)
。‑ 73 (205)‑
下層土 ない し底土資 産 ( 例 えば石油 ) は,検 認 された リザ ーブだけ を含 む ( 第
12回世界石油会議 (ヒュース トン,1
987;Masterseta1 . ,
1987,p.3;Ferran,
1981;国連,1
980b)。 検認 された リザーブの定義 は市場価値 の基準 に帰 し ( 捕 出のポジテ ィブな純還付 ),開発 リザーブの定義は,底 土資 産 の抑制/利用 の 程度 に帰す ることがで きる
(ibid.,(
1.30))。一見 して複雑 なのが生物学 的資 産 の重複登録である
(ibid.,
(1.35))。個 々の植物や動物 として ( 要素 的 な生命 資 産)そ してエ コシステム ( 複合 的生命資産)の一部 として
(Gilbert,
1990,p.5;Gilbert
,
Kuik,
Arntzen,
1990)である。地上のエ コシステムには,係 わ りのある動物や植物 と環境的媒体 ( 土地 ・水 ・大気 )を含 む。同様 に,水 中のエ コシ
人間が造 った 蔓 自 然 資 産 の 利 用
評価 型
資産 ( 歴史遺 十一日 一一一一一一一十 ‑ 一一一一一一一一 若鳥含 む)の
i 生物学的 は 禁
蒜底 土
;水
i大 気 市場価格( ス ト f市場価格 ( 経 !市場価 格 (也 :市場評価 1市場価格
ックの減少)∴ 活的生産 され ‡代,賃貸) :( 採鉱純益 )
:( 水 の直接 豊富孟孟宗, 漂 滝 霊慧警票去
:評価 ( 野生動 :植物 )
非市場 的 ‡用価値,非利 ;現存価格 ;レクリエーシ
評価 等用価値 巨 ン価値,エ i
lコシステムの i :現存価値 : 一一一一一一一一一‑一十一一一‑‑‑一一一‑一十一一一一一一一 枯渇 と自然成 :公害 による土 l選択的所 長の均衡費用 :地の劣化防止 :提供費用
ミ費用,農業 ・:
Jレクリエーシ :
!ヨン利用 !
利用 ) , 純益 ある市場評 価 ( 水 の浄
水質劣化評 i大気 の質の 価 ( 支払意 !劣化価値 忠) , 水生可 ( 支払意思)
コシステム I l の現存価値 :
‑‑一一一一一一一十一一一一一一一一一 平均水貯蓄 :大気 の質劣 の均衡費用 , ;化 による現 芸墓誌孟孟 麿 讐 望 止費用 ‡大気質劣化
‡の防止費用
(HANDBOOK,表
1.3VALUATION OFTHEECONOMICUSEOFTANGIBLEASSETS)ステムは,海底 ・水 ・空気及 び関連す る動物や植物 を含 む。 生態学 的見 地 か ら は,生命体 をただ個 々の種 としてだけ見 なす ことは出来ない ( 参照 :
Myer,
19 88)。 自然 は,完全 なエ コシステムがそのままに残 される場合 にのみ,保全 さ れることが出来るか らである 。
‑74(206)‑
資産の利用 を価値付 けるには,資産価値 ( ス トック) 自体及 びその資産の利 用 と関連 した財 ・サービスのフローの双方の評価 に及ばなけれ ばな らない。 国 連 によれば, この場合で も,以下のことが考慮 されなけれ ばな らない とい うこ
とになる 。
(1)
経済的に生産 されて直接市場的であるところの生物学 的 また は非生物学 的財の在庫 目録 ;この場合,経済的に生産 された財の現在市場価格 が,ス トック及 び減少ない し増大するこれ らのス トックの フローの双方の価値付 けのために使われる。
(2)
まだ収穫 された り狩 られた り採鉱 されたことのない野生 の野植物 や底土 資産の ような枯渇 しない 自然資産 ;こうした財 は,採収 の後 に市場価格 を 持つ。ただ採収費用によって控除された市場価格 だけを意味す る ( 純益) 。
もしも採収が長時期 に及ぶのであれば,将来純益 の フローが割 り引かれ なければならない。これ らのス トック (「 環境財」 の フロー) の枯渇 は, 計算期 間に得 られうる純益 により価値づけられる ( 現在採収 費用 に よ り控 除された現在市場価格 ) 。
幾つかの場合,枯渇する自然資産 と採収権 は,市場化 され る
。市場価格 は,かな りの程度,採収の可能な純益 を反映する 。
(3)
経済的に生産 され,市場で買われる固定資産 ( 主 に人間が造った資産) ; この場合,固定資産の現在市場価値 は,二つの規定要 因 を採用 して国民計 算 に繰 り入れ られる 。 近似的な新投 資財 の現在市場価格 ( 現在代替費用 ) は,資産の全生命時間 との関連で残余生命時間によって上昇 される 。
これ ら資産のサービス ・フローは,それが報告 され る期 間にお けるこれ ら資産の原価償却 と等 しい とい うことが出来る
。(4)
経済的に生産 されてはいない ( 土地のように)が, その潜在 的 ・現実 的 経済利用の故 に市場化 される固定資産 ;この場合,市場価値 は類似資産 と の市場取引の際に支払われている市場価格 を使 うことで量 ることが出来る 。
この市場価格 は,資産の利用 と結びついた将来純益 の フローの価値 を反映
‑ 75(207)‑
す る
。 (ibid.,(1.46‑49))環境の経済関数の間接的な非市場的評価 には,実際費用 ない し仮 設 的 な費用 データを使 うことが出来るとい う指摘 は妥当であろう
(ibid.,
(1.56))。なぜ な ら,実際費用 は, 自然環境の経済的利用 と関連 した保全支出を含 むか らである 。
例 をあげれば,環境保全 費用 ない し低 下 した環境 質 に よって生 じた損害費用 ( 人の健康,物質的腐食 な ど)である 。 もちろんこの環境保全活動 は,環境へ の 経済活動の否定的な効果 と相殺す るには十分でない。
実際の損害費用 は,環境質の低下 を価値付 ける下限であ る にす ぎない。 人 々 は少 な くとも良い大気や水 質 を守 るため に実際 に支払 お う とす るに違 い ない 。
こうした意味で,実際の損害費用 は,環境質の低下の価値 と して解釈す るのが 妥当であろう
。い ま一つの間接 的な非市場 的評価 による仮説的な ( 負荷 された)費用 デー タ による場合,環境‑のその質的 ・量 的効果 に従 って, 自然 環境 の経済 関数 を価 値付 ける 。 自然環境の経済的利用者の費用計算 は, もし自然環境 をその利用 が 影響 しなかった ような方法で利用す るな らば発生 したで あ ろ う付 加 費用 を含 ま せ るように拡張 される 。 こうした費用 は もちろん,普通 「 発 生 費用」 と呼 ばれ てお り,現実 に経済利用者が環境 に影響 を与 える故 に,仮 説 的な性格 を持 つ 。
こうした仮説費用の算入 は,少 な くとも現実の環境 的枯 渇 ない し劣化 を価値付 けす るのに有効で,持続可能性概念 の適用であ り,国民計算概念 の拡張であ る との評価が与 えられている
(ibid.,(
1.57))。更に,廃棄物 フロー,すなわち処分サー ビスの評価 の問題 が残 るが, これ は 本稿 の後半
(2)において考察す る 。
ハ ン ドブ ックは,包括的で十分 に詳細 な仕方で 自然環境 を記 す る こ との困難 が,可能な限 り完壁 に自然環境 と経済の間の相互関連 を記 す る試 み を妨 げるべ きでない としている
(ibid.,(
1.77))。反面, 自然環境 を記す る際に直面す る 自然資産勘定の概念 は,一貫 したデータ体系 の確 立 に利用 しうる 。 この文脈 で,
‑ 76 (208)‑
物質/エネルギー均衡の考 えにおける概念的考察が助 けになる
。それによれば, 統合 された環境 ・経済環境体系 (SEEA)は 4つの部分 を含 む :
‑1.
確立 された経済計算体系 ( 国連の国民計算体系 (SNA) )の一部 ;それ は,環境側面 に特 に言及 されてお り, 自然環境の利用 に関連 してい る貨 幣 的 フロー と資産 を確定するために部分的に分離すべ き ( 前掲図1.
4:(6)の部 分)
(ibid.,( 1. 7 9)) 。
‑2.
貨幣 タームで 自然の経済的利 用 の付加 的 な非市場 的評価 (図1.
4:(5)) (ibid.,( 1. 80)) 0
‑3.
自然環境か ら経済へのフロー,経済内でのその移転 ,及 び経 済活動 の廃 棄物の 自然へ の環流 についての物 質的デー タ (表1.
4:(2),
(3)) (ibid., ( 1. 81)) 。
‑4.経済的利用の効果 を分析するに必要 な限 りでの自然環境 の記述 ;それ は
む しろ補足 的性格 を持つ ( 表1.
4:(1)の一部)
(ibid.,
(82))。
環境勘定の確立 した体系が まだ現在では得 られない とい うこ とが ,計画 され ている SEEAが十分 に確立 した経済計算体系 (SNA)だけ を出発点 と して 採用することを正当化するように思 う 。 自然環境の経済的利用 の非市場 的評価 は,国民計算の貨幣的データへの追加 において導入 されてい く 。 環境統計, 自 然資源勘定及び物質/エネルギー均衡 の物質的データは, 国民計算体系 の貨幣
タームにおける相応のデータと結 び付 け られるべ きである (
ibid.,( 1. 8 4)) 0
また,経済 ・環境勘定の統合 には空間的側面 ( 地域勘定 ) に も注意が あてが わ られている 。 環境勘定は しば しば,特 に地域 レベルでの ない しそれ に限 られ た関心 を扱 う必要がある 。 大 きな国では地域性が特別 に問題 を もつ 。 これ らの 国では,環境調整の効果は,地域 ( 副国域的) レベルで こそ分析 的 ・政策 的 目 的にとって最 も適 している 。 ある地域が とくに大気汚染で影響 を受 け,偲 で は 乱漁や伐採が大 きい とい う地域的な差異が一国内で開いてい る場合 が多 々 に見 受け られる 。 また,ある地域 は,隣国の活動の環境的効 果 に よって影響 を受 け
‑77(209)‑
るに違 い ない。環境 ・経済勘定 の統合 はそれ故,地域 的 な統 合 勘 定 に特 別 な関 心 を払 われ ることを要す る。 国境 を跨 いで考 え られる環境 的作 用 の場令 , 国境 の両側 にわた る地域勘定 も必要であろ うと注記 されてい る (ibid.,4.133)。
この ように,諸 国の さまざまな環境 的,社会 一経済的条件 に適応す るため に, sEEAは出来 る限 り包括 的, 自在 的そ して恒常 的に設 計 され てい なけれ ば な らない。経済発展 の さまざまな型の多様性 ,地域性 だけで な く, 経 済 的 ・環境 的な状態 を分析 す るために採用 で きるオール タナテ イブ な理 論 的 ア プ ローチ が 要請 されていて,それだけSEEAは反面で分か りに くい とされている (ibid., (4.135))。
第3章 持続可能性 とメインテナ ンス費用
3. 1 持続可能性 とメイ ンテナ ンス費用 の定義
人間の需要 と自然 の需要 を均衡 させ ることは,人間の影響 か ら生 き物 を保 護 す るだけでな く,次世代 の人間へ と自然環境 を手 を付 けず に維 持 す る こ とで も ある
。
これは持続可能性 の概念へ と導 く (参照 :Bartelmus,1989b;Daly,1989a;Maler,1989;Opschoor,1989b;Pearce,Markandya,Barbier,1989, , Hueting,Bosch,deBoer,1991)。持続 的発展 は,人間の造 った資本 と自然 資 本 の維持が許す限 りで,経済活動 を拡張す る とい うことを意味す る
。
持続可能性 の よ り狭 い定義 は, 自然 と人間が造 った資 産 の 間 の補 完性 を除外 し, 自然資産 と人間が造 った資産の水準 を維持す るように求 め る。 も しこの持 続可能性 の概念が経済関数の評価 に適用 されるな らば,経 済 的利 用 は少 な くと
も自然資産 に影響 しか ‑ように推持す るため に必要 な費用 に基 づ い て評価 され るであろ う (ibid.,(1.59))。
ハ ン ドブ ックでは,持続可能性概念 を自然資産水準 の変 更‑ の選好 の分析 に よって も検証 させ ようとしている。現存 の 自然資産の水 準 を低 減 させ ない高 い 選好 ,お よびそれ を広 げるための比較 的に低 い選好があ る。そ う した 「保守 的」
な態度 は, 自然環境 の悪化へ の補償 として彼 らが要求す る額 , お よび現 実 の状
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